タヌキは、その可愛らしい見た目から人気のある動物です。
野生のタヌキは基本的に森林で生息していますが、昨今の環境問題により人が住まう住宅街にも出没することが多くなりました。
その結果、農作物を荒らしたり、住宅内に侵入しさまざまな被害をもたらす害獣という側面も露わになっています。
本記事では、タヌキの生態や害獣被害、防除方法についてご紹介します。
タヌキは他の害獣にはない独特な習性を持つため、その生態を正しく理解し対策を取っていきましょう。
目次
タヌキ対策は生態を理解することから始めよう
本章では、タヌキの生態についてご紹介します。
タヌキは他の害獣にはない独特な習性を持つため、その生態を正しく理解し対策を講じましょう。
日本に生息するタヌキの種類
タヌキは、哺乳綱食肉目イヌ科タヌキ属に分類される動物です。
古くから日本人にとって身近な動物であるタヌキですが、日本には以下の種類が生息しています。
- ニホンタヌキ(ホンドタヌキ):本州・四国・九州に生息している
- エゾタヌキ:北海道に生息している
北海道の生息域は少なめであり、本州では特に近畿地方において生息域の割合が高いとされています。
イヌ科に属するため、鼻の長い顔つきや足跡がどことなく犬に似ているといえるでしょう。
タヌキは、単独もしくは家族単位で行動し、縄張りは特に持ちません。
そのため、複数の群の行動範囲が重なることもあります。
タヌキの形態
タヌキの形態は、主に以下の通りです。
- 体長:約40~60cm
- 尾長:約12~18cm
- 体重:約3~10kg程度
ずんぐりとした体型をしており、足はそれほど長くありません。
また、夏期にはイメージよりも痩せて見えることもあります。
体色は茶褐色から灰褐色が基本であり、目の周辺・足全体・尾の先端が黒っぽいことが特徴に挙げられます。
なお、タヌキにとって尾は重要な役割を果たす部位です。
長さ・太さには個体差があるものの、一般的には体長の約半分を占めており、ふさふさとしています。
【タヌキの尾の役割】
- バランスを取る際に重要な役割を果たす
- ケガや病気から身を守るための「見せかけの大きさ」として活用する
- 暖を取る
- 身の周りの物を掃除するための道具として使用される など
タヌキの鳴き声
タヌキが鳴くときは、小型犬が発するような甲高い声を発します(「ヴーーー」「ウワーーン」「ウユーーン」など)。
ただし、タヌキは基本的にあまり鳴くことがない動物です。
相手を威嚇する際や喧嘩の際に鳴くことはありますが、逆に嬉しいときや楽しいときは鳴かないとされています。
タヌキは、怒っているときや警戒しているとき以外は感情を表に出さない生き物のため、声だけでなく表情や身体のどこかが変化する(たとえば毛が逆立つなど)といったこともありません。
なお、赤ちゃんの時分はお腹がすくと「キュンキュン」と泣いて、母タヌキに空腹を知らせます。
こちらは、生き延びるために本能で鳴いているというイメージに近いでしょう。
タヌキの行動特性
タヌキは主に夜行性の生き物であり、夜遅くなるほどに活動が活発化していきます(ときには日中に行動するケースもある)。
視力がそこまで高くないことから、基本的には嗅覚を頼りにエサを探し回ります。
性格は臆病であり、些細な音が聞こえただけでも気絶してしまうこともあるほどです。
ただし、タヌキは適応能力の高さとたくましい生命力を持っており、多様な環境に適応し生き延びてきました。
適応能力の高さは巣作りの技術にも現れており、岩穴や木の穴を利用したり自ら土を掘って生活することもあれば、ときには別の動物が作った穴を活用するケースもあります。
タヌキの足跡
タヌキの足には非常に柔らかい肉球があり、地面に足跡を残しやすいという特徴があります。
また、その足跡は「人の手」に例えられることがあり、手のひらと指がくっきりと残ります。
