アライグマは害獣?害獣扱いされる理由や被害内容、対策まで解説!

アライグマ
  • 「アライグマにご注意ください」
  • 「アライグマ急増中!」
  • 「危険生物アライグマ」

最近、このようなフレーズを新聞やニュースで目にする方も多いのではないでしょうか?

アライグマはペットにしたくなるほどかわいい見た目をしていますが、実際はペットに全く向かないだけでなく、今日本中で様々な被害を引き起こしている「害獣」です。

この記事ではアライグマが害獣と呼ばれる理由、日常生活への被害、遭遇したときの正しい対応などについて解説します。

アライグマはどんな動物?基本情報を紹介

アライグマはもともと日本にいない動物で、アメリカやカナダから持ち込まれた外来生物です。

全長(胴体+尻尾)は60~90センチで体重は約10キロ。
毛色は薄い灰色か黒ずんだ茶色です。

一見タヌキと似ていますが、アライグマは尻尾にしましま模様がある、鼻から眉間にかけて黒い筋がある、目の周りが黒いなどの特徴があります。

夜行性のため日没から早朝まで活発に活動しますが、エサの取れ具合によっては昼間に行動することもあります。

果物、昆虫、木の実、小動物(カエル・トカゲ)、残飯など何でも食べる雑食性で、寿命は野生なら5年、飼育下なら10年ほどです。

アライグマは「害獣」である

アライグマは人の生活や産業に悪影響をあたえる「害獣」です。ここではアライグマが害獣とされる理由について解説します。

アライグマがもたらす3つの害

アライグマが害獣とされる理由は次の3つです。

  1. 農作物をあらす
  2. 人に感染する病原菌や寄生虫をもつ
  3. 生態系へ被害を与える

農林水産省によると2022年度のアライグマによる農作物被害額は、全国で4億5,600万円にのぼります(参照:農林水産省-野生鳥獣による農作物被害の推移)。

アライグマは「狂犬病ウィルス」「サルモネラ」「アライグマ回虫」などを保有しており、噛まれたり、唾液やフンに触れたりすると感染し、人やペットの命にもかかわります。

とくに問題視されているのは、アライグマによる生態系の破壊です。
「ニホンザリガニ」「サンショウウオ」などの希少動物を捕食したり、フクロウ、ムササビ、タヌキのすみかを乗っ取ったり、野鳥の雛や卵を食べて繁殖を妨害するといった事例が報告されています。

上記の理由から、アライグマは「侵略的外来種」として「特定外来生物」に指定され、駆除対象の害獣となってしまいました。

捕獲しても増え続けるアライグマ

特定外来生物になって以降、全国でアライグマ駆除が盛んに行われています。

アライグマの捕獲数は2003年は全国で約3,000頭でしたが、特定外来生物に指定された翌年の2006年には1万頭を突破し、2019年には6万6,000頭まで増加しました。

2020年以降、全国の捕獲数については公的データはないものの、自治体ごとの公表を見ると、

  • 兵庫県:約8,000頭
  • 北海道:約25,000頭
  • 神奈川県:約2,200頭

となっており、ほかの都府県を合わせると、現在も年間数万頭のアライグマが駆除されているといえます。

しかし捕獲数が大幅に増えたにもかかわらず、アライグマによる農作物被害額は高止まりしていて、数と生息域は広がり続けています

アライグマが増えすぎた理由

全国で駆除が行われても、アライグマ被害がおさまる気配はありません。ここではアライグマが野生化した経緯と数を増やせた理由について解説します。

アライグマ野生化の経緯

アライグマの野生化は1962年、愛知県の動物園で飼育されていた個体が逃げ出したのがはじまりです。

その後1977年に放映されたアニメの影響で、ペット用にアライグマが大量輸入されました。
しかしアライグマは小さなうちは人になつくものの、徐々に気性が荒くなり手におえなくなるため、山に捨てられたり、飼い主のもとから逃げ出したりする事例が相次いだのです。

捨てられたり、逃げ出したアライグマは野生化しましたが、当初は一部の地域で確認される程度でした。

しかし環境省による2018年の調査では分布が一気に広がり、「秋田県・高知県・沖縄県」をのぞくすべての都道府県に生息することがわかっています(参照:環境省-アライグマ、ハクビシン、ヌートリアの生息分布調査の結果について)。

理由1.天敵がいない

アライグマ増加の最大の理由は、日本に天敵動物がいないことがあげられます。
ピューマ、オオカミ、ワニなどの肉食獣が天敵となりますが、いずれも日本に生息していません。

実際、アメリカのフロリダ州では「ビルマニシキヘビ」という大型のヘビに捕食され、アライグマが激減したという報告があることから、天敵の有無は影響が大きいといえるでしょう(出典:AFPBB News-外来種が原因でフロリダのウサギやアライグマが激減

またアライグマの故郷であるアメリカは狩猟が盛んな国で、年間数百万等のアライグマが捕獲されています。

そのため人もアライグマの天敵となりますが、日本では狩猟人口が減少していることもアライグマ増加の一因といえます。

理由2.適応力が高い

環境への適応力が高いのもアライグマの特徴です。

本来アライグマは森林地帯に生息し、木の穴(樹洞)をすみかにします。
しかし樹洞がなくても、ほかの動物が掘った穴や岩場のすき間、下水管や空き家をすみかにするなど、住む場所を選びません。

