北海道は、日本の最北に位置する場所であり、本州・四国・九州とともに日本列島を構成する主要4島の一つです。
自然豊かな地域であると同時に、北海道にしか生息しない動物や、北海道ならでは害獣(被害)も存在するという特徴があります。
本記事では、北海道に出没しやすい害獣についてご紹介します。
害獣の種類や特徴だけでなく、具体的な駆除方法についてもご紹介しておりますので、害獣被害に悩まされている方はぜひ参考にしてください。
目次
北海道とはどんな地域?
本章では、北海道という地域についてご紹介します。
気候や土地環境、生態系など、北海道ならではの特徴を解説します。
北海道の気候や土地環境
日本の最北に位置する北海道は、温帯気候の北限と亜熱帯気候の南限の境目となる場所です。
一年の平均気温は6~10℃程度・平均降水量は700~1,700mm程度といわれており、冷涼低湿。本州のように梅雨や台風の影響が少ないことが特徴に挙げられるでしょう。
ただし、北海道本島は面積77,983,90平方キロメートルと非常に広大で「道央」「道南」「道北」「オホーツク」「十勝」「釧路・根室」などエリア分けに紹介されることもあり、地域によって気候も風土も大きく異なります。
自然あふれる豊かな土地であり、自然を活かした農業を営む人や、北海道ならでは動物も存在します。
また、観光スポットとしても有名で、四季折々の景色やグルメを楽しむため、一年を通して多くの観光客が訪れることも特徴といえるでしょう。
北海道の動物の生態系
北海道は生物の宝庫でもあり、雄大な自然のなかに独特の生態系が存在しています。
北海道と本州の間には「ブラキストン線」という津軽海峡を通る動物相の分布境界線があります(津軽海峡線ともいわれる)。
津軽海峡は水深が深く、古くから北海道と本州は陸地がつながっておらず、多くの動物が北海道にまで生息域を広げることができませんでした。
これが、北海道ならではの動物が多く存在していることの理由となります。
北海道にのみ生息している動物といえば、たとえば以下が挙げられます。
- シマエナガ
- エゾリス
- エゾオコジョ
- エゾクロテン
- エゾユキウサギ
- キタキツネ
- エゾシカ
- エゾヒグマ など
本州にも似たような動物が生息していることもありますが、たとえばキツネの場合、本州に生息しているのはホンドギツネでキタキツネとは別種…など、似て非なるものとなっています。
みな一見すると可愛らしい動物ばかりですが、なかには人・作物・建物などに危害を加えるものも存在します。
北海道に住んでいる方・移住を考えている方はもちろん、旅行などで訪れる方も北海道ならではの生態をしっかりとチェックしておいたほうがよいでしょう。
北海道に生息する注意すべき害獣とは?
本章では、北海道に生息する動物のなかで、特に注意すべき害獣の種類や特徴についてご紹介します。
北海道ならではの気候で生息し、さまざまな害獣被害をもたらす恐れがあるため、その特性を正しく理解しておきましょう。
ヒグマ
ヒグマは、北海道を象徴する大型の野生動物であり、日本では最大の陸上哺乳類です。
ヒグマが引き起こす被害は深刻で、大怪我だけでなく命に関わる危険性もあるため、特に注意が必要です。
ヒグマの特徴や害獣被害
北海道に生息しているのは「エゾヒグマ」であり、本州や四国に生息する「ニホンツキノワグマ」とは異なります。
成獣の大きさはオスとメスで異なり、それぞれ以下の通りです。
- オス:体長約1.9~2.3m、体重約120~250kg
- メス:体長約1.6~1.8m、体重約150~160kg
(なかにはこれよりもサイズが大きな個体も存在する)
本来ヒグマは北海道の森林や原野に分布しており、夏から秋にかけて中山帯・高山帯にも活動領域を広げるようです。
さらに、近年ではエサなどを求めて市街地まで下りてくるケースも増えており、その被害は深刻なものとなっています。
クマがもたらす害獣被害は人身被害・家畜や農作物への被害などが挙げられ、人への命にかかわる危険性はもちろん、農業・林業・畜産業など日本の経済被害に大きな影響をおよぼしています。
また、クマは知能が高いため、人間やその生活範囲に餌が多いと学習すれば習慣的に人里を襲撃するようになり、より注意が必要です。
