テンとは、イタチによく似た動物です。
日本各地に生息しており、イタチやハクビシンと同様に人の住まいなどに現れて害獣被害をもたらすことがあります。
本記事では、野生のテンの生態やテンによる害獣被害・防除方法についてご紹介します。
その特徴を理解し、テンによる被害をできる限り未然に防ぎましょう。
目次
野生のテンの生態について
本章では、野生のテンの生態についてご紹介します。
あまり聞きなじみがない方もいるかもしれませんが、テンは古くより日本に生息する動物です。
近年では住処やエサを求めて人里に下りてくるケースも多いため、被害を防ぐためにも、まずはその生態を理解することから始めてみましょう。
テンの分類と種類
テンはイタチ科に分類される食肉類であり、日本列島全域にわたって生息しています。
日本に生息しているテンは、主に以下の2種類が挙げられます。
- ホンドテン:本州・四国・九州などに生息
- ツシマテン:対馬に分布する固有亜種で、国の天然記念物に指定されている
もう一種、主に北海道に生息する「エゾクロテン」はテンの同族異種であり、現在は絶滅危惧種に指定されています。
本記事では、日本列島の全域に生息するホンドテンを中心にご紹介します。
テンの外見
テンの体長は45~55cm・体重1~1.5kgほどであり、メスはオスに比べて一回りほど小さいのが特徴です。
また、テンは夏と冬で毛色が変化するという珍しい性質を持っています。
夏は少し黒ずんだ黄褐色で顔は黒色に、冬は明るい黄褐色で顔は白色に変化します。
テンの性格・好物
テンはその可愛らしい見た目に反して、非常に攻撃的で獰猛な性格をしています。
雑食性であり、小さな哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類などの動物、昆虫、果物や種・野菜などどんなものでも口にします。
植物のなかでは、特に果実を好む傾向にあるようです。
また、テンは縄張り意識が強く、子育ての時期以外は単独で活動することが多いことも特徴に挙げられます。
(妊娠期間は約8ヶ月ほどで、7~8月の夏場に交尾をおこない、翌年の4~5月に複数匹の子を出産する)
テン同士の縄張りの主張などは、独特の鳴き声や糞尿による匂いでおこなうとされています。
夜行性のため、人が寝静まる夜中に活発に活動することが多いでしょう。
テンの痕跡(足跡やフン)
テンの足跡は3~4cmほどで、イタチと同様に指先と肉球の跡が離れています。
足跡はイタチに比べて少し大きいとはいえるものの、特徴が似ているため足跡だけで両者の判別をするのは難しいでしょう。
フンは、長さ1cm程度で、太く・水分が多く含まれています。
黒または茶色をしており・匂いが強いこと、フンの中には動物の毛や果実の種が混じっていることもあります。
また、イタチやハクビシンなどと同じく溜めフンをする習性があるため、家屋に棲みつかれるとその被害はどんどん拡大していくでしょう。
テンによく似た害獣と見分け方について
テンによく似た害獣としては、イタチ・ハクビシンが主に挙げられます。
本章では、テンとよく似た害獣の特徴や判別の仕方をご紹介します。
イタチ
テンとイタチは、体長やフンの大きさなどいくつか判別できる要素はあるものの、ほんの小さな違いしかないため素人目には判別が難しいといえます。
大きな違いとしては、毛色が挙げられるでしょうか。
上述の通り、テンは夏と冬で毛色が異なりますが、イタチは季節で毛色が変化することはありません。
- テンの毛色 :夏は少し黒ずんだ黄褐色で顔は黒色に、冬は明るい黄褐色で顔は白色に変化する
- イタチの毛色:全体的に明るい茶色で、目周りは黒・口の周りは白色をしている(1年を通して同じ色をしている)
ただし、テンもイタチも間近で観察する機会はそうはなく、そもそも不用意に接近すると攻撃される恐れがあるため、毛色で判断することも困難です。
もし建物や敷地内で害獣や痕跡を発見した場合は、自身で対処しようとせずに、害獣駆除業者に相談することをおすすめします。
ハクビシン
ハクビシンは、イタチに比べて生態が大きく異なるため、テンとの見分けはつきやすいといえます。
【ハクビシンの主な特徴】
- テンよりも一回りほど大きい(ハクビシンの体長は50~75cmほど)
