害獣の被害は、日本全国のどこに住んでいても遭遇する可能性があります。
ただし、地域によって気候や環境が異なるため、日本全国に生息する動物もいれば、特定地域にしか生息しない動物もいるため注意が必要です。
本記事では、神奈川の地域において出没しやすい害獣の種類や特徴をご紹介します。
害獣の具体的な防除法についても解説しておりますので、害獣の被害にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
神奈川の特徴について
神奈川県は、日本の関東地方に位置する県です。
東京に隣接する都市・首都圏の一角を成す都市として、都市化・工業化が進んでいますが、地域によっては自然あふれる美しい場所も存在します。
まずは、神奈川県の地域性や気候など、その特徴をご紹介します。
神奈川の気候や土地環境
都道府県別の人口では、東京都に次いで第2位となる神奈川県。
都市化・工業化が進んでおり「自然はあまり多くないのでは…?」と感じる方もいるかもしれませんが、地域によっては今も自然あふれる土地がたくさん存在します。
たとえば、神奈川県の西部には箱根や丹沢の山々が連なり、南部は相模湾などの海にも面しているため、美しい自然の風景を堪能することができます。
県域は、中央部を南流する境川と相模川によって「東部丘陵地帯」「中央部低地帯」「西部山地帯」の3つに大別され、それぞれの主な特徴は以下の通りです。
【東部丘陵地帯】
- 多摩丘陵を中心とする丘陵地形が広がっている
- 相模湾側斜面では、境川支流の柏尾川とその支流によって樹枝状に侵食された谷が分布している
- 多摩丘陵の主稜線には、円海山・大丸山を経て三浦半島に続いており、三浦半島はそのほんとが三浦丘陵によって占められている
【中央部低地帯】
- 県中央部の相模川中下流域に広がる階段状の平坦地を相模平野と呼び、主に多摩丘陵によって分離され、地質構造上は独立の堆積盆地とされている
- 相模川は、相模原市当麻付近で流路を南に変え、海老名・厚木付近から両側に自然堤防と後背湿地を発達させた沖積低地を形成すしている
- 海老名には国分寺が建立され、寒川町には相模国一ノ宮である寒川神社が鎮座している
【西部山地帯】
- 県西部の山地は秦野盆地と足柄平野によって、北部の丹沢山地・東部の大磯丘陵・西部の箱根火山や足柄山地に分けられている
- 箱根火山は伊豆・小笠原弧に属し、二重の外輪山を持つ大規模な複式火山であり、現在でも大涌谷で噴気活動が見られ、周囲に箱根温泉、湯河原温泉など多くの温泉が分布している
神奈川県は太平洋側に位置しており、太平洋側気候によって比較的暖かい地域です(地域によって若干の違いはある)。
また、ほぼ全土が温暖湿潤気候に含まれていることから、雨量も多いことが特徴に挙げられます。
自然公園も以下のように数が多く、自然豊かな土地としても知られています。
【国立公園】
- 富士箱根伊豆国立公園
【国定公園】
- 丹沢大山国定公園
【県立自然公園】
- 神奈川県立丹沢大山自然公園
- 神奈川県立陣馬相模湖自然公園
- 神奈川県立真鶴半島自然公園
- 神奈川県立奥湯河原自然公園
神奈川に生息する動物の生態系
神奈川県は、県土自体は狭いものの、丹沢や箱根など豊かな自然環境に恵まれており、生息する野生鳥獣の種類も「鳥類約400種類」「哺乳類約70種類」が確認されています。
特に、本州に生息する大型の哺乳類(ツキノワグマ・ニホンカモシカ・ニホンジカ・イノシシ・ニホンザル)がすべて生息しており、首都に隣接していながら今もなお多くの鳥獣が生息している地域として有名です。
ただし、都市化の進展や人間活動の活発化によって、野生鳥獣の生息地が失われつつあり、エサや棲み処を求めて人里へ下りてくる動物も増えています。
動物には悪意がないものの、結果的に食べ物を食い荒らしたり・屋根裏や天井裏などに棲みつくなどして、害獣被害をもたらす生き物が増えていることも現実です。
神奈川県の野生鳥獣による農作物への被害について
神奈川県内には多くの野生動物が生息しており、エサや棲み処を求めて人の生活圏へ侵入し害獣被害をもたらすものも存在します。
特に問題視されているのが農作物への被害であり、本章にてその被害状況を詳しくご紹介します。
令和5年度の農作物への被害状況
神奈川県のホームページにて、令和5年度の野生鳥獣による農作物被害の状況が確認できます。
この情報によると、令和5年度の野生鳥獣による農作物被害額は「1億4,932万円」で、前年度に比べ1,517万円の増加となっています。
被害額が多い鳥獣は以下の3種で、全体の53%を占めています。
- ヒヨドリ :約3,401万円
- アライグマ:約2,261万円
- イノシシ :約2,162万円
この問題を解決するため、神奈川県では集落環境整備・被害防除対策・鳥獣の捕獲の基本対策を、地域が一体となって取り組む(地域ぐるみの対策)ため、さまざまな支援をおこなっています。
害獣への対策方法を知らない方も多いため、個人の取組みだけでなく、地域ぐるみでの取組みに繋げていくことが重要といえるでしょう。
農作物への被害で特に注意すべき鳥獣とは?
