マダニに刺された覚えがあり、数日後に高い熱が出た。
病院に行くべきか、風邪のように様子を見てよいのか。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)を疑う場面で迷いやすいのは、この最初の判断です。
先に要点を3つ示します。
- 国内で承認された治療薬があります。ただし入院して投与する薬で、誰にでも処方されるわけではありません。
- 回復の見通しには個人差があり、年齢や持病、受診時の重さで経過が分かれます。
- 発症から数日で急に悪化することがあるため、自然に治るのを待たず早めに受診してください。
この記事の内容は、2026年10月時点で公開されている厚生労働省のSFTSに関するQ&A、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に掲載されているアビガン錠200mgの電子添文(医療者向けの正式な説明書)と適正使用資材を参照して書いています。
1. SFTSの治療は治療薬と支持療法で行う

SFTSの治療は、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」、体の働きを支える「支持療法」、重症例で検討される「追加治療」の3つに分けると全体像がつかめます。
支持療法とは、病気そのものを直接治すのではなく、水分や臓器の働きを保ちながら体が回復する条件を整える治療のことです。
| 区分 | 役割 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 抗ウイルス薬 | ウイルスの増殖を抑える | ファビピラビル(アビガン)を入院管理のもとで投与 |
| 支持療法 | 体の機能を保ち回復を助ける | 点滴による水分補給、血液検査による経過観察、合併症の治療 |
| 重症例の追加治療 | 合併症や臓器の働きを補う | 腎臓の働きを補う血液浄化、合併症に応じたステロイド、血漿交換の検討 |
厚生労働省のQ&Aは、治療の詳細を診療の手引き2025年版に委ねています。
手引きは入院中の全身管理を基本に、抗ウイルス薬を病状に応じて検討する構成になっています。
症状や感染経路そのものは、以下の関連記事にまとめています。
- 関連記事:SFTSの症状・感染経路と予防の基本
- 参考:厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」SFTSの治療方法に関する公的情報
- 参考:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」2025年版診療の手引きに示された治療方針
1−1. 国内で承認された治療薬アビガン(ファビピラビル)
ファビピラビル(アビガン錠200mg)は、世界で初めてのSFTS治療薬です。
2024年6月24日にSFTSウイルス感染症への効能追加が承認されました。
もともと新型インフルエンザ用に承認されていた薬です。
愛媛大学などが参加した国内の臨床試験を経て、SFTSにも使えるようになりました。
国内では患者数が少なく、くじ引きのように治療を割り付ける大規模な比較試験を組めませんでした。
そのため国内試験は、過去の患者を比較対象とする方法で実施されました。
この事情は、1−3で説明する研究結果の読み方にもそのままつながります。
- 参考:厚生労働省「ファビピラビル製剤の効能追加に係る留意事項について」(2024年6月24日付通知)ファビピラビルのSFTSへの効能追加と使用上の留意事項
- 参考:「アビガン錠200mg 電子添文」(2024年8月改訂 第3版・本記事で参照した版)PMDAに掲載された現行の電子添文
1−2. アビガンの投与条件と副作用・妊娠の注意点
承認は「この薬をSFTSに使ってよい」と国が認めたことを意味します。
目の前の患者に投与するかどうかは、担当医が個別に判断します。
アビガンは、重い感染症を診る体制が整った医療機関で、十分な知識を持つ医師のもと、入院して投与する薬です。
投与前には、本人または家族への文書による説明と同意が必要です。
処方する医師には、事前登録などの要件があります。
自宅で自己判断して飲む薬ではなく、診療所で気軽に出してもらえる薬でもありません。
成人の投与期間は10日間です。
初日は1回1,800mgを1日2回、2日目から10日目は1回800mgを1日2回と定められています。
参照した電子添文と適正使用資材には、次の注意が記載されています。