- 体色は明褐色や暗褐色が基本であり、額から鼻にかけて白い線が入っている
- 足跡は長さ5cm・幅4cmほどが多く、爪痕がつくことが多い
- フンは長さ5~15cmほどの棒状であり、黒または茶色をしている など
また、テンやイタチは獰猛な性格をしているのに対し、ハクビシンは臆病かつおとなしい性格をしています。
おとなしい性格をしているとはいっても、不用意に近づくと驚いて襲い掛かってくるケースもあるため、いずれにせよ不用意に接触するのは危険です。
テン・イタチ・ハクビシンなど、害獣のほとんどは無許可で捕獲・駆除できず、素人が下手に対処すると手間やリスクが発生するため、基本的にはプロの業者に対処を依頼するのが賢明といえるでしょう。
野生のテンによる主な害獣被害について
野生のテンが人家に棲みつくと、お住いの住人や建物などに甚大な被害をもたらします。
本章では、野生のテンによる主な害獣被害についてご紹介します。
騒音
テンは、家屋の天井や屋根裏に侵入し、そこに棲みつく恐れがあります。
もし家屋に棲みつかれた場合、屋根裏などから足音や鳴き声などの不審な物音が聞こえてくるでしょう。
テンを含む害獣の多くは基本的に夜行性のため、特に人が寝静まった(生活音が少ない)夜間に活発に活動します。
この騒音が原因で、睡眠不足に陥るだけなく、ノイローゼになる・幻聴が聞こえる人もいるなど、深刻な被害をもたらす恐れがあるため注意が必要です。
悪臭
野生動物は不衛生のため、野生動物特有の臭い(獣臭さ)がします。
加えて、テンのフンは強烈な臭いを放ちかつ溜めフンをする習性があるため、フンが溜まるほどその悪臭被害も甚大なものとなっていくでしょう。
被害が深刻化すると家にいられないくらい臭いが酷くなることもあり、人やペットなどの健康被害・家屋の腐食被害など別の被害にも発展してしまいます。
なお、フンがあるということは「テンなどの害獣が家屋に浸入している」という証明となり、下手をすれば害獣に棲みつかれている可能性もあるでしょう。
こうなると素人では対処が難しいため、被害が拡大する前に害獣駆除の専門業者に駆除を依頼すべきといえます。
怪我・感染症のリスク
テンを含む野生の動物は総じて不衛生であり、その体にはダニ・ノミといった寄生虫や数多くの細菌・ウィルスを保有しています。
そのため、野生動物に触れてしまうと、感染症などの病気を発症するかもしれません。
上述の通りテンは攻撃的な性格をしているため、刺激すると歯や爪を使って攻撃し、その傷口から感染症を発症する恐れも高まります。
テンと遭遇した場合であっても、決して触れないようご注意ください。
また、テン本体だけでなく、その糞尿にも細菌やウィルスが付着しているため、糞尿を自力で処理する場合も素手では絶対に触れないことが重要です(マスク・手袋など防護手段を用意することが好ましい)。
害獣の対処は手間だけでなくリスクも伴うため、害獣やその痕跡を発見した場合は、速やかにプロの業者に相談すべきといえるでしょう。
家屋への損害
テンが家屋に棲みついてしまうと、建物にさまざま被害がおよびます。
- 糞尿による建物の腐食
- 巣や移動経路に菌やウィルスが付着する
- 断熱材などを噛み千切り、巣にする
- 他の害獣や害虫を呼び寄せる原因にもなり得る など
テンは溜めフンをする習性があるため、フンが蓄積されるとシミや腐食の原因となり、最悪の場合は建物倒壊の危険性すらあります。
棲みつく期間が長くなるほど家屋への被害も拡大するため、早め早めに対処するのが好ましいといえるでしょう。
農作物・家畜が狙われる
テンは雑食性でなんでも食べるため、畑に実った野菜や果実、家畜などが狙われる恐れもあります。
家庭菜園で育てた野菜や果実も対象となるため、庭などで作物を育てている方も注意が必要です。
作物を育てている方は、害獣・害虫への対策はもちろん、廃棄予定の作物を出しっぱなしにしないよう注意しておきましょう。
要注意!テンの捕獲・駆除には自治体の許可が必要
テン・イタチ・ハクビシンなど、ネズミを除く害獣のほとんどは「鳥獣保護管理法」によって管理・保護されているため、許可なく捕獲・駆除することができません。