農作物に対し被害をもたらす動物はどれも注意すべきですが、そのなかでも特に被害額が大きくより問題視されている動物も存在します。
以下、被害額が大きな注意すべき鳥獣の特徴を解説します。
ヒヨドリ
ヒヨドリは、一般の方からするとさほど害を感じることはなく、むしろ「ヒヨドリが自宅に巣を作ると縁起がよい」といわれたり、国内・海外を問わずバードウォッチャーの観察対象としても人気の高い鳥です。
しかし、農家にとっては「農作物を食い荒らす警戒すべき鳥」として認識されています。
その理由は、ヒヨドリは甘い果物が大好きだからです。
基本的に雑食ではあるものの、主に果実や野菜を中心に食べ、他にも花や蜜などの甘いものも好む傾向にあります。
全国を対象として農作物被害であれば、鳥のなかでカラスに次いで2番目に被害額が大きいとされており、実際に神奈川県での令和5年度の農作物被害額のトップはヒヨドリの3,401万円とされています。
なお、その被害は年によって大きく異なるようです。
たとえば、令和1年~令和5年の被害額は、以下の通りです。
- 令和1年:約4,670万円
- 令和2年:約1,456万円
- 令和3年:約1,691万円
- 令和4年:約904万円
- 令和5年:約3,401万円
特に令和4年度の被害額が大きく減少していることがわかります。
ヒヨドリはもともと渡り鳥して認識されていましたが、現在は日本の環境に適応し、季節による移動をせずに一定の地域で暮らす「留鳥」となっています。
ただし、北海道などの寒冷地に生息している場合、秋ごろになると本州・四国・九州など国内の暖かい地方へ南下することがあるようです。
関東より西の地域では、10月~4月にかけてヒヨドリの個体数が多くなり、被害が増える可能性もより高くなるでしょう。
他にも、ハトやカラスに比べて被害は少なめではありますが、家の軒下やマンションのベランダなどに巣を作ったり、糞や鳴き声による被害も発生しているため注意が必要です。
アライグマ
アライグマはもともと外来種でしたが、日本に輸入されて以降に国内でも野生化が進み、現在は日本各地のいたるところに生息しています。
森林・湿地・農耕地・市街地など幅広い環境に生息しており、近年はエサ場や棲み処を求めて人の生活圏内へ侵入してくるアライグマが増えてきました。
今では、人家の屋根裏や天井裏などに棲み処を作り、周囲にさまざまな害獣被害を与える厄介な動物として認識されています。
アライグマで特に警戒すべきなのは、性格と学習能力です。
アライグマは、見た目こそ可愛らしいものの性格は獰猛で攻撃的。不用意に近づいてしまうと、引っかかれたり噛まれたりして大怪我を負う恐れもあるでしょう。
その傷口から菌が入りこみ、感染症を発病する危険性もあるため、アライグマを見かけても絶対に近寄ってはいけません。
学習能力の高さも注意すべきポイントであり、器用な手先を使って柵を超えたり、木から畑へ侵入したり…。家の中であれば、フタつきのごみ箱やドアを前脚で開けてしまうこともあるほどです。
食性は雑食性でなんでも食べるものの、特に甘いものを好むため、ブドウ・トウモロコシ・スイカといった糖度の高い農作物がターゲットになることも多いとされています。
実際、神奈川県でもアライグマによる農作物への被害は問題視されており、令和5年度であれば2,261万円とヒヨドリに次いで2番目の被害額となっています。
また、アライグマは農作物を育てていない一般の方でも被害に遭う恐れがあるため注意が必要です。
屋根裏などに棲みつかれると、以下のように人への健康被害や建物の寿命を縮めるといったさまざまな害獣被害をもたらします。
- 家の中の食材やごみを食い荒らす
- 鳴き声や足音による騒音
- 糞尿による悪臭や建物の腐食被害
- 感染症の発病 など
アライグマなど多くの野生動物は鳥獣保護管理法という法律によって、無許可で捕獲や駆除ができません。
対処するにも多大な手間とリスクが発生するため、もし被害に遭っている・不安を感じる方は、早めにプロの害獣駆除業者へ相談するとよいでしょう。
イノシシ
イノシシは生息地域が増回傾向にあり、エサを求めて市街地へ出没するケースも増えています。
