川で泳いだ10日後の高熱、浸水した倉庫を片づけた翌週の筋肉痛、厨房でネズミを捕まえたあとの悪寒。
レプトスピラ症は、感染したネズミや犬などの尿で汚染された水や土から、皮膚の傷や目・口の粘膜を通じてうつる細菌感染症です。
発症までに日数が空くため、原因となった場面と症状が結びつきにくい病気です。
本人の受診、犬の診療、家や店の環境対策は相談先が異なり、どれか一つを済ませても残りは解決しません。
1. レプトスピラ症とは?原因と感染経路

レプトスピラ症は、病原性レプトスピラという細菌が原因で起こる感染症です。
主なレプトスピラ症の感染経路は、保菌動物(体内に菌を持ち、尿に出している動物)の尿で汚染された水や土との接触で、人から人へうつることはまれです。
国立感染症研究所(現・国立健康危機管理研究機構)の病原微生物検出情報(IASR Vol.44、2023年2月号)によると、2016年1月から2022年10月末までの届出273例のうち257例が国内感染でした。
国内感染例の推定感染原因は水系感染が206例と最も多く、河川での遊びや労働のほか、ネズミとの接触、農作業、大雨後の汚染水による感染が報告されています。
過去の集計であり現在の発生状況を示すものではありませんが、水辺だけでなく家屋のネズミも感染源になる点は変わりません。
群馬県衛生環境研究所の案内(2025年4月11日更新)でも、県内の報告は家屋にいるネズミが原因と思われるものが大半とされています。
このことから、「川に入らなければ無縁」とは言えないことが分かります。
引用元:国内のレプトスピラ症の届出状況と推定感染原因(国立感染症研究所「レプトスピラ症の発生状況」IASR Vol.44 p29-30、2023年2月号、現・国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト掲載)
参考:群馬県衛生環境研究所「レプトスピラ症」(2025年4月11日更新)
1−1. 感染したネズミや犬の尿が感染源になる
感染源になるのは、保菌動物の腎臓にすみついた菌が尿と一緒に外へ出ることです。
ネズミは症状を出さないまま菌を排出し続けるため、見た目が元気なネズミでも尿は汚染源になり得ます。
見落とされやすいのが飼い犬です。
農林水産省動物検疫所の案内では、犬が感染した場合、完全に治療しないと尿の中に菌が長期間排泄されるとされています。
そのため、飼い主や他の動物にうつらないよう注意が必要とされています。
元気になったからと自己判断で投薬を中断すると、菌が残って尿への排出が続くおそれがあります。
そのため、投薬の期間、再診の時期、尿の扱いに関する注意をいつまで続けるかは獣医師の指示に従ってください。
犬の初期症状や受診を急ぐ目安は、別の記事で詳しく扱っています。
関連記事:犬のレプトスピラ症の症状と受診・予防のポイント
引用元:感染した犬の尿と飼い主への感染に関する注意(農林水産省動物検疫所「レプトスピラ症について」)
1−2. 傷口や目・口の粘膜から菌が侵入する
菌の侵入口は次の3つです。
- 皮膚の傷:擦り傷・切り傷のほか、水に長く浸かってふやけた皮膚
- 目・鼻・口の粘膜:汚染水が顔にかかる、目に入る
- 汚染された水や食品を飲み込む
英国保健安全保障庁の案内では、皮膚に傷がある場合に加え、水でふやけた皮膚も菌が通りやすくなると説明されています。
長時間の川遊びや水害後の作業で手足がふやけた状態は、目立つ傷がなくても注意が必要です。
「傷がなければ大丈夫」とも言えません。
2026年7月公表の八重山地域の届出集計では、河川接触があった症例のうち、傷があったと申告した患者が多くを占めていました。
一方で、傷の申告がない患者も含まれていました。
患者だけの集計なので、傷の有無による感染しやすさは比べられません。
しかし、傷があったと申告していない患者も含まれており、目立つ傷の有無だけでは感染を否定できないことが分かります。
参考:英国保健安全保障庁「Leptospirosis」
参考:沖縄県八重山保健所管内におけるレプトスピラ症患者の届出状況(2025年10月10日時点)(国立健康危機管理研究機構 IASR Vol.47、2026年7月号)
1−3. 川遊び・浸水後の清掃・農作業・ネズミの出る職場に注意
接触の場面として気をつけたいのは次の4つです。