無許可で捕獲・駆除をすると法律で罰せられる恐れがあり、許可を得るにはお住いの自治体に許可申請をおこなう必要があります。
さらに、申請をするには該当する狩猟免許を取得している必要があるため、害獣の被害に遭ってから準備していたのでは被害は増すばかりです。
そのため、もし「害獣の被害に遭っている」または「害獣の被害を心配している」という方は、害獣駆除の専門業者に相談することをおすすめします。
自身で対処するに比べて防除費用は高くなるかもしれませんが、手間やリスクを大幅に軽減して、長期的に害獣・害虫被害に悩まされない住まい環境を整えることができるでしょう。
プロの業者に相談する際は、以下のポイントを意識しておきましょう。
- 相見積もりを取る :数ある業者を比較し、より良い業者に依頼するため
- 早め早めに相談する:被害が広がるほど防除費用が高くなる
- 総合的に判断する :安さだけでなくサービス内容や保証内容も含め、総合的に納得できる業者に依頼するほうが安心できる
害獣・害虫駆除業者は全国各地さまざまに存在し、なかには悪徳業者の類も存在します。
上記ポイントを意識したうえで、より自身が安心・納得できる業者に依頼すべきといえるでしょう。
なお、お住いの自治体によっては、害獣駆除のサポートをおこなっているところもあります。
たとえば、害獣被害の相談対応・害獣駆除業者の斡旋・捕獲機の貸し出し(事前の許可が必要)・補助金や助成金などです。
害獣駆除を業者に依頼する機会はそうはないため「いきなり業者に相談するのはちょっと…」という場合は、お住いの市役所などに相談してみるのもよいかもしれません。
ただし、対応の有無・サポート内容の範囲は自治体によって異なるため、事前に詳細を確認したうえで相談するかを決めてください。
プロの業者に依頼する際の費用相場について
害獣であるテンの駆除を業者に依頼する場合、特に気になるのがその費用でしょう。
テンの駆除を業者に依頼した際にかかる費用相場は、約5万円~20万円ほどといわれています。
金額の幅に大きな違いがあるのは、被害状況や防除を実行する敷地面積の広さが起因します。
【金額が変動する要因】
- テンの棲みついている数
- 罠の設置数
- 再発防止策
- 清掃・消毒作業
- 他の害獣・害虫の存在
- 被害箇所の修復 など
当然ながら、被害状況や被害箇所が多い(広い)ほど、防除費用は高額となるでしょう。
また、業者によっては出張費用など上記以外の金額が加算されるケースもあります。
業者によって費用やサービスの質は異なるため、できれば3~4社ほどから見積もりを依頼し、それぞれを比較することをおすすめします。
現地調査・見積もりまでは無料で対応してくれる業者も多いため、それらを活用してみるとよいでしょう。
捕獲・駆除以外でできる対策について
どれだけ被害に遭っても、テンを許可なく捕獲・駆除することはできません。
ただし、棲みついているテンを家屋から追い出す・そもそも侵入させないための対策を取ることは可能であり、その手段には主に以下が挙げられます。
- 忌避剤を使用する
- 害獣除けの対策グッズ(超音波やライトなど)を活用する
どちらも、ホームセンターやネット通販などで一般の方でも簡単に入手できるため、まずはこれらアイテムを使い対策してみるのもよいでしょう。
ただし、同じ方法を使い続けていると野生動物もいずれは慣れるため、基本的には一過性の対処にしかなりません。
罠の種類や方法を適宜変える、罠を活用しつつ害獣駆除業者に相談するなどして、別の方法も検討しておきましょう。
上記に加え、普段から清潔な環境を保つ(テンのエサとなり得るものを出しっぱなしにしない)こと、痕跡などがないか周辺環境を適宜チェックすることも大切です。
まとめ
テンを含め、害獣の被害は看過できないものであり、放置するほどに被害は甚大となります。
近年は、住処やエサを求め人里に下りてくる動物も増えているため、もし害獣そのものまたは害獣の痕跡(足跡やフンなど)を見つけた場合は、速やかに対処を講じる必要があるでしょう。
素人ができることには限界があるため、被害を危惧される方は、早め早めにプロの業者に相談することをおすすめします。
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