シロアリの駆除は被害が深刻化する前に専門業者に相談することをおすすめしますが、事前の対策or早期発見であれば自身で対策を講じることも可能ではあります。
本章では、シロアリを自身で駆除・対策する方法や、市販の駆除剤の効果や使用上の注意点などをご紹介します。
「シロアリの駆除・対策を、できるだけ自身でおこないたい(費用を抑えたい)」という方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
シロアリを自身で対策・予防する方法とは?
本章では、シロアリを自身で対策・予防する方法についてご紹介します。
名称に「アリ」と付くシロアリですが、実際はアリとは関係のない「ゴキブリ目シロアリ科」に属する昆虫です。
シロアリは「木材を食べる」という習性があり、もしお住いの住居などに棲みつくと建材などを食べられる可能性があり、最悪の場合は建物の倒壊につながる恐れがあります。
放置するほどに被害が甚大となるため、前もっての予防はもちろん、発見時にはできるだけ早く対策を施した方がよいといえるでしょう。
市販の薬剤を活用する
自身でできるシロアリ対策としては「市販の専用薬剤を使用する」ことが基本となります。
薬剤は、ホームセンターやネット通販などで簡単に入手でき、液剤を散布する方法やベイト剤を埋設する(=毒エサを設置する)など商品によって特性に違いがあります。
- 液剤を散布する場合:被害箇所だけでなく、被害に遭う可能性のある木部全体に散布する
- ベイト剤を埋設する:建物を取り囲むように設置するのが望ましい
お住いの住居や被害状況によって利用する薬剤に違いが生じるため、事前の確認をしたうえで購入に踏み切った方がよいといえるでしょう。
市販の薬剤を選ぶポイント
市販の薬剤には数多くの種類が存在しますが、基本的にはシロアリ・羽アリ専用(or含まれる)の薬剤であれば一定の効果が期待できるといえます。
また、認定薬剤であれば、より安心して使用できるはずです。
駆除剤(薬剤)には「スプレータイプ」「燻煙タイプ」などいくつかの種類が存在するため、それぞれの特徴をご紹介していきましょう。
スプレータイプ
スプレータイプは「うじゃうじゃ沸いたシロアリを今すぐになんとかしたい」という場合に役立ちます。
即効性があるため、素早い殺虫効果やシロアリを寄せ付けない効果が期待できるでしょう。
ただし、スプレータイプはむやみやたらと使用するのは厳禁ともいえます。
その理由は「スプレーを嫌がって逃げたシロアリは、逃げた先で新たな巣を形成し繁殖を繰り返す可能性がある」からであり、むやみに噴射すると逆に被害が広がるかもしれません。
また、巣にスプレーを噴射しても飛び出してくるのは一部の個体だけであり、スプレータイプそのものにシロアリを根絶する能力はありません。
スプレータイプを利用する場合は、あくまでも「目の前のシロアリを退治するための緊急処置である」ということを理解し、用途を守って正しく使用しましょう。
燻煙タイプ
燻煙剤とは、加熱によって煙霧状となり、殺虫・殺菌力を有する薬剤のことです。
シロアリに有効な成分が霧状で噴射される燻煙剤を利用することで、家屋内に棲みつくシロアリを撃退できる可能性があります。
ただし、燻煙剤を利用する場合は以下の点に注意しなければいけません。
- 駆除後にシロアリの死骸を自身で処理する必要がある
- パソコン・テレビ・衣類・食器・食料品など、薬剤がかからないようにポリ袋や新聞紙で守る(覆う)必要がある
利用する際は、使用上の注意点を確認してから進めることをおすすめします。
本格的な駆除は「木部・土壌処理剤」を活用しよう!
家屋内で発見したシロアリは集団のほんの一部でしかなく、巣のなかには数万~数百万匹もの個体が生息している可能性があります。
スプレーや燻煙剤もシロアリの駆除や侵入防止に役立つものの、基本的には被害箇所で見つけた個体を撃退することしかできない(=緊急処置に過ぎない)といえるでしょう。
家屋内から完全に駆除するには、住処(巣)から徹底的に根絶する必要があり、そのために「木部処理剤」や「土壌処理剤」の利用がおすすめです。
以下で、それぞれの特徴をご紹介します。
「木部処理剤」とは?