対処法
クマは雑食性ですが、特にドングリなどの木の実が好物であり、果実・飼料作物などの農作物に被害がおよぶ可能性が高いとされています。
農作物被害を防止する方法は、まずクマを簡単に近づけないように農地周辺の環境整備をおこなうことからです。
周辺の草刈りを徹底してクマの隠れ場所をなくす・エサとなるもの(野菜や果実などの廃棄物も)放置しないなどで、寄せ付けない工夫をしましょう。
また、クマは嗅覚に優れ・人の接近をいち早く察知するため、農地に人がいない時間帯でもラジオなどの音を使って威嚇を続けるのもよいでしょう。
作物の収穫時期に合わせて、電気柵を使うのも効果的です。
また、普段の生活や観光のなかでヒグマと出逢う可能性もゼロではないため、遭遇しない工夫や遭遇時の対処法も身に着けておかなくてはいけません。
これについては、北海道に関連するサイトが具体的な対処法をご紹介しているため、そちらを参考してください。
ただし、情報はあくまで参考であり、ヒグマに出会わないようにする・出会った場合に100%身を守れる保証はないという点に注意しておきましょう。
現実に存在するクマは、それくらい危険な動物といえるでしょう。
エゾシカ
エゾシカはニホンジカの亜種であり、北海道全域に生息しています。
寒さの厳しい北海道で生き残るために進化した結果、筋肉量はニホンジカの2倍以上はあるといわれています。
近年はエゾジカによるさまざまな獣害が問題になっているため、生態や特徴に理解を深めておきましょう。
エゾシカの特徴や害獣被害
エゾシカは、草原や牧草地を好み、かつ木の芽やどんぐりなどを主食とします。
そのため、食料が採取しやすい海抜の低い土地や木々の多い山林に生息することが多いようです。
エゾシカは、体長が90㎝から最大で190㎝にまで成長し、本州に生息するニホンジカよりも一回り大きい個体が多いのも特徴です。
体重はメスで25~100kg、オスが50~最大で200kgを超える個体もいます。
エゾシカが引き起こす被害としては、主に以下が挙げられます。
- 農作物への被害
- 希少植物や自生植物・環境への被害
- 交通事故による被害
- 感染症による被害
- 人への攻撃による被害
エゾシカは一時期は乱獲によって激減しましたが、現在はその生息数が増加傾向にあり、被害が問題視されています。
ただし、エゾシカは一般的な草食動物と同じく、臆病な性格を持ち・群れで行動する個体が多い傾向にあります。
自分から人を襲うようなことは基本的にしないため、仮に遭遇したとしても刺激しなければさほど危険はないでしょう。
ただし、繁殖期のオスや子育て中のメスは時に攻撃的になることもあり、稀にエゾシカによる人的被害も報告されているため油断は禁物です。
対処法
エゾシカと人間の共生のためにさまざまな対策が実施されており、その方法として「柵を設置して侵入を防ぐ」もしくは「狩猟する」が挙げられます。
柵の設置によって農作物や希少植物の食害は減少傾向にあり、エゾシカの侵入を防ぐことで自然環境の改善効果も期待できるといわれています。
狩猟に関しては、増え過ぎたエゾシカを狩猟し個体数を減らす施策ではあるものの、予測生息数は増加傾向にあるようです。
また、ハンターの高齢化や減少により狩猟が思うように進まない・猟銃の誤射などの死亡事故や動物愛護団体による反対活動など、さまざまな課題を抱えているのが現状です。
いずれにせよ素人ができることには限界があるため、もしエゾシカによる何らかの被害を受けている場合は、お住いの自治体に相談するのがよいといえるでしょう。
アライグマ
アライグマは北アメリカ原産地の野生動物であり、その見た目の可愛らしさからペットとして日本に輸入されるようになりました。
しかし、見た目に反して獰猛な性格をしている・手先が器用といったことから、飼育檻から逃げ出したり・成獣となり飼いきれなくなって捨てられたりするケースが続出し、現在は日本でも野生のアライグマが増加しています。
アライグマは徐々に生息域を拡大しており、今では日本全国でその存在が確認されています。
当然、今では北海道にも生息しており、さまざまな害獣被害をもたらす恐れがあると問題視されています。
