特定外来生物であるアライグマは今や日本全国に分布しており、農業被害や家屋への浸入といった人々の生活を脅かす「害獣」として認識されています。
ただし、法律によって管理されていることから、基本的に無許可で捕獲・駆除ができません。
どういった手順を踏めば、アライグマを捕獲・駆除することができるのでしょうか。
この記事では、アライグマを捕獲するために必要なことを解説します。
捕獲機の特徴や使い方もご紹介しておりますので、この記事を参考に、効果的に罠を設置し・アライグマを捕獲しましょう。
目次
野生のアライグマを捕獲する際に必要となるもの
冒頭でもお伝えした通り、アライグマは無許可で捕獲・駆除ができない動物であり、自身で対処するには一定の条件が必要です。
この章にて、その詳細を解説します。
狩猟免許
そもそも、野生動物を捕獲・駆除するには「狩猟免許」が必要であり、本免許には以下4つの種類が存在します。
- 網猟免許
- わな猟免許
- 第二種銃猟免許
- 第一種銃猟免許
捕獲=野生動物を捕獲する場合は「わな猟免許」を取得しておく必要があります。
(免許取得の手順は、後述でご紹介します)
ただし、わな猟免許を取得しただけでは、捕獲はできても駆除はできません。
野生のアライグマは鳥獣保護管理法や外来生物法によって管理されており、銃猟免許を所持していなければ「駆除できない+生きたまま運搬することもできない」と定められています。
つまり、わな猟免許だけでは駆除はもちろん運搬することもできないため、捕獲後は自治体や専門業者のスタッフに回収してもらう必要があります。
この点はしっかりと把握しておきましょう。
自治体への申請
該当する狩猟免許を取得したうえで自治体(都道府県もしくは政令市)に書類を提出することで、捕獲or駆除をおこなうことができます。
必要となる書類は、主に以下が挙げられます。
- 鳥獣の捕獲等および鳥類の卵の採取等の許可申請書
- 鳥獣の捕獲等および鳥類の卵の採取等の許可申請者(従事者)名簿
- 有害鳥獣捕獲依頼書(第三者に有害鳥獣の捕獲を依頼する場合に必要な書類)
- 有害鳥獣捕獲申請に係る被害状況調査書(※)
- 捕獲実施計画書(※)
- 捕獲区域・場所を明らかにした図面もしくは地図(※)
- 申請者本人を確認できる書類(運転免許証・健康保険証など)
※生活環境被害防止のため、申請者が申請者本人の所有地内において鳥獣の捕獲をする場合は(※)の書類を省略できる
申請書は、自治体のホームページにてダウンロードできるところがほとんどです。
ただし、必要な書類は異なる・講習会への参加が必須だったりと、自治体によって条件は変化するため、まずはお住いの役所の担当課に電話などで詳細を確認してみることをおすすめします(自治体によって担当部署が異なる点にも要注意)。
また、許可が下りるまでに一週間前後かかる自治体も多いため、時間がかかるという点にも注意しておきましょう。
狩猟免許の取得方法
上述の通り、アライグマなどの害獣を捕獲・駆除する場合、狩猟免許を必要とします。
この章では、狩猟免許の取得方法について解説を進めていきましょう。
免許取得に必要な年齢
狩猟免許には4つの種類があり、免許によって年齢制限が設けられています。
具体的には、銃猟免許(第一種・第二種ともに)が20歳以上、網猟・わな猟免許が18歳以上です。
なお、試験の問題内容こそ変わるものの、試験の種類自体はどれも同じです。
免許取得の流れ
免許取得の流れは、主に以下の通りです。
- 自治体に狩猟免許申請書を提出する
- 狩猟免許予備講習会を受ける(任意)
- 狩猟免許試験を受ける
- 合格後の手続きをおこなう
自治体によって、狩猟免許申請の細部は異なるため、事前の確認は必須といえます。
また「狩猟免許予備講習会」の受講は任意ではあるものの、合格のコツなどを教えてもらえます。
技能試験は練習なしでの合格がほぼ不可能ともいわれているため、基本的には講習会の参加はしておくべきといえるでしょう。
なお「狩猟免許予備講習会」と似たものに「猟銃等講習会」というものがありますが、これは銃の所持許可に必要な講習であり、別物という点に注意が必要です。
免許取得の際に必要な書類
免許取得の際に必要となる書類には、以下が挙げられます。