木部処理=シロアリのエサとなる木材に薬剤を吹き付けて浸透させる方法のことです。
薬剤が直接かかればすぐに殺虫できますし、薬剤が染み込んだ木材をシロアリが食べるor触れることでも駆除効果が得られるでしょう。
基本的には、以下のような箇所に液状の薬剤を吹き付けていきます。
- 被害が発生している場所
- 木材の内部など通り道となる場所
- 床下の木材(表面全体) など
また殺虫成分だけでなく、木材の腐敗を防ぐ「防腐成分」も配合されています。
腐敗した木材ほどシロアリに食べられる可能性が高くなり、かつ腐朽自体も建物の強度を下げてしまう恐れがあるため、防腐処理をおこなうことは非常に重要といえるでしょう。
「土壌処理剤」とは?
土壌処理=床下の土壌に薬剤の層を作り、シロアリの侵入を防ぐ処理方法のことをいいます。
床下がコンクリートで覆われている建物の場合は、コンクリートに薬剤を吹き付けます。
ただし、付近に川・池があって水質汚染が心配される場合または土壌の水分量が多い場合は、成分が流出しづらい粒剤をまくこともあります。
市販の薬剤は「認定薬剤」を優先的に使用しよう!
市販の薬剤には多くの種類が存在しますが、基本的には「認定薬剤」を利用することをおすすめします。
日本には「公益社団法人 日本しろあり対策協会」という団体が存在し、建物のシロアリ被害・木材腐朽の防止を安心安全におこなうことを目的とし、薬剤や施工方法の認定登録や技術者の育成をおこなっています。
この協会では、いくつかの項目に対して一定基準をクリアした薬剤を認定登録しています。
もちろん、定められた量・方法を守って施工することが前提となりますが、正しい使い方をすれば「公益社団法人 日本しろあり対策協会」が認定した薬剤がもっとも安心かつ安全に使用することができるでしょう。
シロアリ対策を自身でおこなう際の注意点
本章では、シロアリ対策を自身でおこなう際の注意点をご紹介します。
間違った対処をすると被害が拡大する恐れがあるため、意識しておきましょう。
殺虫剤を使用しない
シロアリや巣を見つけたからといって、家にある殺虫剤を焦って使用しないことが重要です。
忌避効果のあるスプレーを直接当てると、シロアリが家の土台の奥深くまで逃げ込んでしまい、駆除が難しくなる恐れがあります。
また、シロアリは一度離れた巣に戻ることはなく、逃げ込んだ先で新たな巣を形成するため、余計に被害が拡大してしまうかもしれません。
すでに家屋内で繁殖したシロアリを駆除するときと、寄ってくるシロアリを予防するときでは使用する薬剤が異なります。
用途に応じて、適切なシロアリ駆除剤を使用することを意識しましょう。
市販品は有効期間が短く頻繁に使用する必要がある
市販の薬剤は、業務用に比べて効果が弱く・持続性も劣るため、頻繁に使用する必要があります。
たとえば、業者に依頼した場合は5年ほど効果が続くものが多く、業者によってはアフターフォローや保証が充実しているケースもあるでしょう。
しかし、市販の薬剤は数ヵ月程度しか持続しない製品も多く、効果が切れるたびに対策を繰り返さなくてはいけません。
市販品の方が1回ごとの費用は安くなるかもしれませんが、結果的に手間もかかるため、中・長期的にみると専門業者に依頼した方がお得といえるでしょう。
薬剤を正しく使用しないと効果は発揮されない
市販の薬剤を使用しても、シロアリを完全に駆除できるとは限りません。
シロアリは、屋根裏・床下・建材のなかなど、普段人が出入りすることがない場所を根城にします。
どこに・どれだけのシロアリがいるかを正確に把握し適切に対処しなければ、被害が再発する可能性も高くなるでしょう。
不慣れな方が完璧に対処することは難しいため、もし被害状況が判断しづらかったり、明らかに大量発生している場合などは市販品に頼らず業者へ相談するべきといえます。
自身で対策しきれない場合は専門業者に相談しよう!