これはエサについても同様で、ゴミ捨て場を漁ったり、住宅に侵入して台所の食べ物を食べたりもします。

アメリカでは市街地のゴミ箱の近くに巣を作り、捨てられた残飯を食べて生活するアライグマもいるほどです(出典:ナショナル ジオグラフィック-アライグマが「都会の戦士」として世界を席巻する理由)。

理由3.繁殖力が高い

アライグマの繁殖力は非常に旺盛です。

アライグマの妊娠期間は約60日で、一度の出産数は5頭前後。
妊娠・出産の適齢期がないため、高齢になっても妊娠率が下がらず、死ぬまで子どもを産み続けられるのが最大の特徴です。

アライグマは年に一回の妊娠・出産が基本ですが、流産や捕獲で子どもを失うと時期外れでも再び発情して死んだ子どもの分を補填します。

アライグマをいくら捕獲しても被害が収まらないのは、繁殖力に捕獲数が追いつかないためともいえるでしょう。

この繁殖力の高さで、アライグマはヨーロッパや中央アジア、東アジアの国々でも外来種として広がっています。

アライグマによる身近な被害

アライグマの増加にともない、農作物や生態系だけでなく身近なところにも影響が出ています。
ここではアライグマが引き起こす、日常生活への被害について解説します。

1.人やペットへ危害をくわえる

アライグマはあごの力が強いため人間の指なら簡単に食いちぎり、体格の大きい牛や猟犬にもひるまず噛みついたりします。

野生化したアライグマに人が噛みつかれてケガをしたり、猫やニワトリが襲われたり、ペットの金魚やメダカが食べられるなどの被害も発生しています。

近年は住宅街でアライグマを目撃することも多くなりましたが、不用意に触ると驚いて噛みついたり、引っかかれたりするので、小さな子どもがいる方はとくに注意が必要です。

2.屋根裏に侵入する

アライグマは冬の寒さや雨風をしのぐため、住宅の屋根裏に住みつきます。

屋根裏に住みつかれると、糞尿による天井の汚れや悪臭の原因になったり、夜中に走り回る騒音で眠れなかったりなど心身に負担がかかります。

またアライグマには同じ場所でフンをする習性があり、たまったフンの重みで天井が落ちてくることもあります。

窓の網戸を破って侵入されたケースもあるため、アライグマの注意喚起が出ている場合、窓や玄関の開けっ放しは避けましょう

アライグマに遭遇したときの正しい対応は?

アライグマは積極的に人を襲うことはありませんが、発情期(2月~3月)で気性が荒くなっているとき、子どもと一緒にいる母アライグマに近づいた場合は攻撃してくることがあります。

もしアライグマと遭遇した場合、「近づかない、触らない、静かにその場を離れる(立ち去るのを待つ)」の3つが鉄則です。

持っている食べ物に興味をもって近寄ってくることもあるので、食べ物はアライグマから見えないように隠しましょう。

様々な病原菌やマダニをもっているため、アライグマには絶対に触れないでください。

帰宅後はアライグマを目撃したことを自治体の担当部署に連絡しましょう。
目撃が増えれば行政も駆除に動くため、地域のアライグマ増加の抑制につながります。

アライグマに噛まれたり、引っかかれたりした場合は傷が小さくてもすぐ病院へ行き、適切な処置を受けてください。

家に住みつかれたら駆除業者へ依頼する

屋根裏や床下にアライグマが住みついたときは、すぐに駆除業者へ依頼しましょう。
警察や市役所は立場上、自宅敷地内のアライグマに関しては相談に乗ることしかできません。

捕獲用の罠を貸し出してくれる自治体もありますが、不慣れな人が屋根裏や床下に入って母アライグマと数匹の子どもをすべて捕獲するのは大変な作業です。

一度住みついたアライグマが自分から出ていくこともほとんどないため、被害が拡大する前に駆除業者へ相談するのが最も確実といえるでしょう。

業者に依頼すれば、捕獲だけでなく侵入経路もふさいでもらえるのでネズミ、イタチ、ヘビなどの侵入対策にもなります。

大半の業者は電話相談、現地調査、見積もりは無料で行ってくれます。アライグマの侵入に気づいたら一度相談してみてください。

まとめ

アライグマはもともと日本にいない外来生物で、農業や生態系に被害をあたえる害獣です。
環境への柔軟な適応と高い繁殖力で数を増やし続け、近年は住宅街でもよく見かける動物となりました。

攻撃的な性格で人やペットが噛みつかれたり、引っかかれたりする事件も起こっています。
また狂犬病ウィルスや寄生虫、マダニを保有しているので「近づかない・触らない」が基本です。

お住まいの地域で目撃情報があった場合は、ペットを室内に退避させたり、ニワトリ小屋を強化するなどの対策も必要です。玄関や窓もしっかり閉めてください。

もし屋根裏や床下に侵入されたら早めに駆除業者へ依頼しましょう。

当サイトを運営する「日本有害鳥獣駆除・防除管理協会」でもアライグマ被害の相談を受け付けていますので、お困りの際は一度お問い合わせください。

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