- 狩猟免許申請書
- 医師の診断書
- 写真(縦3cm×横2.4cm)
- 収入印紙(1種類につき5,200円分)
- 返信用封筒
医師の診断書はかかりつけ医や最寄りの病院で問題ありませんが、狩猟目的の診断書は断られるケースもあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
また、銃の所持許可申請などに使用したor使用する「診断書」と狩猟免許申請で提出する「診断書」の様式が異なる(=使いまわしができない)ため、この点にも注意が必要です。
免許取得時の試験内容
免許取得の試験は問題内容こそ変わるものの、その種類は「知識試験」「適性試験」「技能試験」と共通しています。
知識試験は、問題数30問+3択の選択式であり、21問以上正解すれば合格です(制限時間は90分)。
適性試験は、視力・聴力検査・運動能力テストがあり、身体的なハンディキャップがない限りはほぼ合格するといわれています。
- 視力検査:裸眼もしくはメガネ・コンタクトの矯正視力が片目0.5、両目0.7以上(わな・網猟は両目0.5以上)
- 聴力検査:10m先(おおよそバス一台分の距離)の試験官と普通に話せるかどうか
- 運動能力テスト:手のグーパーや手首や腕を回せるか、屈伸ができるかなど
技能試験はもっとも脱落者が多い難易度の高い試験であり、試験ごとに実物を取り扱う試験となります。
任意で受けられる狩猟免許予備講習会では、本番時に合格するためのコツを教えてもらえるため、合格率を高めたい方は受講することをおすすめします。
上記3つの試験にすべて合格すれば、該当する狩猟免許を取得できます。
合否は紙にて郵送で通知され、合格の場合は狩猟免許が同封されています(2週間程度で自宅に届くことが多いとされている)。
免許取得にかかる費用
免許取得にかかる費用は、おおよそ24,000円前後とされており、その詳細は以下の通りです。
- 写真代:600円
- 医師の診断書:5,000円前後
- 収入印紙代:5,200円
- 講習代:13,000円
この詳細は自治体や病院によって異なるため、事前に確認をしておきましょう。
また、この費用は「狩猟免許」に絞ったものであり、銃の所持許可は別扱いとなる点にご注意ください。
免許取得後にやるべきこと
免許を取得したあとは、各都道府県ごとに「狩猟者登録」をしなければいけません。
この狩猟者登録には「狩猟税」と「登録申請手数料」がかかり、費用の合計を収入印紙で支払う必要があります。
- 第一種銃猟:狩猟税16,500円、登録手数料1,800円(計18,300円)
- 第二種銃猟:狩猟税5,500円、登録手数料1,800円(計7,300円)
- 網猟・わな猟:狩猟税8,200円、登録手数料1,800円(計10,000円)
登録を完了することで狩猟者バッジをもらえ、バッジを身に着けて初めて狩猟が可能となります。
また、銃猟免許を取得し銃を所持する場合は「銃の所持許可」を得る必要もあります(銃の所持許可を取得する過程で、弾を購入するための「火薬類譲受許可」を申請する必要もある)。
銃の所持許可は免許を取得前でもおこなえますが、こちらも時間とお金がかかるため、必要な方は早めに取得しておくとよいでしょう。
捕獲機の種類について
アライグマは頭胴長(体長)は40~60cm・体高が20~30cmほどであり、このサイズの獣を捕獲する場合はおもに「箱罠」が用いられます。
箱罠の種類は、主に以下2つに大別されます。
- 折り畳みタイプ
- ワイヤーメッシュタイプ
それぞれ、後述にて補足を加えていきます。
折り畳みタイプ
折り畳みタイプは箱罠の内部に「踏み版」が設置されており、踏み板と扉の金具が金属棒により連結されている構造になっています。
(獣が箱罠の内部に入って踏み板を踏むと、扉が閉まって開かなくなる仕組みになっている)
サイズは「スモール(奥行:66cm×幅:23cm×高さ:26cm)」「ミディアム(奥行:79cm×幅:28cm×高さ:33cm)」「ビッグ(奥行:94cm×幅:34cm×高さ:37cm)」があり、アライグマの捕獲であればミディアムorビッグサイズがおすすめといえるでしょう。
ワイヤーメッシュタイプ
ワイヤーメッシュ=頑丈な素材で作られており、人間が上に乗っても壊れないほどの強度を誇っています。
