ハクビシンとは、人やペットに多大な被害をもたらす厄介な害獣です。
人前に姿を見せることが少ないため、気づかぬうちに建物に侵入し棲みつき、その存在に気がついたときには大惨事になっていることもあります。
しかし、ハクビシンの習性や行動パターンを事前に理解しておけば、被害を未然に防げるかもしれません。
本記事では、ハクビシンの生態や引き起こす害獣被害、対処法についてご紹介します。
ハクビシンがどのような動物かわからずに不安を感じている方は、本記事にて特徴を理解し、適切な対策を実施していきましょう。
ハクビシンとはどんな動物なのか?
本章では、ハクビシンの生態についてご紹介します。
可愛らしい見た目をしており、一見すると無害に見えるかもしれませんが、ハクビシンも害獣の一種です。
放置しているとさまざまな害獣被害をもたらすため、まずはその特徴を正しく理解しておきましょう。
概要
ハクビシンはジャコウネコ科の小動物のことであり、現在は日本列島のほぼ全域に生息しています。
日本に生息しているハクビシンは、在来種なのか外来種なのかがハッキリしておらず、さまざまな意見が散見されています。
- 毛皮用として輸入されたハクビシンが繁殖し、日本国内に定着したとされる外来種説
- 江戸時代の絵図にハクビシンと思われる動物が描かれていたという在来種説 など
外来種であったとしても、移入時期については意見が分かれており「移入時期がはっきりしない」として、明治以降に移入した動植物を対象とする外来生物法に基づく特定外来生物には指定されていません。
ただし、鳥獣保護管理法によって保護・管理されている動物であり、無許可で捕獲・殺傷することは禁じられています。
違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるため、もしも被害に遭っている方は、自身で無理に対処しようとせずに、害獣駆除の専門業者に相談するようにしましょう。
外見の特徴
ハクビシンの体長は50~75cmほどが一般的であり、オスとメスで体長の差があまりありません。
鼻すじ・尻尾が長く、柔らかく長い体毛で被われていることから、体つきはネコやイタチなどに近いといえるでしょう。
ただし、体色には以下のような特徴があり、他の動物と見分けがつけやすいことが特徴に挙げられます。
- 額から鼻鏡にかけて白い筋模様が入る個体が多い(不明瞭な個体も存在する)
- 体色は明褐色や暗褐色(ただし個体変異が大きい)
- 耳介や頸部・四肢は濃色や黒色をしている
- 体は暗い灰褐色、頭・手足・尾は黒い
- 尾は全体もしくは先端が黒い など
特に、額から鼻鏡にかけて白い筋模様が入っていることが最大の特徴であり、漢字で「白鼻心」と表現されるのは、この筋模様が由来しています。
生息域と棲み処
日本では沖縄を除く日本列島の全域で生息が確認されており、特に宮城・福島から中部地方にかけてと、四国での生息が多く確認されています。
国内では、もともと自然の多い山間部に暮らすことが多かったのですが、現在は人が行き交う市街地まで幅広く生息するようになりました。
ハクビシンは自身より大きな個体から身を隠すために、薄暗い場所を好んで棲み処とする習性があります。
- 森林地帯の場合 :木の穴・岩穴、他の動物が使わなくなった巣穴を利用することが多い
- 人が住まう民家の場合:屋根裏・軒下・人気のない納屋などを、巣やねぐらとして利用することが多い
もし、屋根裏や床下から、鳴き声や悪臭などがする場合はハクビシン(もしくは別の害獣)が棲みついている可能性が高いため、早急な対処が必要といえるでしょう。
足跡の特徴
ハクビシンは5本指であり、後足は4~5cm程度で前足のほうが少し小さめです。
そのため足跡は、丸い掌の外側に、肉球のあとが5つ付くような形になります(少し爪があるため、足跡に爪の跡がつくこともある)。
足跡もハクビシンかどうかを判断する材料となり得ます。
ただし、他の害獣の足跡とそこまで大きな違いがないため、不慣れな方が判断するのは難しいでしょう。
足跡を見つけたということは、ハクビシンなどの害獣が侵入している証拠となるため、早めにプロの業者に相談するなどして対処を講じるべきといえます。
身体能力
ハクビシンの身体能力は非常に高く、木登りや綱渡りを得意としています。
壁を伝って屋根まで登ったり、家まで伸びた木の枝から屋根に飛び移って屋根裏に浸入することもあるでしょう。
また、足裏に吸盤のようなパッドがついており、爪のかからない雨どいも器用に登ります。
さらに高い跳躍能力も持ち合わせており、1mほどの高さの障害物であれば、よじ登ったりジャンプしたりして乗り越えることもあります。
仮にハクビシン対策として柵を設置する場合は、1m以上の高さの柵を設置するようにしましょう。
繁殖能力
ハクビシンは年に1回、夏から秋の時期にかけて出産することが多いとされています。
また、1度の出産で2・3匹の子どもを産むとされており、生まれた子どもも生後10ヶ月ほどになると出産できるようになるようです。
加えて、野生のハクビシンの寿命は10年前後ほどと考えられています。
頭数だけでみると数が少ないように感じるかもしれませんが、繁殖のスピードが早いため、放置していると害獣被害はどんどん加速していく恐れがあるでしょう。
ハクビシンの侵入時に警戒すべきポイントとは?