- 妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しません。動物実験で初期の胚が死ぬことや胎児の奇形が確認されているためです。
- 妊娠する可能性のある女性は、投与前の妊娠検査で陰性を確認してから投与を始めます。投与期間中と投与終了後10日間は、パートナーとともに極めて有効な避妊法を徹底します。
- 薬の成分は精液中にも移行します。ただし、2024年6月の承認審査で精液を介した胚・胎児へのリスクが評価されており、現行の電子添文では男性患者に対するコンドーム着用や妊婦との性交渉回避の指示は設けられていません。性交渉に関して注意が必要かどうかは、投与前の説明の場で担当医・薬剤師に確認してください。
- 主な副作用として、血液中の尿酸値の上昇、肝機能の数値の上昇、下痢などが挙げられています。
妊娠の可能性、授乳中かどうか、痛風や肝臓の病気の有無は投与の判断に関わるため、受診時に必ず伝えてください。
- 参考:「アビガン錠200mg 電子添文」(2024年8月改訂 第3版・本記事で参照した版)アビガンの投与条件・禁忌・副作用
- 参考:富士フイルム富山化学「アビガン錠を適正にご使用いただくために<重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染症>」(PMDA掲載)入院管理下での投与と文書同意に関する適正使用資材
- 参考:厚生労働省「第17回 医薬品等行政評価・監視委員会」効能追加時に男性患者の避妊に関する注意喚起が見直された経緯
1−3. アビガンの治療効果と研究結果の限界
国内試験では、アビガンを使った患者の死亡割合は、過去の支持療法のみの患者より低い結果でした。
しかし少人数で過去の患者と比較した研究のため、死亡を減らす効果は確定していません。
承認はこの試験を踏まえたものですが、承認の有無と研究で確認できた効果の範囲は分けて受け止める必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出典 | Saijo Mほか19名(著者総数20名)「Efficacy of favipiravir treatment for patients with severe fever with thrombocytopenia syndrome assessed with a historical control」Antimicrobial Agents and Chemotherapy 69巻12号 e01062-25(2025年10月17日オンライン公開、号の日付2025年12月10日)表2 |
| 比べた人数 | 年齢や重症度などの背景を統計的にそろえた各23人(投与例30人のうちSFTS陽性が確認された治療群23人と、過去の支持療法群78人から組み合わせを抽出) |
| 亡くなった人 | アビガン群3人(13.0%)、過去の支持療法群6人(26.1%) |
| 死亡リスク比 | 0.500(95%信頼区間0.142〜1.762) |
| 主な制約 | 少人数、治療をくじ引きで割り付けていない、過去の患者との比較、治療群は20歳以上85歳未満で定期透析患者などを除外(過去の支持療法群は20歳以上を対象とし、同じ除外基準は適用されていない) |
95%信頼区間は推定のぶれ幅です。
この範囲が「差がない」を示す1をまたいでいるため、偶然の差である可能性が否定できません。
研究上の死亡割合を「自分が治る確率」に置き換えることはできません。
85歳以上の人や透析患者など治療群の対象外だった人に、結果をどこまで当てはめられるかも確定していません。
- 参考:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」ファビピラビルの臨床研究と対象患者の条件
- 参考:「アビガン錠200mg 電子添文」(2024年8月改訂 第3版)承認資料に記載された国内試験の臨床成績
- 参考:愛媛大学「SFTS治療薬ファビピラビルの承認について」臨床試験から承認までの経緯
- 参考:Antimicrobial Agents and Chemotherapy掲載論文(DOI: 10.1128/aac.01062-25)傾向スコアで背景を合わせた国内試験の解析
1−4. 入院中の支持療法(輸液・全身管理・合併症対応)
診療の手引き2025年版では、重症例を敗血症(感染をきっかけに全身の臓器が傷む状態)に準じて全身管理するとしています。
治療薬を使うかどうかにかかわらず、入院中はこの支持療法が治療の基本になります。
- 水分と循環を保つ:発熱や下痢で失われた水分を点滴(輸液)で補います。
