書き出し
世界には、実にさまざまな種類の動物が存在します。
日本に生息する哺乳類の数は約120種類、鳥類に限っても約360種類いるとされ、私たち人間は、そんな多くの野生動物たちと隣り合わせで生きているのです。
もちろん、すべての動物と人間が共生できれば良いのですが、時として野生動物たちは人間に牙を剥き、私たちの生活に多様な災いをもたらします。
そこで今回は、日本に生息する動物たちの、そんな害獣としての側面にフォーカスを当てて、これらの被害にどう立ち向かうべきかを紐解いていきたいと思います。
最近ニュースで”害獣”って言葉をよく耳にするけど、害獣って具体的にどんな問題を引き起こすのかしら?
それに、害獣とそうでない動物の違いってなんなの…?
動物と害獣の違いとは
1. 動物とは
「動物」は、生物学的な分類に基づいた広義の概念で、哺乳類、鳥類、爬虫類、昆虫などの多様な生物が含まれます。
動物は植物と異なり、動いて食物を求める存在であり、地球上における多様な生態系の一部として機能しています。そして、すべての動物は生態系のバランスを保つ役割を担っており、ペットや家畜として飼われる動物や、農作物の受粉を助ける昆虫など、人間にとって有用な存在も多くいます。
2. 害獣とは
一方で「害獣」は、特定の状況において人間に害を与える動物を指す言葉です。
獣(毛+もの)の語源からも分かる通り、狭義には哺乳類に属する動物のうち、農作物や家屋に被害を与えたり、疾病を媒介したり、人間の生活に直接的な悪影響を及ぼすものを指します。
害獣は生物学的には通常の動物と変わりありませんが、人間にとって問題となる行動をとるため、害獣と見なされることになります。
害獣の例として、以下の動物が挙げられます。
- ネズミ:食べ物を荒らし、建物に損害を与え、病気を媒介します。
- イノシシ:農作物を荒らし、農家に経済的な被害をもたらすことがあります。
- アライグマ:農産物を荒らすほか、狂犬病などの病気を媒介する恐れがあります。
3.「動物」と「害獣」の関係性
「動物」と「害獣」は同じ生物でありながら、その区別は人間との関係によって変わります。
たとえば、イノシシは自然の中では生態系に重要な役割を果たす動物ですが、人間の農地を荒らす場合には害獣として扱われます。
つまり、動物はその生態的役割を考慮すれば貴重な存在である一方、人間の活動や経済に悪影響を与えるときには害獣と見なされるのです。
また、法的には「害獣」として認定される動物は、地方自治体や国家レベルで対策が講じられることがあり、日本では鳥獣保護法に基づき一部の動物が「有害鳥獣」として指定され、一定の条件下で駆除が許可されています。
結論
「動物」と「害獣」の違いは生物学的なものではなく、主に人間社会におけるその役割や影響に基づいています。
動物は自然界の一部としての役割を持つ一方、特定の状況下で人間に害を与える場合に「害獣」として認識されるのです。
害獣と呼ばれる野生動物たち
害獣として区分される動物は、実にたくさん存在します。
この章では、日本国内における一般的な害獣をいくつかピックアップし、その形態(外見的特徴)と生態(行動や生活様式)について詳細に解説します。
1. ネズミ類(クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミなど)
形態
種類ごとに大きさが異なり、頭胴長と尾長を合わせた長さは約10~40cmほど。
3種の中でもドブネズミが特に大きく、大きい個体では体長が40cmを超すこともあります。
頭胴長と尾長がほとんど同じ長さであることが多く、尻尾と四肢を除く全身が薄い毛に覆われており、体毛は灰色や茶色、黒色が多いです。