シロアリの対策は自身でもおこなうことはできますが、素人ができることには限界があります。
もし「シロアリの被害に悩んでいる」「家屋内でシロアリを発見、被害が心配……」という方は、シロアリを発見次第、できるだけ早期に専門業者に相談することをおすすめします。
その理由は「シロアリ被害を放置するほど、駆除・修繕費用が割高となってしまうから」です。
シロアリの個体は非常に小さく、屋根裏・床下・建材のなかなど人が普段足を踏み入れることがない場所に巣を作り繁殖します。
「気づいたときには時すでに遅し」という可能性もあるため、被害を最小限に抑えるためにも早期に業者へ相談した方がよいといえるでしょう。
自身で対策することに比べて費用は高くなる可能性こそありますが「被害を最小限に抑え・再発まで徹底的に防止できる」となれば、業者を利用する価値は十分にあるといえます。
業者へ依頼する際は、相見積もり(=複数の業者へ見積もりを依頼すること)を取り、より良い業者を選定することを意識してみましょう。
シロアリ駆除をおこなう際によくある質問
本章では、シロアリ駆除をおこなう際によくある質問をいくつかご紹介します。
シロアリは掃除機で吸ってもいい?
シロアリを駆除する際、掃除機で吸ってしまうのも効果的といえます。
シロアリは非常に弱い生き物のため、掃除機で吸い込む風圧だけでも簡単に命を落としてしまいます。
掃除機で吸ったあとのごみは、直ちに燃えるゴミなどに出すとよいでしょう。
シロアリ予防はどのくらいの頻度でおこなうべき?
シロアリは日本国内だけでも20種以上が存在し、外来種を含め家屋への被害は増加傾向にあります。
そのため、シロアリ予防が必要な家は「すべての家が対象となる」といえるでしょう。
業者に駆除・予防を依頼した場合であっても、薬剤は永続的に効果を発揮するものではないため、基本的には5年(使用される薬剤の防除効果を保証する期間)を目安に新たな予防を検討すべきです。
もちろん、被害状況によっては5年より早く対策を講じるべきといえます。
また、市販の薬剤を利用する場合は業務用に比べ持続力が弱まるため、数ヵ月などさらに短いスパンで対策を繰り返した方がよいでしょう。
シロアリの被害は木造だけ?鉄筋コンクリートは関係ない?
シロアリ=木材を食べる害虫のため「鉄筋コンクリートは関係ないのでは……?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、木造でも鉄筋コンクリートでもリスクが変わることはありません。
鉄筋コンクリート造りの家であっても、柱や梁には木材が使用されています。
また、隣の家が木造である場合は土のなかを伝ってシロアリが侵入する可能性がありますし、近くに山や林がある場合はエサを求めてシロアリが移動してくる可能性も考えられるでしょう。
鉄筋コンクリートも木造と同じくシロアリ被害に遭遇するリスクがあるため、注意が必要です。
薬剤以外に自身でできる予防法とは?
市販の薬剤を利用する以外で自身ができる予防法としては、以下が挙げられます。
- シロアリのエサになる木材を置かない
- 風通しと日当たりをよくする
- 水漏れや雨漏りをチェックする
端的にいうと「シロアリが棲みつきづらい環境を意識し、作り出す」ことが重要といえます。
駆除剤は人体やペットに影響はある?
過去のシロアリ駆除剤は人体に悪影響を及ぼす可能性もありましたが、近年は安全性の高いものが多く出回っており、基本的に人体への影響を懸念する必要はないといえるでしょう。
室内への影響も著しく低く、以前に心配されていたシックハウス症候群を引き起こす薬剤は、既に使用が取り止めとなっています。
ただし、駆除剤の使用に伴ってアレルゲンが飛散し、アレルギーを引き起こす可能性がある点には若干の注意が必要です。
安全性を気にする方は、上述でも記載した「公益社団法人日本しろあり対策協会」の認定薬剤かどうかを基準に判断してみるとよいでしょう。
シロアリ駆除のベストなタイミングはいつ?
シロアリには産卵時期というものがなく、年間を通して卵を産み幼虫を孵化させます。
そのため、シロアリを発見するまたは建物に異常を感じたとき(床がきしむ・壁や柱から空洞音がするなど)は、できるだけ早く対処に講じた方がよいといえるでしょう。
また、4~5月の春先になると巣からたくさんの羽アリが一斉に飛び立ちます(群飛という)。
飛び立った羽アリは別の場所で新たな巣・コロニーを形成する危険性があるため、羽アリや取れた翅を見つけた際は、早期に対処すべき必要があるといえます。
まとめ
シロアリの駆除・予防は、市販の薬剤を使用することで業者に頼らず自身でおこなうことも可能です。
市販の薬剤を購入する際は、事前に市販品の特性を把握し、用途を守って正しく使用しましょう。
しかし、不慣れな方が完全に対処しきることは難しく、中途半端な対策では被害が拡大する恐れもあるため、少しでも不安がある方はできるだけ早めに業者に相談することをおすすめします。
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