庭先の防犯カメラに、尾の太い茶色の動物が一瞬映る。
写っていたのがテンだったとしても、直ちに駆除へ進む必要はありません。
一度見ただけでは通り抜けた個体か家屋を使っている個体かを区別できず、対処の要否を分ける手順は5章と6章で扱います。
その前に確かめるべきなのは、写っている動物がテンなのか、イタチやハクビシンなのかという点です。
種を間違えると罠の大きさも侵入口の塞ぎ方も合わず、被害が長引きます。
当協会(一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会)の編集部が、手元の写真・映像・痕跡からテンを確認し、放置・経過観察・専門相談のどれを選ぶかを整理しました。
1. 野生のテンとはどんな動物か|写真で押さえる5つの外見的特徴

テン(てん)は食肉目イタチ科テン属の中型哺乳類で、学名はMartes melampusです。
食肉目とは、犬や猫、イタチの仲間をまとめた分類上の大きなくくりを指します。
手元の写真で確かめる順番は、次の5点です。
- 体の大きさ:ネコより小柄で、イタチよりひと回り大きい印象です。
- 尾:胴の半分以上の長さがあり、根元から先まで太さがほとんど変わりません。
- 顔色:季節で白っぽくも黒っぽくも見えるため、単独では決め手になりません。
- 喉の斑:喉から胸にかけて、だいだい色〜黄色のまとまった模様が出ます。
- 脚:四肢の先端は体色より濃く、足跡は5本指です。
農林水産省の手引き(テン)は、テンを果実類・昆虫類・小型脊椎動物を主要な食物とする雑食性の動物として整理しています。
庭の放任された柿や管理されていない生ゴミがテンを呼び込む理由はこの食性にあり、6章で扱う「実害があるか」の判断と直結します。
1−1. 夏毛と冬毛で見た目が変わる|毛色だけで断定しない季節別の写真比較
テンは毛色だけで判定できません。
同じ個体でも夏と冬で別の動物のように写るうえ、冬毛が鮮やかな黄色になる「キテン」と、くすんだ褐色のままの「スステン」という色の違いが地域や個体で存在するからです。
長崎県の文化財紹介ページはツシマテンについて、5月中旬ごろから夏毛、10月中旬ごろから冬毛に変わると記載しており、手元の写真は撮影月と照らして読みます。
| 撮影時期 | 頭部 | 体毛 | 写真での見え方 |
|---|---|---|---|
| 夏毛(5月中旬〜10月中旬ごろ) | 黒い | 黒みがかった褐色 | 顔の黒い茶色の動物 |
| 冬毛(10月中旬〜5月中旬ごろ) | 灰白色 | 黄褐色 | 顔の白い黄色の動物 |
季節をまたぐ時期は換毛の途中で、どちらにも当てはまらない色になります。
判定の主役は尾の太さと喉の斑に置き、毛色は補助にとどめてください。
1−2. 体の大きさ・尾の長さ・歩き方でわかるテンらしさ
大きさの数値は、資料ごとに測り方が異なるため単純には比べられません。
動物園などの紹介では全長・体重を幅のある値で示し、国土交通省中国地方整備局の太田川の生物資料は雄を頭胴長約45cm・尾長約25cm・体重約1,500g、雌を頭胴長約40cm・尾長約20cm・体重約900gとしています。
頭胴長とは鼻先から尾の付け根までの長さで、全長とは測定範囲が違います。
映像では絶対値より尾が胴の半分以上あり、先端まで太さが続くかという比率で見るほうが確実です。
歩き方は映像上の補助的な目安であり、単独では判定しません。
撮影角度や再生速度で印象が変わるため、塀の上や枝の間を伝って高い場所へ移動したかという経路の情報と合わせて使います。
2. テンは日本のどこに生息している?国内の生息地と分布

テンは本州・四国・九州に自然分布し、北海道と佐渡には人の手で持ち込まれた導入個体群が生息しています。
一方、環境省が平成26年度ごろに公表した狩猟鳥獣の情報収集状況では、テンの科学的・継続的な分布情報は「不十分」、被害状況は明確な被害が確認されていないため「-」、追加モニタリングの優先度は「中」とされています。
「近年どこで増えているか」を全国規模で語れるデータは、現時点では存在しません。
2−1. ホンドテンとツシマテンの分布|自然分布と北海道・佐渡の導入個体群