生態
ネズミの食性は雑食で、植物の種子や昆虫、家畜の飼料、さらにはゴミなどの多様な食物を摂取します。
また、人家や都市部など様々な場所で繁殖可能で、年に数回、多数の子を出産します。
2. イノシシ
形態
体長は1〜1.5m、体重は50〜150kgにも達します。
太く短い足と先が尖った鼻が特徴的で、体は茶色や黒色の粗い毛で覆われ、大きく鋭い牙を持ちます。
生態
イノシシは主に山林や農地に生息し、木の根や地下茎、ドングリなどを掘り返して食べることが多い雑食性の動物です。
本来は昼行性ですが、農作物を狙って人里に下りる際には人目を避けて夜間に活動し、種々の農業被害を引き起こします。
また、イノシシは遺伝的な近縁関係にあるブタに豚コレラなどの家畜伝染病を媒介しやすく、感染が発覚した場合は全頭殺処分といった甚大な損失を養豚業者にもたらします。
3.イタチ(ニホンイタチ、チョウセンイタチ)
形態
ニホンイタチは体長約28〜37cm、尾の長さは13〜17cmほどで、体は細長く、全身が赤褐色の毛で覆われています。
チョウセンイタチはやや大型で、体長は約30〜40cm、尾の長さは15〜18cmほど。
ニホンイタチに比べて体色が少し明るい傾向がありますが、両種ともに鋭い歯と爪を持ち、非常に機敏に動きます。
生態
イタチは夜行性で、主に夜間に活動しますが、日中にも見かけることがあります。
森林や河川付近、農村地帯などに広く分布し、小動物や鳥類、昆虫、魚、カエルなどを捕食する肉食性です。
ニホンイタチは主に山間部に生息する日本固有種ですが、チョウセンイタチは韓国や中国を原産とし、関東地方以西を中心に生息域を広げています。
4. アライグマ
形態
アライグマは頭胴長40〜70cm、尾長20〜40cm、そして体重が15〜22kgほどの外来種です。
尻尾に黒色と灰色の特徴的な縞模様、顔には「マスク」のような黒い模様があります。
生態
山間部や農地、都市部といった多様な環境に生息し、両生類、哺乳類、鳥類、魚、昆虫、甲殻類、穀物、果物など、実にさまざまな物を雑食します。
手先が器用で木登りが得意であるほか、泳ぐことも可能です。
自分で巣穴を掘ることがないため、他の動物がほった巣穴や空き家となった人家を棲み家とします。
5. ハクビシン
形態
ハクビシンは体長50〜65cm、尾長は40〜45cmで、体重が3〜4kgほどの小型動物です。
尖った鼻先とイタチのようなスリムな体つき、灰色がかった茶色の体毛と丸く立った耳を特徴とします。
顔には白い筋があり、それが名前の由来とされています。
生態
主に森林に生息するが、人間の住居にも進出することがあり、木登りが得意な習性から電線を伝って移動することがあります。
果実や昆虫、小型の動物や鳥などを食べる雑食性の動物ですが、特に果物を好物とし、近年果樹園を荒らすなどの被害が問題視されています。
6. タヌキ
形態
頭胴長は約50~70cm、尾の長さは約12~25cmで、体重は約5~10kgほどです。
体毛は黒褐色で、顔には特徴的な黒い模様があり、全体的にややずんぐりした体形をしています。
生態
主に森林や河川近くに生息しますが、近年は都市部にも適応し、昆虫、小動物、果実、植物など様々なものを雑食します。
夜間に活動し、人家近くのゴミを漁ることもありますが、人間が少ない場所では昼にも活動します。
7. カラス
形態
日本に生息するカラスは概ねハシブトガラスとハシボソガラスの二種で、体長は約50〜56cmほど。
全身が黒い大型の鳥で、翼を広げた大きさは90〜100cmほどあり、鋭いくちばしと強靭な翼を持ちます。
生態
農作物や昆虫、小動物などを雑食するほか、人間の廃棄した生ゴミも食べるため、都市部や農村にも生息できる適応力のある鳥です。