- 川や滝での遊泳・水遊び:雨のあとは汚染された土が流れ込みます
- 水害後の清掃・片づけ:床上浸水した家屋の泥や滞留水
- 農作業:水田や畑の泥、用水路の水
- ネズミが出る職場での労働:厨房、食品倉庫、市場など
レプトスピラ症は、ネズミなどにかまれたり直接触れたりしなくても、保菌動物の尿で汚染された水や泥との接触で感染することがあります。
動物の姿を見ていなくても、尿の混じった水に入れば接触したのと同じです。
集団発生の実例として、沖縄県は2025年10月16日、石垣島内の同じ河川で遊泳した5人の発症を公表しました。
5人の属性や入院・回復といった経過の詳細は、県の公表資料に記載されています。
引用元:河川でのレジャーに関連した集団発生事例(沖縄県保健医療介護部地域保健課「レプトスピラ症の集団発生事例について」2025年10月16日)
2. 人のレプトスピラ症の症状と受診の目安

人のレプトスピラ症は、風邪のような症状で治まる軽症型から、黄疸・出血・腎障害を伴う重症型(ワイル病)まで幅があります。
初期の段階ではどちらに進むか見分けがつきません。
水・泥・動物との接触に心当たりがあれば発熱の段階で早めに受診し、黄疸・尿量の減少・息苦しさがある場合は、接触の心当たりがなくても速やかに受診してください。
| 段階 | 主な症状 | 時期の目安 | とるべき行動 |
|---|---|---|---|
| 潜伏期 | 無症状 | 国内資料では3〜14日程度(より広い幅を示す資料は6−4で説明) | 接触の日時・場所を記録しておく |
| 初期(軽症型を含む) | 高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、目の充血 | 発症から数日 | 接触に心当たりがあればそれを伝えて受診 |
| 重症化(ワイル病) | 黄疸、尿量の減少、出血傾向、息苦しさ | 発症後4〜6日目にみられることがあるが個人差あり | 心当たりの有無や日数にかかわらず速やかに受診。強い息苦しさや意識の異常は救急要請 |
参考:福島県衛生研究所(感染症情報センター)「レプトスピラ症Q&A」
2−1. 潜伏期間と発熱・頭痛・筋肉痛
高熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、目の充血が出たら、過去1か月程度に水・泥・動物に触れる機会がなかったかを思い出してください。
心当たりがある場合は、風邪と自己判断して受診を先延ばしにしないでください。
2026年7月公表の八重山地域の報告では、2025年の症例12例の集計で、感染から発病までの期間は中央値11日(範囲9〜14日)でした。
地域と症例数を限定した値ですが、接触から10日前後たってから発熱する例があることは分かります。
発熱時に「10日ほど前に川に入った」と思い出せるかどうかが診断の手がかりになるため、接触日時は記録しておく価値があります。
参考:八重山地域における2025年のレプトスピラ症症例の報告(国立健康危機管理研究機構 IASR Vol.47、2026年7月号)
2−2. 黄疸・尿量の減少・息苦しさは早急に受診する
次の症状が1つでもあれば、発症からの日数や接触の心当たりにかかわらず、速やかに医療機関へ連絡して受診してください。
- 皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
- 尿の量が明らかに減る
- 鼻血や皮下の出血が止まりにくい(出血傾向)
- 息苦しさ、咳に血が混じる
強い息苦しさや意識がはっきりしない状態は、外来の受付時間を待たずに119番で救急対応を求めてください。
黄疸や尿量の減少も翌日に回さず、その時点で医療機関に連絡します。
福島県衛生研究所のQ&Aでは、重症化すると発症後4〜6日目に黄疸、腎不全(腎臓が働かなくなる状態)、出血傾向などが現れるとされています。
米国CDCのイエローブックも、重症例の黄疸、腎不全、肺出血を含む出血、呼吸不全を挙げています。
出現時期には個人差があるため、「まだ3日目だから重症ではない」「1週間過ぎたからもう大丈夫」という日数での判断は成り立ちません。
引用元:重症化した場合の症状と注意すべき兆候(米国CDC「CDC Yellow Book: Leptospirosis」)
2−3. 尿や泥水に触れた後は洗浄し、接触歴を医師に伝える
