私たちの暮らしに害を与える「害獣(がいじゅう)」を知っていますか?
「害獣」とは、その名の通り、人々に害を与える動物のことです。ペットでもない動物が、あなたの住まいに許可なく侵入し、キッチンの食べ物を漁ったり、インテリアを壊したり、大切な人に危害を加えたりしたら…そんな恐ろしい話はありません。「是が非でも今すぐに退治しよう!」と思っても致し方ありませんが、勝手に駆除すると法律に触れる場合もあるので注意が必要です。
ここでは、そもそも害獣とは具体的にどんな動物を指すのか、それらの生態と駆除するにあたって知っておきたい基礎知識について紹介します。
目次
そもそも害獣とはどんな動物のこと?
害獣とは人々の暮らしや農業、環境に対して害を及ぼす動物のことであり、多くの動物が害獣になり得ます。例えば、人間を襲うヒグマやイノシシ、サルや野犬だけでなく、動物園から逃げ出せばトラやライオン、ゾウも害獣です。このほか畑を荒らして農作物に被害を与えたり、家畜に危害を加えたり、病気の原因となったりするアライグマやハクビシン、シカ、サル、オオカミ、タヌキ、キツネ、イタチ、家屋にダメージを与えるネズミのほか、かわいいペットとして飼っている犬や猫も、糞尿で迷惑を被っている人からすれば立派な害獣です。
このように日本では様々な害獣が人々の暮らしを脅かしているのです。
害獣は、国や市区町村が注意喚起する際に「有害鳥獣」と呼ぶこともあります。
急増している害獣とは?
このように一口に害獣と言っても多岐にわたりますが、日本の一般家庭に棲み着いたり、健康被害を及ぼしたりと、近年被害が急増している害獣とその被害について紹介します。
ネズミ
警戒心が強く、夜行性のため、人が寝静まった後に活動するネズミ。食料をかじるほか様々な感染症を媒介する可能性があります。また、電線や断熱材を噛み破ったり、家具を傷つけたり、住宅に損傷を与えます。ネズミの排泄物や毛が散布されると衛生問題を引き起こし、ひいては人間の健康に悪影響を与えます。
イタチ
肉食獣で自分よりも大きい生き物も捕食するなど凶暴性のあるイタチ。野生動物なので感染症を持っている場合があり、ペットに感染する可能性も。屋根裏や建物内に巣をつくり、棲み着いてしまうと電線や断熱材を噛むなどし、住宅に損傷を与えます。また、臭腺から分泌される特有のクサイ臭いを持つため、人間の不快感につながります。
イタチは害獣ではありますが、ニホンイタチに限り、国際自然保護連合によって準絶滅危惧の指定を受けているので注意が必要です。
ハクビシン
ジャコウネコ科のハクビシン(白鼻芯)は、その名の通り白い鼻筋が特徴。夜行性で夜間に鳴き声を発すると騒音になります。屋根や壁の隙間を利用して巣をつくることがあり、棲み着いてしまうと建物に損傷を与えます。糞を1カ所にし続ける「ため糞」の習性があるため、屋根裏が腐食して天井が抜けてしまったという事例もあります。また、悪臭や病気の原因になり、寄生虫やダニの繁殖につながるなど衛生上の問題があります。
アライグマ
かつてはペットとして人気だったこともありますが、農作物に被害を与えるため、今では害獣として駆除されることが多いアライグマ。ハクビシンと同じく、一度決めた場所で排泄し続ける「ため糞」の習性があります。アライグマの糞は臭いが強く、屋根裏などに棲み着いてしまうと家全体が悪臭に包まれます。また、病原菌を保有していることがあり、感染症の媒介となる可能性があります。
コウモリ
屋根裏や軒下、ベランダ、換気扇などに棲み着くコウモリ。夜行性のコウモリが棲み着いていてしまうと夜間に鳴き声を発することがあり、騒音になります。また、糞や尿による汚れや悪臭は問題です。ダニやノミによる衛生問題に加え、疾患を保有していることがあり、人間へ感染症のリスクをもたらす可能性もあります。
タヌキ
夜行性で夫婦または家族で生活するタヌキ。雑食性で農作物や果樹園を荒らすことがあります。都会では住宅の残飯、生ごみなどを食い荒らす被害も見られます。家畜のハクビシンやアライグマ同様に決まった場所で糞をする「ため糞」の習性があるので棲み着かれたら悪臭や健康被害につながる衛生上の問題があります。
カラス
雑食で知能が高いと言われるカラス。ゴミを荒らされる、ベランダにやってきて糞尿をされて汚れる、洗濯物を汚されるので干せない、鳴き声がうるさい、人間やペットを襲ってくる、威嚇してくる、攻撃してくる、ベランダに置いてあったモノを盗られる、食べ物を取られるなど様々な被害が報告されています。
害獣なのに駆除してはいけない?
様々な害獣が人々の平和な暮らしを侵害していることがわかりました。害獣の被害に遭ったら即刻駆除してしまいたい!と思うかもしれませんが、ここで知っておきたいのが「鳥獣保護管理法」と「外来生物法」です。
鳥獣保護管理法とは?
鳥獣保護管理法とは、日本国内に生息する野生の哺乳類や鳥類を保護し、適切に管理するために制定された日本の法律です。生態系や農業、漁業への影響を考慮しながら、人間と野生の鳥獣との共存を目的としています。
具体的には、捕獲の規制や生息環境の保護、個体数の調整、狩猟に関する制度などを定めたもので、すべての野生鳥獣は、許可なく駆除・捕獲・殺傷をすることを禁じられています。飼育も不可です。許可なく駆除や捕獲を行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性あるので注意が必要です。
前項で害獣として紹介したネズミ、イタチ、ハクビシン、アライグマ、コウモリ、タヌキ、カラスとも保護される野生の鳥獣に該当します。害獣だからといって自分で勝手に駆除することはできないということです。(ただし、環境衛生に悪影響を及ぼすドブネズミ・ハツカネズミなどの家ネズミは保護の対象外となるため駆除しても構いません。)
さらに、アライグマについては「外来生物法」も関わってきます。
外来生物法とは?