- 悪化を早く見つける:血球数、血液の固まりやすさ、肝機能などを繰り返し検査します。
- 合併症を治す:細菌やカビによる二次感染には抗菌薬・抗真菌薬を使います。
- 臓器の働きを補う:腎臓の働きが落ちた場合は、脱水などによるものならまず輸液で対応し、無尿が続くなど必要と判断されれば、機械で血液をきれいにする治療(血液浄化)を検討します。
「治療薬の対象にならなければ何もできない」わけではなく、こうした管理そのものが回復の条件を整えます。
- 参考:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」入院中の全身管理と合併症への治療
1−5. 重症例のステロイド・血漿交換と効果の限界
ステロイドは一律に使う薬ではなく、免疫の暴走で血液細胞が壊される状態(血球貪食症候群)などの合併症が起きたときに検討されます。
Kutsuna Sほかは、国内の入院記録(DPCデータ)を用いた研究を行いました(Journal of Infection and Chemotherapy 29巻5号490〜494ページ、2023年)。
この研究では、2013年4月〜2021年3月に入院した412例を対象としています。
そのうち、入院3日以内に大量のステロイドを短期間使った66例と、3日以内には使わなかった346例を比べました。
背景の偏りを統計的に調整した院内死亡割合は、使った群31.1%、使わなかった群20.5%です。
早期の一律使用を支持しない結果です。
ただし、記録を振り返った観察研究であり、特定の合併症への投与まで常に有害だと証明したものではありません。
血液の液体成分を入れ替える治療(血漿交換)は、根拠が症例報告や観察研究にとどまります。
腎機能を補う目的の血液浄化と、SFTSの経過改善を期待する血漿交換は別の治療です。
前者は腎障害の原因や重さに応じて適応を判断して行う対応で、後者は効果が確立していない選択肢に位置づけられます。
- 参考:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」ステロイドと血漿交換の位置付け
- 参考:Kutsuna S, Ohbe H, Matsui H, et al.「Steroid pulse therapy for severe fever with thrombocytopenia syndrome patients may not improve prognosis」J Infect Chemother 2023;29(5):490-494国内入院データを用いたステロイドパルス療法の研究
2. SFTSは治る?回復の見通しと期間

SFTSは治る人もいますが、重症化して亡くなる人もいます。
見通しは年齢や持病、病状によって大きく異なります。
回復の見通しは人によって違い、研究の数字だけで本人が治る確率を判断することはできません。
受診の早さや入院中の管理によっても経過は分かれます。
2−1. 回復の見通しは年齢・基礎疾患・重症度で異なる
回復しにくいのは、高齢の人、持病のある人、受診時にすでに意識障害や出血しやすい状態が出ている人です。
厚生労働省のQ&Aや診療の手引き2025年版でも、高齢が死亡の危険因子と考えられると説明されています。
国内で広く引用される「致命率27%」は、2013〜2017年の届出303例のうち詳細情報を集めた133例を調べた研究の数値です。
治療薬が承認される前の特定集団の結果です。
現在の患者個人の死亡確率や、受診しなかった人が自然に治る割合を示す数字ではありません。
なお、国立健康危機管理研究機構の届出概要は、届出時点の生死を集計したものです。
その後の経過を追った研究とは指標が異なります。
- 参考:厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」年齢と重症化に関する公的な説明
- 参考:Emerging Infectious Diseases 2020年4月号掲載論文(米国疾病対策センター)致命率27%の根拠となった国内詳細調査
- 参考:国立健康危機管理研究機構「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)届出概要」(2026年7月31日)届出時点の死亡例を集計した最新の届出概要
2−2. 薬の投与期間と退院・日常生活への復帰は別
アビガンの投与期間10日間は「薬を飲む期間」であって、「治るまでの期間」ではありません。
診療の手引き2025年版の症例では、点滴や解熱薬で自然回復した80代女性が第14病日に退院しました。
