愛くるしい容姿からは想像しづらいですが、イタチは人々の生活に甚大な被害をもたらす害獣としての一面を持っています。
被害にあった場合はできるだけ早期に解決すべきですが、なかには「イタチかどうかがわからず、具体的にどう対処したらいいかもわからない」という方もいるでしょう。
この記事では、イタチの生態や人家に棲みつく理由、害獣被害を防ぐ方法について解説します。
特徴を理解し、適切な対処を実施していきましょう。
イタチの生態・特徴について
まずは、イタチの生態・特徴を知ることから始めてみましょう。
特徴を理解することで、イタチの仕業かどうかの判別がしやすくなるでしょう。
本州にはおもに2種類のイタチが生息している
本州には、在来種である「ニホンイタチ」と外来種である「シベリアイタチ」(旧チョウセンイタチ)の2種類が生息しています。
両者のおもな違いは、体の大きさ・尻尾の長さ・体色などが挙げられ、シベリアイタチのほうが「体が大きく・尻尾が長い」とされています。
夏季であれば、ニホンイタチの体色は茶褐色~赤褐色となるため、やや褐色がかった山吹色をしているシベリアイタチと見た目にも判別がしやすくなるでしょう。
ただし、ニホンイタチも冬場は体色が山吹色となるため、判別は難しくなります。
なお、人々の生活圏に侵入し被害をもたらすのは、基本的にシベリアイタチといわれています。
その理由としては、以下が挙げられます。
- シベリアイタチは人々の生活圏にも対応できる柔軟性がある
- ニホンイタチの生息環境は野山などが多い
- ニホンイタチは、シベリアイタチに住処を奪われて生息数が現象している など
ニホンイタチが絶滅危惧種に指定されていることもあって、人前に現れることは少ないといえるでしょう。
運動能力が高く木登りと泳ぎが得意
イタチは運動能力が非常に高く、木登りや泳ぎが得意とされています。
たとえば、木の枝や雨どいなどを伝って屋根裏の通気口や瓦の隙間から人家にし、屋根裏に巣を作ることもあるでしょう。
また、水を恐れないため水のなかに潜りカエルやザリガニなどを捕食したり、カワウソのように器用に泳ぐことも可能です。
わずか3cmの隙間でもすり抜ける柔軟性を持つ
目にする機会が多いシベリアイタチの体長は、オスで28~39cmほど、メスで25~31cmほどといわれています。
体長は大きいもののイタチは柔軟かつ器用な動物であり、わずか3cmほどの隙間をすり抜けて目的の場所に浸入することが可能です。
ペットボトルのふたが約2.8cmほどのため、おおよそペットボトルのふたほどの大きさがあれば通過できる可能性があります。
イタチの被害を防止する際に「侵入経路を封鎖する」のは有効な手段ですが、目の大きな金網やネットでは通り抜けられてしまう+耐久性が低いと破られてしまうため、設置する際は網目の大きさや頑丈さにも注意しておきましょう。
巣を作る
イタチにとって、人々が住まう建物は「餌に困らず・快適かつ安全に過ごせる場所」といえます。
そのため、屋根裏や床下に巣を作り・棲みつかれるケースが増加しているのです。
居心地がよいと感じた場所を見つけると、その場所を何度か訪れたあとに、建材や断熱材などを材料として巣を作ります。
帰巣本能が強い(縄張り意識が強い)ため、被害に一度遭ってしまうと、同じイタチが何度も戻ってくるor別のイタチが現れるといった可能性が高まるため、徹底した対策が必要といえるでしょう。
雑食でなんでも食べる
イタチは雑食性の動物であり、基本的になんでも口にします。
ネズミやトカゲなどの小動物はもちろん、水辺であればカエルやザリガニ、農地や家庭菜園などにある農作物や穀類…。果ては、人間が口にする菓子パンや唐揚げなどの揚げ物、そして生ごみですら食べる可能性があるでしょう。
また、イタチは捕獲した獲物をその場で食べるだけでなく、場合によっては安全な巣穴まで持ち帰って食すこともあります。
もし屋根裏などに棲みつかれると、食べ残した動物の死体などが散乱する+糞尿がたまり続けるといった弊害が生じ、悪臭による健康被害や建物の腐食といった問題につながるため注意が必要です。
性格は狂暴で怖いもの知らず
可愛らしい見た目に反して、イタチは非常に気性が荒く・攻撃的な性格をしています。
小動物はもちろん、自身よりも大きな兎や鶏を一匹だけで捕食することもできますし、不用意に近づけば人間であっても容赦なく襲い掛かってきます。
噛みつきや引っ掻きなどで傷を負うと、そこから菌が侵入し病気にかかる可能性もあるため、安易に近づくのは大変危険です(とくに3~5月の繁殖期は気が立っているため要注意)。
もしイタチを見かけても、絶対に近づかない・追い払おうとしないこと。小さなお子さんやペットと一緒に住んでいる方はより警戒が必要といえます。
また、万が一怪我を負った場合は、応急処置をしたうえで「怪我の程度に関わらず」かならず病院に受診してください。
夜行性かつ冬場も冬眠しない
イタチは基本的に夜行性であり、とくに夜間~朝方にかけて活動が活発化します(日中に活動することもある)。
また、基本的に動物は冬になると活動量が低下(冬眠)しおとなしくなりますが、イタチは冬眠することがありません。
たとえ雪が積もっていても、雪の中にトンネルを掘って活発に行動します。
これらのことから「夜中に足音や鳴き声がうるさくなる」「冬でも食べ物を荒らされる可能性が高い」といった点に注意しなければいけません。
生息域は拡大し続けている
イタチは、もともと西日本を中心に生息が確認されていました。
しかし、近年はその生息域が拡大しており、東日本でもイタチ被害が発生する例が確認されています。
環境適応能力が高く、寒い地域(季節)でも活発に活動できるため、今後もその生息域は拡大し続ける恐れがあるでしょう。
イタチが人家に棲みつく理由とは?