アライグマの特徴や害獣被害
アライグマの体長は60~100cm・尻尾の長さは20~40cmほどあり、体重は2~10kg程度です。
同じく害獣に分類されるイタチの倍以上の大きさがあり、顔立ちが似ているハクビシン(50~75cmほど)よりもさらに一回り大きいとされています。
外見だけを見ると非常に可愛らしいものの性格は非常に狂暴であり、2005年には特定外来種に指定され、現在はペットとして個人で飼育することは禁止されており、捕獲や駆除も自治体の許可を得なくてはいけません。
アライグマが引き起こす害獣被害の一つは、食害です。
アライグマは雑食性であり、果実や野菜などの植物質だけでなく、小型の哺乳類や鳥類、果ては人が廃棄する生ごみまでなんでも口にします。
また、人の住まう建物に侵入し、屋根裏や床下などに巣を作って居座る可能性もあります。
もし屋根裏などに棲みつかれると、鳴き声や足音などの騒音・糞尿による健康被害や建物の腐食被害・感染症の発病など、さまざまな害獣被害をもたらす恐れがあるため、注意が必要です。
対処法
アライグマの害獣被害を防ぐ方法は、まず侵入経路となる場所を封鎖することです。
また、アライグマの害獣被害は本州でも発生しており、市販の対策グッズが数多く販売されています。
侵入経路の封鎖だけでなく、忌避剤・ライト・超音波発生装置などを併用することで、より侵入防止効果を高めることができるでしょう。
もしすでに家屋にアライグマが浸入している場合は、害獣駆除の専門業者へ防除を依頼するのもおすすめです。
害獣駆除を素人がおこなうには多大な手間とリスクを伴うため、業者に対処してもらったほうが安心・楽に問題が解決できるでしょう。
キツネ
キツネは食肉目イヌ科に属する中型の哺乳類であり、北海道ではキタキツネが生息しています。
キツネも一見すると愛らしい姿をしているものの、その被害は深刻なものです。
キツネの特徴や害獣被害
キツネは、都市近郊から山岳地までさまざまな環境に生息するものの、主に森林と畑地が混在する田園環境を好む傾向にあります。
また、穴を掘るのが上手く、総延長が30mにも達するような穴を掘って繁殖に利用することも多いようです。
近年は、北海道では市街地や観光地に出没する個体が増えており、人に関係する害獣被害が増加傾向にあります。
キツネによる主な害獣被害は、食害と感染症被害です。
キツネは動物食を中心とした雑食性であり、ノネズミ類・鳥類・大型のコガネムシ類など小型動物を捕食することが多いものの、コクワといった果実類なども口にします。
なかには、畑のトウモロコシや二ワトリ、家畜死体、人家のゴミを採食することもあるようです。
また、キツネは人にも感染する寄生虫「エキノコックス」を媒介することでも知られています。
特に郊外・農村部では、キツネは餌の取りやすい民家や農地近くに営巣することも多く、接触する機会が増えることによって衛生的な問題も懸念されています。
対処法
キツネへの害獣対策も、素人ができることは侵入防止対策を施すことが主となります。
柵を設置するなどで侵入経路を封鎖することで、ある程度キツネの侵入を防ぐことができるでしょう。
キツネも鳥獣保護管理法によって保護されており、許可なく捕獲・駆除することが禁止されているため、もしキツネによる害獣被害に悩まされている方は、害獣駆除の専門業者やお住いの自治体へ相談してみることをおすすめします。
なお、キツネを見かけた際はむやみに近づかない・エサを与えないようご注意ください。
キツネにエサを与えると、人間の与える食べ物に依存して何度も市街地を訪れるようになります。
キツネはエキノコックス症の原因となる寄生虫を保有していることがあるため、市街地へ訪れる回数が増えるほどエキノコックス症の感染する可能性が高まるため、むやみにエサを与えないことが重要です。
カラス
黒い鳥かつ害鳥の代表的な存在であるカラスは、北海道にも生息しています。
北海道にいるカラスもさまざまな被害をもたらすため、警戒すべき存在といえるでしょう。
カラスの特徴や害獣被害
カラスは、スズメ目カラス科カラス属に属する生き物であり、日本全国に生息しています。
全長約57cm・体重550~750gであり、クチバシが太く、額に出っ張りがあることが特徴的です。