加えて、他の動物と異なり足を交互に前へ出しながら歩かないことから、足跡の配置が不規則であることも特徴に挙げられるでしょう。
タヌキの食性
タヌキは雑食性であり、果実・草本類・昆虫・小動物などさまざまなものを口にします。
住まう環境(状況)だけでなく、季節によって食べるものが変わる(※)のもタヌキの特徴の一つであり、こういった点もさまざまな環境で生き抜くための重大な要素となっています。
(※春には芽吹く草花・夏には果物や昆虫・秋には種子や堅果・冬には小動物や冬眠中の昆虫を捕食する、など)
人が住む都市部であれば、農作物や人が食す食べ物だけでなく、ゴミ捨て場などに置いてあるゴミを漁ることもあります。
タヌキは、環境に合わせた食べ物を選び取ることで、一年を通して栄養を確保しているのです。
繁殖時期と生活サイクル
タヌキの繁殖時期は、春ごろがもっとも活発になります。
妊娠期間は約2か月ほどと比較的短めで、春の終わりから初夏にかけて子どもが誕生・母親のもとで成長し、秋には独立して新しい生活を送る準備をするといわれています。
タヌキの一生は約10年程度で、その間に何度か繁殖を経験します。
タヌキが引き起こす害獣被害とは?
見た目こそ可愛らしいものの、タヌキが人の住まう生活圏に浸入すると多大な害獣被害を引き起こす恐れがあります。
本章では、タヌキが引き起こす害獣被害についてご紹介していきましょう。
騒音被害
人家に浸入した場合、タヌキは寝床が作りやすい床下に棲みつくことも少なくありません。
また、上手ではないものの木登りもでき、屋根裏などに浸入してそのまま棲みついてしまうこともあります。
タヌキは夜行性のため、もし床下や屋根裏などに棲みつかれると人々が寝静まった夜中に動き回ることが多くなり、騒音被害に悩まされる可能性が高くなります。
集団で行動することが多いこともあって、子どもが生まれると足跡はさらに大きくなり、人によっては睡眠不足やノイローゼを発症する恐れもあるでしょう。
悪臭被害
タヌキは、同じ箇所に排泄をする「溜め糞」という習性があり、一頭が糞尿をする場所を決めると、他のタヌキも同じ箇所で糞尿をするようになります。
溜め糞をするのはタヌキだけではなく、イタチ・アライグマ・ハクビシンなど他の害獣もおこないます。
野生動物が自身で糞尿を処理することはないため、気づかぬうちに糞尿が蓄積し、いずれは強烈な悪臭が漂うこととなるでしょう。
悪臭によって、健康被害を訴える方も少なくありません。
家屋への被害
上記の溜め糞が蓄積されていくと、天井や柱の腐敗やシミができる原因となります。
その結果、建物がどんどん劣化し、下手をすれば天井が抜け落ちるといった家屋の被害へと発展する恐れもあるでしょう。
ここまで被害が進んでしまうと、駆除だけでなく建物の修繕・リフォームが必要となり、より駆除・修繕にかかる費用が高額となってしまいます。
健康被害
野生動物は基本的に不衛生であり、その体にはさまざまな病原菌や寄生虫が付着しています。
タヌキの場合は「ヒゼンダニ」というダニが寄生していることがあり、このヒゼンダニが人に寄生すると「疥癬症」という皮膚病を引き起こす恐れがあるため要注意です。
疥癬症にかかると腹部・胸部・大腿内側などに激しいかゆみが生じ、完治するまでに数週間~2ヶ月を要します。
人だけでなく犬や猫などのペットにも感染する恐れがあり、特に同じイヌ科である犬が感染する可能性が高いため、犬と一緒にお住いの方は特に注意が必要といえるでしょう。
農作物への被害
古くより、タヌキによる農作物の被害は農家が頭を抱える問題といわれています。
雑食性でなんでも口にするタヌキですが、特に糖度の高いトウモロコシ・サツマイモ・ミカンといった野菜や果物を好んで食べる傾向にあります。
近年は庭で家庭菜園をおこなう方も多く、農業を営む方はもちろん、家庭菜園で野菜や果物を育てている方も十分な警戒が必要といえるでしょう。
タヌキは許可なく駆除できないため要注意!