ハクビシンが人々の生活圏に浸入・棲みついた場合、さまざまな害獣被害をもたらす恐れがあります。
本章では、ハクビシンによる害獣被害と警戒すべきポイントについてご紹介します。
鳴き声と騒音被害
ハクビシンの鳴き声は特徴的であり、状況に応じて主に以下のような鳴き声を発することがあります。
- 通常時:「キューキュー」「キーキー」「キィキィ」「キュンキュン」(高音かつ連続して鳴き続ける)
- 喧嘩時:「キーキー」「キャーーッ」(ネコの喧嘩に似た鳴き声)
- 威嚇時:「ガァー!」「シャー!」(近くに子どものハクビシンがおり、気性が荒くなっていることもある)
- 子ども:「キューキュー」「クルルル」「ピーピー」(大人のハクビシンよりも高い声で、短く連続して鳴く) など
ハクビシンは夜行性のため、特に人々が寝静まった(生活音が少ない)夜間に活発に活動します。
そのため、数が増えれば増えるほど、ハクビシンによる騒音問題に悩まされる可能性が高くなるでしょう(被害が拡大すると、睡眠障害やノイローゼを発症することもある)。
また、鳴き声が聞こえるということは「ハクビシンが侵入している・棲みついている」ことの証明となり、健康被害や建物の腐食被害など別の被害を引き起こす恐れも高くなります。
鳴き声はハクビシンなど害獣を見つけるうえでの重要なポイントとなるため、聞こえた場合は早急にプロの業者に相談することをおすすめします。
好む食べ物と食害
ハクビシンは雑食性のためなんでも口にしますが、甘い果実を好んで食べる傾向にあります。
特に、イチジク・ミカン・柿・ぶどうといった、糖度の高い果物が大好物のようです。
ハクビシンは木登りが得意なため、木に実っている果実を食すことがあります。
また、畑や家庭菜園で育てている果物や野菜、敷地内に生息する昆虫や小動物、果ては人間が廃棄する生ごみなども口にするため、ハクビシンに棲みつかれると食べ物の被害がどんどん増していく恐れがあるでしょう。
フンの特徴と悪臭・腐食被害
ハクビシンのフンは5~10cm程度の大きさで、丸くて長い形をしています。
果実を好物とするため、フンに果物などの種子が混ざっていることも多いようです。
加えて、イタチ・アライグマ・タヌキなど別の害獣と同じく、同じ箇所に糞尿をする「溜め糞」という習性も持っています。
また、ハクビシンは肛門の近くに「臭腺」という強い匂いの液体を出す腺があります。
威嚇時や恐怖を感じたときに、鳴き声とともに臭腺から強烈な臭いを出し、これも悪臭の原因となるでしょう。
ハクビシンに屋根裏や床下に棲みつかれると、こうした悪臭被害を受ける可能性が高まります。
溜め糞を放置しているとシミや腐食の原因にもなり、最悪の場合は天井が落ちてくる・倒壊するといった二次被害にも発展するため注意が必要です。
悪臭を感じる・シミができることは、ハクビシンなど害獣が頻繁に侵入している(棲みついている)ことの証明となるため、一刻も早く対策・清掃・消毒をおこなわなくてはいけません。
ハクビシンの性格と感染症の発症
ハクビシンは、基本的に臆病な性格をしています。
夜行性であること、日ごろは人目につかない場所にいることから、普段の生活のなかでハクビシンを見かけることは滅多にありません。
臆病な性格から、ハクビシンを見かけたとしてもいきなり襲い掛かってくる可能性も少なめといえます。
ただし、家から追い出そうとむやみに追い詰めたり、人間側からちょっかいを出したりすると、自衛手段として攻撃してくる恐れもあるため注意が必要です。
威嚇時は襲い掛かってくる可能性が高くなるため、より警戒すべきといえます。
また、ハクビシンの身体やフンには数多くの病原菌や寄生虫が付着しており、ハクビシンを媒介にして感染症を発症する恐れもあります。
可愛らしい容姿をしているからといって不用意に近づくのは大変危険であるため、極力接触は控えるべきといえるでしょう。
野生のハクビシンの侵入を防ぐには?