尿や泥水に触れた直後は、流水と石けんでしっかり洗い流し、目や口に入った場合は水で十分にすすぎます。
そのうえで、日時・場所・何に触れたかを携帯電話のメモなどに残しておいてください。
沖縄県宮古保健所は、ネズミとの接触や畑作業など感染を疑う行動があって発熱・筋肉痛・目の充血・頭痛・嘔吐・下痢などがある場合は、速やかに受診してその行動を伝えるよう案内しています。
「9月20日に○○川で泳いだ」「浸水した倉庫の泥を素手で片づけた」と具体的に伝えられるかどうかで、診断までの道筋が変わります。
症状がない段階での検査や予防薬の要否は、6−3で整理します。
引用元:接触後の手洗いと症状がある場合の受診(沖縄県「レプトスピラ症(宮古保健所)」2024年3月13日更新)
3. レプトスピラ症の検査と治療

検査には、血液や尿から菌や遺伝子を見つける方法と、血液中の抗体(体が菌に反応して作る物質)を調べる方法があります。
治療は抗菌薬が中心です。
症状が発熱・頭痛・筋肉痛といったありふれたものであるため、医師がこの病気を疑うきっかけは、患者が伝える接触の状況に左右されます。
3−1. 血液・尿の検査で診断する
国立健康危機管理研究機構の感染症情報では、病原体診断は血液・髄液(脳と脊髄を包む液体)・尿からの菌の分離や遺伝子の検出、血清からの抗体検出によるとされています。
抗体は感染後しばらくしてから増えるため、発症直後の1回の採血では判定できず、日を空けて2回採血して比較することがあります。
つまり、検査を受けたその日に結果が出るとは限りません。
結果を待つ間に症状が進むこともあるため、次項のとおり医師が強く疑えば結果を待たずに治療を始める場合があります。
引用元:レプトスピラ症の病原体診断と治療の概要(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「レプトスピラ症」)
3−2. 抗菌薬治療と重症時の入院管理
治療の主体は抗菌薬で、厚生労働省検疫所(FORTH)の案内でも抗菌薬による治療が行われると示されています。
米国CDCの医療者向け資料(2026年6月2日更新)は、レプトスピラ症を強く疑う患者には検査結果を待たずに治療を開始するよう案内しています。
接触の状況と症状がそろえば、確定前に投薬が始まることもあります。
黄疸や腎障害、出血、呼吸の症状が出た重症例では、抗菌薬に加えて点滴、人工透析(腎臓の働きを機械で補う治療)、呼吸管理といった全身管理が必要です。
そのため、入院治療になります。
引用元:抗菌薬が治療の主体となること(厚生労働省検疫所FORTH「レプトスピラ症(ワイル病)」)
参考:米国CDC「Clinical Overview of Leptospirosis」(2026年6月2日更新)
4. レプトスピラ症の予防は尿や汚染水との接触を避ける

予防の原則は、保菌動物の尿と、尿で汚染された水・土に触れないことです。
国立健康危機管理研究機構の感染症情報提供サイトでは、人用に国内で承認されたワクチンはないとされています。
そのため、人の予防は服装・作業手順・環境整備といった行動面の対策が基本になります。
参考:国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「レプトスピラ症」予防法・ワクチン
4−1. 水・泥への接触を避け、傷の保護と手袋・長靴を徹底する
福島県の注意喚起ページでは、野外作業の際は肌を露出しない服装で手袋・長靴・ゴーグル(保護めがね)を着用し、作業後に手洗いをするよう案内されています。
場面別に整理すると次のとおりです。
- 雨のあとで増水・濁っている川、水害後の滞留水には入らない
- 擦り傷や切り傷があるときは川や滝での遊泳をやめる
- 避けられない作業では、傷を防水の絆創膏で覆い、ゴム手袋と長靴を着ける
- 大雨のあとの水たまりやぬかるみも汚染水として扱い、素足やサンダルで歩かない
- 川や泥に入ったあとは全身を洗い流し、手を洗う
水害後の片づけで見落とされがちなのが、長靴の中に水が入った状態で作業を続けることです。
皮膚がふやけ、靴の中で小さな傷ができ、汚染水に長時間浸かるという悪条件が重なります。
靴の中が濡れたら一度脱いで足を洗い、乾いたものに替えるだけでも接触の条件を減らせます。