日本には「鳥獣保護管理法」という、特定の動物を無許可で駆除・捕獲してはいけないという法律があり、タヌキはこの法律の対象となっています。
この法律を破ってしまうと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるため、毒薬・毒餌・捕獲機などを使ってタヌキを駆除しないようご注意ください。
なお、自身でタヌキを駆除する場合は、狩猟免許の取得や申請などの手続きが必要です。
免許を取得することはもちろん、捕獲・駆除の許可が出るまでにも多大な手間と時間がかかるため、早く対策したいと考えている方にとっては良い案とはいえません。
安心・安全かつ迅速にタヌキを駆除したいという方は、被害が軽微なうちに害獣駆除業者に相談することをおすすめします。
タヌキの駆除をプロの業者に依頼した場合、以下のようなさまざまな対応を徹底しておこなってくれます。
- 現地調査(被害状況の確認)
- 捕獲機の設置
- 捕獲した動物の引き取り
- ため糞の除去
- 被害にあった場所の殺菌消毒
- 侵入経路の封鎖
- 専用器具を使った追い出し など
駆除費用は、被害状況や依頼する業者(サービス内容)によって変わるため、相見積もりをとって複数社を比較するとよいでしょう。
業者選びのポイントは「安さだけに囚われないこと」です。
作業内容や保証内容がある程度充実していないと、被害が再発する可能性が高まり、再発時も高額な費用を払わなければいけません。
費用・サービス内容などを総合的に判断し、自身が納得できる業者を選んでみましょう。
自身でできるタヌキを寄せ付けないための対策
タヌキの被害を軽減するために自身でできることは、基本的に「追い出し」と「寄せ付けないための予防」のみです。
本章では、自身でできるタヌキを寄せ付けないための対策法をご紹介します。
対策法①:エサになるものを放置しない
タヌキを引き寄せる原因となるため、野菜や果物・生ごみといったタヌキのエサとなるものは、家の周りに放置しないようにしましょう。
- 生ごみの袋を置きっぱなししない(密閉する・すぐ捨てる)
- 破棄予定の野菜や果物を出しっぱなしにしない
- 木から落ちた果物などを放置せず掃除する など
タヌキは夜行性のため、活動頻度が少ない朝にゴミを掃除するとよいでしょう。
また、タヌキが持ち出した食べ物の残骸が、他の動物を引き寄せる原因にもなり得るため注意が必要です。
エサとなるものを掃除する癖をつけることができれば、タヌキはもちろん、他の害獣や害虫の予防にもなります。
対策法②:忌避剤を使用する
忌避剤とは、有害動物が嫌う成分を用い、害獣や害虫などを近寄らせなくする薬剤のことです。
たとえば、タヌキが嫌がる臭いとして、天敵であるオオカミやライオンの尿の臭いが挙げられます。
こういった臭いのする忌避剤をタヌキの侵入経路に置いておくと、タヌキはその場所に近づきにくくなります。
また、室内で利用するのであればハッカ油もおすすめです。
タヌキに有効な忌避剤やハッカ油は、ホームセンターやネット通販などで入手できるため、気になる方は試してみるのもよいでしょう。
ただし、いずれは臭いに慣れて警戒心を解いてしまう可能性が高いため、適度に薬剤を変えたりなど工夫は必要です。
対策法③:金網・電気柵を使用する
畑や家庭菜園などへの侵入を防ぎたい方は、金網や電気柵を用意するのも効果的です。
タヌキに侵入されたくない箇所を囲むように設置すること、また120cm以上の高さがあるものを選びましょう。
タヌキは1m程度の跳躍力があるため、金網が低いと飛び越えられる可能性があります。
電気柵は電流が流れるものの、動物を殺傷するほどの電流は流れないため設置に許可申請を出す必要はありません。
安全装置もついているため、人が触れても命に関わるような電流が慣れることもありません。
