はじめに
こんにちわ!
突然ですが、みなさんは「ハチ」と聞いてどんな事を想像しますか?
ハチはとても身近な存在ですので、都会で生まれ育ったような人でも何かしらハチにまつわる思い出を持っているかと思います。
毒針を持っていることや巣を作ることも知っている……では他には?
今回は知っているようで知らない、そんなハチの生態を解説いたします!
【概説】ハチとはなにか
特徴
ハチは非常に多様な生物で、世界で約二十万種類、日本で約四千種類が生息しています。
ハチは分類学上、ハチ目(膜翅目)に分類されますが、実はアリも同じハチ目に属しており、両者は体の構造などがよく似ています。
以下に、ハチの一般的な特徴をいくつかご紹介します
ハチの体は基本的に細長い形状をしていて、黄色と黒のしま模様が特徴的です。しかし、種類によっては赤茶色をしているものもいます。
ハチは4枚の膜質の翅を持っており、これを使って空中で静止(ホバリング)することができます。
ハチは半球型の頭部に大きな複眼と、複眼の境目上部に3つの単眼を持ち、複眼の間から触覚が生えています。
ハチは森林から都市部までさまざまな環境に生息します。巣は地中や木の根元、建物の屋根裏などに作ります。
分類
日本のハチ
スズメバチ
スズメバチは日本産のハチでは最も大きく、小型の働き蜂でも体長3cm近くあり、女王バチは4〜5cmほどの大きさがあります。
スズメバチは攻撃的で強毒なので刺されると命の危険もあるほどです。
主な住処は土中や木の根元などが多く、登山やキャンプをしている人が知らず知らずのうちに巣を刺激してしまい被害に遭う、というケースが多いです。
スズメバチの種類にはオオスズメバチ、キイロスズメバチ(ケブカスズメバチ)、モンスズメバチなどがあります。
アシナガバチ
アシナガバチは都市の建物に巣を作ることが多く、人口密度の高い地域に生息するのが得意なハチです。
スズメバチの凶暴さと比べれば見劣りするものの、巣を刺激されれば人に牙を剥くこともあります。
民家の軒先などで営巣するケースが多いため、巣の駆除依頼が多いハチでもあります。
二ホンミツバチ
二ホンミツバチは農作物の受粉や蜂蜜など、人間の生活と密接に関係しているハチです。
セイヨウミツバチよりやや小さく、とても穏やかで大人しい習性をしてるため、過剰な刺激を避けさえすれば、まず刺されることがないでしょう。
しかし弱毒とはいえ刺されれば痛いので注意は必要です。
クマバチ
体長は2cmを超え、ずんぐりした体形をしています。全身・翅が黒っぽいものの、黄色い毛が生えているのが特徴です。
ただし、胸部の毛は種によって色が異なり、胸部が黄色いのは本州などでみられるクマバチだけです。
体の大きさの割には小さめな翅を持ち、飛行する際には低くおどろおどろしい音を出します。
海外のハチ
タイワンタケクマバチ
タイワンタケクマバチは中国や台湾に広く生息する外来種。体長は2~3センチほどで、翅を除いて全身が黒く、日本在来のクマバチと同様に脚に毛が生えています。また、複眼が丸く大きく、額が狭く、全体的に頭が小さいなどの特徴があります。
シタバチ
シタバチは花の蜜が吸いやすいように口が長く発達しており、これがシタバチの名前の由来になっています。体長をはるかに越える長い舌をもつ種類もいます。
オオヤミスズメバチ
インドネシア原産でスズメバチ科に属し、体長は約24mm。オオヤミスズメバチは夜行性で、目が大きい、体の色が淡いなどの夜行性のハチに共通した特徴があります。
オオベッコウバチ
体長が世界最大で、ベッコウバチ特有の生態としてクモを専門に捕食するという特徴をもっています。 青みがかった黒い体色で、羽根の色はオレンジ、体長は6cm以上に及び、大きさは日本のオオスズメバチを凌ぐほどです。また、雌グモを狩り麻酔させてから卵を産み、幼虫はそのクモ一匹だけを食べて成育するという特徴があります。
マルハナバチ
マルハナバチは全体的に丸く、全身が毛で覆われていて、まるでぬいぐるみに似ていることから「飛ぶぬいぐるみ」とも呼ばれています。また、全身が黒でお尻が橙色なのはコマルハナバチと似ていますが、胸とお腹にベージュ色の縞模様があります。
ハチの生態
ハチは種類によって多種多様な生活環を持っていますが、ここではより一般的な生活環を簡潔に説明します。
生活環
卵: ハチの生活環は卵から始まります。女王蜂が卵を産みます。
幼虫: 卵から孵化したハチは幼虫と呼ばれます。幼虫は巣内で餌を食べて成長します。
蛹: 一定の成長を遂げた幼虫は蛹となり、さらなる成長と変態を経て成虫になります。
成虫: 蛹から羽化したハチは成虫となり、働き蜂や雄蜂、新たな女王蜂として巣内での役割を果たします。
特に社会性を持つハチ(例えばミツバチ)では、働き蜂の仕事は日齢が進むにつれて移り変わります。前半の2〜3週間は巣内での仕事(内勤期)、後半の1〜2週間は外での仕事(外勤期)を行い、この時期に蜜の採集や花粉媒介をします。