何度も繰り返し使うことが想定されて作られていることから、使いまわしできることが利点といえるでしょう。
ワイヤーメッシュ型は、箱罠の内部に糸を張り、アライグマが罠の内部に入って糸に触れることで扉が落ちる仕組みです。
どちらの箱罠を利用するか?ですが、「手軽な使用感を重視する場合は折りたたみ型」「将来的に長く使用していきたい場合はワイヤーメッシュ型」を選ぶとよいでしょう。
アライグマを捕獲したあとにすべきこと
「わな猟免許」しか取得していない場合は、駆除や生きたままの運搬ができないため、捕獲したあとはお住いの自治体もしくは害獣駆除の専門業者に連絡しアライグマを引き取ってもらいましょう。
捕獲→連絡→引き取りの流れをおろそかにしてしまうと、引き取ってもらうまでに時間がかかってしまうため、流れを事前に確認しておくことをおすすめします。
また、捕獲したアライグマを引き取ってもらったあとは、アライグマが潜んでいた場所を徹底的に清掃・消毒しましょう。
野生動物は体内や糞尿にさまざまな病原菌や寄生虫を有しており、放っておくと別の害虫や寄生虫などの被害を誘発しかねません。
清掃・消毒の際は、以下の手順で対応してください。
- 防護手段(マスク・ゴム手袋・肌の出ない服など)を用意・装備する
- 箒や新聞紙などで、野菜くずや糞を片付ける
- 糞尿があった場所に消毒用アルコール・エタノール・殺菌力の強い次亜塩素酸ナトリウム洗剤を使い消毒する
- しっかり拭き取る
- 使った道具や着ていた服はすぐに処分する
加えて、家屋などに潜むアライグマを捕獲したあとは、再発を防ぐために侵入経路を徹底的に封鎖しましょう。
いくら害獣を駆除しても、侵入経路が開いたままではいずれ再発する可能性があります(アライグマは一度餌場とみなした場所には何度も来る習性がある)。
アライグマは直径10cm程度の隙間(頭が入るほどの隙間)であれば侵入できるため、金網やパンチングメタルなどの頑丈なアイテムを使い、侵入経路となる場所を封鎖しておきましょう。
捕獲機の効果的な使い方
この章では、アライグマを捕獲する際の捕獲機の効果的な使い方を解説します。
ただ捕獲機を設置するだけでは意味がない(効果が薄い)ため、適切な使い方を理解して罠を設置しましょう。
捕獲機の効果的な設置ポイント
捕獲機の効果的な設置ポイントは、以下の4つが挙げられます。
- 壁沿い
- 軒下
- 茂みのなか
- 水辺 など
ただし、日の当たる場所は鳥などにエサを食べられる可能性もあるため、できれば日陰になっている場所を選ぶようにしましょう。
蓋の作動を妨げないように注意しながら、遮光ネットなどで罠を覆うのも有効な手段です。
なお、捕獲したアライグマが箱罠内で暴れるとフタが開いて逃げ出す恐れもあるため、設置場所を決めたらペグや杭などで固定するとよいでしょう。
設置場所を工夫する
捕獲しやすくする(=箱罠設置の場所を選定する)ために、まずはアライグマの痕跡がある場所を探してみましょう。
アライグマは足跡が特徴的であり、指の長い5本指にツメがついたような形をしているため、足跡で判別がしやすいかと思います。
なかでも、水場近くはアライグマが好みやすい場所のため、チェックしておきましょう。
また、糞が落ちている場所も侵入経路として有益な場所といえるでしょう。
足跡や糞の痕跡が多い場所を見つけたら、なるべく平坦で水平な場所を箱罠の設置場所として選びます。
もしも草木で凸凹している場合は、あらかじめ足でならすなどしておくとよいでしょう。
箱罠は「アライグマなどの害獣が安心してエサを食べられる場所に設置する」ことが、捕獲を成功させるコツです。
箱罠に入れるおすすめのエサについて
箱罠を設置する際に重要となるのが、罠のなかに入れる食べ物です。
アライグマは雑食であり、とくに甘い果物や油分の多いスナック菓子を好物としています。
果物や野菜は長期間放置しておくと腐ってしまうため、箱罠の設置するエサとしては「キャラメルコーン」がもっとも適しているといわれています(手軽に手に入り、すぐに腐ることもないため)。
エサを仕掛ける際は、踏み板の奥に加え、手前にも少し撒いておくと罠のなかに誘導しやすくなるためおすすめです。