また、カラスは人間の5〜7歳児程度の知能を持つとされ、道具を使って採餌したり、人間の顔を覚えることが可能です。
8. ムクドリ
形態
ムクドリは体長は約24cmで、灰褐色の体と黄色のくちばしを持つ鳥です。
くちばしは鋭く、全体的にがっしりした体つきで、首から頭部にかけて部分的に白い羽毛を持つのが特徴。
生態
雑食性のため昆虫や果実を主に食べますが、人間が栽培する作物を群れで採餌することから、農地や果樹園に大きな被害をもたらします。
一方で農耕地の害虫を捕食するため、益鳥とされることもあります。
9.テン(ホンドテン)
形態
体長は約40〜55cm、尾長15〜20cmで、メスよりオスが若干大きいです。
体色の個体差が大きく、全体的に黄褐色の体毛の個体は「キテン」、褐色の個体は「スステン」と呼ばれますが、夏と冬で毛が生え変わり、冬は比較的淡い色になる点は共通しています。
細身で体が柔軟なため、木の上や地上での素早い移動が可能です。
生態
テンは森林や山岳地帯に生息する夜行性の動物で、非常に高い木登り能力を持ち、木々の間を素早く移動しながら狩りを行います。
雑食性のため小動物や鳥類、昆虫、果実などを食べるほか、ニワトリを襲うこともあり、養鶏場に侵入して大きな被害を与えることもあります。
10. ヌートリア
形態
ヌートリアは頭胴長40~60cmで、尾長30~45cm、体重は5~10kgほどの大型の齧歯(げっし)類です。
南アメリカ原産で、全身が茶色の粗い体毛に覆われ、後脚には水かきがあります。
生態
湿地や川辺に生息し、主に植物を食べますが、農地に侵入して作物を食害することも多いです。
また、河川や湿地の土壌を掘り返すため、畦や堤防の破壊や洪水の原因となるケースも見られます。
11. キツネ(ホンドギツネ)
形態
キツネは頭胴長が約52~76cm、尾長が約26~42cmのイヌ科の哺乳類です。
犬と比較すると、くさび形の尖った鼻先と鋭い目が特徴的で、赤茶色の体毛とふさふさとした尻尾を持っています。
生態
キツネは雑食性で、小動物や鳥類、果実、昆虫などを食べます。
基本的に森林に生息しますが、森林に接した農地や草原にも姿を現し、人家にも接近することもあります。
12. サル(ニホンザル)
形態
ニホンザルは頭胴長が約47〜60cm、体重が約6〜18kgの猿の一種で、日本の本州、四国、九州に生息します。
短い尾と赤い顔が特徴で、全身は茶色い毛で覆われています。
生態
主として果物や木の実を好むものの、雑食性のため植物の葉や種子、キノコ、さらには昆虫や小動物も食べます。
社会性が高く、十数頭から百頭近い群れを形成して基本的に山間部で生息しますが、畑や果樹園を荒らすなどの農業被害も深刻です。
13. アナグマ
形態
アナグマは体長約52〜90cm、尾長約11〜20cmの哺乳類です。
短い足と幅広い頭部が特徴で、体毛は灰褐色。顔には白黒の縞模様があります。
生態
その名の通り地下に巣を作って生活し、昼間はこの巣穴の中で休息をとります。
小規模な群れを形成するものの、単独で両生類や爬虫類、昆虫、小動物、果物、キノコなどを狩って食べます。
14. キョン
形態
キョンは体長約47〜70cm、体重約12〜17kgほどで、全身が茶色の体毛に覆われたシカの一種です。
オスのみに短いツノが生え、眼の下に臭腺の開口部が見えるのが特徴です。
生態
草食性のため主に草や葉、若木の皮、果物を食べます。
群れを作らず単独で生活することが多いですが、一年を通して繁殖できるため、外来種として特に房総半島や伊豆大島で問題になっています。
ムクドリやヌートリア、アナグマにキョン…
害獣ってこんなにたくさん存在するのね!