近年、イタチが人家に浸入・棲みつき、人々にさまざまな被害をもたらすケースが増加しています。
ここでは、イタチが人家に棲みつく理由について解説していきましょう。
理由①:住処となる自然環境が激減しているため
イタチをはじめとする害獣が住宅地で増加している原因の一つは、「急激な宅地造成などで自然環境が失われている」ことです。
急激な宅地造成や地球温暖化の影響で自然環境が激減。さらに外来種が日本に持ち込まれ・繁殖し、生態バランスが崩壊しかけていることも原因に挙げられるでしょう。
これらの理由により、住処や食べ物を失った動物が人々の生活圏にまで侵入し、多大な被害をもたらす結果となっています。
理由②:天敵を避けるため
自然界におけるイタチの天敵は、猛禽類やキツネなどが挙げられます。
しかし、屋根裏や床下であればこうした天敵に襲われる心配がないため、イタチにとって安心して棲める場所となるでしょう。
なお、イタチにとっては人間も天敵と呼べる存在ではあるものの、日々の生活のなかで人間が屋根裏や床下に浸入することはほぼありません。
静かで薄暗く・天敵に襲われる心配が少ないため、イタチにとっては繁殖や子育てをしやすい環境といえるでしょう。
理由③:過ごしやすい環境を寝床とするため
人家の屋根裏や床下には、暑さ・寒さを防ぐことを目的とした「断熱材」が設置されています。
人間にとって家で住むうえで欠かすことのできない断熱材ですが、これはイタチなど害獣にとっても有効です。
「冬は暖かく・夏は涼しい」という快適な環境下で安全に棲めるだけでなく、断熱材を破いて巣を作り・寝床とすることもできるのです。
理由④:作物などエサを狙うため
屋根裏や床下はイタチにとっての天敵こそ侵入しませんが、ネズミなど自身の捕食対象となる小動物や昆虫は侵入する可能性が高いでしょう。
また、建物内には人間が口にする食材、廃棄する生ごみなどが存在するだけでなく、庭や農地には野菜や果物(+それらを食べにくる動物)なども存在するため、総じて「エサに困らない環境」といえます。
理由⑤:ペットや家畜を襲うため
イタチは攻撃的な性格をしており、自身より身体が大きい動物でも捕食する可能性があります。
そのため、ペットと一緒にお住いの方や家畜を飼っている場合、ペットや家畜が襲われる可能性も十分にあるでしょう。
とくに、小型犬や猫、鶏などは注意が必要といえます。
イタチが住居などに棲みつくことで起こる被害
イタチがお住いの建物に棲みついた場合、深刻な被害をもたらす恐れがあります。
ここでは、イタチが住居などに棲みつくことで起こる被害について解説しましょう。
人間やペットへの健康被害
イタチを含む野生動物には、ダニ・ノミといった寄生虫が大量に付着しています。
天井裏などに棲みつき活動されると、これらの寄生虫が建物内で増殖し、人間やペットに害をおよぼす可能性が高まるでしょう。
とくに、ノミは数日間に渡って強烈なかゆみと固い腫れが起きることに加え、ペットに寄生すると根絶に大変な手間と労力が必要となります。
接触被害を防ぐことも含め、イタチの存在や痕跡を確認した場合は、早急に対処すべきといえるでしょう。
足音や鳴き声による騒音被害
夜行性のため、人が寝静まった夜中に足音や鳴き声による騒音被害が発生するケースが高まります。
夜間は環境・生活音があまり聞こえないこともあって、より精神的なストレスとなり得るでしょう。
被害が多発すると、なかには幻聴などを引き起こす可能性もあるため、やはり早めの対処が好ましいといえます。
糞尿による悪臭・建物への腐食被害
イタチの糞は、黒っぽい1cmほどの細長い形をしています。
また、水分が多くべチャっとしているため、木材に染み込むとなかなか取れません。
イタチは同じ場所に糞尿をする習性がある+強烈な悪臭を放つため、悪臭や建物の腐食といった被害が発生する恐れがあります。
被害が進むと、最悪の場合は建材が腐って倒壊する恐れもあるため、注意が必要です。
農作物への被害
もし家の周辺に農地があるor庭で家庭菜園をしているという方は、農作物への被害にも警戒しておきましょう。
イタチは穴を掘って寝床を作る習性があるため、耕した庭や畑の土はイタチにとって穴掘りにぴったりの環境といえます。
野菜や果物を食い荒らされるだけでなく、穴を掘られてしまうと土壌の力が弱まり作物の生育にも悪影響をおよぼします。
景観上もよいものとはいえないため、総じて注意が必要です。
イタチの被害を防ぐためにできることとは?