また、寄生性のハチ(例えばアオムシサムライコマユバチ)では、他の昆虫(例えばモンシロチョウ)の幼虫に卵を産みつけ、その昆虫の体内で幼虫が成長します。産卵後約14日で、アオムシサムライコマユバチの幼虫は寄主の体を食い破り、を作って蛹化します。そして蛹化後約7日で成虫が羽化します。
真社会性
真社会性は、動物が示す社会性の中でも最も進化した形態で、その特徴は集団内に不妊の階級が存在することです。この特性はハチやアリなどの社会性昆虫に見られます。
ハチ目では、スズメバチ科、ミツバチ科、アリ科などが典型的な社会性昆虫として知られており、これらの昆虫の持っている社会性は、とりわけ真社会性と呼ばれています。
こうした昆虫では、女王バチが産んだ子供が働きバチ(アリ)と呼ばれる不妊階級となり、女王蜂の繁殖の手助けをします。
真社会性を持つ動物は一般的に以下の特徴を持つと定義されています。
2.繁殖における役割分担があり、特に不妊の個体が繁殖個体を助ける
3.少なくとも親子二世代が共存し、子供たちが巣内で働くまで成長する
しかし、真社会性と一般的な脊椎動物の社会性とを区別する特徴は不妊カーストの存在であるため、それ以外の特徴はあまり重視されません。
また、真社会性昆虫のハチやアリは自分自身ではなく他者(ここでは女王バチや女王アリ)の遺伝子を次世代に残す行動をします。
進化生物学者のリチャード・ドーキンスは、自身の著書「利己的な遺伝子」の中で、真社会性昆虫の特徴的な生態を進化論的観点から解き明かし、真社会性の存在を世に知らしめました。
人間との関わり
ハチは古今東西、時代を問わず人間の生活に密接に関わってきました。
人間とハチの関わりを通して、人類が培ってきた文明の一端を学ぶことができるはずです。
養蜂
養蜂とは
養蜂とは、ミツバチを飼育し、そのミツバチが作り出したハチミツやローヤルゼリー、プロポリス、蜜蝋などを収穫することを指します。ハチミツは主にスイーツなどのための甘味料、滋養強壮のための健康食品として利用されます。
養蜂の歴史
養蜂は、ミツバチを人間が管理し、その産物である蜂蜜やローヤルゼリー、プロポリス、蜜蝋などを収穫する行為を指します。さらに、ミツバチは農作物の受粉を助ける重要な役割も果たします。
養蜂の歴史は非常に古く、紀元前15000年頃のスペインのアラニア洞窟で見つかった壁画には、蜂の巣から蜜を採る人々の姿が描かれています。日本最初期の記録としては『日本書紀』や『大日本農史』などが挙げられ、少なくとも皇極天皇2年(643年)から養蜂が始まっていたことが確認できます。
現代では、可動式巣枠を持つ巣箱や遠心分離器などの発明により、先進的な養蜂が開発されました。特にアメリカでは、大規模な養蜂産業が発達しており、虫媒花である農作物の受粉を担当しています。また、ハチの健康状態や採蜜の管理にはセンサーやAIも導入されています。
日本では都市部周辺農家の廃業や転業が相次いだ影響で養蜂産業は衰退傾向にあります。
しかし、ハチの天敵が少ない都心の特性を利用して、ビル屋上などで巣箱を設置しハチを飼育する「都市養蜂」と呼ばれる養蜂スタイルが広まりつつあります。
文化
農業
ハチは農業において重要な役割を果たしています。特にミツバチは、農作物の受粉を助けるための重要な虫媒として農業生産の一翼を担っています。
食用
ハチは有史以前からあらゆる地域で食料品として用いられてきたと考えられています。
幼虫から蛹、成虫までもが、さまざまな調理法で食されており、日本でも長野県や岐阜県を中心とした山間部で「はちのこ」と称して、主に幼虫が甘露煮などの加工を経て食べられています。
こうした食文化は世界中に存在し、ハチは人間の貴重なたんぱく源として重宝されてきました。
ファッション
ハチのモチーフはファッション業界でもよく見られます。特に、Gucciやディオール、エルメスなどの高級ブランドは、時計や財布、ハンドバッグなどにハチのモチーフを取り入れています。ハチは繁栄や長寿、幸福、金運上昇のシンボルとされており、お財布に蜂のシンボルがあると縁起が良いとされています。
音楽
音楽の世界でも、ハチは多くの作曲家にインスピレーションを与えてきました。例えば、「熊蜂の飛行」はロシアの作曲家リムスキー=コルサコフが作曲した有名な曲で、迫力満点に書かれた無窮動の形式でハチの飛び回る様子を表現しています。また、「蜂」はフランツ・シューベルトが作曲した曲で、無窮動のスタイルで忙しく弾かれることから「蜜蜂」とも呼ばれます。
映画
映画でもハチは重要な役割を果たしています。例えば、「みつばちの大地」はドイツ・オーストリア・スイスが合作で作った2012年製作のドキュメンタリー映画で、ミツハチの生態を通して、自然界における人間の立ち位置を描いています。