ハクビシンは鳥獣保護管理法によって保護・管理されており、無許可で捕獲・殺傷することができません。
許可を得るには自治体への申請が必要なだけでなく、狩猟免許や狩猟経験などが必要となるため、誰でも駆除できるわけではありません。
そのため、一般の方がハクビシン対策としてできることは、追い出しと敷地内への侵入防止が主となります。
本章では、一般の方でもできる野生のハクビシンの侵入を防ぐ方法についてご紹介します。
ハクビシンのエサとなり得るものを排除する
ハクビシンを寄せ付けない環境対策として、エサとなり得るものを極力排除することが重要です。
対処法としては、たとえば以下が挙げられます。
- 生ごみを袋のまま出しっぱなしにせず、フタつきのもので保管する
- 生ごみは溜め込まずに、早めに廃棄する
- 犬や猫などペットのエサを放置したままにせず、適度に片付ける
- 畑や家庭菜園で野菜や果物を育てている方は、実が熟したら早めに収穫する
- 廃棄予定の野菜や果物は放置せずに早めに廃棄する など
ハクビシンが市街地まで出没するようになった理由は、棲み処やエサとなるものを得るため…であり、エサとなり得るものがなければ(よりエサが多くある場所に侵入しようとするため)ハクビシンが近寄りづらくなる可能性が高まるでしょう。
忌避剤などを利用する
ハクビシンにも苦手とする臭いがあり、その嫌がる匂いなどを用いた忌避剤が市販品で販売されています(忌避剤を自作することも可能)。
この忌避剤をハクビシンの侵入口となりそうな場所に設置することで、ハクビシンの侵入を防止したり追い出す効果が期待できるでしょう。
ただし、忌避剤には犬や猫といったペットが嫌う匂いが含まれているケースもあるため、詳細を確認したうえで使用するかどうかを決めてください。
また、いずれは苦手とするものにも慣れてしまう可能性もあることから、適度に罠の種類や設置場所を変えることもおすすめします。
住宅への侵入経路をふさぐ
ハクビシンは、頭が入るほどの穴であれば入り込むことができるといわれており、壁や屋根の穴・通風口などの隙間などさまざまな場所から侵入することができます。
そのため、侵入経路となり得る場所を特定し・封鎖することで、ハクビシンの侵入を防止することが可能です。
たとえば、通風口は金網やパンチングメタルなどで塞ぐのが効果的です。
フンや足跡などの痕跡を参考に侵入口を特定し、封鎖するとよいでしょう。
ただし、侵入経路は一つとは限らないため、一般の方が侵入経路のすべてを特定し対処するのは至難の業といえます。
素人にできることには限界があるため、被害を危惧される方・手間暇をかけたくないという方は、害獣駆除の専門業者に相談するのがおすすめです。
電気柵や有刺鉄線を使って侵入を防止する
畑や家庭菜園で野菜や果物を育てている方、侵入されたくないエリアがあるという方は、電気柵や有刺鉄線の設置をおすすめします。
電気柵の場合、動物に対して軽い電気ショックを与えて脅かし、柵の中へ入らないようにする効果が期待できます。
(電気ショックでは殺傷することがないように調整されているため、自治体の許可をとる必要はない)
電気柵を設置する際は、鼻先など感電しやすい部分が触れる高さに柵線を設置するのが効果的であり、ハクビシンの場合は地面からの高さが5cm・10cmの位置に設置するとよいでしょう。
有刺鉄線は、鉄板に鋭い棘がついているものです。
ハクビシンは木に登るのが得意なため、庭木などの登られると困る場所に有刺鉄線を巻くことで効果を発揮します。
(有刺鉄線は、巻いたら針金で簡単に固定でき、メンテナンスをしなくても効果は4年ほど持続する)
この有刺鉄線は、ハクビシンだけでなく、サルやアライグマなど別の動物にも効果が期待できます。
特に、実を収穫する時期に使うことで、ハクビシンやその他の害獣による食害を防ぐことができるでしょう。
ハクビシンに関するよくある質問
本章では、ハクビシンに関するよくある質問をご紹介します。
ハクビシンと他の害獣の見分け方は?
家屋に浸入・棲みつく害獣は、ハクビシン以外にもさまざまな種類が存在します。
見分け方のポイントは、鳴き声や痕跡(フンや足跡など)が挙げられるでしょう。
ただし、害獣駆除に精通している方でないと、鳴き声や痕跡から判別することも困難ではあります。
鳴き声が聞こえる・痕跡を発見したという場合、周辺にハクビシンなどの害獣が侵入・棲みついている可能性が非常に高いため、被害が拡大する前にプロの業者へ相談することをおすすめします。
ハクビシンの天敵・弱点・苦手なものはなに?