害獣なんて自分とは無関係だと考えてたけど、思い返してみたらネズミやカラスの被害になら遭ったことがあるわ…。
害獣被害とは何か
以上のような害獣たちは、さまざまな形で人間の生活、農業、環境に深刻な被害をもたらします。
それぞれの害獣が引き起こす害獣被害の内容を詳しく見ていきましょう。
1. ネズミ類(クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミなど)
- 食害:食品や農作物を荒らし、倉庫やキッチン、農場に被害を与える。
- 感染症の媒介:ネズミはサルモネラ症やペスト、ハンタウイルスなどの病気を媒介し、人間に深刻な健康被害をもたらす可能性がある。
- 建物の損壊:電気配線設備をかじることで、火災や建物の損傷の原因となる。
- 繁殖力の強さ:繁殖が早く、被害が拡大しやすい。
2. イノシシ
- 農業被害:田畑に侵入し、米、野菜、果樹などの作物を掘り返し、農家に甚大な経済的被害を与える。
- 土壌や生態系の破壊:土を掘り返す行動によって土壌が荒れ、周辺の生態系が変わることがある。
- 人的被害:人里に出没して人間を襲うことがあり、特に秋から冬にかけては繁殖期で気性が荒くなる。
3. イタチ(ニホンイタチ、チョウセンイタチ)
- 家禽や卵への襲撃:イタチは非常に攻撃的で、養鶏場に侵入し、ニワトリやその卵を襲う。一度侵入すると一晩で多くの家禽が襲われるため、その被害は甚大。
- 農業被害:イタチは果樹や作物を食害するため、特に果樹園では深刻な被害が報告されています。
- 生態系の影響:チョウセンイタチなどの外来種は在来のニホンイタチと競合し、生態系に悪影響を与える。外来種が定着することで在来種の減少や絶滅リスクが増加。
4. アライグマ
- 農作物への被害:果樹園や畑を荒らし、果物や野菜を食害する。特にサクランボ、リンゴ、ブドウなどに被害が大きい。
- 家屋への侵入:屋根裏や天井裏に巣を作り、断熱材を破壊するほか、フン尿で建物に悪影響を及ぼす。
- 感染症のリスク:アライグマ回虫やレプトスピラ症などの病原菌を媒介するため、ペットや人間に健康リスクをもたらす。
5. ハクビシン
- 果樹や農作物の被害:果樹園に侵入して果実を食害し、農家に経済的損害を与える。特にブドウやリンゴ、ミカンが被害を受けやすい。
- 家屋への侵入:屋根裏に住み着き、糞尿による衛生被害や建物の損壊を引き起こす。
- 寄生虫の媒介:ハクビシンのフンにより、エキノコックスなどの寄生虫が人間に感染する危険性がある。
6. タヌキ
- 農業被害:果物や野菜、特にトウモロコシやサツマイモ、果実類を食害する。ゴミの食い荒らしも問題となる。
- 家屋や庭への侵入:生ゴミや食物を漁るために人家の近くに出没し、衛生問題を引き起こす。
- 寄生虫の媒介:エキノコックスや狂犬病などの病気を媒介し、ペットや人間に感染するリスクがある。
7. カラス
- 農作物への被害:果実や野菜をはじめ、特にトウモロコシ、スイカ、メロンなどを食害し、農家に損害をもたらす。
- ゴミ荒らし:都市部ではゴミ袋を引き裂き、生ゴミを散乱させることで衛生上の問題が発生。
- 騒音と巣の被害:鳴き声や巣作りによる騒音被害、巣の撤去が難しい場合があり、電柱や建物にも影響を及ぼす。
8. ムクドリ
- 農業被害:果樹園や農作物を食害し、特にサクランボやブドウ、梨などが狙われやすい。群れで大量に発生するため、被害が拡大しやすい。
- 都市部での騒音被害:大群で一箇所に集まり、鳴き声やフン害により周辺住民にストレスを与える。23時を過ぎても鳴き止まないケースもしばし見られる。
- フン害:大量のフンによって建物や車両、街路樹などが汚れ、景観を損なう。
9. テン(ホンドテン)
- 家禽やニワトリの襲撃:テンは養鶏場に侵入し、ニワトリや家禽を襲います。特に一度に多数の鳥を襲うことがあり、経済的損害は大きくなることが多いです。
- 果樹園への被害:テンは果物も好んで食べ、特にブドウやリンゴなどの果樹を食害します。収穫期に果樹園に大きな損害を与えることがあります。
