【徹底解説】ムクドリってどんな鳥…?人間を悩ます害鳥の正体を紐解く

その他

前書き

皆さんは「ムクドリ」が一体どんな鳥か知っていますか?
恐らく、名前こそ聞いた事があれど詳しくは知らない…という方が大半を占めるかと思います。
しかし、実はムクドリはカラスやハトのように人間の生活に密着した鳥であり、気付かないうちに私達の身近に存在しているのです。
そこで本コラムでは、私達人間とも決して無関係ではない、そんなムクドリの正体を様々な角度から紐解いていこうと思います!
ぜひ最後までご覧ください。

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ムクドリって聞いてもイマイチ姿が思い浮かばないわ。
通勤で利用している駅に夕方ごろになると鳥の大群が集まってるのを見るけど、あれがムクドリなのかしら?

基礎知識

形態

ムクドリはスズメ目ムクドリ科に属する、スズメによく似た比較的小さな鳥です。
各部位ごとの大きさ、長さは以下のようになります。

全長:約235mm ±10mm程度
翼長(翼の付け根から末端までの長さ):オス 約128.9 ±3mm程度 メス 約124.9 ±2.5mm程度
尾長(尾の付け根から先端までの長さ):オス 約65.9 ±2mm程度 メス 約62.5 ±3mm程度
嘴峰長(くちばしの長さ):約25mm ±1.5mm程度
跗蹠長(かかとから足指の付け根までの長さ):約30mm ±2mm程度
体重:約23.0g ±4g程度
:長径 29.3mm ±3mm程度  短径 21.5mm ±1mm程度 重量 約6.7g

ムクドリの外見はスズメ目に属する他の鳥と非常に似ていますが、体色などの特徴から見分ける事が可能です。
まず、額や頬は黒色ですが、頭頂部から後頭部、首にかけて黒色や緑色の光沢模様があります。
羽の付け根や背、腰は灰褐色で、胸と脇は暗めの灰色の一方、胸の中央は白色であり、各羽には同じ白色の軸斑があります。
喉元は黒色で、ここにも灰色の軸斑があります。
嘴色は橙黄色、ときには先端が黒色、下嘴の基部は灰色または藍緑色を帯びている。虹彩は褐色、脚色は黄色。
以上のように、ムクドリの大変複雑な体色をしています。
また、メスに限っては喉と胸は灰褐色、胸の中央と腹は汚白色、上尾筒の大部分と下尾筒は汚白色であるものの、それ以外はオスと同様です。

鳥を特徴づける要素としては他にも鳴き声が挙げられますが、ムクドリは実に多彩な声を発します。
代表的な例としては「キュルキュル」「ジャージャー」「ケケケ」「ジェー」「ツィッ」といった鳴き声があり、天敵を追い払う際の鳴き声、天敵に捕まったときに出す鳴き声、仲間に集合を呼び掛ける鳴き声などを巧みに使い分けます。
また、歩き方の特徴としては、ハトなどと同様に足を交互に出して歩きます

生態

ムクドリは繁殖が終了する 6 月末頃から竹林、市街地やその周辺の林、また街路樹などにねぐらを形成し、数百から最大で数万にも及ぶ群れを形成します。
ねぐらは一般的に夏ねぐらと冬ねぐらに大別され、ムクドリは季節の変わり目ごとに巣を作り直す習性を持っています。
また、暖かい時期に使用した夏ねぐらは10月中旬頃にはなくなり、それと同時に夏ねぐらの周囲に冬ねぐらが作られ始めますが、冬ねぐらの群れは夏ねぐらに比べると小さい傾向にあります。
かつてムクドリのねぐらは自然豊かな場所に作られるのが普通でしたが、近年の温暖化や都市化に伴って落葉樹から常緑樹、そしてビルの屋上の看板や電線などの都市部や人工物が設営場所になる機会が増えたため、夏ねぐらと冬ねぐらの区別が無く、季節を問わず同じねぐらに住み続けるケースも増加しています。
その結果、騒音や糞害が深刻化し、ムクドリを追い出したり駆除しようとする人間との対立が浮き彫りになっています。
特に夏から秋にかけての夕方にねぐら周辺の上空を大群で飛び交う習性があり、時間帯が帰宅ラッシュと被る事情も相まって被害は深刻です。
その一方で、夜もふける頃になると夕方の喧騒が嘘のように寝静まるのも特徴です。

