意外と知られていない「イタチ」と「テン」 画像を交えて分かりやすく解説!

イタチ

皆さんは「イタチ」と「テン」について、どのようなイメージをお持ちですか?
イタチとテンは、共に古くから日本に生息する在来種ですが、人間にさまざまな害獣被害をもたらす厄介な動物でもあります。
しかし、このイタチとテンは外見がとても似たもの同士の関係で、生態や特徴の違いもあまり知られていません。
そこで今回は、よく似たイタチとテンの微妙な違いを画像を交えながら徹底解説していきます!

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最近、実家の敷地内に身に覚えのない動物のフンが落ちてるの。
犯人はまだ分からないけど、母親はイタチかテンの姿を見たらしいわ‥
なんの動物か分からないままなのは怖いから、イタチとテンの違いとか見分け方とか教えてくれないかしら?

特徴

イタチ

イタチ(鼬、鼬鼠)とは、ネコ目(食肉目)イヌ亜目クマ下目イタチ科イタチ属(Mustela)に含まれる哺乳類の総称です。
イタチ属にはオコジョ、イイズナ、ミンク、ニホンイタチ、ペットとして人気のあるフェレットなども分類されますが、本コラムでは日本において一般的に見られるニホンイタチやチョウセンイタチについて解説します。
イタチはその強い繁殖力と生命力で日本をはじめ、ユーラシア、アフリカ、南北アメリカ大陸の亜熱帯から寒帯までの非常に広い地域で生息しています。

ニホンイタチ (Mustela itatsi)

ニホンイタチは日本在来のイタチで、古くから本州、九州、四国に自然分布し、明治時代初期には北海道へも進出したとされています。
また、近年は沖縄にも進出し、生態系を破壊するとして国内外来種に指定されています。

形態

  • オス:頭胴長(頭から尻尾の付け根までのながさ)約27~37cm 尾長(尻尾の長さ)約12~16cm
  • メス:頭胴長 約16~25cm 尾長 約7~9cm
  • 体重:オスは約290〜650g メスは約115〜175g
  • 毛色:黄褐色から茶褐色

生態

  • 雑食性で、ネズミや魚、鳥、カエル、カニ、ミミズをはじめ、ヤマブドウや桑の実などを食べます。
  • 昼夜問わず活動し、冬眠もしません。
  • 繁殖期は年に1~2回で、一度に6~8匹の子を産むことがあります。

その他の特徴

  • 川の近くや木の生い茂った湿地を好みますが、水辺から離れた場所にも生息します。
  • 後述するチョウセンイタチと比べて、山岳地帯に多く出没します。

チョウセンイタチ (Mustela sibirica)

チョウセンイタチはその名の通り朝鮮半島原産のイタチですが、近年は日本でも勢力を拡大しています。
ニホンイタチとは亜種の関係にあり、日本の対馬では自然分布しているチョウセンイタチですが、現在では西日本を中心とする近畿、東海、四国、九州、中国などに進出して、在来のニホンイタチの生息域を圧迫している外来種で、日本生態学会が定めた生態系や人間活動への影響が大きい外来生物リスト「日本の侵略的外来種ワースト100」にも選出されています。

形態

  • オス:頭胴長 約28~39cm 尾長 約16~21cm
  • メス:頭胴長 約25~31cm 尾長 約13~16cm
  • 体重:オスは約650〜820g メスは約360〜430g
  • 毛色:やや褐色がかった山吹色

生態

  • ネズミやウサギなどの小型哺乳類をはじめ、鳥類、両生類、魚類、果物、木の実などを食べる雑食性の動物です。
  • ニホンイタチと異なり、夜行性の傾向にあります。
  • 繁殖期は春で、一度に2〜12頭の子を産みます。

その他の特徴

  • 日本では特に西日本で多く見られ、ニホンイタチよりも一回り大きいです。
  • ニホンイタチ同様に水辺を好みますが、市街地にも頻繁に出没し、多くの害獣被害を引き起こします。

テン

テン(貂、黄鼬)は、哺乳綱ネコ目(食肉目)イヌ亜目 イタチ科テン属に分類される食肉類の動物です。
同じく日本に生息するエゾクロテン(蝦夷黒貂)は同属異種の関係にあたります。

ホンドテン (Martes melampus)

ホンドテンには、その体色から「キテン」と呼ばれる黄色い個体と、「スステン」と呼ばれる褐色の個体の2種類が存在します。
キテンは主に東北地方に多く生息し、スステンはそれよりも南の地域に分布する傾向があります(キテンは四国と九州にも一部生息しています)
ただし、キテンもスステンも夏毛と冬毛とでは体色が若干異なり、環境に溶け込むために冬毛の色は夏毛の色より薄い傾向にあります。

形態

  • オス:頭胴長(頭から尻尾の付け根までのながさ)約40~55cm 尾長(尻尾の長さ)約15~20cm
  • メス:頭胴長、尾長ともにオスより若干小さいです。
  • 体重:約1.0~1.5kg
  • 毛色:黄色から褐色まで個体により様々ですが、手足は黒色、尾は躯体とほぼ同じ色です。

