アライグマとハクビシンは、どちらも人々の生活を脅かす害獣として認識されています。
両者とも外見が似ているため、素人目には見分けがつかない可能性もあるでしょう。
この記事では、アライグマとハクビシンの違いについてご紹介します。
それぞれの特徴や被害の対処法についても解説しておりますので、違いを理解し、被害の防止にお役立てください。
目次
アライグマとハクビシンの違いはなに?
この章では、アライグマ・ハクビシンの見分け方について解説します。
見た目こそ若干似ているものの、両者は生物学的には異なる生き物です。
それぞれの違いを理解し、見分ける際の参考にしましょう。
生物学上の違い
まず、アライグマは「哺乳綱食肉目アライグマ科アライグマ属に分類される哺乳類」であり、もともと日本には生息していなかった外来種です。
飼育や毛皮目的で日本に大量輸入されたものの、攻撃的な性格をしているためペットに向かず飼育放棄や脱走が相次ぎ、それが野生化・繁殖し日本でも生息域を拡大しています。
また、アライグマは「特定外来生物」に指定されており「鳥獣保護法」「外来生物法」の両方で管理されているため、許可なく捕獲や駆除ができません。
対してハクビシンは「ジャコウネコ科ハクビシン属に分類される食肉類」であり、現在日本に生息する唯一のジャコウネコ科の哺乳類とされています。
ハクビシンは在来種か外来種かが明確でなく「移入時期がはっきりとしていない」という理由から、明治以降に移入した動植物を対象とする外来生物法に基づく特定外来生物には指定されていません。
ただし、鳥獣保護法により、狩猟獣には指定されています。
体長・体重の違い
それぞれ個体差こそあるものの、両者の一般的な体長・体重は以下ほどとされています。
【アライグマ】
- 頭胴長(体長):約41.5~60cm
- 尾長:約20~40.5cm
- 体重:約2~22kg
【ハクビシン】
- 頭胴長(体長):約61~66cm
- 尾長:約40~60cm
- 体重:約3.6~6kg
個体差があるため一概にはいえませんが、どちらかというとハクビシンの方が大きめといえるでしょう。
ただし、両者は体つきが大きく異なります。
アライグマはふっくらとした体つきをしており、タヌキと誤認されることも多い動物です。
対してハクビシンはネコのような体つきをしており、アライグマよりもスリムな体系をしています。
見た目の違い
アライグマとハクビシンは、体つきだけでなく顔や尻尾にも明確な違いが見られます。
まず「顔」ですが、アライグマは目の周りが黒く、耳のふちやひげが白いという特徴があります。
また、黒い模様が左右でつながって見えることが多いでしょう。余談ですが、タヌキの場合は眉間に筋のようなものがありません。
一方ハクビシンは、額から鼻にかけて白い線が入っており、鼻がピンク色(稀に黒色をしているものもいる)です。
また、目の下や耳の前に白い斑紋があります。
「尻尾」に関しては、アライグマは尾に縞模様が見られます。
これは、ハクビシン・タヌキ・アナグマには見られない独特の特徴といえるでしょう。
対して、ハクビシンの尻尾は細長く、先に向かって黒くなる傾向にあります(なかには、先端が白いタイプもいる)。
性格や得意分野の違い
どちらも見た目はとても可愛らしいものの、性格はそれぞれで大きく異なります。
アライグマは、その見た目に反して気性が荒く・攻撃的です。
人間など、自身よりも大きな生き物に対しても威嚇し、引っ掻きや噛みつきなどの攻撃をしてくることもあるでしょう。
また、手先が器用で、木登りや泳ぎが得意という特徴もあります。
対してハクビシンは、アライグマに比べて穏やかかつ大人しく臆病な性格をしています。
とはいえ、自身に敵意があると判断すれば威嚇モードに移行し、襲い掛かってくることもあるため注意が必要です。
得意分野としては、垂直に高くジャンプすることが挙げられるでしょう。
足跡の違い
どちらも5本指という点は同じですが、その形に違いが見られます。
アライグマは指が長く・人間の手のような足跡をしていますが、ハクビシンは丸みがありネコの足跡を大きくしたような形となっています。