食性

ムクドリは雑食性で、動物質のものとしては芝生や畑の上を歩きながらミミズなどの昆虫類を食べ、植物質のものとしては初夏に桜の実、秋にはエンジュ、ネズミモチなどの木の実を食べます。
その中でも、特にムクの木の実を好んで食べることから「ムクドリ」と名付けられたとの説がありますが、それ以外にもモモ、ナシ、ブドウ、リンゴ、カキといった果物類を幅広く食べます。
ただし、柑橘系の果物は食べません。
秋・冬になると大群で畑や芝生に降り立って、地上を歩き回りながら、土の中に嘴(くちばし)を差し込むようにして昆虫を食べます。

繁殖

ムクドリは基本的に一夫一妻、稀に一夫二妻または一妻二夫のペアを作り、3月下旬から7月にかけて、年に1〜2回繁殖を行います。
樹木にできた空洞、人家の戸袋建物の隙間に、枯れ草、羽毛、獣毛、落ち葉などを材料にして巣を造ります。
卵は薄い青緑色で、一度に平均して4〜7個ほど産卵されます。
卵はオスメス共同の抱卵を受けて約12日後には孵化し、産まれた雛はその後23日程度で巣立ちますが、しばらくは親と行動を共にして狩りの技術などを習得します。
そして1ヶ月経った頃に完全な独立を果たし、若鳥同士で群れをなして採食したり、成鳥とともに集団で夏ねぐらを形成します。

分布

ムクドリは日本をはじめ東アジア(中国、モンゴル、ロシア東南部、朝鮮半島)に分布する鳥です。
日本においては殆ど全域に分布する留鳥(季節ごとに大移動を繰り返す渡り鳥とは異なり、一年を通して同じ場所に生息する鳥のこと)ですが、冬には暖かい地域で個体数が増加する傾向が知られています。
低山地から平地にかけて広く生息し、都市部などの人口密集地や郊外の田畑などで見られ、特に中部地方や関東地方の平地に多く生息します。
極端な気候を嫌うため北海道では夏、沖縄では冬にのみ見られますが、基本的に一年を通じて全国に分布し、近年は北海道南部で越冬する個体も確認されています。
具体的には田んぼや畑などの農耕地、山裾の森林、公園、果樹園をはじめとして駅前といった繁華街にも生息します。

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ハトでもカラスでもないから気になってたんだけど、駅でよく見かける鳥もこんな見た目だった気がするわ…。
駅周辺の道端に落ちてる糞とか喧しい鳴き声の犯人はこのムクドリだったの?
だとしたら厄介な鳥よ…。

人間との関係

「ムクドリ」と言う呼称の語源としては、好物が椋木(ムクノキ)の実だからだとする説、常にムクノキに巣を造るからだとする説、無骨で荒々しいさまを表す「むくつけし+鳥」の略とする説があります。
その他にも、群になる特徴から「群来鳥」「群木鳥」「雲鳥」といった表現も見られます。
ただし「ムクドリ」と言う語が全国に広まったのは割と最近のことで、地方によってはモク、モズ、クソモズ、モンズ、サクラモズ、ツグミ、ヤマスズメ、ナンブスズメ、ツガルスズメなど…様々な方言で呼ばれています。
サクランボを好むことからサクラドリと呼ぶ地域も存在します。

農作物を食い荒らす害虫をエサとするムクドリは、農業が主要産業だった時代には益鳥として人々に認識されていました。
特に農薬が発達していなかった時代には害虫駆除に役立つ貴重な存在であり、江戸時代初期には土佐藩の家老であった野中兼山が「ムクドリには千羽に一羽の毒がある」と言って農民たちに益鳥であるムクドリを捕らえて食べることを戒めたという話は有名です。
しかし時代が下って農薬が普及する1960年代以降になると、今度はムクドリによる果物への被害や、大規模な群れの定着に伴うフンや騒音被害が問題視されるようになり、現在では厄介な害鳥として位置づけられることが多くなりました。
果物や種子、昆虫などを食べるムクドリの食性が害虫の被害を減少させる役割を果たしてきた事実がある一方で、そうした特性が時代の変化に伴って無用の長物と化し、ムクドリと人間との共存が難しくなっているのです。