イタチなど害獣の被害は、放置するほどに被害が拡大するため、早急に対処を講じなければいけません。
ここでは、イタチの被害を防ぐためにできることをご紹介しましょう。
イタチ駆除の専門業者に依頼する
イタチの被害を安全かつ素早く解決する最善の方法は、「イタチ駆除の専門業者に駆除をお願いすること」です。
イタチは法律によって管理されており、自身の判断で勝手に駆除ができません。
また、たとえ許可を得ることができたとしても、不慣れな人が対処するには相当な手間とリスクが発生するでしょう。
業者に依頼すれば、(費用こそかかるものの)こうした手間とリスクを大幅に軽減することが可能です。
イタチが嫌うものを設置し追い出す
イタチ科の動物は嗅覚に優れており、仲間同士の個体判別も匂いでおこなっているといわれています。
そのため、イタチに侵入されない・追い出すために、イタチが嫌う臭いを発するものを建物内に設置してみるとよいでしょう。
たとえば、匂いの強い木酢液・漂白剤・お酢・クレゾール石鹸などがイタチの嫌がる臭いとして挙げられます。
木酢液は木を炭にする際にとれる副産物であり、防虫剤などにも利用されます。
クレゾール石鹸は主に医療現場で使われる消毒液で、どちらも正しく使えば人間に害のないものです。
ただし、ペットと一緒にお住いの場合は注意が必要なため、要確認のうえで使用するかどうかを決めてみてください(設置後、ペットの体調が悪くなることがあれば、すぐに使用を中止し病院に受診してください)。
加えて、イタチは強い光や点滅する光も苦手としています。
ホームセンターなどでは、忌避剤やライトなどの対策グッズが多数販売されているため、それらを活用してみるのもよいでしょう。
侵入経路となる場所を封鎖する
イタチの侵入を防止するには、侵入経路となる場所を封鎖するのが効果的です。
上述でもお伝えした通り、イタチは3cmほど(ペットボトルのふたほど)の隙間でもすり抜けることができます。
侵入経路となりやすい箇所は「屋根の隙間」「通風口」「換気扇」「エアコン導入部」「室外機近くの壁穴」「排水パイプ」などが挙げられます。
また、小さな金網の破れなどからも侵入する恐れがあるため、候補となりそうな場所は徹底的にふさぐ必要があるでしょう。
候補となる場所を見つけたら、網目の細かい金網や針金・鉄板などでしっかりとふさぐことです。
壁に立てかけた程度では力ずくで侵入される可能性もあるため、ネジやクギなどでしっかりふさぎましょう。
もし家屋内にイタチがすでに侵入済みであれば、追い出しをおこなってから侵入経路を封鎖してください。
イタチがいた場所には、動物の死骸や糞(=菌や寄生虫)が散乱している可能性があるため、徹底した清掃と消毒もしておくべきでしょう。
まとめ
野生のイタチは、その可愛らしい見た目に反して狂暴であり、衛生的にも問題があります。
イタチの存在や痕跡などを発見したら、被害が発生・拡大する前に対処すべきといえるでしょう。
しかし、イタチの捕獲や駆除は法律が絡む可能性が高く+手間やリスクも発生するため、不慣れな方が対処するのは困難です。
駆除費用こそかかるものの業者に任せたほうが安心といえるため、イタチの被害を危惧される方は、早めに害獣駆除の専門業者に相談することをおすすめします。
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