ただし、人が誤って触れることがないよう、かならず危険である旨を記載した看板を目立つ部分に取り付けておきましょう。
対策法④:隠れられる場所をなくす
タヌキは臆病な性格をしているため、日中は身を潜め・夜になってから活動を開始します。
そのため、タヌキが隠れられる場所をなくすことで、敷地内に近づきにくくする効果が期待できます。
畑や庭にある雑草は、除草や草刈りをおこない適度に除去することが効果的です。
対策法⑤:タヌキの嫌がる音を利用する
超音波発生装置などを用い、タヌキが嫌がる音を発することで、タヌキの侵入を妨害することができるかもしれません。
超音波発生装置も市販のものを簡単に購入できるため、試してみるのもよいでしょう。
ただし、タヌキにも個体差があるため、音を気にせず侵入してくるケースもあります。
また、忌避剤と同じくいずれは音に慣れるため、同じ罠を設置しているといずれは警戒を解いて侵入してくる可能性もあるでしょう。
かならず効果が出るわけではないため、利用時はその特徴を正しく理解しておきましょう。
タヌキの被害はプロの業者に相談を!
上述でご紹介した自身でできる対策法は、基本的に応急処置に近い対策といえます。
タヌキの駆除は難易度が高く、不慣れな方が対策をおこなっても「効果が得られない(薄い)」「追い出しには成功したが、すぐに再発してしまった」ということは十分に起こり得ます。
確実にタヌキの被害をなくしたいという方は、プロの業者に依頼するほうが安心といえるでしょう。
放置するほど被害は拡大し、駆除にかかる費用も高額となっていくため、できるだけ早めに相談することをおすすめします。
タヌキの駆除に関するよくある質問
本章では、タヌキ駆除に関するよくある質問をご紹介します。
タヌキの駆除は自治体に相談できる?
残念ながらタヌキなど害獣の駆除は、市役所・区役所・保健所などの公的機関では対応してもらえません。
ただし、自治体によっては相談窓口が設置されているケースはあり、以下のようなサポートを受けることができます。
- 害獣駆除の許可(原則狩猟免許所持者のみ可能)
- 捕獲器の貸し出し(害獣駆除の許可を得た方のみ可能)
- 補助金の支給(自治体によって、補助金の有無・対象物・補助金額・害獣の種類などは異なる)
- 害獣駆除業者の斡旋 など
害獣駆除業者の斡旋を除き、基本的には一定の条件を満たす必要があります。
また、具体的なサポート内容は自治体によって異なるため、気になる方はまずお住いの自治体のホームページなどを確認してみましょう。
タヌキはペットにできる?
タヌキは鳥獣保護管理法によって保護・管理されている動物であり、駆除はもちろん、飼育目的で捕獲することも法律違反にあたります。
(怪我をしたタヌキを一時的に保護できるケースもあるが、市町村に飼育許可を申請する必要がある)
そもそもタヌキは輸出入も禁止されており、ブリーダーもいないため、タヌキ自体流通していません。
また、野生のタヌキにはさまざまな病原菌や感染症が付着していること、臆病な性格をしているとはいえむやみに近づくと攻撃される恐れもあるため、非常に危険です。
タヌキを拾ってはいけない・ペットにできないことはもちろん、不用意に近づくべきでもありません。
見た目の可愛さから「飼ってみたい」と考える方もいるかもしれませんが、人にとってもタヌキにとっても不幸せにしかならないため注意しておきましょう。
まとめ
タヌキが人の住まう地域に出没すると、さまざまな害獣被害を受けてしまいます。
自身でできる予防は「追い出し」と「侵入を防ぐ」ことのみであり、素人が下手に対処しようとすると膨大な手間とリスクが発生するため注意が必要です。
すでに被害に遭っている場合は、被害をできるだけ軽減するためにも、早急に害獣駆除業者に相談することをおすすめします。
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