害鳥被害

近年ニュースなどでも深刻化する害鳥被害が度々取り上げられていますが、生息場所を固定するムクドリによる被害は1年間を通して継続します。
駅前に集合するムクドリの数は数百羽から多い時で数万羽にもなり、鳴き声による騒音,地面に落とされる糞や秋の換に伴う羽毛の散乱といった被害が多発し、周辺住民や歩行者への衛生・心理被害は大変なものとなります。
そのため、ムクドリが増加する8月から11月になると被害を訴える自治体への苦情が増えるそうです。
ムクドリによる被害は以下の3つに大別できるでしょう。

農作物への被害

ムクドリは果物やその種子を好んで食べるため、農作物に対して大きな被害を与えることがあります。
特にサクランボやモモ、ブドウ、柿などの果樹が収穫期になる夏から秋にかけての時期に被害が増える傾向にあり、農家は対策に追われています。
被害の総数自体は1990年以降減少傾向にありますが、集団で採餌する習性も相まって一度に大きな損失をもたらすことがあるため、農家にとっては深刻な問題なのです。

糞による被害

ムクドリは群れを成して行動するため、公共の施設等における糞被害も大きな問題となっています。
糞は街の美観を損なうだけでなく、様々な菌を含んでいるため健康被害を引き起こすリスクがあり、特に市街地での糞害は歩道や車にまで及び、人々の精神衛生上も好ましくない存在です。
また、糞によって雨どいが詰まるなどの被害も報告されています。

騒音被害

ムクドリは社会性の高い鳥で、大きな群れを作って行動することが知られています。これらの群れは、時に数万羽にも及ぶことがあり、その鳴き声は非常に大きな騒音となり得ます。
こうした騒音被害は人口密集地域で顕著になる傾向にあり、とりわけ繁殖期には活動が活発になることで騒音被害が深刻化することがあります。
都市部に住むムクドリの群れは、夕方になると街路樹や建築物に設営された巣周辺に集まって大音量で鳴き響くことがあり、この鳴き声によって窓を開けられない、睡眠の妨げになるなどの住民にとって大きな悩みの種として苦情が多発しています。

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私の家はまだ駅から遠いからマシだけど、駅周辺に住んでる人は大変ね。
私の家の近くには巣を造らないと良いんだけど、大丈夫かしら?

統計情報

個体数の変遷

ムクドリは古代から日本に生息している鳥ですが、その個体数はどのように変化しているのでしょうか。
前述の通り、かつては益鳥として扱われていたムクドリですが、1960年代以降になるとナシを筆頭に果樹全般への被害が問題になりはじめたことで現在では専ら害鳥として位置づけられることが多いです。
こうした経緯もあって有害鳥獣駆除の一環でムクドリ捕獲・駆除が盛んになり、1980年代後半には捕獲数が年間14万羽に迫るほどでした。
その効果もあってか1990年以降は徐々にこの捕獲数も減少していき、1994年からは狩猟鳥にも指定されたことで2000年代前半には年間捕獲数が6万羽弱になり、2012年以降は2万羽前後で推移しています。
最新の2016年の統計でも、有害鳥獣駆除で約18,000羽、狩猟で約2,200羽がそれぞれ捕獲されています。

都市への進出

以上のように、ムクドリの個体数自体は減少傾向にあるものの、近年生息地域の都市化という観点からも変化が見られます。
とあるNPO法人の調査によると、住宅地の占める割合が80%以上の都市部ではムクドリが増加していたのに対し、住宅地の占める割合が60%を切る地域ではムクドリが減少しているとの結果が得られています。
人口密度の比較的高い日本においても国土に占める都市の割合はごく僅かであり、実際この調査によってムクドリが確認された観測地点のうち、住宅地率が80%以上の地域はわずか2%なので、全体としてはムクドリの減少を示唆する先行研究を裏付ける形となりました。
逆に言えば、日本全体で見るとムクドリが減少しているものの、多くの人間が生活している都市部ではムクドリが増加しているため、人間とムクドリの接触自体(被害報告数)は増えていると解釈できます。

