犬のレプトスピラ症は、ネズミなどの尿で汚れた水や土から細菌が体に入り、腎臓と肝臓を傷めて命に関わることがある感染症です。
「混合ワクチンを毎年打っているから様子を見よう」と考えたくなりますが、国内のワクチンが守れる菌の種類には範囲があり、接種済みでも感染は否定できません。
急な元気消失や嘔吐、尿量の変化があれば、接種歴に関係なく動物病院へ連絡することが出発点になります。
本記事は、一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会が運営する害獣駆除ガイドの記事です。
家庭で気づける初期症状と緊急の兆候、動物病院での検査と治療の流れ、ワクチンの確認方法、感染源になるネズミへの備えを順にまとめます。
1. 犬のレプトスピラ症の初期症状と受診を急ぐ目安

初期症状だけでは、胃腸炎や夏バテなど他の病気と区別できません。
UC Davis(カリフォルニア大学デービス校)獣医学部の飼い主向け解説(2026年2月23日更新)も、症状が他の病気と重なるため、診断には行動歴とワクチン接種状況の評価が必要だと説明しています。
急な体調変化に加えて、尿量・白目や歯茎の色・呼吸の3点を確認し、獣医師が判断に使う材料をそろえるつもりで観察すると受診後の流れが速くなります。
- 参考:Leptospirosis in Dogs(UC Davis獣医学部)
1−1. 犬のレプトスピラ症の初期症状は?
初期症状は、発熱・元気消失・食欲低下・嘔吐・飲水量と尿量の増加です。
すべてがそろうとは限らず、「昨日まで元気だったのに急にぐったりして水ばかり飲む」といった組み合わせで現れます。
- 発熱(触った感覚では判断しにくいため、震えやぐったりした様子など普段との違いを伝える)
- 急な元気消失(散歩を嫌がる、呼んでも動かない)
- 食欲低下・嘔吐・下痢
- 飲水量と尿量の増加(水入れの減りが早い、トイレシートの濡れ方が大きい)
- 腹部や筋肉を触ると痛がる
症状と同じくらい診断材料になるのが行動歴です。
2017年に大阪府北部で起きた集団発生を調べた研究(Frontiers in Veterinary Science、2021年)では、河川敷での散歩歴と感染疑いとの関連が報告されています。
小規模な特定の流行を調べた結果のため河川敷の散歩全般には当てはめられませんが、「どこを歩いたか」が獣医師の判断を左右することは読み取れます。
病院に伝える項目の詳細は3−1にまとめます。
- 参考:Canine Leptospirosis Outbreak in Japan(Frontiers in Veterinary Science)
1−2. 尿が少ない・黄疸・呼吸異常があれば受診を急ぐ
尿量の低下、黄疸(白目や歯茎が黄色くなる状態)、速い呼吸、出血のいずれかがあれば、夜間や休日でも診てもらえる病院へ連絡する段階です。
ACVIM(米国獣医内科学会)の2023年版合意文書は、これらを臓器障害を疑う所見として扱っています。
| 緊急の兆候 | 家庭で気づく様子 | 受診時に伝える内容 |
|---|---|---|
| 尿量の低下 | 普段より尿が明らかに少ない・出ない、排尿姿勢をとっても出ない | 最後に排尿した時刻と量 |
| 黄疸 | 白目・歯茎・耳の内側が黄色い | 気づいた日時、嘔吐の有無 |
| 呼吸の異常 | 安静時でも呼吸が速い、咳に血が混じる | いつから速いか、運動後か安静時か |
| 出血 | 鼻血、血便、皮膚の点状の出血 | 部位と量 |
この病気は短期間で重症化することがあるため、緊急の兆候が出そろうまで待つ必要はありません。
尿の異常に気づいた時点で連絡し、半日様子を見るといった待機は避けたほうが安全です。
- 参考:Updated ACVIM consensus statement on leptospirosis in dogs(Journal of Veterinary Internal Medicine、2023年)
2. 犬のレプトスピラ症の感染経路と注意する場面

感染経路は、保菌動物の尿で汚れた水や土が口・鼻・目の粘膜や皮膚の傷から入ることです。
注意する場面は、水辺や雨上がりの散歩、屋外飼育、ネズミの気配がある住まいです。
ネズミの姿を見たかどうかだけで判断すると、汚染された水たまりや土を見落とします。