引用元:汚染の可能性がある水に入らないための注意(福島県「レプトスピラ症に気をつけましょう!!」)
4−2. 尿やフンは素手で処理せず、洗浄剤を混ぜない
ネズミの尿やフン、巣の材料を見つけたときは、掃除機やほうきを使いません。
米国CDCのネズミの仲間による汚染の清掃指針(住宅・物置向け)に沿って、次の順番で処理します。
- 作業前に窓やドアを開けて30分換気し、その間は部屋を離れる
- 部屋に戻り、ゴム手袋またはプラスチック手袋を着ける
- 尿・フン・巣材に消毒剤を十分に吹きかけ、5分または製品の指定時間そのまま置く
- 紙タオルで拭き取り、袋に入れて密閉して捨てる
- 周囲の床や棚も消毒剤で清掃する
- 手袋を外す前に手袋のまま石けん水か消毒剤で洗い、外したあとに石けんと温水で手を洗う
この指針はネズミの仲間が運ぶ感染症全般を対象にしたもので、手の届く範囲の少量の汚染に向けた手順です。
天井裏など広範囲に及ぶ汚染や、安全に立ち入れない場所には一律に当てはめず、5章の相談先に切り替えてください。
消毒剤の対象や使い方は製品表示で確認します。
塩素系洗浄剤を使う場合は、他の洗浄剤と絶対に混ぜないでください。
国民生活センターは2026年3月18日、塩素系洗浄剤と酸性洗浄剤などの混用による塩素ガス事故について注意喚起し、単独使用・換気・保護具の着用を勧めています。
ガスが発生したらその場を離れ、吸い込んだ場合は医師に相談してください。
引用元:ネズミの排泄物を安全に処理する際の注意(米国CDC「How to Clean Up After Rodents」)
引用元:塩素系洗浄剤の単独使用と換気・保護具の注意(国民生活センター 2026年3月18日公表)
5. 感染予防のためのネズミ対策と相談先の分け方

レプトスピラ症への対応は「人の受診」「犬の診療」「環境の衛生対策」の3つに分かれ、それぞれ相談先が異なります。
どこに何を聞けるかを先に整理しておくと、発熱と家のネズミ問題を同じ窓口で解決しようとして時間を失うことを防げます。
| 相談内容 | 相談先 | 対応できる範囲 |
|---|---|---|
| 自分や家族の発熱・体調不良 | 医療機関(内科・感染症科) | 診断、検査、抗菌薬治療、入院の判断 |
| 飼い犬の体調不良・尿からの感染の心配 | 動物病院 | 犬の診断・治療、家庭内での注意点の指導 |
| 地域の感染症情報、食品の扱い、衛生面の助言 | 管轄の保健所 | 感染症・食品衛生・環境衛生に関する相談と助言。駆除や業者案内の対応範囲は自治体ごとに確認 |
| 住まい・店舗のネズミ被害と業者選び | 一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会の無料電話相談 | 被害状況の聞き取りと業者の紹介(詳細は5−3) |
5−1. 屋根裏・壁の物音やフンは衛生対策を相談する目安
ネズミなどの存在を疑う手がかりは、屋根裏や壁からのゴソゴソ・ガタガタという音、動物のフンや足跡、かじられた跡、悪臭といった観察できる痕跡です。
これらはネズミがいることの手がかりであって、そのネズミが菌を持っているかどうかまでは分かりません。
見た目やフン、足跡などの痕跡だけでは保菌の有無を判断できません。
そのため、「いるなら尿は汚染されているもの」として扱い、フンや尿の跡は4−2の手順で処理します。
次の状態なら自力対応にこだわらず、自治体の相談窓口や専門業者に相談する段階です。
- フンや物音が何週間も続き、量が増えている
- 天井裏や壁の内部など、手の届かない場所が汚れている
- 高所や狭所で、安全に作業できない
- 飲食店や食品倉庫で、食材・調理器具に汚染が及んでいる
さいたま市の案内では、自力での駆除は効果が出るまで相当の期間を要する場合があり、調査・駆除費用は自己負担だと説明されています。
駆除が長引く間も、発熱した人の受診はそれと切り離して進めてください。
ネズミがいるかどうかの確認方法や市販の駆除剤の使い方は、下の記事にまとめています。
関連記事:ネズミがいるか確かめる方法8選|今すぐ実践できるプロのチェック術
関連記事:ネズミの駆除に効く市販薬は?効果と対策を徹底解説 | 害獣駆除ガイド
参考:さいたま市「ネズミの相談について」(2023年11月9日更新)
5−2. 飲食店の事例に学ぶ従業員の保護と汚染食品への初動