外来生物とは、本来日本には生息していない動植物のことで、生態系への影響や経済的な被害のために制定された法律です。
アライグマは、外来種の中でも農作物や自然環境に悪影響を与える「特定外来種」に指定されており、駆除対象になっています。と言っても、一般の人が勝手に捕獲や駆除をすることは認められておらず、申請・許可が必要です。
それらの手続きを踏んで捕獲したとしても、アライグマを野山に放つのはNGです。捕獲した時点で有害鳥獣となり、捕獲した人が責任をもって処分する必要があります。捕獲後に野山へ放した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性があるので注意が必要です。
では、害獣の被害に遭えばどうすればいいのでしょうか?
自分で害獣を駆除・捕獲できる?
害獣に悩まされていても、自分で駆除や捕獲はできないのでしょうか?
できないことはありません。「狩猟免許」または「捕獲許可」を取得すれば、害獣を自分で捕獲したり、駆除したりすることが可能です。
害獣の駆除に必要な免許
鳥獣保護法の対象となっている野生鳥獣の駆除や捕獲を行うためには、「狩猟免許」を取得しなければいけません。駆除・捕獲方法によって4種類の狩猟免許があるので、駆除したい害獣の生態等に応じて免許を選ぶ必要があります。
狩猟免許の種類
・網(あみ)猟免許
・罠(わな)猟免許
・第一種銃猟免許
・第二種銃猟免許
狩猟免許の取得方法
各都道府県の担当部署に狩猟免許の申請書を提出し、講習会を受講した後、免許申請手数料を支払い、狩猟免許試験を受けて合格すれば取得できます。
狩猟免許試験は、狩猟に関する専門的な知識を評価する「知識試験」、視力や聴力、運動能力を測る「適性試験」、猟具の設置など実技を模擬する「技能試験」の3つあります。なお、免許は3年ごとに更新手続きが必要です。
狩猟免許なしで駆除・捕獲できる場合もあり
・自治体が定めた狩猟期間中に、囲いのある住宅の敷地内で捕獲を行う場合 ※狩猟期間以外に被害があれば、害獣駆除資格を持った人に頼みましょう。
・自治体が定めた狩猟期間中に農林業者が作物を守る目的で、敷地内に囲い罠を設置する場合 ※囲い罠のため、捕獲することができるのはイノシシとシカに限ります。
害獣の捕獲許可について
原則として野生鳥獣は勝手に捕獲・駆除することは禁じられていますが、行政に申請を行い、許可申請が通れば自分で捕獲することができます。害獣の捕獲許可は「鳥獣保護法の農作物や生態系に対する被害を防止するために有害鳥獣の捕獲」ために許された制度です。
捕獲許可申請に必要な書類
捕獲許可申請の必要書類は自治体によって多少違いますが、例えば大阪市の場合、許可申請書のほかに実行者の名簿、申請に関わる被害状況調査書、捕獲実施計画書、捕獲区域・場所を明らかにした図面、申請者を確認できる書類(運転免許証など)が必要です。誰でも簡単に作成できるかと言えばそうではなく、許可申請書類には、専門知識を必要とするものもあります。また、申請から許可までは数週間かかる場合がほとんどです。
捕獲許可の申請方法
地域によりますが、大抵の場合、市役所などの行政機関へ申請します。先述の申請に関わる書類を含め申請の条件は自治体によって異なるので確認が必要です。申請が通れば、許可証が交付され、敷地内に罠を仕掛け害獣を捕獲できますが、捕獲後の対応は行政によってまちまちです。行政側に渡して処理してもらう場合や自分で処理しなければいけない場合があります。
この鳥獣保護管理法の捕獲許可があれば、外来生物法に関しては捕獲の際に違反になることはありません。
狩猟免許を持っていれば許可申請は不要
狩猟免許を持っている場合は、許可捕獲の申請をしなくても特定の害獣を捕獲することができます。ただし、条件・制約があるので注意が必要です。
害獣を駆除するためにできること
自分で害獣を駆除しようとする場合、様々な法律や地域性、自治体の方針が絡み合う上、狩猟免許や捕獲許可など煩わしい手続きがたくさんあります。しかも、狩猟免許や捕獲許可を取ったからといって、お目当ての害獣を捕獲できる保証はありません。
勝手に駆除しても法律に触れないとされているドブネズミやハツカネズミさえも、一般の人が市販のネズミ取り道具や忌避剤を使って追い出すのは至難の技と言われています。
行政に相談
では、市役所や行政に相談してみよう、と考える人もいると思います。市役所は害獣対策や駆除についてのアドバイスはしてくれますが、実際に駆除を行ってくれるかといえば、行わない場合がほとんどです。相談してみる価値はあると思いますが、即解決というわけにはいかないでしょう。
農林水産省のホームページに野生鳥獣による被害防止マニュアル等がありますので参考にしてみてください。
専門業者に任せることが解決への近道
そこで、害獣被害で悩んでいる方におすすめしたいのが害獣駆除専門業者の利用です。害獣駆除を行っている業者であれば、鳥獣保護管理法や外来生物法の知識はもちろんのこと、各種必要資格や許可についても把握しており、害獣ごとの性質や生態についての専門知識を有しています。費用はかかりますが、素人が自分で駆除や捕獲を試みて時間や労力を要してまで失敗するよりも、プロに依頼することで、家族や住まいをスピーディに害獣から守ることができるでしょう。
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