以下では経路と場面を分けて整理します。
2−1. 感染尿で汚れた水・土から粘膜や傷を介して感染する
米国CDC(疾病対策センター)の動物向け解説(2026年2月10日更新)は、感染尿や汚染水への接触、特に流れの遅い水・停滞した水を飲むことを主な経路としています。
さらに、咬み傷や皮膚の損傷、感染動物の組織を食べることも経路に含めています。
保菌動物とは、体内に菌を持ち、症状がなくても尿に出し続けている動物のことです。
菌は湿った土や水の中で長く生き残るため、ネズミの姿を見ていなくても汚染された場所は存在し得ます。
この点は見落とされがちです。
もう1つ、感染した犬の尿にも菌が含まれるため、多頭飼育や犬が集まる施設ではネズミとは無関係に犬同士で広がる可能性があります。
- 参考:Leptospirosis in Animals(米国CDC)
2−2. 散歩・川遊び・屋外飼育・ネズミの気配がある家で注意する場面
注意すべき場面は、ネズミに直接触れる状況だけではありません。
CDCは都市部や郊外で暮らす犬もレプトスピラ症の対象になると明記し、ネズミとの直接接触の有無だけで危険性を判断していません。
- 雨上がりの散歩で水たまりや側溝の水を舐める
- 川・池・田んぼの用水路で遊ぶ、流れの弱い水を飲む
- 屋外飼育で、庭に置いた水入れに野生動物が近づける
- 家の屋根裏・壁の中・床下からゴソゴソと音がする、糞が落ちている
- 多数の犬が集まる預かり施設や運動場を利用している
国内では地域を限った注意喚起が出ることがあります。
2017年の大阪府の事例は、特定の河川敷周辺の集団発生でした。
2026年7月には、京都市西京区での発生報告を受けて、近隣の動物病院が散歩コースの草むらや水たまりへの注意を呼びかけました。
なお、当該記事には症例数や具体的な感染地点の記載はありません。
こうした情報は「その地域・その期間」の注意であり、全国で流行している意味でも、注意喚起のない地域なら安全という意味でもありません。
接触歴に心当たりがなくても、急な体調変化があれば動物病院へ相談するのが基本線です。
- 参考:Leptospirosis in Animals(米国CDC)
- 参考:レプトスピラ症の発生報告について(オオジ動物病院、2026年7月12日)
3. 犬のレプトスピラ症の検査・治療と回復後の管理

受診から回復までの流れは、事前連絡 → 血液・尿検査 → 抗菌薬と点滴 → 再診と服薬完了、という順番です。
ACVIMの2023年版合意文書は、急速に腎障害へ進むことを理由に、検査結果を待たずに治療を始めるべきだとしています。
飼い主側で知っておきたいのは、「検査が陰性でも治療が始まることがある」「軽く見えても入院を勧められることがある」の2点です。
- 参考:Updated ACVIM consensus statement on leptospirosis in dogs(Journal of Veterinary Internal Medicine、2023年)
3−1. 受診前に連絡し、症状・行動歴・接種歴を伝える
来院前に電話で「レプトスピラ症の可能性がある」と伝えると、病院側は待合室の動線や尿の扱いを準備できます。
人獣共通感染症(動物と人の間でうつる感染症)であるため、他の患者や職員を守る意味でも事前連絡には価値があります。
電話で伝える内容は次の5項目です。
- 症状が始まった日と、現在の尿量・飲水量
- 発症前2週間の散歩コース(水辺・雨後の草むら・水たまり)
- 自宅や周辺でのネズミの気配(音・糞・かじり跡)
- ワクチンの製品名と最終接種日(接種証明書を持参)
- 同居している犬や猫の有無と体調
製品名まで聞かれるのは、ワクチンにレプトスピラ成分が入っているか、入っていればどの種類の菌に対応しているかで診断の組み立てが変わるためです。
混合ワクチンの接種歴に加えて製品名と接種日が分かると判断の助けになりますが、記録が手元になくても病院への連絡を遅らせないでください。
3−2. 血液・尿検査とPCR・抗体検査で調べる
検査は、血液・尿検査とPCR検査、抗体検査を組み合わせます。
血液・尿検査では腎臓と肝臓の数値を見ます。
PCR検査は菌の遺伝子を見つける検査です。