農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類編(テン)」(令和6年3月版)は、ホンドテンの自然分布を本州・四国・九州・淡路島、ツシマテンを対馬とし、北海道と佐渡には導入個体群が生息すると整理しています。
導入個体群とは、本来その土地にいなかった動物が人の関与で定着した集団のことです。
対馬のツシマテンは別亜種で、文化庁の国指定文化財等データベースで確認できるとおり1971年に国の天然記念物に指定されており、捕獲や殺傷などの現状変更等には文化財保護法上の許可が必要になります。
| 地域 | 亜種 | 分布の性質 | 法的な扱い |
|---|---|---|---|
| 本州・四国・九州・淡路島 | ホンドテン | 自然分布 | 狩猟鳥獣(免許・登録・期間の制限あり) |
| 北海道・佐渡 | ホンドテン | 導入個体群 | 狩猟鳥獣(同上) |
| 対馬 | ツシマテン | 自然分布(固有亜種) | 国指定天然記念物・自己判断での捕獲不可 |
2−2. テンは住宅地や市街地にも出るのか|都市部での目撃記録
都市部の緑地や住宅の裏庭でも、テンの撮影例はあります。
立命館大学の大阪いばらきキャンパスで行われた自動撮影カメラ調査では、2025年1月からの約2カ月間に合計2,379枚の動画が撮影され、キツネのほかテンやタヌキが記録されました。
札幌市手稲山山麓の一般家庭の裏庭では、2026年3月にニホンテンが3回記録されたという観察記録も公開されていますが、一つの庭の月次観察であり、全国的な増加を示す数字ではありません。
こうした記録から言えるのは「目撃が可視化されている」ことまでで、家屋への定着や全国的な増減は判断できません。
3. テンの性格と行動|夜行性とは限らず冬も活動する

「昼間に見たからテンではない」「冬に動いていたからテンではない」という消し方は、どちらも成り立ちません。
テンは昼夜を通じて活動し、冬眠もしない動物です。
北海道大学などの共同研究チームが北海道支笏湖東岸で赤外線カメラの撮影画像13,279枚を解析した研究(東京農工大学も参加、2016年10月公表)では、ホンドテンは年間を通しては昼夜を問わず活動する「一日中型」に分類されました。
季節別では冬から夏が一日中型、秋だけ夜行型へ変化しています。
ただし、これは北海道の一調査地での撮影時刻の結果であり、一般の目撃が秋の夜間や春先の昼間に集中すると断定できるものではなく、地域差や観察者数、日照時間、積雪などの影響も考える必要があります。
テンの性格は、人を避ける傾向があるものの、餌や移動経路がある場所では塀や屋根といった住宅地の構造物を利用する、と限定して理解するのが適切です。
個体差が大きいため「臆病」「大胆」といった一語でくくらず、同じ経路を繰り返し使っているかという行動の記録で判断します。
3−1. テンは危ないのか|人への態度と咬傷を避ける距離の取り方
野生個体の反応は予測できないため、触れたり追い詰めたりせず、逃げ道を残すことが基本です。
東京都環境局の「野生鳥獣との接し方について」も、野生の獣に対して素手で触らないこと、動き回っている個体には近づかないことを求めています。
弱っているように見える個体ほど動きが読めないため、保護しようと手を出さないでください。
ペットや小さな子どもが庭にいる場合は、テンが去るまで屋内に入れておくと接触の危険を下げられます。
感染症と外部寄生虫については7−2でまとめて扱います。
3−2. 木登り・跳躍・すき間通過|テンが屋根裏に届く理由
テンが屋根裏に届く理由は、垂直に登れる爪と細長い体にあります。
庭木・物置・ワイヤーなどを足場に屋根まで達し、屋根や外壁の隙間から侵入することがあり、雨どい・電線・空調の配管・通気口・瓦のずれは、現場ごとに確認すべき侵入経路の候補です。
農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)が飼育下のオス成獣3頭で行った試験(2022年度研究成果)では、夏季に通過できた最小の穴は正方形で一辺5cm、円形で直径5.5cmでした。
メス・幼獣・野生個体については同資料では検証されていません。
5cmは保証値ではなく「試験したオス成獣が通過した値」として読み、屋根の点検では一辺5cm程度の隙間まで侵入口候補として記録してください。