- 家屋への侵入:テンは木登りが得意で、巣作りのため屋根裏や天井裏の断熱材を破壊するほか、フンや尿で建物を汚染し、衛生問題を引き起こします。特にフンに含まれる病原菌や寄生虫が拡散することで、健康被害が懸念されます。
10. ヌートリア
- 農業被害:水田や畑に侵入して作物を食害する。特に稲やキャベツ、ニンジンなどが被害を受けやすい。
- 水路や堤防の損壊:ヌートリアが巣を作るために土を掘り返すことで、水路や堤防が弱体化し、洪水のリスクが高まる。
- 生態系の破壊:外来種として他の生物との競争に勝ち、昆虫や貝類をはじめとする在来種の個体数減少を招く。
11. キツネ
- 家畜への被害:家禽(ニワトリなど)や小型の家畜を襲い、食害することがある。
- 感染症の媒介:エキノコックスなどの寄生虫を媒介し、感染症リスクを増加させる。
- 農作物への影響:野菜や果実、特にトウモロコシや果樹園の果実を食害することがある。
12. サル(ニホンザル)
- 農作物の被害:サルは果物や野菜、特にイモ類や柿、トウモロコシなどを好んで食べ、農家に大きな経済的損害を与える。
- 家屋への侵入:食べ物を求めて人家に侵入し、食物や家財を荒らすことがある。
- 人間への攻撃:食物を奪う際に人間に対して攻撃的になることがあり、特に観光地などでは接触事故が発生することもある。
13. アナグマ
- 農作物の被害:農地に侵入し、ジャガイモやニンジンなどの地下にある作物を中心に掘り返して食害する。
- 庭や家屋への影響:地中に巣を作るため、庭の芝生や花壇を掘り返すことがある。家屋の基礎部分に影響を与える場合もある。
- 感染症の媒介:アナグマは結核などの病原菌を持っており、接触することで感染リスクが高まる。
14. キョン
- 農業被害:小型で活動範囲が広く、果樹園や野菜畑に侵入して作物を食害する。特に若い芽や果実に被害が集中する。
- 森林破壊:若木や苗木の樹皮を食べることで森林の成長を阻害し、土壌や植生に悪影響を及ぼす。
- 外来種による生態系の変化:キョンは中国南部や台湾を原産とする外来種であり、在来動物との競争によって生態系を変化させる。
一口に害獣被害って言っても、色々あるのね…。
自宅に棲みつかれたら大変だし、病気を伝染されるなんて絶対イヤ!
害獣対策
害獣対策の方法と選択肢
もし前述のような被害に遭ったとき、私たちが取るべき対策とはどのようなものでしょうか?
害獣対策には多様な方法がありますが、動物の種類や状況に応じて適切な手段を選ぶことが何より重要です。
以下では一般的な害獣対策の方法と、選択肢について解説します。
1. 捕獲トラップ
- 概要: トラップを使用して害獣を捕らえる方法です。箱罠や足かけ罠、粘着シートなどが代表的なトラップの種類です。
- 特徴: 物理的に動物を捕まえるため、確実に個体数を減らすことができます。主に小型の害獣に有効で、住宅地や農地での利用が多いです。
- 難易度: 害獣がトラップを警戒して近寄らないこともあり、設置場所やエサの選び方が成功の鍵となります。
- 危険性: 捕獲した動物が暴れることや、設置者がトラップに誤って触れてしまうリスクがあります。
ネズミを除く害獣を無断で捕獲することは鳥獣保護管理法によって禁じられています。
詳しくは後述します。
2. 駆除薬(毒餌・殺鼠剤)
- 概要: 害獣に有害な成分を含む餌や薬を設置し、摂取させることで駆除する方法です。法律によって認められたネズミにのみ使用できます。
- 特徴: 毒餌を設置するだけで、手間やコストをかけずに効率的に駆除できます。
- 難易度:毒餌を食べさせるためには行動パターンを考慮して設置する必要があります。また、耐性を持った個体が増える可能性もあります。
- 危険性: 人間やペットが誤って毒餌に触れるリスクがあるため、慎重な取り扱いが求められます。
3. 追い払い・忌避剤
- 概要: 害獣が嫌がる臭いや音、光などを利用して近寄らせないようにする方法です。市販の忌避スプレーや超音波装置、強い光を発する機器などがあります。
- 特徴: 害獣に直接的なダメージを与えることなく追い払えるため、比較的環境に優しい方法です。家庭や農地での使用が一般的。