優れた嗅覚を持ち、跳躍も高いため、高さのない柵を飛び越えて畑などに浸入して農作物を食い荒らします。
農作物を食い荒らすだけでなく、農作物を踏み潰す・農作物を食べずに掘り起こすといったこともおこなうため、イノシシが畑へ侵入すれば大きな被害を受けることになるでしょう。
また、イノシシは泥浴びを好んでおこなうため、田んぼで泥浴びをして田を荒らすこともあります。
以下は神奈川県のイノシシによる令和1年~5年の農業被害額となりますが、その被害額は年々減少してはいます。
- 令和1年:約7,173万円
- 令和2年:約6,559万円
- 令和3年:約3,175万円
- 令和4年:約2,685万円
- 令和5年:約2,162万円
それでも令和5年度のイノシシの農作物への被害額は第3位と高いため、今後も十分な警戒が必要です。
また、イノシシは市街地での目撃情報も増加しており、ごみを荒らしたり、人に攻撃してくる恐れもあります。
イノシシは非常に警戒心が強く臆病なため、遭遇しても自分から襲い掛かってくることはあまりないとはいわれていますが、発情期などの気が立っている(興奮状態)ときは襲い掛かってくる可能性もあるため注意が必要です。
一度、お気に入りの場所と認識した場合、あらゆる手段を講じて侵入してくるため、もし被害に遭われた場合はお住いの市役所へすぐに連絡をしましょう。
もしイノシシを見かけた場合も、追いかけたり刺激したりといったことは絶対にせず、速やかにその場を離れ市役所へ連絡してください。
シカ
シカは非常に臆病な性格をしており、自分から人間に襲い掛かってくることは滅多にありません。
しかし、草食動物のため農作物への被害が問題視されており、実際に全国の野生鳥獣による被害状況のうち、もっとも深刻な被害を出しているのがシカです。
(農林水産省の発表した令和元年の農作物被害金額は約53億円に達しており、平成29年度以降の3年間でほとんど被害が減っていない)
シカは、棲む地域や食性環境によって食べる植物の種類こそ変わりますが、ほとんどの植物を口にします。
特に、新芽・やわらかい葉っぱを好物とし、それら好物がなくなると、それまで食べなかった種類の植物も食べるようになります。
(さらに植物が少なくなると落ち葉も食べるようにもなる)
そのため、人間が管理する農作物や雑木林においても被害を受けやすくなるのです。
基本的に人間が植える農作物は栄養価が高いため、田植え直後の苗・収穫期ごろの穂先・大豆など豆類の草などがシカのターゲットにされやすく、注意が必要です。
神奈川県でもシカの農作物への被害は多く、イノシシに次ぐ第4位となっています。
また、以下は神奈川県のシカによる令和1年~5年の農業被害額となりますが、令和2年~5年にかけては大きな変化がありません。
- 令和1年:約3,231万円
- 令和2年:約2,363万円
- 令和3年:約2,525万円
- 令和4年:約2,369万円
- 令和5年:約2,155万円
今後も、シカによる農作物への被害には十分な警戒が必要といえるでしょう。
カラス
日本全国のどこにでも生息しているカラスは、人々の生活にさまざまな悪影響をおよぼす鳥です。
街中でよく見かけるのは、ごみ袋を破り中のごみを散乱させて生ごみを食い荒らすシーン、そして電線などに複数羽がとまって大音量の鳴き声を発する…などではないでしょうか。
近年は地域単位でカラス対策を実施するところも増えており、これまでに比べるとカラスの被害は減少しています。
しかし、100%被害を防げるようになったわけではないため、以前警戒は必要といえるでしょう。
また、雑食性のため畑などの農作物も食い荒らす可能性もあります。
神奈川県であれば、カラスによる令和1年~5年の農業被害額は以下の通りです。
- 令和1年:約2,353万円
- 令和2年:約1,991万円
- 令和3年:約1,560万円
- 令和4年:約1,484万円
- 令和5年:約1,894万円
令和1年~4年は年度ごとに被害額が減少していますが、令和5年では被害額が増加しています。
これらのデータから、今後も十分な警戒が必要な生き物であることがわかるでしょう。
家屋に棲みつく厄介な害獣にも要注意!
