家屋など建物にコウモリが棲みついてしまい、その被害に悩まされている方は少なくありません。
実際、害獣駆除業者へのコウモリ駆除の依頼は増加傾向にあります。
コウモリも害獣の一種であり、住居に棲みつくことで建物や住民にさまざまな害を及ぼしてしまいます。
仮にコウモリに棲みつかれた場合、自身の判断で駆除をしてもいいのでしょうか。
本記事では、コウモリの駆除方法・効果的な追い出し方だけでなく、コウモリの生態や習性についてご紹介します。
コウモリの被害に悩まされている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
コウモリは自身の判断で駆除できる?
結論からいうと「鳥獣保護法により、コウモリを自身の判断で勝手に駆除することはできません」。
鳥獣保護法(鳥獣保護管理法)では、鳥類または哺乳類に属する野生動物の捕獲・駆除を禁止しています。
コウモリは「哺乳類」に属するため、この鳥獣保護法が適用され、たとえコウモリによる被害が発生していても許可なく捕獲・駆除することができません。
ほとんどのコウモリは絶滅危惧種に指定されており、駆除するには国や自治体の許可を必要とします。
もし自身の勝手な判断(無許可)で捕獲・殺傷をしてしまうと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となるため注意しておきましょう。
コウモリによる被害・NG行動とは?
本章では、住居に侵入したコウモリによる被害内容と、コウモリを追い出す際のNG行動についてご紹介します。
知識のない方(素人)が下手に対処しようとすると、思わぬ被害に遭う可能性もあるため注意しておきましょう。
家屋に棲みつくコウモリの特徴
コウモリは空を飛べるため「鳥類」と思われがちですが、実際は「哺乳類」であり哺乳類のなかで唯一飛行できる動物といわれています。
コウモリにもいくつかの種類がありますが、家屋を住処とするのは「アブラコウモリ」であり、家屋の屋根裏・軒下・換気口内・壁内などに巣をつくって棲みつくケースが高いといわれています(その特性上「イエコウモリ」と呼ばれることもある)。
アブラコウモリは、体長4~6cm・体重5g~20gと非常に小さく、体毛は黒い褐色または灰褐色をしていることが特徴に挙げられます。
コウモリ=暗い山に生息するイメージを持つ方もいますが、アブラコウモリは山間部には生息しておらず、むしろ市街地を中心として夜間に活動します。
- 雨風をしのげる
- 蚊・ユスリカ・ヨコバイなど、エサとなるもの多い
- とても小さな隙間からでも侵入できる
(アブラ)コウモリにとって、家屋内は過ごしやすい環境であり、一度棲みつかれると建物や住民に多大な被害をおよぼす可能性があります。
コウモリの被害について
コウモリによる家屋および住民への被害として、以下が挙げられます。
- 糞尿による悪臭
- 鳴き声・羽音による騒音
- ダニや病原菌による被害
それぞれ、以下で詳しく解説をしていきます。
糞尿による悪臭
コウモリは基本的に夜行性であり、日中は巣のなかで静かにしていることが多く、その場で糞尿をします。
当然ながらコウモリが糞尿の掃除をすることはないため、それらは次第に溜まっていき、やがては悪臭を放つキッカケとなるでしょう。
とくに雨の日(湿気が強い日)は悪臭がより強くなるため、臭いで体調を崩してしまう方も多いとされています。
また、木造住宅であれば建物が糞尿を少しずつ吸収し、シミ・腐敗の原因となり、放置しておけば建物の老朽化につながる恐れもあるでしょう。
鳴き声・羽音による騒音
アブラコウモリの鳴き声は、通常は「超音波」のため人に聞こえることはそうありません。
しかし危険がおよぶと甲高い鳴き声を発することがあること、また飛ぶ・動き回る際の羽音が騒音の原因となり、住民のストレスとなり得る可能性があります。
コウモリは夜行性のため、とくに人が就寝する夜間に動き回ることが多く、余計に被害が感じやすいことも原因に挙げられるでしょう。
数が多いほど騒音に悩まされる可能性が高くなるため、人によっては睡眠障害など健康被害につながる恐れもあります。
ダニや病原菌による被害
外部から侵入してくる野生のコウモリは、どのような菌やウイルスが付着しているかわからないため、下手に触れるとさまざまな病気や感染症のリスクを伴うことになります。
菌が空気中に舞い散ると「ハンタウイルス感染症」「ヒトプラズマウイルス」といった感染症を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
また、コウモリには多くの「ダニ」が寄生しており、そのダニが室内に侵入・住人に吸血することで、噛まれた場所が赤く腫れ強いかゆみを引き起こす原因にもなるでしょう。
コウモリを追い出す際のNG行動について
捕獲・殺傷が禁止されているとはいえ、家屋内にコウモリが侵入すると放置しておくのは被害を悪化させる原因となるでしょう。