抗体検査は、体が菌に反応して作った抗体(菌と戦うたんぱく質)を調べます。
陰性だけで感染を否定できない点が重要です。
同文書によれば、抗体検査は発症から1週間ほどは抗体が検出できる量に達していないことが多く、PCR検査は検体の種類や抗菌薬の使用で結果が左右されます。
疑いが強ければ、治療を続けながら日を置いて再検査する進め方になります。
院内で結果が出る迅速検査も登場しました。
農林水産省動物医薬品検査所の動物用医薬品等データベースによると、検査薬「ベトスキャン レプト」が2025年10月3日に国内で承認されています。
この検査薬は、犬の血液中のIgM抗体(感染初期に増える抗体)を10分で判定します。
ただし、日本獣医師会雑誌に掲載された同検査所担当者の解説は、この結果だけでなく臨床症状や他の検査を参考に総合的に診断するよう明記しています。
また、すべての動物病院に置いてあるとも限りません。
- 参考:ベトスキャン レプト – 動物用医薬品等データベース(農林水産省動物医薬品検査所)
- 参考:日本獣医師会雑誌に掲載された動物医薬品検査所担当者による解説(PDF)
3−3. 抗菌薬・点滴・入院で治療し、自己判断で薬を使わない
治療の柱は抗菌薬と、点滴を中心とした支持療法(病気そのものではなく体の状態を支える治療)です。
同文書はドキシサイクリンという抗菌薬を2週間使う方法を標準としていますが、薬の選択や投与期間は個別の処方に従います。
尿が出ない場合は点滴による水分過剰にも注意が必要なため、入院管理や透析(機械で血液中の老廃物を取り除く治療)ができる施設への紹介が検討されます。
手持ちの抗菌薬や人用の解熱剤を飲ませることは避けてください。
中途半端な抗菌薬はPCR検査の精度を下げ、人用の解熱剤は腎臓をさらに傷めることがあります。
検体は抗菌薬の投与前に採るのが原則とされており、受診前の自己投薬は診断そのものを難しくします。
3−4. 回復後も再診と処方薬の完遂が必要
元気が戻っても、処方された抗菌薬は獣医師の指示どおり最後まで飲ませ、再診を受ける必要があります。
症状が消えた後も腎臓の中に菌が残り、尿に排出され続けることがあるためです。
CDCの動物向け解説も、処方薬の完遂と獣医師による経過確認を回復後の対応として求めています。
治療を始めた後も、獣医師が許可するまでは尿に素手で触れないことが前提です。
尿処理の手順と対策をゆるめる時期の目安は5章で説明します。
- 参考:Leptospirosis in Animals(米国CDC)
4. 犬のレプトスピラ症を予防するワクチンと日常対策

ワクチンは、含まれている血清型(菌の細かな種類分け)に対応した予防には有効ですが、すべてのレプトスピラから守れるわけではありません。
Journal of Veterinary Medical Science 84巻10号(2022年)に掲載された沖縄県の症例報告では、2歳の作業犬がカニコーラとイクテロヘモラジーの2種類に対応するワクチンを接種していました。
それにもかかわらず、その後ヘブドマディスという別の血清群(血清型をまとめた分類)の菌に感染し、多臓器の機能障害を起こしました。
この1例から「ワクチンは効かない」とは言えません。
この症例からは、「接種済み」という情報だけでは感染を除外できず、接種した製品がどの型に対応していたかまで確認する必要があると読み取れます。
予防はワクチンと汚染環境への接触回避の両輪で成り立ちます。
- 参考:Leptospirosis with multiple organ dysfunction in a mongoose-scat-detection dog infected with Leptospira interrogans serogroup Hebdomadis, Okinawa, Japan(Journal of Veterinary Medical Science)
4−1. 接種記録の確認とノビバックLEPTO・バンガードL4の承認用法
まず手元の接種証明書で、製品名・レプトスピラ成分の有無・初回接種(製品が定める回数)の完了・次回予定日・過去の副反応歴の5点を確認します。
国内で承認されているレプトスピラ成分を含む製品の用法は、農林水産省動物医薬品検査所の動物用医薬品等データベースで確認できます。