4. テンとイタチ・ハクビシンの違い|見分け方の比較表

テン・イタチ・ハクビシンは、屋根裏に入る中型獣として現場で混同されやすい代表的な3種です。
誤同定が対策失敗に直結する理由は単純で、捕獲時の餌や設置場所・侵入口の塞ぎ方が種や現場によって違うからです。
農林水産省「中型獣類の獣種の見分け方」(令和5年度版)を土台に、確認項目を整理しました。
| 確認項目 | テン | イタチ | ハクビシン |
|---|---|---|---|
| 体の印象 | ネコよりやや小さく細長い | テンよりひと回り小さく胴が細い | ネコより大きく胴が長い |
| 尾 | 太くふさふさ、胴の半分以上 | 細く短い | 長くて細く、先が垂れる |
| 顔 | 季節で白〜黒に変化、喉に橙色の斑 | 顔が小さく口元だけ白いことが多い | 額から鼻先へ白い線が1本通る |
| 足跡 | 5本指、指の間が開く | 5本指、小さく指が細い | 5本指、肉球が大きく丸い |
| フン | 果実の種子が混じる | 細くねじれ、強い臭い | 同じ場所に大量にためる |
| 移動 | 木や塀を軽々登る | 地面沿いに移動することが多い | 電線や塀を渡る |
表の項目は、どれか一つで決めるものではありません。
尾と体格で候補を2種に絞り、足跡とフンで確定させる順番で使うと誤りが減ります。
- 参考:中型獣類の獣種の見分け方
4−1. テンとイタチの違い|尾・体格・顔色で見分け、誤同定を防ぐ
テンとイタチを分ける決め手は、体格と尾の太さ、そして耳の目立ち方です。
福岡市動物園もホンドテンの紹介で、イタチよりテンのほうが大型で、耳介(外に出ている耳の部分)がはっきり出ていることを区別点として挙げています。
顔の明るい色は季節・地域・キテンかスステンかで変わるため、補助特徴にとどめてください。
種の確認が対策を決めた例として、当協会に寄せられた群馬県の農村地帯で農業を営むM.S様の事例があります。
夜間に鶏小屋が襲われて複数の鶏が傷つき、強い緊張で産卵数も落ちていました。
防犯カメラでイタチの姿を確認したうえで専門的な捕獲トラップを設置し、捕獲後に小屋の構造を強化して再発防止策を講じています。
映像で種を確定してから道具と補強幅を選ぶ、という順番が守られた事例です。
判断は体格・尾・耳・足跡・フン・撮影地域を組み合わせて行います。
撮影地域は見落とされがちで、北海道でイタチに似た動物を見たなら導入個体群のテンも候補に入れる、といった絞り込みに使えます。
4−2. テンとハクビシンの違い|鼻筋の白線と足跡で判断
ハクビシンは額から鼻先まで白い線が1本通っており、この線が見えればテンではありません。
暗い映像で顔が確認できないときは、尾と足跡が頼りです。
ハクビシンの尾は長いものの細く、歩くときに地面近くで垂れるのに対し、テンの尾は太さが一定で体を支えるように後ろへ伸びています。
足跡はどちらも5本指ですが、ハクビシンは肉球が大きく丸く指の跡が肉球に近接し、テンは指と肉球の間隔が開いて爪の跡がはっきり出る点で区別できます。
天井の一角に大量のフンがあれば、同じ場所にフンをためる習性のあるハクビシンをまず疑ってください。
5. 撮影画像・防犯カメラ映像でテンか確認する手順

映像や写真からテンかどうかを確認する手順は、撮影条件の確認から始めて周囲の痕跡で締める順番が最も誤りが少ないです。
映像や写真の照合は、次の6段階で進めるのが目安です。
- 撮影地域と季節を確認する:北海道・佐渡なら導入個体群、対馬ならツシマテンの可能性を先に考え、撮影月で毛色の見え方を補正します。
- 尾を見る:太さが一定でふさふさならテン、細く短ければイタチ、長く細く垂れるならハクビシンを疑います。
- 体格を見る:映り込んだ植木鉢や塀のブロックと比べ、ネコより小さいか大きいかを判断します。
- 移動経路を追う:塀・雨どい・庭木・軒下のどこを通ったかを記録し、屋根に向かって消えたなら侵入口候補を探します。
- 周囲の痕跡を探す:足跡・フン・臭い・毛を集め、次項の基準で照合します。
- 反復の有無を記録する:同じ時刻・同じ経路で何日続くかを控えます。
5−1. 足跡・フン・臭いの特徴からテンを絞り込む
痕跡は単独ではなく、複数を組み合わせて絞り込みます。