一方で、ファビピラビルと集中治療を受けた70代女性は、第36病日にリハビリ目的で転院しました。
どちらも個別の経過であり、平均や標準の回復期間ではありません。
退院の時期は、血小板数や肝機能などの検査値の回復と、食事や歩行の状態を見て決まります。
仕事や農作業への復帰時期も人によって異なるため、退院前に担当医へ確認しておくと無理な再開を避けられます。
- 参考:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」回復・退院・リハビリ転院の症例経過
- 参考:「アビガン錠200mg 電子添文」(2024年8月改訂 第3版)SFTSに対するアビガンの投与期間
3. SFTSを疑う場合の受診と治療中の相談

野外活動のあとに発熱や下痢、だるさが出たら、その日のうちに受診してください。
意識がもうろうとする、急に息が苦しいといった重い症状があれば、受診予約ではなく119番です。
3−1. 発熱・体調不良は早めに受診、意識障害や呼吸困難は119番
マダニに刺されてから発症までは、6日〜2週間ほどが一般的です。
しかし刺された自覚がない人も多く、この期間に当てはまらないことは受診を控える理由にはなりません。
総務省消防庁の救急車利用に関する資料は、ためらわず救急車を呼ぶべき症状として次を挙げています。
- 意識がない、もうろうとしている
- 急な呼吸困難
- けいれんが止まらない、止まっても意識が戻らない
- 吐血、血便、黒色便
これは一般的な救急の基準ですが、SFTSを疑う場面にもそのまま当てはまります。
これらの症状があれば、診断の確定や通常の受診予約を待たず119番につないでください。
- 参考:厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」SFTSが疑われる症状と受診の必要性
- 参考:総務省消防庁「救急車利用リーフレット」ためらわず救急車を呼んでほしい症状
3−2. 受診時に伝える情報と診断・入院の判断
受診時には、次の情報をメモにして持参すると診断の参考になります。
- 発熱などが始まった日
- 直近2週間の野外活動(草刈り、山歩き、農作業など)の日付と場所
- マダニに刺された痕の有無と場所
- 犬や猫、野生動物の血液・体液・排泄物に触れた経験(体調の悪い猫との接触を含む)
確定診断にはウイルス学的検査が必要です。
医療機関が保健所に相談し、地方衛生研究所などの検査機関にウイルスの遺伝子検査や抗体検査などを依頼します。
結果が出るまでの時間は、依頼先や検査・搬送の体制によって異なるため、受診した医療機関で確認してください。
アビガンを処方できるのは、要件を満たした施設・医師に限られます。
そのため、最初に受診した医療機関から、治療薬の投与や全身管理に対応できる病院への転院・搬送が検討される場合があります。
- 関連記事:猫のSFTSの症状と受診の目安、人への感染を防ぐには
- 参考:厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」SFTSの診断に必要な検査と接触歴
- 参考:富士フイルム富山化学「アビガン錠を適正にご使用いただくために<重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染症>」(PMDA掲載)処方に必要な施設・医師の要件
3−3. 患者や家族が担当医に確認したいこと
入院が決まると、家族は何を聞けばよいか分からないまま時間が過ぎがちです。
次の質問を手元に用意しておくと、担当医との話が整理されます。
- 治療薬(アビガン)の投与対象になるか、ならない場合はその理由
- 投与する場合に想定される副作用と、妊娠・避妊に関する注意
- 入院期間の見込みと、退院の目安になる検査項目
- 家族が付き添う際、血液や体液に触れないための具体的な注意
厚生労働省のQ&Aは、患者の血液や体液との接触で人から人へ感染した事例に触れています。
看病で感染しないよう、手袋やマスクの使い方は病院の指示に従って確認してください。
- 参考:厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」患者の血液・体液への接触に関する注意
4. SFTSの治療に関するよくある質問
治療について迷いが生じやすい「自然に治るか」「検査前に治療できるか」「古い情報との食い違い」の3点に絞って答えます。
マダニの刺咬や予防の一般的な質問は、冒頭の関連記事に委ねます。
4−1. SFTSは自然治癒しますか?自宅で様子を見てもよい?