次の表は、同データベースの承認用法の抜粋です(確認日:2026年10月)。
実際の接種計画は、犬の年齢や生活環境をもとに獣医師が判断します。
承認されていることと動物病院に在庫があることは別です。
| 確認項目 | ノビバックLEPTO | バンガードL4 |
|---|---|---|
| 対応する菌の種類 | カニコーラ、イクテロヘモラジー | カニコーラ、イクテロヘモラジー、グリッポチフォーサ、ポモナ |
| 対象年齢 | 4週齢以上 | 6週齢以上12週齢未満の健康な犬(12週齢までに開始できなかった場合も初回は2回必要) |
| 初回接種の量・回数・間隔 | 1.0mLを3〜4週間隔で2回皮下注射 | 1mLを3週間隔で2回皮下注射 |
| 承認情報の注意点 | 免疫ができるまで2〜3週間は犬同士の接触を避ける | 追加接種は生活様式・環境を考慮して判断 |
ノビバックLEPTOの「2〜3週間」という注意は、接種した当日から守られるわけではないことを意味します。
夏の川遊びや帰省の予定があるなら、逆算して相談する必要があります。
また、接種中の混合ワクチンにレプトスピラ成分が含まれていない場合は、追加接種の要否が獣医師との相談事項になります。
Vaccine誌に2022年に掲載されたメタ解析(複数の研究を統合した分析)は、市販ワクチンの防御効果を臨床発症に対して84%、腎臓への保菌に対して88%と報告しています。
ただし、これは研究条件下の統合値であり、個々の犬が国内の生活環境ですべての感染から守られる保証ではありません。
- 参考:ノビバックLEPTO – 動物用医薬品等データベース(農林水産省動物医薬品検査所)
- 参考:バンガードL4 – 動物用医薬品等データベース(農林水産省動物医薬品検査所)
- 参考:Efficacy of commercially available vaccines against canine leptospirosis: A systematic review and meta-analysis(PubMed)
4−2. 散歩・自宅で汚染水やネズミとの接触を避ける
日常対策は「飲ませない」「寄せつけない」の2本立てです。
散歩では水たまりや側溝の停滞した水を飲ませず、水辺や雨後の散歩のあとは足を洗って拭きます。
足洗いは一般的な衛生管理であり、汚染水に触れた後の感染リスクがなくなる保証はありません。
そのため、「洗ったから大丈夫」と受診判断を緩める根拠にはなりません。
自宅側で抜けやすいのが環境管理です。
京都市の案内「ご家庭でできるネズミ対策について」は、ペットの餌を放置しない、食料品はふた付き容器や戸棚で保管する(ビニール袋や段ボール箱はかじって破られる)、1cm以上の穴やすき間をふさぐ、の3点を挙げています。
あわせて、ペットのいる家庭では殺そ剤(ネズミを駆除するための毒餌)の誤食に十分注意するよう呼びかけています。
CDCの家庭向けネズミ対策資料も、餌・水・隠れ場所を減らすことと建物の穴をふさぐことを基本としています。
犬のいる家庭に当てはめると、開封したフード袋を床に直置きしない、ケージ周りの食べこぼしをその日のうちに片づける、床下換気口や配管まわりのすき間を点検する、といった作業になります。
水については、犬がいつでも清潔な水を飲めるようにしたうえで、水入れはネズミなどが近づきにくい場所に置き、こまめに洗って水を交換します。
当協会に寄せられた相談でも、市販の罠や毒餌では収まらず、侵入経路の特定と封鎖で初めて被害が止まった例があります。
餌と侵入口を残したまま毒餌だけを置く対策は、犬のいる家庭では誤食の危険が増すだけになりかねません。
庭でネズミの糞を見つけても、それは犬が感染したという意味ではなく、「環境を見直す合図」です。
- 関連記事:ネズミがいるか確かめる方法8選|今すぐ実践できるプロのチェック術
- 関連記事:ネズミによる被害を食い止めよう!ネズミ対策を徹底解説 | 害獣駆除ガイド
- 参考:ご家庭でできるネズミ対策について(京都市)
- 参考:Controlling Wild Rodent Infestations(米国CDC)
5. 感染が疑われる犬の尿の処理と家族・同居動物の注意点

家庭内では、「感染した犬の尿から家族や同居動物へうつる」経路と、「家族や同居動物も、犬が感染した同じ場所や水に触れていた可能性」を分けて考えます。