農林水産省の手引き(テン)は、足跡が5本指であることや、フンに果実の種子が混じることを特徴として挙げています。
- 足跡:5本の指がはっきり分かれ、爪の跡が出ます。前後の足が近接した「対の足跡」が続くのが目印です。
- フン:細長い形で、果実の種子が混じります。内容物は季節の食べ物で変わるため、種子の種類だけで断定しません。
- 臭い:獣臭がこもる場所は居住の候補になりますが、臭いの質だけで種を決めることはできません。
- 侵入口候補:一辺5cm程度の隙間まで候補に含め、周囲に毛や爪の擦り跡がないか確かめます。
足跡が5本指なのは3種共通です。
複数の痕跡が一致するほどテンの可能性は高まりますが、確定には鮮明な映像か専門家の確認が必要になります。
5−2. 屋根裏の物音だけでは断定できない理由
屋根裏の足音から種を断定することはできません。
テン・イタチ・ハクビシン・ネズミの足音は天井板の材質と厚さで聞こえ方が大きく変わり、同じ動物でも家ごとに別の音になるからです。
音の記録は種を決めるためではなく、いつ・どこを撮影し点検するかを決めるために使います。
| 記録項目 | 記録のしかた | 記録の使い方 |
|---|---|---|
| 時間帯 | 音がした時刻を毎回メモ | 自動撮影カメラを作動させる時間帯を決める |
| 音の質 | 走る・跳ねる・かじる・鳴くを区別 | 点検口から確認する範囲と優先順位を決める |
| フン・臭い | 天井点検口から位置と量、強まる時間帯を確認 | 種の照合は5−1の基準で行い、染みの位置と照らす |
| 侵入口候補 | 外壁・軒下・屋根の隙間を撮影 | カメラの設置位置と封鎖候補の一覧に使う |
5−3. 庭・ベランダ・農地・屋根裏|目撃場所別のテン出現の目安と被害有無チェック
目撃場所は、テンかどうかの判断では補助情報にすぎません。
優先すべきは姿・尾・足跡・フン・反復記録で、場所は「その環境をテンが使いやすいか」と「被害を疑う所見があるか」を見るために使います。
| 目撃場所 | テンが利用しやすい目安 | 被害を疑う所見 |
|---|---|---|
| 庭 | 果樹、生ゴミ、雑木の縁がある | 熟した果実のかじり跡と種子混じりのフン |
| ベランダ | 雨どい・配管・隣接する樹木から登れる | フンの反復、手すりや排水口周辺の爪跡 |
| 農地・鶏舎 | 果樹園・鶏舎・堆肥置き場に近い | 鶏の傷、金網や扉の隙間に残る毛 |
| 屋根裏 | 5cm程度の隙間、通気口の破損、瓦のずれ | 同時刻の物音、天井の染み、臭い |
6. テンは害獣か|通過型と家屋利用型を分けて判断する

テンを一律に害獣とみなすことはできません。
対処の対象になるのは、具体的な被害が確認された個体だけです。
「テンの被害は全国でいくらか」という問いにも、統計上は答えられません。
農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況」の令和6年度データでは、「その他獣類」の被害額が3億4,700万円(訂正後の値)と示されていますが、テンの独立した項目はなく、この金額をテンの被害額として引用することはできません。
全国規模の被害額が示せないからこそ、判断は個々の現場の実害の有無に立ち返るしかないのです。
6−1. 庭で一度見ただけなら経過観察でよいケース
実害や異常がなく、目撃が1回だけなら、近づかず餌を与えずに経過観察で十分です。
野生動物を見た直後に捕獲や忌避剤へ進むと、許可や種の確定を飛ばすことになり、費用も手間も無駄になりやすいためです。
経過観察の期間中に行うのは、餌になるものの管理と、目撃日時・場所・画像の記録に限ります。
- 落ちた果実は当日中に拾って処分する
- 生ゴミは蓋つき容器に入れ、収集日の朝に出す
- ペットの餌を屋外に置いたままにしない
- 鶏舎があれば夜間は扉と金網の隙間を点検する
相談へ切り替える条件は、6−3の判断フローで示します。
負傷して動けない個体や、鶏・ペットへの傷があれば、目撃回数にかかわらず自治体の鳥獣担当部署か専門の相談窓口へ連絡してください。
6−2. テンが住み着いているサイン|屋根裏・鶏舎・果樹の被害
家屋利用型を疑う兆候は、同時刻に反復する物音・フンの集積・臭い・天井の染み・侵入口の存在です。
