もともとは日本に生息していなかったアライグマですが、人間の都合によって大量輸入された結果、現在は日本の生態系に多大な影響をおよぼす恐れのある「特定外来生物」に指定されています。
その被害は多岐にわたり、放置するほどに被害は拡大していくでしょう。
この記事では、アライグマが引き起こす被害の内容や、その対処法について解説します。
無許可で捕獲・駆除することは法律により禁止されているため、然るべき方法でその被害を防ぎましょう。
目次
アライグマによる主な被害について
本章では、アライグマがもたらす被害内容についてご紹介します。
アライグマはもともと北米原産の動物で、日本には生息していませんでした。
しかし、メディアの影響などで日本へ大量に輸入され「飼いきれない」「逃げ出した」という理由から野生化し、日本でも繁殖し続けています。
「日本には天敵がほぼ存在しない」「雑食で繁殖力が強い」ということから現在は日本の各地域で生息が確認されており、人々の生活に多大な影響をおよびす害獣として認識されています。
放置するほど被害は拡大するため、お住まいの敷地内で存在を確認した場合は、早急に対処を講じるようにしましょう。
病気などの感染被害
野生動物は、その身体にさまざまなウィルスや寄生虫が付着しています。
そのため、触れる・攻撃され傷を負うことで、菌などが体内に侵入する可能性があるでしょう。
症状の具合は人によって程度が異なる場合もありますが、なかには狂犬病のように「発症すれば100%死に至る」といった取り返しのつかない病気も存在するため、野生動物への接触は極力避けるべきといえるでしょう。
家屋をねぐらにされることへの健康・建物への被害
アライグマは、自然界だけでなく人々の生活圏内にも侵入し、天井裏・屋根裏・床下など家屋にも棲みつく恐れがあります。
もしお住いの建物をねぐらとされた場合は「意図せぬ遭遇による咬傷・掻傷被害」「騒音問題」「糞尿による健康被害」「糞尿による建物の劣化(腐食)」など、さまざまな問題を引き起こすケースがあるでしょう。
一度ねぐら(餌が豊富にある)と認定されると、アライグマはなかなかその場所から退くことがないため、被害が広がる前に適切な対処を取らなくてはいけません。
農業・水産業・畜産などの被害
アライグマは雑食であり、野菜・果物・魚介類・家畜など、餌となり得るものはなんでも口にする傾向があります。
そのため、農業・水産業・畜産など、それぞれを生業としている方にとって深刻な被害をもたらしています。
農林水産省の調査によると、2021年度のアライグマによる農作物の被害額は「4億1400万円」とされており、5年間で2割増加しているといわれています。
加えて、もし家畜に被害がおよんだ場合は「家畜に感染する病原体」を有していることがあるため、人々への健康被害が広がらないよう注意しなければいけません。
アライグマによる農作物への被害は、農業として営んでいる方はもちろん、家庭菜園をされている方も対象です。
いずれにせよ、被害が拡大する前に、早急な対処が必要といえるでしょう。
日本の生態系におけるバランス崩壊
アライグマはもともと日本には生息していない「外来種」であり、現在は「特定外来生物」に認定されています。
「日本に生息していなかった生き物が繁殖する」ということは、言い方を変えると「生態系のバランスが崩壊する恐れがある」といえます。
もともとは人間の欲により日本に輸入・繁殖されたものとはいえ、その被害を放置しておくわけにはいきません。
そのため、さまざまな観点から見て、アライグマへの被害は放置できないものといえます。
アライグマによる被害を防ぐ方法とは?
人の都合によって日本で野生化・繁殖したため、アライグマにその罪はありません(アライグマも生きていくために必死といえる)。
とはいえ、今を生きる人々にとってさまざまな被害をもたらすため、被害を放置することもできません。
本章では、アライグマによる被害を防ぐ方法についてご紹介します。
なお、害獣の被害を素人が完全に対処しきることは難しいため、被害を危惧される方は早めに害獣駆除の専門業者に相談することをおすすめします。
結論:「ねぐら」を作らせない
アライグマによる被害を抑える・無くすためのもっとも有効な策は「ねぐら(住処)を作らせない」ことです。
これは、アライグマだけでなくその他の害獣・害虫も同様です。
「ねぐら=生き物にとって安心して過ごせる場所」であり、害獣は天井裏・屋根裏・床下などにねぐらを作る傾向にあります。
ここで子どもを産み、餌を持ち帰り・食べ、糞尿をするといった生活をおこなうため「ねぐらを作らせない」「ねぐらをつぶす」ことが被害防止につながるといえるでしょう。
アライグマの場合は、農作物など餌場に近づくための場所をいくつか作り、それぞれを転々と移動しながら行動します。
また、以下のような特徴も挙げられます。
- 夜間に活動することが多いため、夜中に天井裏などを徘徊され騒音問題となる
- 糞尿による悪臭被害を受ける(溜め糞をする習性があるため要注意)
- 一度ねぐらにされると、なかなか退かない
- 餌場が豊富にあるほど、活動エリアが狭くなる