自然に治る例はありますが、自宅で様子を見続ける根拠にはなりません。
診療の手引き2025年版に載っている点滴や解熱薬のみで回復した例も、医療機関で経過を観察されていた患者です。
血小板の減少や肝機能の悪化を確認するには、血液検査が必要です。
意識障害や呼吸困難などの警告症状が出る前の段階で、重症化しないと自宅で安全に判断することはできません。
手引きは、確定例や高齢・持病のある疑い例では入院治療が望ましいとしています。
「若いから」「元気だから」は、様子見を続ける理由になりません。
- 参考:「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」自然回復例と医療機関での経過観察・入院の方針
4−2. SFTSは検査結果が出る前に治療できますか?
点滴などの支持療法は、検査結果を待たずに始まります。
アビガンの開始時期も患者ごとに医師が判断するため、検査結果を必ず待つわけではありません。
適正使用資材では、診断確定までの期間などを踏まえて開始時期を個別に判断するとしています。
一方で、行政検査を行う予定のない人や、陰性が判明した人は投与の対象外です。
「疑わしければ誰でもすぐ投与」ではなく、検査を前提にしたうえで、結果を待つ間に病状が進みそうかどうかを医師が見極める仕組みです。
- 参考:富士フイルム富山化学「アビガン錠を適正にご使用いただくために<重症熱性血小板減少症候群ウイルス感染症>」(PMDA掲載)診断確定までの期間を踏まえた治療薬の開始判断
4−3. 「SFTSに治療薬はない」という情報を見かけたのですが?
2024年6月24日の承認前に書かれた情報である可能性が高く、現在は更新が必要な説明です。
見分け方は次の2つです。
- 記事の更新日が2024年6月より前かどうかを確認する
- 厚生労働省の承認通知や、2025年11月に改訂された診療の手引き2025年版と照らし合わせる
手引きの改訂と同時にQ&Aも更新されているため、公的資料のほうが民間の解説より新しい状態になっていることがあります。
- 参考:厚生労働省「ファビピラビル製剤の効能追加に係る留意事項について」(2024年6月24日付通知)2024年6月24日付の効能追加に関する通知
- 参考:厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引きの改訂等について」(2025年11月25日付事務連絡)2025年11月の手引き改訂とQ&A更新の周知
5. 体の症状は医療機関へ、庭や屋根裏の動物の気配は協会へ相談

体に症状があるなら医療機関、建物や庭に動物の気配があるなら当協会の無料相談が窓口です。
SFTSウイルスを運ぶマダニは野生動物とともに移動するため、住まいの周りの動物の気配が不安につながりやすいものです。
ただし、その不安をどこへ持ち込むかで取るべき行動が変わります。
5−1. マダニを運ぶ野生動物と住まいの周りの環境
野生動物にはマダニが寄生することがあり、動物の移動とともにマダニも移動します。
農林水産省の2025年7月10日付研修資料では、農研機構の専門家がアライグマなどの中型獣による被害とその対策を解説しています。
こうした動物が農地や家屋の周りに近づくことに伴うマダニのリスクも、関心を集めています。
ただし、この資料は個別の住宅でマダニの持ち込みや感染が起きたことを証明するものではありません。
ハクビシンなど動物種ごとに寄生状況や役割は異なり、アライグマと同じ危険因子だと断定はできません。
IASR 2026年6月号の茨城県報告も、野生イノシシや犬猫でのウイルス浸潤状況を「ヒトのSFTS患者発生において有用な指標」と位置づけています。
その結果は地域全体への注意喚起に用いられており、庭や屋根裏に動物の気配があるというだけで感染源や感染の有無を判定することはできません。
- 関連記事:ハクビシンとは?生態・害獣被害・今すぐできる対策を専門協会が解説
- 関連記事:特定外来生物に分類される「アライグマ」とは?外来生物法や被害内容を解説!