国立健康危機管理研究機構の病原微生物検出情報(2023年8月29日掲載)によると、2023年に東京都内のそうざい店で働く従業員が発症した例があります。
この例では、直接のネズミ接触も皮膚の傷もなく、ネズミが出没する職場での業務が感染原因と考えられました。
店は侵入口対策をしていた一方、捕獲したネズミを従業員が素手で処理していました。
保健所は食品衛生・環境衛生・感染症予防の各担当が調査し、手袋の着用と手洗い、駆除と侵入防止、症状が出たときの受診をそれぞれ指導しています。
個別の感染経路が確定した報告ではありません。
しかし、「侵入口をふさいだから安心」ではなく、捕獲後の処理まで手袋・手洗いを徹底する必要があることを示す事例です。
市販の罠や毒餌で手応えがない期間は、そのまま従業員が捕獲したネズミや排泄物に触れ続ける期間でもあります。
汚染が疑われる食品への初動は、提供を止め、取り扱いを管轄保健所の食品衛生担当に相談することです。
米国FDAも、ネズミなどの汚染にさらされた食品について、包装の種類に応じて廃棄や条件付きの処置を示しています。
しかし、日本の店舗の営業判断を定めた資料ではないため、最終判断は保健所に確認してください。
侵入口の封鎖を含めた店舗の対策は、下の記事で扱っています。
関連記事:ネズミによる被害を食い止めよう!ネズミ対策を徹底解説 | 害獣駆除ガイド
引用元:飲食店従業員の国内感染例と保健所の指導内容(国立健康危機管理研究機構「東京都で発生したレプトスピラ症の国内感染例の報告」IASR Vol.44、2023年8月29日掲載)
引用元:ネズミ等に汚染された食品の取り扱いの考え方(米国FDA「How to Handle Food Products That Have Been Exposed to Filth」)
5−3. 健康相談と分けて協会の無料相談を利用する
保健所の対応範囲は自治体によって異なります。
一例として東京都多摩立川保健所の案内では、自宅のネズミ・衛生害虫対策の相談や助言、対応が難しい場合の業者団体の案内は行うとされています。
一方、防除・駆除作業は実施しないと明記されています。
フンなどが何の動物のものかの確認を依頼する場合も事前の電話相談が必要とされており、相談のために無理に採取しに行く必要はありません。
当協会、一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会では、害獣に関する無料電話相談(0120-539-775、受付9:00〜18:00、平日・土日祝日対応)を設けています(執筆時点の案内)。
通話料・相談料ともに無料で、匿名でも構いません。
ネズミ被害の状態を伺い、状況に合った業者を紹介するのが役割です。
対応地域は関東・中部(一部地域)・近畿・中国・四国・九州の各地方です。
当協会の集計では、2025年度の相談件数は5,000件以上で、電話相談のみで解決したケースは2025年度末時点で6,775件でした。
相談したからといって必ず業者を呼ぶ流れになるわけではなく、電話の助言のみで解決したと協会が公表する事例もあります。
協会が無料で行うのは電話相談と業者紹介までです。
紹介先による現地調査・見積もりの料金条件は、紹介先に確認します。
駆除・侵入口の封鎖工事は、業者との契約に基づく有料の作業になります。
費用は害獣の種類、建物の広さ、被害状況、作業内容で変わります。
当協会が案内する目安としては、忌避剤(動物が嫌がるにおいなどで寄せ付けない薬剤)や毒餌による簡易的な対策なら数万円です。
再発防止を含めた防除では20万円〜50万円で、足場の設置が必要な場合は別途足場代がかかります。
この窓口は環境側の対策を進めるためのもので、診断や治療の代わりにはなりません。
発熱している人がいるなら、業者を呼ぶ前に、あるいは並行して医療機関を受診してください。
- 対処方法
- 業者選び
- 害獣の特定

引用元:自治体のネズミ・衛生害虫相談の対応範囲(東京都多摩立川保健所「相談・同定・駆除方法等について|ねずみ・衛生害虫」)
6. レプトスピラ症に関するよくある質問
「犬からうつるのか」「死亡率はどのくらいか」「無症状でも検査が必要か」「14日たてば安心か」という4つの疑問に、結論から答えます。
6−1. 犬から人にレプトスピラ症がうつることはありますか?