まず、ハクビシンの天敵としては、主に以下が挙げられます。
- トラ・オオカミ・ヒョウなどの肉食獣
- フクロウ・タカ・ワシなどの獰猛類 など
肉食獣に該当する天敵は日本にほぼ生息しておらず、獰猛類に該当する者はハクビシンの子どもを中心に襲うかつ数も少ないため、日本には天敵がほとんどいないといえるでしょう。
ハクビシンが日本で繁殖できたのは、ハクビシン自身の繁殖能力の高さに加えて、天敵が少ないことも挙げられます。
自身で忌避剤を作成することもできるものの、作成には手間がかかるため、基本的には市販の忌避剤を利用することをおすすめします。
また、天敵以外にもハクビシンが苦手とする臭い・音・光などさまざまに存在するため、忌避剤以外にも超音波発生装置やライトなども活用して対策を講じるのもよいでしょう。
ただし、苦手とするものも長期間放置するといずれは慣れて警戒心を緩めるため、適度に罠の種類を変えたり・設置場所を変えたりしてマンネリ化させないよう注意しておきましょう。
ハクビシンはなぜ都心部へ出没するようになったの?
ハクビシンが都心部など人の生活圏に浸入するようになったのは「自然環境の減少により、棲み処やエサが少なくなった」ことが大きな理由の一つに挙げられます。
また、人の生活圏は、天敵に襲われにくい・エサが豊富に存在する・雨風をしのげるといった、快適な生活が送りやすいことも理由に挙げられるでしょう。
一度家屋に棲みついてしまったハクビシンは、よほどのことがない限り棲み処を離れることはないため、害獣の侵入(鳴き声や痕跡など)を確認した際は、早急に対処を講じることをおすすめします。
ハクビシンをペットにすることはできる?
ハクビシンは、見た目の可愛らしさと臆病な性格から「ペットとして飼うこともできるのでは…?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、ハクビシンをペットとして飼うことは難しいためおすすめできません。
【ハクビシンをペットにできない理由】
- 鳥獣保護管理法の観点から、勝手に飼育できない
- ハクビシンはペットとして販売されていない
- 野生動物は人間に懐きにくく、病原菌を持っている恐れが高いため飼育しづらい など
さまざまなリスクを生じるため、野生のハクビシンをペットにしようとすることはもちろん、不用意に接近することも避けてください。
ハクビシンとアライグマはどちらが強い?
実は、ハクビシンの天敵としてアライグマも対象となります。
ハクビシンとアライグマは、以下のように共通点が多く、巣やエサの奪い合いになりやすいといわれています。
- 屋根裏や人の出入りが少ない場所に住み着く
- 雑食性で果実・野菜・小動物などなんでも口にする
- 棲み処や餌場が同じ など
ハクビシンよりもアライグマの方が気性は荒く、大抵の場合はハクビシンが負けてしまい、負けたハクビシンは、新しい住処を求めてほかの住宅に侵入してしまいます。
ただし天敵ではあるものの、アライグマも害獣の一種であり、かつ鳥獣保護管理法の対象動物のため、ハクビシン対策として飼うことはできません。
ハクビシンの駆除はプロの業者に依頼しよう!
ハクビシンの駆除には自治体の許可が必要であり、許可を得る・対処をするにも多大な手間とリスクを伴うため、一般の方ができることには限界があります。
そのため、もし「ハクビシンなどの害獣の被害を受けている」「害獣の被害が心配…」という方は、自身で無理に対処しようとせず、害獣駆除の専門業者に相談することがおすすめです。
プロの業者に相談すれば、ハクビシン・巣の駆除はもちろん、現場の清掃・消毒や侵入経路の封鎖、再発時の対応まで徹底しておこなってくれます。
自身で対処するよりも防除費用は高額になりますが、費用対効果まで考えるとトータルコストはお得になる可能性が高いでしょう。
被害が軽微なほど防除にかかる費用は安く抑えられるため、できるだけ早めにプロの業者に相談することをおすすめします。
まとめ
ハクビシンが人の生活圏に侵入・棲みつくと、人やペットなどに甚大な被害をもたらす恐れがあります。
そのため、ハクビシンなどの害獣を見かけることはもちろん、鳴き声や痕跡などを見聞きした場合は、早急に対処を講じるべきといえるでしょう。
素人ができることには限界があるため、被害を危惧される方はできるだけ早めにプロの業者に相談することをおすすめします。
業者ごとに費用やサービス内容は異なり、なかには悪徳業者の類も存在するため、まずは現地調査や見積もりを複数社から依頼・比較したうえで、より自身が納得・安心できる業者に依頼することが重要です。
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