スズメやカラス同様、ヒトが集まる場所はムクドリにとって居心地が良いようで、都市環境への順応が進んだ結果、駅前など人通りの多いところに巣を造るようになりました。

ムクドリが集団ねぐらを利用した道路緑化樹木の高木の上位

1位 樹種:ケヤキ     確認数:123箇所
2位 樹種:クスノキ    確認数:27箇所
3位 樹種:イチョウ    確認数:15箇所
4位 樹種:スズカケノキ属 確認数:15箇所
5位 樹種:ユリノキ    確認数:6箇所
6位 樹種:タケ亜科    確認数:6箇所
7位 樹種:その他     確認数:37箇所
8位 樹種:不明街路樹   確認数:91箇所

全国の道路緑化樹木の高木の上位

1位 樹種:イチョウ    構成比:8.2%
2位 樹種:サクラ類    構成比:7.8%
3位 樹種:ケヤキ     構成比:6.9%
4位 樹種:ハナミズキ   構成比:5.4%
5位 樹種:トウカエデ   構成比:4.7%
6位 樹種:クスノキ    構成比:3.9%
7位 樹種:ナナカマド   構成比:2.8%
8位 樹種:日本産カエデ  構成比:2.7%
8位 樹種:モミジバフウ  構成比:2.6%
8位 樹種:クロガネモチ  構成比:2.2%
8位 樹種:その他     構成比:52.9%

被害の推移

ムクドリによる農作物への被害についても統計があります。
被害の及んだ面積は1992年以降3-6千ha 前後で推移していますが、個体数の減少と呼応するように被害面積、被害量も共に1996〜7年をピークに一貫して減少する傾向にあります。
被害金額の統計は1999年以降のものしかありませんが、こちらも被害面積、被害量に比例して減少しています。
ただし、2010年を境に減少傾向は弱まり、ほとんど横ばいの状態が続いています。

都市化が進んで人慣れしたムクドリの多くは人間が接近しても逃げないほどに警戒感が薄れているため、防除(追払い)による問題解消が困難になっています。
とくに被害の深刻な駅前の街路樹などでは、大規模枝打ち、ネットかけ、ディストレスコール(警戒を呼びかけるムクドリの鳴き声を聞かせる)といった強い人為的圧力をかけて追払いを試みても効果が無い事が多く、仮に防除に成功したとしても、郊外ではなく付近の別の街路樹や人工物、あるいは他の自治体の駅前に移動してしまい、結果的に巣を分散させて事態をより悪化させるケースもあります。

被害に遭ったら…

ムクドリによる騒音や糞害に悩まされている方は決して少なくないでしょうが、ムクドリを含め全ての野生鳥獣は鳥獣保護管理法により許可なく捕獲・駆除することが禁じられています。
ムクドリは1994年に狩猟鳥に指定されましたが、やはり狩猟を行うには狩猟免許と自治体の許可が必要なのです。
一般の方が防除を行う方法としては、ムクドリの嫌がる音を出す、光を照射して威嚇するといった方法が考えられますが、住宅の多い市街地では現実的な手段ではありません。
比較的気軽に実践できる対策として、電線の上部に細い紐を掛けることで鳥が留まれないようにする鳥害防止器(テグス等)を張るなどの対策があります。
もちろん無断での設置は不可能であり、鳥害被害者が電柱電線の管理者である管轄の電力会社に直接依頼し、この鳥害防止器の設置を依頼するようにしてください。
他にも、お住まいの自治体や駆除を専門に行う業者に一度相談してみると良いかもしれません。

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都会での生息数が増えてるのね…。人の多い場所に棲みつくだけに、対策もしづらいのも納得よ。
お陰様でムクドリについて色々詳しくなれたわ。ありがとう!

〆の言葉

最後までお読み頂き、ありがとうございます!
少しでもムクドリの存在が身近に感じられましたでしょうか?
現状の日本では、ムクドリはそれほどメジャーな鳥であるとは言えないものの、近年の温暖化や地方の過疎化に伴って今後増殖する可能性を秘めています。
身の回りでムクドリによる被害が発生した際には、ぜひ本コラムで得た知識をご活用ください。

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