生態

  • 雑食性で、ネズミやリス、鳥、爬虫類、両生類、昆虫類、ムカデなどの昆虫も食べます。植物質のものはヤマグワやマタタビ、サクラ、ヤマブドウ、コクワなどの実も食べます。
  • 冬眠をせず、昼夜を問わず活動します。繁殖期以外は基本的に単独で行動し、警戒心が強いです。
  • 交尾期は夏で、出産は翌年の春。一度に生まれる子供の数は平均2~4匹です。

その他の特徴

  • 日本の本州、四国、九州に自然分布しており、人為的に移入された個体が北海道南部と中央部、佐渡島で野生化して生息しています。
  • 沢や川付近を好む活動場所としており、穴や樹洞、建造物の床下や屋根裏に巣を作ります。
  • 日本に生息するイタチ科の動物の中で最も大きい種であり、ネコとほぼ同じ体長です。

害獣被害

同じイタチ科の動物であるイタチとテンによる害獣被害は、その見た目と同様に、多くの共通する特徴を持っています。
可愛らしい風貌とは裏腹に深刻な損害をもたらす、その害獣被害の実態を見ていきましょう。

建物への被害

イタチ科の動物は非常に柔軟な体を持っているため小さな隙間からでも建物内に侵入することができ、建物内に侵入した害獣は、以下のような被害を引き起こす可能性があります。

  • 屋根裏や床下での糞尿:建物に棲みついたイタチやテンは屋根裏や床下などに糞尿をします。その結果、当然ながら悪臭が発生したり、建材が腐食するなどの被害が及びます。
  • 断熱材の破壊:イタチやテンをはじめとする害獣の中には、断熱材を破壊して巣の材料として利用する習性を持っている動物がいます。断熱材に欠損が生じれば、それによって断熱効果が低下してしまう可能性があります。
  • 配線の損傷:同様に、巣作りの過程で電気配線をかじられるケースもあり、火災のリスクが高まることが考えられます。

農作物への被害

雑食性の動物であるイタチとテンは、時に農作物へ被害をもたらすことがあります。

  • 果物や野菜の食害:果物や野菜を食べたれる事により、収穫量の減少を引き起こします。茄子やキュウリ、トマトはもちろん、地中に成るサツマイモやジャガイモなどの芋類、ニンジンや大根などの根菜も標的になります。また、イタチやテンは木登りも容易にできるため、リンゴやブドウなどの果実も被害に遭ってしまいます。
  • 畑への穴掘り:イタチには隠れ処や通り道として地面に穴を掘る習性があります。とくに土壌の柔らかい畑などは標的となりやすく、地中にトンネルを作る過程で野菜の根に損傷を与えられる事があります。

健康への被害

さらに、イタチやテンはダニやノミなどの吸血性昆虫に寄生されていることが多く、イタチやテンが建物内部に侵入することで衣服や家具などにダニ・ノミが移り、人間にアレルギーや感染症を引き起こすことがあります。

  • ダニやノミによるアレルギー:ダニやノミに血を吸われる事によって、鼻水、鼻詰まりなどのアレルギー性鼻炎、発疹や腫れなどの皮膚症状、さらには気管支喘息といった様々なアレルギー反応を引き起こします。
  • 感染症のリスク:多くの野生動物は多数の病原菌を保有していますが、イタチやテンもこの例に漏れません。イタチやテンと接触し咬傷などを負うことでペスト、ライム病を罹患するリスクがあり、イタチやテンの尿などが傷口や粘膜に触れるだけでもレプトスピラ菌に感染する可能性があります。

相違点

イタチ

イタチの中でもチョウセンイタチは特に大型で、また夜行性である事も相まって、夜な夜な鶏やウサギといった家畜を襲うケースが見られます。
非常にスリムな体型をしているイタチは、一説によると直径3cmほどの隙間を通り抜けることも可能とされているので、こうした被害を防ぐためには鶏舎などの侵入防止策を徹底する必要があります。
また、狩猟本能が強いイタチは必要以上に獲物を捕らえる習性があります。

テン

東北地方に多く生息するキテンの語源が「黄」色いテンではなく、「木」テンであるとする説が存在するほど、テンは樹上での活動が多い動物です。
そのため、樹木の多い森林を主な生息地としますが、樹木があれば人家周辺にも出現し、人家や神社の屋根裏や納屋などを出産、子育てに利用することも多いです。

対策と課題

イタチとテンによる被害を防ぐためには、適切な防護策が必要です。
対策としては、例えば野地板の隙間や基礎の通気口などの侵入経路に目の細かな網を設置すること、果樹園の周囲を取り囲むようにネットを張って侵入を防ぐ事などが挙げられます。
しかし、これらの対策には多大な手間と費用がかかるため、すべての害獣被害者がこれを実施できるわけではなく、
繁殖力の強いイタチやテンは一度に多くの子供を産むため、個体数をコントロールすることも不可能と言ってよいでしょう。
効率的で確実な駆除・対策を目指すのであれば、やはり専門の駆除業者に相談するなどの方法が無難です。
いずれにせよ害獣被害が疑われる場合は、早めに対策を取ることが望ましいのは確かです。

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害獣被害にも色々あるのね‥。
今はまだ敷地内に出入りされるだけだけど、家の中に入られたらたまったもんじゃないわ!
そういえば、この前母親が家庭菜園で育ててる野菜が食べられてたって言ってたわね。もしかして……?