- 難易度: 持続性が低く、害獣が忌避剤に慣れてしまうこともあるため、効果の維持が課題です。
- 危険性: 忌避剤そのものには大きな危険性はありませんが、効果が一時的であるため、害獣が戻ってくるリスクがあります。
4. 生息地の管理
- 概要: 害獣が生息しにくい環境を作るため、餌や隠れ場所となる要素を取り除く方法です。例えば、ゴミの管理、餌場の撤去、建物の修繕などが含まれます。
- 特徴: 長期的な害獣の防除に効果的で、再侵入を防ぐための予防措置として非常に重要です。特にネズミやアライグマのような都市害獣に対して効果的です。
- 難易度: 生息環境を完全に制御するのは難しいこともあり、定期的なメンテナンスが必要です。
- 危険性: 餌の放置や建物の隙間を見逃すと、再び害獣が戻ってくるリスクが高まります。
5. ライフルやエアガンを使用した駆除
- 概要: 専門業者や許可を得た個人が銃器を使用して直接害獣を駆除する方法です。主に大型の害獣(シカやイノシシなど)に適用されます。
- 特徴: 銃器を使うため即効性があり、対象の害獣を一撃で駆除することが可能です。
- 難易度: 銃器の取り扱いや免許の取得が難しく、定められた狩猟期間に定められた地域でしか使用できません。
- 危険性: 銃器の誤使用や、人間や他の動物への誤射のリスクがあります。特に人が多い地域での使用は難しいです。
6. プロによる捕獲・駆除サービス
- 概要: 専門の害獣駆除業者に依頼し、プロが動物を捕獲または駆除するサービスです。
- 特徴: 法律や安全基準に則って適切な方法で駆除されるため、確実で安全な方法です。また、駆除後の清掃や消毒まで行ってもらえる場合があります。
- 難易度: 駆除自体はプロが行うため、依頼者の手間はかかりませんが、費用が発生する点がデメリットです。
- 危険性: 駆除自体は専門家が行うため、依頼者に危険が及ぶ心配はありません。
害獣駆除の危険性
害獣駆除には必ず危険が伴います。
駆除に伴うリスクとして、具体的には次の点に注意が必要です。
- 動物の攻撃: 駆除の際に動物が攻撃的になる場合があります。小型の害獣でも、鋭い牙や爪を持つため大変危険です。
- 感染症・寄生虫のリスク: 害獣に接触することで、人獣共通感染症(Q熱、エキノコックス、サルモネラ症など)を罹患する危険があります。他にも、線虫やダニ、ノミなどの寄生虫が移る可能性もあります。
- 毒薬やトラップの誤使用: 駆除薬やトラップの誤使用は、ペットや人間に害を及ぼす可能性があります。適切な設置場所や取り扱いが求められます。
駆除の難易度
駆除の難易度は害獣の種類や地域の状況によって大きく異なります。
以下の点が難易度に影響します。
- 害獣の警戒心: ネズミやアライグマなどは非常に警戒心が強く、トラップや駆除薬を避けることが多いです。トラップを仕掛ける場所や餌の選択が重要になります。
- 再侵入のリスク: 生息地の管理が不十分だと、駆除しても新しい害獣がすぐに侵入することがあります。特に都市部では完全な駆除が難しいことがあります。
- 法的な制約: 日本では害獣の捕獲や駆除に関して法的な規制が厳しく、一部の動物には捕獲許可が必要です。許可なしに捕獲を行うと罰則の対象になる場合があります。
まとめ
害獣駆除には多様な方法があり、それぞれの動物や状況に応じて最適な手段を選択することが重要です。
しかしながら、駆除には危険性や法律的な制約があるため、専門知識や技術を持ったプロの力を借りることが推奨されます。
また、単なる駆除だけでなく、長期的な予防策として生息地の管理や忌避措置を行うことが被害を最小限に抑える鍵となるでしょう。
動物に関連する法律
動物の命を扱う害獣駆除は、その方法や条件までもが法律による厳格な管理を受けます。
主に関わる法制度としては「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」と「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」があり、それぞれが異なる目的で動物の扱いを規定しています。