足跡の大きさはどちらも5~7cmほど(ハクビシンの方が若干小さめ)ですが、その形から違いが判別できるでしょう。
なお、どちらも足跡には爪の跡がつきますが、アライグマはクマのようにかかとをしっかりとつけて歩くため後ろ足の方が長い傾向にあります。
鳴き声の違い
両者には、鳴き声にも違いが見られます。
主な鳴き声の特徴は、以下の通りです。
【アライグマ】
- 通常時は「クックッ」「キュッキュッ」と小刻みに鳴く
- 威嚇時は歯をむき出しながら「ギューッギューッ」「シャーッ」と唸り声を発する
- あまり鳴かない動物であり、鳴くとき=何かしらの理由があるケースが多い(危機的な状況に陥っているとき・親を探しているとき・空腹を知らせるときなど)
【ハクビシン】
- 通常時は「キューキュー」「キーキー」と鳴く
- 威嚇時は「ガァー!」など大きな声で鳴く(猫の喧嘩のような鳴き声を発する)
- 夜行性のため、夜に鳴き声を発することが多い
鳴き声に違いはあるものの、素人が鳴き声だけでその違いを把握することは難しいといえます。
いずれにせよ、どちらも「害獣」として認識されており、家屋に棲みつくなどされると被害を被るため、鳴き声が聞こえたら早急な対処が必要といえるでしょう。
食べ物や痕跡の違い
どちらも雑食性でいろいろなものを口にしますが、その摂食方法に違いが見られます。
アライグマは手先が非常に器用であり、外皮をむいて中身を食します。
対してハクビシンは直接口で食べるため、食べ散らかす傾向にあるでしょう。
スイカを例にすると、アライグマは直径約5cmほどの穴を作って中身をくり抜くのに対し、ハクビシンは大きな穴を掘って頭を突っ込んで食す…という具合です。
繁殖時期や生息地域の違い
繁殖時期についてですが、アライグマは冬~春先(1~3月に交尾・4~6月に出産・7月ごろから子どもが巣を出て活動しはじめる)が多いのに対し、ハクビシンには繁殖期にあたるものはありません(=いつでも出産可能である)。
ただし、暖かくなる春先にかけて行動が活発になる傾向はあります。
いずれも一度の妊娠で1~5匹前後の子どもを出産するため、繁殖力は非常に高いといえるでしょう。
生息域については、以下のような違いが見られます。
- アライグマ:森林・湿地・農耕地・都市部など
- ハクビシン:低地・山地・雑木林など
ただし、生息域が縮小している(自然環境が減少している)こともあって、どちらも人家や都市部に棲みつくケースは増加しているため、注意すべき対象ではあります。
天敵の違い
両者には「天敵が大きく異なる」という違いがあります。
まず、アライグマの天敵はオオカミ・クズリ・ワシミミズクなどの猛禽類・肉食哺乳類が挙げられるものの、外来種であるため日本ではほぼ天敵が存在しません。
対して、ハクビシンは日本でも天敵と呼べる存在が多数存在します。
- フクロウ・タカ・ワシ・ハヤブサなどの猛禽類(=肉食の鳥類が捕食対象とする)
- ニオイに弱いため、猫や犬の尿のニオイも嫌がる傾向にある など
また、性格的にアライグマの方が気が強いため、もし両者が同じテリトリーで出くわした場合は、ハクビシンが負けて逃げるケースが多いともいわれています。
アライグマとハクビシンの被害内容について
両者とも「害獣」に指定されていることから、人々にとって害をなす存在であることに違いはありません。
この章にて、両者による被害内容を解説します。
農作物への食害
どちらも野菜・果物・穀物などの農作物を好んで食べる傾向があるため、とくに農作物(成熟期や収穫期)に被害が増える傾向にあります。
仕事として農業に営んでいる方はもちろん、趣味で家庭菜園をしている方も例外ではありません。
農作物への被害を抑える方法としては、たとえば以下が挙げられます。
- 農作物をネット・柵で覆ったり、囲ったりする
- 忌避剤や音響装置を利用し、アライグマ・ハクビシンに警戒心を与える
- 犬・猫などのペットを飼い、追い払う
- 農作物周辺に人の匂いや毛髪を置き、警戒させる など
農林水産省が発表したデータによると、害獣による農作物への被害額は令和3年時点で約19億円と発表されており、その被害は今も拡大傾向にあります。
家屋への浸入被害