一度ねぐらとして認識されると、どんどん個体数を増やし被害が拡大していくため、できるだけ早めに対処することが望ましいといえます。
隙間を徹底的にふさぐ
アライグマは10cm程度の隙間があれば侵入できてしまうため、侵入経路となりそうな隙間を徹底的にふさぐことが重要です。
まずは、ねどことなりそうな場所を把握し、その周辺の通気口や通風口など侵入経路となりそうな場所に「隙間がないか?」を確認することからはじめてみましょう。
隙間をふさぐ場合は、網目の細かい金網などを利用します。
また、木登りが得意なため、建物の近く木の枝が伸びているような箇所があれば、剪定し入りにくくするのも効果的といえます。
屋根裏などに棲みつく害獣向けの対策グッズとして、屋根裏まで登りにくくするための有刺鉄板やアライグマの嫌うニオイがついたシートなども販売されています。
こういった対策グッズを利用するのもおすすめです。
なお、アライグマは前足が器用で、窓やドアなどを自力で開けて侵入することもできるため、気になる方は鍵をかけて入れないようにするのもよいでしょう。
とくに外出時など人気がなくなるときは要注意といえます。
餌となるものを与えない
雑食性であるアライグマは、野菜・果実・昆虫・魚・肉などはもちろん、生ごみでも口にします。
それら餌となり得るものを極力表に出したままにせず、簡単に取られないように工夫することが大切です。
工夫としては、たとえば以下が挙げられます。
- 食品類は表に出しっぱなしにせず、袋に入っているものは容器に詰める
- 生ごみのふたを開けて中身を漁ることがあるため、ふたに鍵をかけたり重しを乗せる
- 農作物を育てる際に、生ごみや廃棄する野菜・果実を肥料代わりにせず、適切に処理する
- 掃除を徹底し、衛生管理を怠らない など
警戒心の薄いアライグマとはいえ「餌となるものが見つからない」「掃除が徹底されていて餌を簡単に入手できない」となれば、警戒して利用しなくなります。
餌が豊富にある場所に居座りつく習性があり、棲みつかれるとすぐに被害が大きくなるため、日ごろから徹底した衛生管理をおこなうことを意識してみましょう。
電気柵を効果的に設置する
木登りが得意なアライグマですが、実は侵入の際に「登る」という行動の優先度は低めであることが調査で判明しています。
「入りやすい隙間を探す」→「破けそうなら破く」→「それでもダメなら登って侵入口を探す」といった行動パターンをしているようです。
このことから、柵の設置は有効な一手とされています。
柵を設置する際は「電気柵」と「金網柵」を複合的に活用するとよいでしょう。
感電させることができれば、アライグマにとって「不快かつ侵入できない場所である」と警戒させることができます。
また、柵の設置時には以下の点に注意しておきましょう。
- 隙間を生じさせないこと
- 目合が細かいものを使うこと(10cm程度だと侵入されるため、5~8cm以下が望ましい)
- 破けない素材を利用すること など
また、雑草はアライグマの隠れ場所の一つとなり得るため、庭や農地の雑草管理は徹底しておいたほうがよいでしょう。
アライグマの被害は増加傾向にある
アライグマによる2022年度の全国の農作物被害は「5億円」と発表されており、上述で記載した2021年度の「4億1400万円」よりもさらに被害が増加しています。
また、近年は都市部にも出没・人々が住まう建物を住処とするケースも多く、農業以外にも深刻な影響を与えています。
このことから、自治体単位で対策を進めるところが増加傾向にあり、市や町を通じて罠を貸し出したり・交付金を支給するケースもあるようです。
ただし、対応可能な範囲・対応の可不可は自治体によって異なるため、詳細はお住いの自治体のホームページなどを確認してみましょう。
アライグマの捕獲や駆除は自治体の許可が必要となるため、見つけた場合は速やかに自治体に通報することも重要です。
心配な方は早めに業者に相談しよう!
アライグマが入り込めないよう対策を講じることは誰にでも可能ですが、法律によって守られているため、許可なく駆除や捕獲はできません。
万が一建物などに入り込まれた場合、基本的には「追い出す」ことしかできず、不用意な接触は病気の原因になり得るため避けるべきです。
また、害獣の侵入経路の特定・封鎖・清掃・消毒などを素人が対処しきるには手間と費用がかかるうえにリスクも高いため、侵入された場合は被害が大きくなる前に専門業者に相談したほうがよいといえるでしょう。
アフターサービスが充実しているところであれば、万が一再発した際にも安心できます。
複数の業者に相談・見積もりを依頼し、費用・サービス内容ともに納得のいく業者に対応を依頼しましょう。
まとめ
アライグマに限らず害獣・害獣の対策は「侵入させないこと」が重要であり、万が一侵入を許してしまった場合は早めに然るべき場所に相談にいきましょう。
侵入させないための方法は多様に存在し、捕獲・駆除をおこなってくれる専門業者も全国各地に存在します。
「多少の被害なら仕方ない」「しばらく様子をみよう」と放置していると被害がどんどん拡大するため、安易に判断せず自治体や専門業者に相談することをおすすめします。
コメント