尿処理は前者の対策であり、後者は犬の治療だけでは解決しません。
5−1. 手袋・手洗いと犬を離した清掃・消毒を行う
尿には素手で触れず、犬を別室に移してから清掃・消毒します。
消毒剤は獣医師に確認したものを、尿で汚れた面への使用可否を含む製品表示に従って使うのが前提です。
他の洗剤や消毒剤とは混ぜず、窓を開けて換気します。
- 使い捨て手袋をつける(目に飛ぶおそれがあれば保護めがねも)。犬は別室へ移す
- 紙タオルで尿を拭き取り、密閉できる袋に捨てる
- 拭き取った面に、製品表示の濃度・接触時間で消毒剤を使う
- 水拭きまたはすすぎをして乾燥させる
- 手袋を外し、石けんで手を洗う。乾燥を確認してから犬を戻す
ACVIMの2023年版合意文書は、ドキシサイクリンによる治療を48時間続けるまでは尿との接触を避け、尿を掃除するときは手袋と目の保護具を使うよう示しています。
この48時間は、発症からの期限ではなく治療開始からの目安です。
48時間を過ぎても、手洗いと尿の衛生的な処理は治療終了まで続けます。
CDCのペット用品の消毒に関する解説も、清掃・消毒中は清掃場所からペットを離し、薬剤に触れさせたり舐めさせたりしないよう求めています。
使わせるのは、製品ラベルの接触時間などの使用方法に従って乾燥を終えてからです(消毒スプレー・ワイプでは十分な乾燥を求め、水洗いを追加の安全策として示しています)。
また、酢はすべての病原体を消毒できるわけではありません。
なお、家の中で見つけたネズミの糞尿は、犬の尿とは別の手順(掃除機やほうきを使わず、消毒剤で湿らせてから拭き取る)が必要です。
詳細はCDCの清掃手順にまとまっています。
- 参考:Updated ACVIM consensus statement on leptospirosis in dogs(Journal of Veterinary Internal Medicine、2023年)
- 参考:Cleaning and Disinfecting Pet Supplies(米国CDC)
- 参考:How to Clean Up After Rodents(米国CDC)
5−2. 同居動物は獣医師へ相談し、家族に症状があれば医療機関へ
同居している犬は、発症した犬と同じ環境に触れていた前提で獣医師に相談します。
同文書は同居犬への対応を家庭内で同じ環境に触れた問題として扱っており、症状がなくても検査や予防的な治療の判断は獣医師が行うものです。
猫など犬以外の同居動物についても、同じ水や場所への接触歴と体調を獣医師に伝えますが、犬と同じ検査・治療が必要とは限りません。
家族については、CDCの医療従事者向け解説(2026年6月2日更新)が次のように述べています。
人の潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は通常5〜14日(範囲2〜30日)で、発熱・筋肉痛・頭痛など風邪に似た症状が出ます。
同解説は無症状の人への検査を推奨しておらず、感染疑いの動物に触れた後の予防的な抗菌薬にも一律の標準勧告はありません。
接触後に症状が出た場合は、「いつ、どのように犬の尿に触れたか」を医療機関に伝えて個別に相談する形になります。
人の症状や治療の詳細は、別記事でまとめています。
- 関連記事:人へのレプトスピラ症の感染経路と症状・予防
- 参考:Updated ACVIM consensus statement on leptospirosis in dogs(Journal of Veterinary Internal Medicine、2023年)
- 参考:Clinical Overview of Leptospirosis(米国CDC)
6. 犬のレプトスピラ症についてよくある質問
6−1. 犬のレプトスピラ症は自然に回復しますか?
自然回復を待たず、獣医師に相談する病気です。
軽症や無症状で経過する犬もいますが、見た目が元気でも尿に菌を出し続けることがあり、急に重症化する場合もあります。
症状の有無だけでは回復したか、菌の排出が終わったかを判断できないため、疑わしい症状や接触歴があれば動物病院に相談してください。
6−2. 犬のレプトスピラ症の死亡率はどのくらいですか?