物音が毎晩ほぼ同じ時刻に続き、そこにフンか臭いか染みのどれかが重なり、外壁や軒下に隙間が見つかる、という組み合わせがそろえば、通過ではなく住み着きを疑います。
屋根裏に糞尿がたまると断熱材や天井板の汚損が進み、清掃・消毒・修繕の範囲が広がるため、兆候がそろった段階で早めに動くほど汚損の範囲を広げずに済みます。
ただし、同様の兆候はイタチ・ハクビシン・ネズミでも生じます。
兆候の重なりで「住み着いているか」を判断し、「何が住み着いているか」は姿と痕跡の照合で確定させる二段構えを崩さないでください。
6−3. 放置・経過観察・専門相談を選ぶ3ステップの判断フロー
ここまでの内容を、3つの質問で三択に分ける判断の流れにまとめました。
当協会編集部が相談対応の経験から整理した目安であり、公的な診断基準ではありません。
「放置」は安全な距離を保ち、餌管理と目撃日時・場所・画像の記録にとどめて積極的な対策は行わない状態、「経過観察」は記録表と撮影を伴う能動的な見守りと定義します。
- 目撃は反復していますか?
いいえ → 放置。果実や生ゴミの管理を行い、目撃日時・場所・画像を記録しておきます。
はい → 2へ進みます。 - 敷地内にフン・臭い・天井の染みのいずれかがありますか?
いいえ → 経過観察。数日間、物音の記録表をつけ、侵入口候補を撮影しておきます。
はい → 3へ進みます。 - 建物に侵入口候補がありますか、または鶏・ペット・果樹に実害がありますか?
いいえ → 経過観察を継続し、兆候が増えたら相談へ。
はい → 専門相談。自治体の鳥獣担当部署か無料相談窓口へ、写真と記録を持って連絡します。
実害や負傷個体があれば、記録の日数を待たず相談へ進んでください。
専門相談に進んでも直ちに捕獲や駆除が決まるわけではなく、侵入口の特定と種の確定を先に行い、捕獲が必要なら許可手続きを経る順番になります。
7. テンを見つけたときにしてはいけない4つのこと

テンを見つけた直後に、善意や焦りからやってしまいがちな行動が4つあります。
いずれも「早く解決したい」という気持ちから出る行動ですが、法令違反や被害の拡大につながります。
それぞれの根拠を以下で示します。
- 許可を取らずに捕獲する
- 建物内に個体や幼獣が残っていないか確認せずに侵入口を塞ぐ
- 素手で近づく、追い払おうと手を出す
- 屋根裏の音だけで種を断定し、対策を始める
7−1. 無許可の捕獲は違法|狩猟免許と捕獲許可の境界
狩猟免許と狩猟者登録を満たして狩猟として行う場合、または被害防止目的の捕獲許可を得た場合を除き、居住者が自己判断で自宅に箱わなを置いてテンを捕獲することはできません。
テンを捕獲できる枠組みは「狩猟」と「許可捕獲」の2つに限られ、どちらにも条件があります。
環境省の「狩猟制度の概要」によると、テンはツシマテンを除いて狩猟鳥獣に指定されていますが、狩猟には免許の取得と都道府県への狩猟者登録が必要で、区域・期間・猟法の制限を受けます。
同省の「捕獲許可制度の概要」では、登録狩猟を除き野生鳥獣の捕獲・殺傷は原則禁止で、被害防止目的の捕獲には原則として都道府県知事等への許可申請が求められています。
許可権限は市町村へ委譲されている場合が多く、条件は地域ごとに異なるため、市役所・町村役場の環境課や農政課へ事前に確認してください。
無許可捕獲には鳥獣保護管理法の罰則規定があり、条文は法令検索で確認できます。
- 関連記事:イタチは罠で捕獲できる?手順や事前に必要な申請を解説
- 参考:捕獲許可制度の概要
- 参考:狩猟制度の概要
- 参考:鳥獣保護管理法の条文
7−2. 感染症・ノミダニのリスクと安全な距離の取り方
安全行動は3つです。
テンに触らない、フンを乾いたまま掃かない、屋根裏に入った後は体にマダニが付いていないか確認する。
現実的な危険はテンそのものより、テンが運ぶマダニ・ノミと、屋根裏に残るフンにあります。
フンを清掃するときは換気したうえで使い捨て手袋と顔に密着するマスクを着け、乾いたまま掃いたり掃除機で吸ったりせず、消毒剤などで十分に湿らせてから回収して密封廃棄し、終わったら手を洗い、使用した衣類や器材は洗浄または消毒してください。大量にたまっている場合や閉鎖空間では専門業者に依頼してください。