ハチの危険性と、その対処
毒針
ハチというと、毒針で刺すイメージが強いかもしれませんが、実際には刺すハチは全体の一部にすぎません。
また、毒針は主にメスが持っているもので、オスは毒針を持たないケースがほとんどです。
- スズメバチやアシナガバチ、ミツバチの働き蜂の針:これらのハチの毒針は、2つの鋸歯が付いたカバーが毒を注入する針を覆っています。皮膚に刺さると、2つのカバーは交互に動き、皮膚のコラーゲン繊維を切りながら深く突き刺さるようになっています。
- 毒針の構造:毒針は、「刺針」と「尖針」の2つの針から成り立っています。刺針は硬く、管状の細長い形で、毒嚢(どくのう)とつながっています。尖針は先端にノコギリ状の歯を持った針で、1本の刺針の中に対となった尖針が背中合わせで収まっています。相手を刺すとき、刺針から2本の尖針が飛び出してきます。
- 毒針と産卵管:ハチ目の昆虫が持つ毒針は、もともと産卵管だったものが変形してできた器官です。
例えばキバチ類では、この産卵管を材料の中に挿入して産卵しますし、寄生バチでは宿主の体内に産卵するために使用します。このような用途として本来存在し、やがて針としての機能が付加されるようになりました。
社会性昆虫であるアシナガバチ、スズメバチ、ミツバチは集団で敵に立ち向かいます。ハチが他の生物に対して毒針を刺すと攻撃フェロモンが発生し、一匹が刺すと他のハチもそれに引き寄せられて集団で攻撃する傾向があります。
また、ミツバチの針は逆棘があり皮膚に刺さると抜けなくなります。無理に抜くと毒腺ごと抜け落ちてしまい、その結果ミツバチは死んでしまいます
毒の成分
ハチの毒は主に4つの成分から構成されており、それぞれが異なる効果を持っています。
これは痛みやかゆみを引き起こします。
これは赤血球の破壊、血圧の低下、そしてアレルギー反応を引き起こします。
これは組織の損傷、赤血球の破壊、そしてアレルギー反応を引き起こします。
これは神経系に作用します。
対処法
ハチの毒の恐ろしさが分かると、日常生活でハチに出くわさないか、襲われないか不安になりますよね。
もしもの時のためにも、ハチから身を守る方法を解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください!
ハチに刺されないようにするための対処法
- ハチの巣に近づかない:ハチは自らの巣が襲撃の危険に晒されると攻撃的になります。ハチの巣を見つけた場合は、近づかずに専門家に連絡しましょう。
- 黒い服装を避ける:ハチは黒い色に反応しやすいとされています。白や明るい色の服装を選ぶことで、ハチからの攻撃を避けることができます。
- 強い香りを出すものを避ける:強い香りはハチを引き寄せる可能性があります。香水や整髪料などの使用は控えめにしましょう。
- 急な動きを控える:ハチは突発的な動きに敏感に反応します。ハチに遭遇した場合は、慌てずに静かにその場から離れましょう。
- 飲み物を放置しない:甘い匂いはハチを引き寄せます。飲みかけのジュースなどは放置せず、すぐに片付けましょう。
これらの対策を講じることで、ハチに刺されるリスクを大幅に減らすことができます。
ハチに刺されてしまった時の対処法
- 安全な場所への移動:まず第一に、静かにその場を離れ、安全な場所へと移動します。ハチは急な動きや大きな音に反応するため、慌てず落ち着いて行動することが大切です。
- 毒針の除去:刺された部位に毒針が残っている場合は、ピンセット等を用いて取り除きます。ただし、無理に抜くと皮膚が傷つく可能性があるため、注意が必要です。
- 毒の洗浄:刺された部位を流水で洗い流し、毒を取り除きます。
- 薬の塗布:患部が腫れて痛む場合は、ステロイド外用剤や虫刺され薬を塗り、症状を緩和します。
- 患部の冷却:患部を冷やすことで、痛みや腫れを軽減することができます。
- 医療機関への受診:全身的な症状(吐き気、呼吸困難、意識障害等)が現れた場合や、局所的な症状が改善しない場合は、直ちに医療機関を受診しましょう。
これらの対処法を適切に行うことで、ハチに刺された際の症状を和らげることが可能です。ただし、ハチに刺された際の対応は状況によりますので、具体的な症状や状況に応じて適切な対応を行うことが重要です。
より正確で詳しい対処法は医師へ相談することをオススメします。
まとめ
これで解説は以上になります!
いかがでしたでしょうか。ハチはとても面白く、興味深い生態をしていますが、人間にとってとても危険な一面を持った生き物であることがお分かりいただけましたか?
この記事の情報が少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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