見分け方

適切な害獣対策をとる上では、その害獣の生態や習性を理解することが欠かせません。
しかし、害獣被害の多くのケースでは糞や建物の損傷といった存在の痕跡のみが発見され、害獣そのものの姿を間近で確認できない事が少なくありません。
そこで、残された痕跡から害獣被害の犯人を見分ける方法を以下にご紹介します。
今回はイタチやテンだけでなく、外見が似ているハクビシンやイイズナも併せて見ていきましょう。

イタチ

テン

ハクビシン

イイズナ

イタチ、テン、イイズナ、ハクビシンはとても似ていますが、足跡、外見、鳴き声、頻出エリア、行動パターンなどの特徴で区別することができます。

足跡

  • イタチ:約2〜3cmほどの大きさで、5本指と細長い爪の跡も残ります。
  • テン:イタチに似ていますが、ひと回り大きな約3〜4cmほどの大きさで、体重が重い分クッキリ跡が残ります。
  • イイズナ:イタチよりもさらに小さい約1〜2cmほどの細長い形状をした足跡を残します。
  • ハクビシン:前足は約4〜5cmほどですが、後ろ足の足跡は約7〜9cmにもなります。他の動物よりも手のひらに相当する部分が大きいのも特徴です。

外見

  • イタチ:個体差が大きいものの基本的に茶褐色〜赤褐色の毛色をしており、顔から鼻先にかけて濃褐色の模様があります。テンに比べると頭から首にかけてのラインがスマートです。
  • テン:キテンと呼ばれるタイプの個体は、冬では全身が黄色で頭部が白色、夏になると全身が褐色で頭部と四肢が黒色になります。一方、スステンと呼ばれるタイプの個体は夏毛のキテンとほぼ同じ外見で、一年を通して毛色が変わりません。
  • イイズナ:イタチに似ていますが、細身で尾が長く、耳が大きいのが特徴です。夏は背側が茶色で腹側が白色になりますが、冬は全身真っ白になります。
  • ハクビシン:全体的に灰褐色で、顔と四肢の下部は黒褐色です。額から鼻にかけての中央部に白い線状の模様があるのが最大の特徴です。

鳴き声

  • イタチ:威嚇時には「ギッギー」という高い鳴き声を発します。
  • テン:「フィヤフィヤ」や「ギュゥギュギュ」の他に、威嚇時は「ヴーーーッ」という猫のような唸り声を出します。
  • イイズナ:非常に高い音で「キュン」と瞬発的に鳴きます。鳥の鳴き声によく似ています。
  • ハクビシン:「キューキュー」や「キーキー」といった高い声で鳴きます。

頻出エリア

  • イタチ:山岳地帯や田園地帯の水辺に多く生息していますが、チョウセンイタチは市街地へも進出する傾向にあります。
  • テン:、平地の森林や水場などを中心に、日本全域に生息しています。
  • イイズナ:山地や森林に生息しており、冷涼な地域を好みます。
  • ハクビシン:山間部にも生息しますが、人里近い場所の樹洞や、人家の屋根裏、倉庫などを寝ぐらにします。

行動パターン

  • イタチ:足の指の間には蹼(みずかき)があるため、泳ぎが非常に得意で、真冬にも川や池に入って魚を捕獲します。
  • テン:警戒心が強く、頻繁に目蔭(まかげ)呼ばれる後ろ足で2本足立ちして周囲を見回す行動をとります。
  • イイズナ:体格に反して気性が荒く、動きは俊敏です。小鳥や昆虫、両生類、さらには動物の死骸も食べます。
  • ハクビシン:餌場となる畑や果樹園を見つけると、毎晩同じルートを辿って侵入するので、草むらに獣道状の痕跡ができます。

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なるほど…。足跡や鳴き声から判別する方法もあるのね!
実家は築年数がかなり経ってるから、動物が侵入できる隙間とかも結構ありそうなのよね。
一人暮らしの母親も心配だし、早めに対策しようかしら?

さいごに…

解説はこれで以上となります。
これで貴方も、イタチとテンの違いを説明できる数少ない知識人の一人です。
イタチやテンによる害獣被害に遭ってしまう事があったら、今回身につけた知識を存分に活かして対処できるでしょう。
当サイトでは、他にも駆除方法や業者選びのコツについても詳しく解説しておりますので、そちらも是非ご覧頂けますと幸いです。

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