感染症の話は「確認された事実」と「確認されていないこと」を分けて理解します。
厚生労働省の動物由来感染症の解説では、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の主な感染経路はマダニの刺咬とされています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確認された事実 | 宮崎県の中型野生哺乳類のSFTSウイルス抗体調査(2023年発表)では、アナグマやタヌキで抗体陽性の個体が確認された一方、テンについては調べられた検体数が少なく評価が限られる。国内の野生食肉類の研究(2012年)では、テン8頭中1頭(12.5%)からバルトネラ属菌が分離された |
| 確認されていないこと | テンがSFTSウイルスを人へ媒介すること、テンの咬傷が主要な感染経路であること、バルトネラ属菌がテンから人へ感染すること |
抗体陽性とは、その病原体か抗原的に近い病原体への過去または現在の感染・曝露を示唆する所見で、感染時期やその時点でウイルスを保有しているかは抗体検査だけでは確定できません。
数字は恐れる根拠ではなく、マダニ対策と清掃時の防護を省かない理由として受け取ってください。
- 参考:動物由来感染症に関する解説
- 参考:動物におけるSFTSウイルス感染状況
- 参考:Seroprevalence of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in medium-sized wild mammals in Miyazaki, Japan(2023年)
- 参考:Isolation and phylogenetic analysis of Bartonella species from wild carnivores of the suborder Caniformia in Japan(2012年)
7−3. 姿を見た直後の侵入口封鎖|幼獣の閉じ込めと別箇所破壊のリスク
侵入口の封鎖自体は再発防止に有効で、問題は実施する順番です。
個体が外に出ていることと幼獣がいないことを確認せずに塞ぐと、閉じ込めによる死骸と悪臭を招くおそれがあります。
農研機構の前述の試験では、穴が小さくなるほどテンが穴の周辺を噛む・引っかく行動が増え、閉塞材には強度が必要とされました。
試験から言えるのは、弱い材料で塞ぐと穴の周辺が傷められて突破されうる、という点までです。
封鎖は在室確認を済ませたうえで、金網や金属板など噛みや引っかきに耐える材料で行うのが実務上の条件になります。
特に注意が必要なのは出産期の前後です。
農林水産省の手引き(テン)は、テンが繁殖用の巣や休息場所として樹洞を使い、中山間地域では家屋の屋根裏や物置を利用することもあるとしており、出産は春ごろとされています。
音が数日止まっただけで不在を確定せず、侵入口の前に小麦粉やティッシュを置いて出入りの有無を数日確かめるか、専門の事業者に在室確認を依頼してから封鎖してください。
8. テンの疑いがあるときの相談先と無料相談の使い方

相談先は用途で分かれます。
捕獲許可や箱わなの貸し出しは自治体、建物の修繕責任は建物管理者、現地の調査と施工は事業者、という整理です。
| 相談先 | 向いている用途 | 探し方 |
|---|---|---|
| 市町村の環境課・農政課・鳥獣担当部署 | 捕獲許可、箱わな貸し出し、農作物被害の届け出 | 役所の代表番号から「鳥獣被害の担当」を尋ねる |
| 賃貸の管理会社・大家、分譲のマンション管理組合 | 共用部や屋根の侵入口修繕、費用負担の確認 | 契約書の連絡先 |
| 認定鳥獣捕獲等事業者 | 捕獲を含む専門的な対応 | 都道府県が公表する認定事業者の一覧 |
| 当協会の無料電話相談 | 種の判定、対処の要否、事業者の紹介 | 0120-539-775(9:00〜18:00、平日・土日祝日対応) |
自治体の対応は地域差が大きく、「テン」と明記した案内はほとんど見つかりません。
害獣お助け本舗が近年公表した自治体対応の調査では、多くの自治体が現地調査後などの条件付きで中型害獣用の箱わなを貸し出し、一部の自治体が狩猟免許取得を補助していた一方、テン被害専用の情報を掲示する自治体はほとんど見られなかったとされています。