しかし、一般の方(素人)がコウモリを下手に追い出そうとすると予期せぬ被害を被る可能性もあります。
ここでは、コウモリを追い出す際のNG行動についてご紹介します。
コウモリに触れる
屋外から侵入してくるコウモリには、どのような菌やウイルスが付着しているかわかりません。
そのため、仮にコウモリと接触する機会があったとしても直接触れることは避けましょう。
とくに、子どもやペットがいる家庭では「興味本位で触れてしまう」可能性もあるため、より注意が必要といえるでしょう。
隙間や天井裏からのぞき込む
「鳴き声や物音がする」「コウモリがいそう……」という場合であっても、天井裏や壁の隙間などからのぞき込むのは厳禁です。
コウモリが棲みついている狭い場所は雑菌や病原菌が蔓延している可能性があり、場合によってはコウモリからの思わぬ攻撃やコウモリ以外の害獣が棲みついている可能性もあります。
いずれにせよ不用意にのぞき込むと危険といえるため、注意しておきましょう。
道具を使って追い出す
コウモリを発見した際、とにかく住居内から追い出そうとして箒や長い棒などを使用する方がいます。
また、焦ってしまい道具を使ってコウモリを撃退しようとする可能性もあるかもしれません。
前者の場合はコウモリからの思わぬ返り討ちに遭う可能性もありますし、後者は鳥獣保護法によって殺傷することが禁止されています。
「住居から追い出したい」という気持ちは理解できますが、下手に関わると余計な被害を被る可能性があるため、よく考えて対処する必要があるといえるでしょう。
コウモリを発見した際の効果的な対処法とは?
本章では、コウモリを発見した際の効果的な対処法についてご紹介します。
一部では「益獣」と呼ばれることもありますが、放置しておくと被害は深刻化していくため、早めに対策を講じた方がよいといえるでしょう。
害獣駆除業者に相談する
コウモリの被害に悩まされている場合の最たる有効法は「害獣駆除業者に相談する」ことです。
業者に依頼するメリットとしては、以下が挙げられます。
- 鳥獣保護法を気にせずに済む(自身で許可をとる必要はない)
- 天井裏・狭い場所など、どんな場所でも徹底的に駆除してくれる
- 追い出すだけではなく侵入防止など再発防止策も施してくれる
- 清掃サービスを利用できる など
コウモリの住居内からの追い出しは自身でもある程度可能ではありますが、素人にはできることに限界があります。
また、対処が不十分だと再侵入の恐れがあり、感染症などの被害や追い出し後の清掃に悩まされる可能性もあるでしょう。
自身で対処するに比べると費用はかかるものの、総じて費用や手間を削減できる可能性は高いといえます。
コウモリの被害に悩まされている方は、被害が深刻化する前に害獣駆除業者に依頼することをおすすめします。
忌避剤を使って追い出す
業者に依頼せず、自身でできるだけ対処したいという方は「忌避剤」を使用しましょう。
忌避剤とは、コウモリ(害獣)が苦手な臭いや味を含んだ薬剤のことであり、ホームセンターやネットショップなどで簡単に購入できます。
ただし「忌避剤を設置しても、いずれは臭いや味に慣れてしまう」ため、効果は長続きしません。
あくまで一過性のため、仮に追い出しに成功しても、再侵入を防ぐために侵入防止策などを講じた方がよいといえるでしょう。
侵入口をふさぐ
家屋に棲みつきやすいアブラコウモリは体が小さく、小さな穴や隙間からでも簡単に侵入し棲みつく可能性があります。
そのため「コウモリの被害を食い止める=コウモリの侵入口をふさぐ」ことは有効な対策手段の一つです。
コウモリを追い出し・侵入できなくすれば、家屋内にコウモリが棲みつくことはなくなるでしょう。
しかし、コウモリ駆除に精通していない一般の方が、コウモリの侵入口を完全にふさぎ切ることは非常に困難です。
もしコウモリの被害に悩まされている方は、自身の対処を講じるよりも、害獣駆除業者に相談する方がよいといえるでしょう。
市役所に相談する
もし「コウモリの被害に悩んでいるものの、業者に依頼するのも不安……」という方は、お住いの自治体に相談してみるのもいいでしょう。
各自治体がコウモリ駆除を実施する可能性は低いものの、自力でできるコウモリ駆除の方法や近隣でコウモリ駆除をしてくれる業者を紹介してくれることはあります。
詳細は自治体によって異なるため、気になる方は公式サイトなどを確認して相談を検討してみましょう。
ただし「自治体から紹介された業者が、必ずしも信用に値する業者ではない」という点には注意が必要です。
自治体は、あくまで「近隣の駆除業者を紹介している」だけであって、業者の良し悪しまで完全に把握している可能性は低いからです。
業者選定は最終的に自身で決める必要があるため、この点には注意しておきましょう。
コウモリ駆除に関するよくある質問
本章では、コウモリ駆除に関するよくある質問をご紹介します。
コウモリは「益獣」なの?