うつる可能性はあります。
主な経路は感染した犬の尿への接触で、治療前と治療途中の尿に特に注意が必要です。
米国CDCのペット向け案内では、治療が完了していない感染動物は尿中に菌を排出し、人や他の動物に感染を広げる可能性があるとされています。
そのため、尿や汚染物への接触を避けることが求められています。
傷の保護や手袋の使用、接触後の手洗い、処方された薬の使い方、再診の時期については、獣医師の指示に従ってください。
飼い主に発熱などの症状が出たときは、犬が感染していることを医師に伝えて受診してください。
犬の症状や予防の詳細は1−1の関連記事で扱っています。
引用元:感染動物に接触する際の注意と飼い主の健康相談(米国CDC「Leptospirosis in Pets」)
6−2. レプトスピラ症の死亡率はどのくらいですか?
福島県衛生研究所のQ&Aでは、重症型(ワイル病)の説明の中で、適切な治療が行われない場合の致死率(かかった人のうち亡くなる割合)は20〜30%に及ぶとされています。
これは重症型で治療されなかった場合の値で、患者全体の死亡率ではありません。
同資料は2019年第44週までの国内発生状況を掲載したもので、現時点の患者全体の死亡率を示す数字は、この資料からは導けません。
軽い症状のまま経過する場合もありますが、初期症状だけで重症化しないとは判断できません。
年齢や持病などでも経過は変わるため、死亡率の数字そのものより、2章の目安に沿って早く治療を始められるかどうかが本人にとっての分かれ目です。
引用元:適切な治療が行われない場合の重症型の致死率(福島県衛生研究所(感染症情報センター)「レプトスピラ症Q&A」)
6−3. 尿に触れたら、無症状でも検査や予防の抗菌薬が必要ですか?
接触しただけで一律に検査や予防投薬が必要とは言えません。
米国CDCの医療者向け資料(2026年6月2日更新)は、無症状の人への検査を推奨していません。
感染が確認・疑われる動物に接触したあとの無症状者への抗菌薬予防投与についても、標準的な推奨はなく個別判断としています。
個別判断の材料になるのは、傷や粘膜に尿が触れたか、相手の動物が感染と診断されているか、接触の量と時間です。
これらを医療機関に伝えて判断を仰ぎ、洗浄と記録を済ませたうえで、潜伏期間中に発熱すればすぐ受診できるよう備えておくのが現実的な対応です。
引用元:無症状者の検査と接触後の予防投薬の考え方(米国CDC「Clinical Overview of Leptospirosis」2026年6月2日更新)
6−4. 接触から14日間症状がなければ、感染していないと言えますか?
言い切れません。
国内資料の潜伏期間は3〜14日程度です。
一方、米国CDCの一般向け資料(2026年2月10日更新)は、接触から発症まで一般に2〜30日かかると説明しており、より広い幅を示しています。
加えて、いったん症状が改善したあとに再び具合が悪くなる経過も同資料に記されています。
「14日過ぎた」「一度熱が下がった」という理由だけで安心せず、接触から1か月程度は体調の変化に注意し、再び発熱や黄疸が出たときは受診してください。
引用元:より広い潜伏期間の幅と一度改善した後に再び悪化する経過(米国CDC「About Leptospirosis」2026年2月10日更新)
7. まとめ レプトスピラ症への対応は受診と環境対策を分ける

今日からできる行動は3つです。
- 接触したら洗って記録する:川遊び、水害の片づけ、農作業、ネズミの処理をした日時と内容を残し、1か月程度は発熱に注意する
- 発熱したら接触歴を添えて受診する:風邪薬で様子を見る前に、過去1か月程度に水・泥・動物に触れたかを医師に伝える。黄疸・尿量の減少・息苦しさは心当たりがなくても受診し、強い息苦しさや意識の異常は救急要請
- 家や店のネズミ問題は別の窓口で進める:屋根裏や壁の物音、フン、かじり跡が続くときは、受診と並行して環境対策の相談に切り替える
家や店のネズミについては、一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会の無料電話相談(0120-539-775)で被害状況を伺い、必要に応じて業者を紹介します。
無料の範囲や費用の目安は5−3のとおりです。
体調に不安がある人は、環境の相談とは別に、まず医療機関を受診してください。
- 対処方法
- 業者選び
- 害獣の特定

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