死亡率は一律に示せません。
重症度や治療内容、調べた集団の性質で数字が大きく変わるためです。
| 研究 | 対象 | 転帰 |
|---|---|---|
| Frontiers in Veterinary Science(2021年) | 2017年大阪府の集団発生で疑い症例とされた11頭 | 9頭が死亡(急性経過の重症例が集まった特定の流行) |
| Journal of Veterinary Internal Medicine(2024年) | 腎障害が重く透析を受けた犬22頭(2018〜2021年) | 16頭(73%)が退院。退院した16頭のうち12頭(75%)が退院後6か月時点で生存 |
前者は特定の集団発生、後者は透析が必要なほどの重症例に限った数字で、軽症例を含む全体像ではありません。
数字の比較より、疑う症状があれば早く受診することのほうが転帰に関わります。
- 参考:Canine Leptospirosis Outbreak in Japan(Frontiers in Veterinary Science)
- 参考:Retrospective evaluation of 22 dogs with leptospirosis treated with extracorporeal renal replacement therapies (2018-2021)(Journal of Veterinary Internal Medicine)
6−3. レプトスピラ症は犬から人にうつりますか?
うつります。
感染した犬の尿に触れることで人も感染する人獣共通感染症です。
撫でる、同じ部屋にいるといった日常の接触そのものより、尿の処理や、尿で汚れた床・寝床に素手で触れる場面が注意点になります。
処理の手順と家族の体調に関する対応は5章で、人の症状や治療は関連記事で確認できます。
6−4. 水たまりを舐めた犬が元気でも相談すべきですか?
元気でも、接触した日時・場所・接種歴を動物病院に伝えて相談してください。
検査や予防的な治療が必要かは、接触状況に応じて獣医師が判断します。
集団発生が確認されている場所の水を飲んだ、同居犬がすでに発症している、といった状況では判断が変わります。
愛媛県が2024年5〜11月に動物愛護センター収容犬50頭を調べた調査では、収容犬1頭からPCR検査で遺伝子が検出されています(生きた菌は分離されず、県は感染歴を示唆する結果と説明)。
このように、元気に見えることは感染を否定する根拠になりません。
相談後の観察期間は、ACVIMの合意文書が示す犬の潜伏期間(およそ2〜14日)を踏まえ、2週間程度は食欲・元気・飲水量・尿量を毎日見る方法が一つの目安です。
これは標準化された手順ではなく、2週間を過ぎれば安全だと保証するものでもないため、獣医師から別の指示があればそちらを優先します。
- 参考:令和6年度「狂犬病およびレプトスピラ保有状況調査」について(愛媛県)
- 参考:Updated ACVIM consensus statement on leptospirosis in dogs(Journal of Veterinary Internal Medicine、2023年)
7. まとめ|愛犬の異変は動物病院へ、住まいのネズミ対策は無料相談へ

次に取る行動は、犬の体調と住まいの環境で分かれます。
犬に初期症状があれば、接種歴にかかわらず、接種証明書と2週間分の行動歴をそろえて動物病院に電話する段階です。
一方、屋根裏や壁からの音、糞やかじり跡といったネズミの気配は、動物病院では解決できない問題です。
犬のいる家庭で市販の毒餌を自分で置くと、犬が毒餌そのものや毒を食べたネズミを口にする危険が生じます。
そのため、侵入口の特定と封鎖を含めた対策は専門の窓口に相談するほうが安全です。
当協会では害獣に関する電話相談を無料で受け付けています(0120-539-775、受付9:00〜18:00、平日・土日祝日対応、匿名可)。
当協会が自社集計として公表している「電話相談のみでの解決件数」(2026年3月集計、2025年度までの累計)は6,775件あります。
相談したからといって、必ず施工に進むわけではありません。
電話相談は無料ですが、現地調査・見積もりの料金は紹介先の事業者に事前に確認し、施工費は見積もりで確認してください。
費用は、害獣の種類・建物の広さ・被害状況・作業内容で変わります。
忌避剤や毒餌などの簡易的な対策では数万円、再発防止まで含めた防除では20万〜50万円です。
足場が必要な建物では別途足場代が加わります。
こうした点を踏まえて見積もりを比べると判断しやすくなります。
- 対処方法
- 業者選び
- 害獣の特定

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