害獣駆除に関わるこれらの法律について、あらかじめ詳細に理解しておきましょう。
1. 鳥獣保護管理法
鳥獣保護管理法は、日本国内に生息する野生の鳥類や獣類を保護し、同時に適正な管理を行うことで、生態系の維持や人間との共生を図ることを目的としています。
この法律は害獣駆除においても、非常に重要な役割を果たします。
鳥獣保護管理法の概要
- 保護の対象: 日本国内に生息する野生の鳥類や獣類のうち、家ネズミや一部の海棲哺乳類を除くすべての動物が対象です。害獣とされる動物も、この法律によって保護されています。
- 狩猟や駆除の規制: 鳥獣保護管理法では、野生動物の捕獲や駆除に許可が必要であることを定めています。勝手に捕獲・駆除を行うことは違法とされ、違反すると罰則が科されます。
- 有害鳥獣駆除の許可: 一部の動物は、農作物や生活に害を与える「有害鳥獣」として指定され、行政の許可のもとで捕獲が可能となります。この許可は、地域ごとの被害状況に応じて策定された鳥獣保護区や管理計画に基づいて、個別になされます。
- 狩猟免許の取得: 狩猟や有害鳥獣駆除を行うためには、専門の狩猟免許を取得する必要があります。また、使用する道具(罠や銃器)によっては、さらに高度な許可や技能が求められることがあります。
- 保護と駆除のバランス: 鳥獣保護管理法は、野生動物の保護を第一としつつ、必要に応じて害獣駆除を認めています。このバランスを取ることが重要であり、無秩序な駆除は法律違反とみなされます。
鳥獣保護管理法の害獣駆除への影響
- 捕獲報告義務: 害獣を駆除した場合、捕獲した個体数や場所を行政に報告する義務があります。これは、生態系のバランスや生物多様性を維持するために必要な手続きです。
- 駆除手続きの煩雑さ: 行政の許可が必要なため、駆除を行うには事前に手続きが必要であり、手間がかかる点も難点です。大規模な農作物被害を受ける地域では、駆除手続きが遅れることで被害が拡大することもあります。
2. 動物愛護法
動物愛護法は、すべての動物の命を尊重し、適正な管理や飼育を促進することを目的とした法律です。
この法律はペットなどの家庭動物に加え、野生動物や害獣にも一定の保護を適用します。
動物の扱いに関して人道的な視点を強調しており、害獣駆除にも影響を与える法律です。
動物愛護法の概要
- 動物の虐待防止: 動物愛護法では、動物に対する虐待や残酷な扱いを禁止しています。たとえ害獣であっても、むやみに苦しめるような方法で駆除することは許されません。
- 適正な駆除方法の規定: 駆除の際には、動物が過度に苦しむことなく迅速に処理されるよう、人道的な方法を採用することが求められています。
- 捕獲後の取り扱い: 捕獲した害獣を安易に放置したり、残酷な方法で処分することは禁じられています。捕獲した動物の処理方法も、法律に則り適切に行わなければなりません。
動物愛護法の害獣駆除への影響
- 人道的な駆除の義務: 水に沈めて溺死させるといった、かつては一般的だった駆除方法も、現在では動物愛護法に抵触すると判断される可能性があります。駆除後の処理の仕方や駆除方法を適切に選ばないと、動物虐待として法的に問題視される可能性があります。
- 駆除と保護の両立: 効率的な駆除方法であっても、一定の残虐性を伴う手段による駆除は避けなければなりません。これにより、駆除作業がより煩雑になるケースもあるでしょう。
害獣駆除って思いのほか大変なのね!
最近は都会でも害獣が出るらしいし、私も気をつけた方が良さそうだわ。
いろいろ教えてくれてありがとう!
後書き
本コラムはこれで以上となります!
今回は害獣と呼ばれる野生動物たちについて解説しましたが、ご理解は深まりましたでしょうか?
当サイトでは、害獣・害虫にお悩みの方に向けて、豊富な情報をお届けしています。
「駆除業者に依頼するべきかな…」
「自分で対策できるの?」
…などといった害獣・害虫に関する疑問がございましたら、お気軽に当サイトをご活用ください。
コメント