コウモリは「益獣」(人畜の生活や農林業上で有益とされる獣)ともいわれています。
その理由は、家屋内などに集まってくる蚊・ゴキブリ・クモ・ユスリカなどの害虫を食べてくれるためです。
しかし、放置しておけば人間にとって害をなすことに違いはありません。
- 住居に棲みつきやすいアブラコウモリは繁殖しやすい(1回の出産で2~3頭の赤ちゃんを産む)
- 数が増えるほど頻尿や騒音などの被害に悩まされる
- アブラコウモリの主食=昆虫のためパサパサとしていて崩れやすく、それを吸うことで呼吸器系の病気になってしまう可能性がある など
コウモリは哺乳類=人間に近い生き物のため、ネズミなどのほかの害獣・害虫以上に感染にかかりやすくなります。
放置しておくのは危険といえるため、侵入・棲みつきを確認したら、早めに対処をほどこすことをおすすめします。
コウモリはなぜ鳥獣保護法で管理されているの?
コウモリは、一見すると人間に害をなす生き物といえるものの、駆除のし過ぎで生態系のバランスを崩すことも危険といえます(コウモリは絶滅危惧種に指定されている種類もいる)。
また、人間の生活にもよい影響を与えているケースもあります。
その理由は「コウモリの主食は昆虫である」ということです。
蚊・ユスリカ・ヨコバイなどの飛翔昆虫、カナブン・ゴキブリなどの昆虫を捕食し「農作物に被害を与える害虫を食べることで、間接的に農作物を守る役割を担っている」といえます。
コウモリがいなくなると、ほかの生物が増える可能性があり、生態系への異変や人にとっても害をなす可能性があります。
そのため、よく考えて行動をする必要があるといえるでしょう。
コウモリをペットとして飼うことはできる?
コウモリは鳥獣保護法によって「有害鳥獣」とされており、許可なく捕獲・殺傷が禁じされています。
では「コウモリをペットとして可能ことは可能」なのでしょうか。
結論をいうと野生のコウモリ(アブラコウモリなど)を勝手にペットとして飼うことはできません。
コウモリをペットとして飼うこと自体は可能ですが、ペットショップで販売されているコウモリは「フルーツバット」という種類であり、主食がフルーツです。
アブラコウモリの主食は昆虫であり、そもそも特徴が大きく異なります。
また、野生のコウモリは菌やウイルスが体に付着している可能性が高く、勝手な判断で飼おうとすると感染症などの病気を引き起こす原因にもつながるでしょう。
(ペット用として販売されているコウモリは、ペット用として繁殖されているため寄生虫などがついている可能性は低い)
そもそも、コウモリを買うには「コウモリがストレスなく飛べるような広いスペースを確保する必要がある」「生態系を崩すことを防止するために逃げないようにする」などの工夫も必要です。
一見すると「コウモリって可愛い、飼いたい」と感じる方もいるかもしれませんが、少なくとも野生のコウモリを勝手な判断で飼うことはやめておきましょう。
まとめ
コウモリは鳥獣保護法で守られている生き物であり、仮に住居や住民に被害をおよぼしていても許可なく駆除・殺傷することは禁じられています。
コウモリの被害に悩まされている方は、自身で対策を講じるのもよいですが、被害が拡大する前に自治体や害獣駆除業者に相談するのがよいといえるでしょう。
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