- 参考:森林総合研究所プレスリリース(2025年4月8日)野生動物とマダニ、人の活動域の関係
- 参考:Journal of Veterinary Medical Science掲載論文(2022年)アライグマとSFTSウイルスの関係に関する研究
- 参考:農林水産省「鳥獣被害対策研修資料」(2025年7月10日)中型獣が生活圏へマダニを運ぶリスクの説明
- 参考:IASR 2026年6月号 茨城県報告(国立健康危機管理研究機構)動物調査を地域の注意喚起に用いた事例
5−2. 相談先の使い分けと協会の無料相談でできること
相談先は「体のこと」と「建物・庭のこと」で分けます。
| 相談内容 | 相談先 |
|---|---|
| 発熱・体調不良、マダニや動物に咬まれた、感染が疑われる動物の血液・体液に触れた | 医療機関(緊急時は119番) |
| 屋根裏の物音、糞や足跡、動物のかじり跡、ノミやダニのような死骸、侵入被害 | 一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会の無料相談 |
当協会(一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会)は、害獣・害虫・害鳥に関する無料電話相談を0120-539-775で受け付けています。
受付は9:00〜18:00で平日・土日祝日とも対応し、通話無料・相談無料・匿名でも構いません。
対応地域は関東・中部・近畿・中国・四国・九州の各府県で、一部地域は対応に制限があります。
現地調査や施工が必要な場合は、事業者を紹介します。
- 対処方法
- 業者選び
- 害獣の特定

協会への相談は診断や治療の代わりにはなりません。
「駆除すれば感染の心配はなくなるのでは」と考えたくなりますが、環境対策で感染リスクが「ゼロになる」わけではありません。
愛媛県が公開した現地研究でも、殺虫剤散布で一時減ったマダニが数か月後には再び確認されています。
野生動物の侵入が続く場所では、完全な駆除は難しいとされています。
環境対策を行っても感染リスクをゼロにはできないため、症状や咬傷があれば相談より先に受診してください。
- 関連記事:ハクビシンに噛まれたらどうすればいい?応急処置の手順を解説
- 参考:害獣・害虫被害について協会へ相談する
- 参考:愛媛県掲載のマダニ対策に関する現地研究資料殺虫剤散布後のマダニ捕集数の推移
6. まとめ SFTSの治療は早期受診と担当医への相談が大切

この記事では、承認された治療薬アビガン、入院中の支持療法、個人差の大きい回復の見通し、早期受診の判断について整理しました。
そのうえで、次にとる行動を状況別に示します。
- 野外活動後に熱が出た人:発症日と活動歴をメモし、今日中に受診する。意識障害や呼吸困難、吐血があれば119番。
- 家族が入院した人:3−3の質問一覧を持参し、治療薬の対象かどうかと、看病時の感染対策を確認する。
- 古い情報を見つけた人:記事の更新日を確認し、2024年6月24日の承認通知と診療の手引き2025年版に照らす。
- 庭や屋根裏に動物の気配がある人:症状がなければ環境の相談として協会の無料相談へ。症状があれば受診を優先する。
治療薬を使うかどうかや回復の見通しは、研究結果の数字ではなく、担当医と自分の状態に照らして確認するものです。
記事情報
- 編集確認
- 一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会 編集部が、2026年10月に実施。
- 確認範囲
- 厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 2025年版」(2025年11月21日発行)の治療方針と症例経過の記載、PMDA掲載のアビガン錠200mg電子添文(2024年8月改訂 第3版)と適正使用資材、Saijo Mほか(2025)Antimicrobial Agents and Chemotherapy 69巻12号 e01062-25の表2、Kutsuna Sほか(2023)J Infect Chemother 29巻5号490〜494ページの要旨を照合。医師・薬剤師による医学的確認は実施していません。治療方針の個別判断は担当医の領域であり、本記事は医療上の判断を代替しません。
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