また、ぴょんぴょんと跳ねるように歩くことが多いという特徴もあります。
カラスによる被害として挙げられるのが、鳴き声による騒音・作物やごみ置き場を荒らされるといった点でしょう。
ゴミの日にビニール製のネットを剥がし、くちばしでゴミ袋を突き破っている場面を目撃された方も多いのではないでしょうか。
カラスは非常に警戒心が強く、学習能力の高い動物です。
過去の失敗や経験から学び・修正してしまうため、駆除に困っている個人・店舗・企業は多数あります。
対処法
カラスは非常に目ざとい動物であり、被害を放置しておくと、あっという間に複数のカラスが集まってきて、大変なことになってしまいます。
対処法としては、主に以下が挙げられます。
- 超音波や光で撃退する
- 鳥の置物(天敵)を設置する
- カラスが飛来する場所に剣山を設置する
- カラスの合図を利用する
- 紫外線をカットするカラス網を設置する
- 鉄線(テグス)を引く
- 防鳥ネットを張る
- カラスの餌場を取り除く
- 害獣駆除業者へ対処を依頼する など
また、カラスは建物だけでなく、電線や電波塔に身を置き・巣を作ることも多いとされています。
残念ながら、電線や電波塔の害獣駆除作業は一般の駆除業者ではおこなうことができないため、この場合はお住まいのエリアの電力会社に相談しましょう。
また、アボカドとチョコレートはカラスにとって毒性があり、食べてしまうと命を落としてしまいます。
そのため、自宅にアボカドの木を植えることでカラスを遠ざける効果もあります。
カラスの被害はその地域に住む住人全体の問題でもあるため、一家庭で対処しようとせずに、自治体や周囲の方々に協力をお願いするのもよいでしょう。
北海道における野生鳥獣の被害について
害獣による被害は年々増加しています。
北海道では「野生鳥獣による被害調査結果について」という情報を公開していますが、令和4年度の野生鳥獣による全道の農林水産業被害額は「58億8千7百万円」で、昨年度に比べ4億3千7百万円増加したと発表しています。
その被害額を令和3年度と比較すると、以下の通りとなります。
【主な鳥獣別の被害額】
- アライグマ:5百万円減
- キツネ :3千9百万円減
- エゾシカ :3億6千6百万円増
- カラス類 :4千2百万円増
- ヒグマ :9百万円増
【主な作物別の被害額】
≪農業≫
- 牧草 :7千8百万円減)
- ばれいしょ :9百万円減
- デントコーン:1億4千7百万円増
- ビート :4千3百万円増
- 水稲 :5千3百万円増
≪林業≫ :全体(トドマツ他)で8百万円増
≪水産業≫ :全体(ニジマスなど)で2百万円増
特にエゾシカの被害額が他と比べても圧倒的に多く、その被害が問題視されているのが現状です。
害獣の被害は自治体やプロの業者へ相談しよう!
害獣の被害への対処は、お住いの自治体やプロの害獣駆除業者へ相談することをおすすめします。
近年は、クマの狩猟などいろいろと問題となっているケースもありますが、いずれにせよ一般の方ではできることに限界があるため、無理をしないことが禁物です。
クマ・エゾシカ・カラスなど一部の害獣は地域単位での問題ともなるため、地域全体が一丸となって取り組むべき問題といえるでしょう。
もしアライグマなどの害獣が家屋に潜んでいる場合は、プロの業者へ依頼すれば適格に防除してくれるはずです。
業者に応じて費用やサービス内容が異なるため、複数の業者へ見積もりを依頼したうえで、より自身が納得・安心できる業者を選んでみましょう。
まとめ
北海道は本州とは津軽海峡を挟んで半ば独立しており、同じ日本ではあるもののその生態系は独特なものとなっています。
雄大な自然の中で生息している動物も数多く、なかには人間に害をもたらす動物も存在するため、状況に応じて適切な対処を講じていかなくてはいけません。
ただし、一人でできることには限界があり、なかには地域全体で対処する問題もあることから、問題が発生しても一人で悩まず、お住いの自治体やプロの業者へ相談することをおすすめします。
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