両者ともにお住いの建物の屋根裏・天井裏・床下などの侵入被害が増加しており、放置するほどに健康・建物への被害は甚大となっていきます。
被害の一例としては、騒音被害・糞尿による悪臭の被害・接触による感染症の被害などが挙げられるでしょう。
これらの被害を防ぐための対策としては以下が挙げられます。
- 屋根・壁などの隙間や穴を徹底気に塞ぐ
- 食べ物やごみなどの「餌となり得るもの」を密閉し、匂いを外に漏らさない
- 忌避剤・音響装置を利用し、居心地の悪い環境を作る
- 犬・猫などのペットを飼い、追い払う など
総じて「害獣となり得る生き物にとって、居心地の悪い環境を作りだす」ことが重要といえるでしょう。
感染症などの被害
野生動物は衛生管理ができていないことから、その身体にさまざまな病原菌・寄生虫・ウィルスなどを有しています。
そのため、下手に接触するとさまざまな人獣共通感染症(動物から人に感染する病気)を媒介する恐れがあります。
それぞれで発病する病気には違いがあるものの、なかには致死率100%といわれる「狂犬病」に感染する可能性もあるため、極力両者への接触は避けるべきといえるでしょう。
害獣被害を防ぐ方法とは?
この章では、アライグマやハクビシンなどの害獣被害に遭遇した際の対処法について解説します。
いずれも鳥獣保護法によって許可なく駆除ができないため、素人が対処するにはある程度の限界が生じます。
限界を感じた場合or被害が気になる方は、早めに専門業者などに相談すべきといえるでしょう。
害獣駆除の専門業者に相談する
素人にできることには限界があるため、被害を危惧する人は早めに害獣駆除の専門業者に相談すべきといえるでしょう。
被害・再発を最小限にとどめるうえで、もっとも確実かつ安全な方法です。
また、業者に依頼すれば、法律・条例に基づいた適切な方法で害獣を捕獲・駆除できるため、手間を大きく削減できることでしょう。
清掃や消毒も徹底しておこなってくれるため、費用こそかかるものの、コストパフォーマンスに優れた方法であることに間違いはありません。
サービス内容や費用や業者によって異なるため、事前確認を徹底したうえで、納得・安心できる業者に依頼することをおすすめします。
お住いの自治体に相談する
お住いの自治体によっては、害獣駆除などの被害を受けている場合、駆除の実施or助成金などを提供してくれる可能性があるかもしれません。
ただし、基本的にアライグマやハクビシンに対して、駆除・助成金が発生する自治体は少ないため、過度な期待は禁物といえます。
とはいえ、なかには「適切な対処法の助言がもらえる」「害獣駆除業者を紹介してもらえる」「捕獲器や防護服を貸し出してくれる」といったケースもあるため、いきなり業者に相談するのが不安…という方は、まずは自治体に相談してみるのもよいといえるでしょう。
自治体によって詳細は大きく異なるため、まずは公式サイトや問い合わせなどで確認してみるとよいでしょう。
自身で対処する場合は市販アイテムを活用する
「被害内容がわからない」「まだ自治体や業者に相談するほどではない」という方は、市販のアイテムを使い対策を講じてみるのもよいかもしれません。
ホームセンターやネット通販などで、忌避剤や超音波発生装置などの対策アイテムを購入することもできるため、それらで対策を講じてみるのもよいでしょう。
ただし、自身でできることには限界があるため「自身では対処しきれない」「被害が拡大することが心配」という方は、早めにプロに相談すべきともいえます。
被害が拡大するほど、駆除・再発防止・清掃や除菌・修繕などにかかる費用は割高になるため、自身で対処するか・業者などに相談するかの見極めは適切におこなったほうがよいでしょう。
まとめ
アライグマ・ハクビシンの特徴はそれぞれで異なれど、どちらも人々に害をなす害獣であることに違いはありません。
自身でできる限りの対処を施すとともに、手に負えないと感じた場合は早期に自治体や専門業者に相談すべきといえるでしょう。
被害が拡大するほど対処にかかる費用は高額になるため、適切な見極めが重要です。
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