野生動物のなかには、上述でご紹介したアライグマのように、家屋に浸入し害獣被害をもたらすものも存在します。
本章では、家屋に棲みつく厄介な害獣の種類や対処法についてご紹介します。
家屋に棲みつく害獣の種類
アライグマのように、外壁や屋根の隙間などから家の中に入り込み、屋根裏や床下に棲みつく害獣には以下が挙げられます。
- ネズミ
- イタチ
- ハクビシン
- タヌキ
- テン
- アナグマ
- コウモリ
いずれも雑食かつ夜行性で、夜間に屋根裏や床下を動き回り、家の中にある食材・生ごみ・家庭菜園などの作物を食い荒らします。
鳴き声や足音による騒音・糞尿による悪臭・感染症の発病といった健康被害をもたらす恐れがあります。
加えて、糞尿による建物の腐食、断熱材やコードをなどをかじるといった問題も発生し、建物の倒壊や火災の危険性など、建物の寿命を大きく縮める要因にもなってしまうでしょう。
ネズミを除く上記害獣は、すべて鳥獣保護管理法の対象のため、どれだけ被害を受けていても無許可で捕獲や駆除ができません。
害獣そのものの目撃や痕跡の発見など、家に棲みついていることを確認した場合、速やかに害獣駆除業者へ連絡し、防除を依頼することが賢明です。
害獣への対処法
害獣を無許可で捕獲・駆除することはできませんが、侵入を防止したり追い出すことは可能です。
その方法としては、苦手とするニオイ・音・光などが挙げられます。
害獣対策グッズとして、忌避剤・超音波発生装置・ライトなどが市販されているため、それらを使って害獣にとって不快な環境を作るのがおすすめです。
庭や家庭菜園をしている箇所に柵(電気柵も有効)を設置する・侵入経路となる隙間を市販のアイテムで塞ぐ・隠れ場所や侵入経路となり得る雑草や木の枝を取り除くなどして、敷地内に入れなくするのも効果的といえるでしょう。
また、害獣は不衛生な環境を好むため、部屋が汚い(食べかすやフケなどが落ちている)・ゴミ袋を密閉せずに置きっぱなしといった環境では害獣がニオイに釣られて寄ってくる恐れがあります。
部屋を定期的に掃除し、ゴミ袋もフタつきのもので保管し回収日が来たらすぐに捨てるなどして、衛生面もしっかり管理することが重要です。
他にも、常温保存を出しっぱなしにせず、冷蔵庫などで保管することで「この場所は不快でエサとなるものもほとんどない」と認識し、侵入を断念する可能性が高まるでしょう。
神奈川県の各自治体で害獣駆除を相談できる?
害獣の被害は一般の方が対処するのは困難なため「自治体に対応をお願いしたい」と考える方もいるのではないでしょうか。
残念ながら、自治体が害獣の駆除を実施してくれることは少なく、仮に対応していたとしても条件や害獣の種類は限定されるでしょう。
たとえば、被害が出ている農家を対象としていたり、クマやイノシシのように地域全体で対処が必要な動物などが挙げられます。
ただし、害獣の駆除はしていなくても、害獣被害に関する相談・害獣駆除業者の斡旋・捕獲機の貸し出しなどのサポートを実施している可能性は考えられます。
具体的な詳細は自治体によって異なるため、気になる方はお住いの自治体のホームページを確認してみるとよいでしょう。
害獣被害はプロの業者に相談するのがおすすめ!
「すでに棲みついている害獣を駆除したい」「害獣に浸入されることがないよう徹底的に予防したい」という方は、プロの害獣駆除業者へ相談することをおすすめします。
侵入予防や追い出しなら一般の方でもある程度おこなうことができますが、不慣れな方ができることには限界があり、一時的に効果があったとしてもすぐに被害は再発してしまうでしょう。
害獣に関する確かな知識と技術を持つプロであれば、駆除はもちろん、侵入経路の封鎖や害獣がいた場所の清掃や消毒、被害再発時にも迅速に対応してもらえます。
ただし、業者によって費用やサービス内容は異なり、なかには悪徳業者の類も存在するため、業者選びは慎重におこなわなくてはいけません。
業者を選ぶ際は、複数社(できれば3~4社ほど)に現地調査と見積もりを依頼し、それぞれの費用・サービス内容・業者の質を比較したうえで、より自身が安心・納得できる業者を選びましょう。
もし「いきなり業者へ連絡するのはちょっと不安…」という方は、お住いの自治体へ相談してみるのもよいかと思います。
まとめ
神奈川県にもさまざまな野生動物が生息しており、なかには害獣として人々の生活に多大な悪影響をおよぼすものも存在します。
地域単位で対策を実施していても、野生動物の被害を完全に防ぎきることは至難の業です。
害獣の被害を未然に防ぐ方法は「害獣と遭遇しない」「害獣にとって快適な環境を作らない」「侵入経路となる場所を封鎖する」ことが重要といえます。
それでも100%害獣の侵入を防げる保証はないため、被害を危惧される方やすでに被害に遭っている方は、お住いの自治体やプロの業者へ相談してみるとよいでしょう。
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