窓口が見つからなくても、「中型獣」「イタチ・ハクビシン」の担当が同じ部署であることが多いため、そのまま問い合わせて構いません。
当協会の窓口は通話無料・相談無料・匿名で利用でき、害獣から害虫・害鳥まで対象です。
当協会の相談窓口受付記録(2026年3月集計、自社集計)では、2025年度の相談件数は5,000件以上、行政との連携は1,000件以上、電話相談のみで解決した件数は2025年度までの累計で6,775件でした。
対応地域は関東・中部(山梨県・長野県・愛知県・岐阜県・静岡県。静岡県は一部地域)・近畿・中国・四国・九州の各県で、現地調査は紹介先の事業者が担当します。
費用は、忌避剤などの簡易的な対策から侵入口封鎖と清掃・消毒を含む再発防止まで、作業範囲によって大きく変わり、屋根の高所作業に足場が必要な場合は足場代が加わります。
相談を早く進めるために、動物が写った写真や映像(撮影日と場所を添える)、物音の時間帯のメモ、定規や硬貨を並べて撮ったフン・足跡・侵入口候補の写真の3点を用意してください。
この3点があれば、種の判定と対処の要否を判断する材料がそろいますが、映像が不鮮明な場合や複数種の利用が疑われる場合は現地調査が必要になります。
- 対処方法
- 業者選び
- 害獣の特定

- 参考:害獣お助け本舗「テン被害への自治体対応調査」(2026年8月)
- 関連記事:屋根裏の動物を自分で駆除したい!駆除と追い出し方法、関係法令などを解説
- 関連記事:屋根裏の動物駆除にかかる料金相場について|適正価格で依頼する手順
9. テンに関するよくある質問
本文で触れきれなかった、冬の活動・単発目撃の扱い・繁殖期・対馬での例外の4点を短く補います。
いずれも「見た直後にどう動くか」の判断に関わる内容です。
テンは冬眠しますか?
テンは冬眠せず、冬も雪の上を歩いて餌を探します。
東京農工大学の研究では冬から夏にかけて昼夜を通じて活動する型に分類されており、真冬の昼間に見かけても不自然ではありません。
雪面に残る5本指の足跡は、冬にテンを確認する手がかりになります。
庭で一度テンを見ただけなら、何もしなくてよいですか?
実害のない単発の目撃なら、接近も捕獲もせず経過観察で問題ありません。
行うのは落果や生ゴミの片づけといった餌管理と、目撃日時・場所・画像の記録で、相談へ切り替える条件は6−3の判断フローを参照してください。
テンの繁殖期はいつですか?
ホンドテンは夏に交尾し、受精卵の着床が遅れる仕組み(着床遅延)を経て翌春に出産すると考えられています。
繁殖に関する資料には幅があり、福岡市動物園は詳しい繁殖形態には不明点が多いとしつつ、1回に2〜3頭を産むと紹介しています。
春は幼獣が屋根裏に残っている可能性があるため、在室確認をせずに侵入口を塞がないでください。
対馬でテンを見かけました。同じように扱ってよいですか?
対馬のテンはツシマテンで国指定天然記念物のため、自己判断で捕獲・殺傷したり負傷させたりといった現状変更に当たる行為をしてはいけません。近づいたり触ったりせず、追い払いも自己判断では行わないでください。
屋根裏への侵入などの被害がある場合も、対馬野生生物保護センター(環境省・長崎県・対馬市が管理協力、電話0920-84-5577)、対馬市、文化財担当部署へ先に相談し、必要な許可と対応方法を確認してください。
負傷個体や死亡個体を見つけたときも、同センターか市の窓口への連絡が先になります。
10. まとめ|テンは写真と複数の痕跡で確認し、判断に迷えば相談を
今日から着手できる行動は3つです。
1つ目は、撮れている写真や映像の撮影日と場所を書き出し、尾・体格・耳の順に見直すこと。
2つ目は、落果と生ゴミを片づけ、鶏舎やペットの餌の置き場を見直すこと。
3つ目は、物音があるなら5−2の記録表をつけ、外壁と軒下の隙間を撮影しておくことです。
- 対処方法
- 業者選び
- 害獣の特定

捕獲や封鎖は、種の確定・許可の確認・在室確認の3つが済んでから行う作業です。
順番を守れば、テンは過度に恐れる相手ではなく、距離を保って付き合える野生動物にとどまります。
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