なお、ドッグフードやキャットフードは、犬・猫を誤捕獲する恐れがあるため、誘引エサとしては好ましくありません。
野生のアライグマを捕獲する際に意識すべきこと
この章では、野生のアライグマを捕獲する際に意識すべきことをいくつかご紹介します。
注意点を意識しつつ、試行錯誤を重ねて効率的な捕獲を目指しましょう。
不用意に接触しない
野生のアライグマは、その見た目に反して非常に攻撃的であり、かつ人獣に共通した多数の感染症を保有している可能性があります。
そのため、不用意な接触は避けるべきといえるでしょう。
仮に捕獲機に入っている状態でも、捕獲機のなかで暴れる・隙をみて(隙間などから)攻撃してくる可能性もあるため、作業時にはゴム手袋を着用し素手で触れることのないようご注意ください。
捕獲しても運搬しない
「わな猟免許」しか取得していない方は、駆除はもちろん生きたまま運搬することもできません(駆除を目的にアライグマを捕獲したあと、無許可で野外に放つ行為も禁止されている)。
アライグマの捕獲・駆除は法律によって管理されており、もしも違反した場合は罪に問われるため注意が必要です。
捕獲に成功した場合は、速やかに自治体や専門業者に連絡し、引き取ってもらうようにしましょう。
エサトラップを活用する
アライグマは人間が用意したエサにも興味を示すため、エサを利用することで生息地を調べることもできます(この調査手法を「エサトラップ法」という)。
エサトラップ法はアライグマが手で餌を取る習性を利用したものであり、ペットボトル・針金・エサ(チーズ、ピーナッツなど)・ペンチ・カッターナイフなどを用いて簡単に作ることが可能です。
エサトラップは、アライグマが通りそうな木の枝・柵といった箇所に設置することをおすすめします。
エサトラップを設置→エサが取られていた場合はアライグマが近くにいる可能性が高いため、その周辺に捕獲機を設置してみるのもよいでしょう。
罠に引っかからない場合は適度に設置場所を変える
捕獲機を設置したものの、3日~10日程度経っても効果が期待できない場合は、設置場所を変えてみましょう。
また、設置後は1日1回以上巡視をおこない、アライグマが捕獲されているか・違う動物が誤って捕獲されていないか確認することも重要です。
もしも違う動物が捕獲されていた場合は「鳥獣保護管理法違反」となるため、速やかに放獣する必要があります。
柵を効果的に設置する
侵入防止策としても有効となるのが「柵の設置」です。
とくに、アライグマに有効とされる防除は、電気柵や金網柵などを複合的に活用する方法といえます。
柵を設置し、かつ電気柵を用いて侵入しようとしたアライグマを感電させることができれば「不快な場所」として警戒させ、侵入そのものを防止できるかもしれません。
捕獲機だけでなく、こういったアライグマにとって罠となる存在を設置しておくことも、防除するうえで重要となるでしょう。
自身の手に負えない場合は専門業者に相談しよう!
駆除免許を取得し・自治体に申請をすれば、業者に頼らなくても自身で捕獲・駆除をおこなうことは可能です。
ただし、免許を取得する・自治体に申請するのどちらもある程度の期間を必要とするため「目の前のアライグマをすぐに駆除したい」という場合は、かならずしも適した方法とはいえません。
自身で対処するには手間とリスクを伴うこと、いずれにせよ大なり小なりの費用が発生することも含め、不安を感じる方はプロに任せるのもよいといえるでしょう。
どの方法を選択するかはもちろん人それぞれで異なりますが、もしも業者に依頼する際は複数の業者を比較して、より費用・サービス内容に納得がいくところを選ぶことをおすすめします。
まとめ
アライグマの捕獲・駆除は、該当する狩猟免許を取得したうえで、自治体に申請することで許可を得ることができます。
ただし、許可を得たうえでも、相応の手間とリスクを伴うため、不安を感じる方は専門業者に依頼するのもよいといえるでしょう。
アライグマなど害獣の被害は、放置するほどに深刻化するため、早期にどうするべきかの方向性を決める必要があります。
手段は豊富に用意されているため、自身に合った方法で被害を防げるよう工夫してみましょう。
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