家庭菜園やガーデニングで定番のトマトは、地植えでもプランターでも育てやすいため人気の野菜です。
また、トマトに限らず家庭菜園や畑などで野菜や果物を育てている方もいるでしょう。
作物を育てるうえで厄介な外的要因の一つに、害獣や害虫の存在が挙げられます。
本記事では、トマトを好む害獣や害虫の種類、害獣や害虫から作物を守る方法をご紹介します。
残された食べ物の形状から犯人を推定し、適切な対処を講じていきましょう。
目次
トマトなど作物に食害を与える害獣・害虫とは?
赤や黄色の瑞々しい実をつけるトマトは、人間だけでなく多くの獣や虫にとってもご馳走となります。
家庭菜園や畑で栽培しようとすると、多くの害獣や害虫が寄ってくるため、しっかりとした対策が必要です。
本章では、トマトなど作物に食害を与える、主な害獣・害虫についてご紹介します。
トマトなど作物に被害を与える害獣
人家に棲みつき、周辺にある作物に被害を与える害獣としては、主に以下が挙げられます。
- ネズミ
- イタチ
- タヌキ
- テン
- ハクビシン
- アライグマ
- アナグマ など
それぞれ好物とするものは異なりますが、いずれも雑食性であるため、家庭菜園や畑で育てている野菜や果物もエサの対象となるでしょう。
特に、ハクビシンは野菜や果物を好んで食すことから、トマトも食害に遭いやすいといえます。
また、畑で農作物を育てている方は、上記以外にもさまざまな害獣被害を考慮しなければいけません。
近年は自然環境が激減し、住処やエサを求めて人里まで下りてくる動物が増加しているため、より害獣による被害を警戒する必要があるでしょう。
トマトなど作物に被害を与える害虫
害獣と同様に、害虫にも野菜や果物をエサとするものがいます。
たとえば、家庭菜園や畑などで育てた作物につく害虫は、主に以下が挙げられます。
- アオムシ
- アブラムシ
- カイガラムシ
- カメムシ
- コガネムシ
- ダンゴムシ
- ナメクジ
- ハダニ
- バッタ
- ハムシ
- ヨトウムシ など
作物を食べられるだけでなく、作物を枯らす・病気の原因となるといった問題も発生するため、害虫発生時の対策・防止策の両方を知っておくことが重要です。
トマトに発生する害虫の正体・生態とは?
トマトは、地植えでもプランターでも育てやすく、さまざまな料理に活用できる人気の野菜です。
そのため、家庭菜園などでトマトを育ててみようという方は多く、害虫の被害に遭いやすい野菜ともいえます。
トマトに発生しやすい害虫は「オオタバコガ(タバコガ)」「トマトハモグリバエ」「タバココナジラミ」「アブラムシ」「ヒラズハナアザミウマ」です。
本章では、トマトに発生しやすい害虫の生態や、害虫の発生サインについてご紹介します。
オオタバコガ(タバコガ)
トマトまたはミニトマトにつく代表的な害虫が、オオタバコガとタバコガです。
同じタバコガに分類されますが、両者は以下のように微妙な違いがあります。
【オオタバコガ】
- 幼虫時の体長:35〜40mm
- 幼虫時の体色:淡緑色・緑褐色・黄褐色
- 成虫の体長(翅の開長時):15mm(30mm)
- 成虫の体色:黄褐色
- 寄生する植物(トマト以外):イチゴ・ナス・大根・オクラ など
【タバコガ】
- 幼虫時の体長:35〜40mm
- 幼虫時の体色:淡緑色・緑褐色・黄褐色
- 成虫の体長(翅の開長時):15〜20mm(35〜40mm)
- 成虫の体色:緑灰色~黄褐色
- 寄生する植物(トマト以外):タバコ・ホオズキ・トウガラシ など
その特徴は「葉に小さな穴があく」であり、葉に小さな穴があいていた場合はオオタバコガ(タバコガ)の蛾の幼虫の発生を疑ってみましょう。
オオタバコガ(タバコガ)の食害により、蕾を食べられて花が咲かない・茎を食われて株が枯れたという被害もあります。
どちらも高温かつ乾燥する環境を好み、6~10月ごろが主な発生時期となるでしょう。
5月下旬頃から成虫が発生し、トマトの葉や茎に卵を産み付けます(1匹の総産卵数は500〜600個ほど)。
幼虫が活発化するのは7月上旬からが多く、7〜10月にかけて約1カ月間隔で発生し続け、トマトに害を与えます。
高い気温と乾燥した日が続くと増殖しやすいため、雨の少ない夏は特に注意が必要です。
また、オオタバコガ(タバコガ)の幼虫は食欲旺盛で1匹でも大きな被害を引き起こすため、見つけたらすぐに取り除くことをおすすめします。
トマトハモグリバエ
トマトハモグリバエは、体長1.3〜2.3mmほどの小型のハエです。
成虫は黄色・幼虫は薄い黄色をしており、マメハモグリバエやナスハモグリバエとよく似ていることから、肉眼での判別は困難といえます。
主に、気温20~30℃の暖かい時期(5月ごろ)から発生し始め、秋から冬にかけて数が減少していきます。
もし、トマトの葉に病気にかかったような白い筋があるのを見つけたら、トマトハモグリバエの幼虫が原因でしょう。
トマトハモグリバエは成虫になると口からストロー状の管を出し・果実や葉から栄養を吸汁しますが、幼虫時代は葉の表面に潜り込みトンネルを進むように食べていきます。
白いくねくねとした食害痕が葉に現れるため、すぐに判別できるはずです。
タバココナジラミ・アブラムシ
もし、トマトの葉の裏に小さな粒がついている場合、その正体はタバココナジラミやアブラムシです。
【タバココナジラミの特徴】
- 体長1mmほどの昆虫
- 成虫は白い翅を持ち、体は薄い黄色(幼虫は薄い黄色)
- 暖かい気温を好み、4〜11月頃に発生する(特に夏場の発生が多い)
【アブラムシの特徴】
- 体長1~4mm程度のセミの仲間
- 種類が非常に多く、色もさまざま
- 発生しやすいのは5〜6月または9〜10月ごろ
- 繁殖力が強く、気づかないうちに大量発生する
どちらも体が小さいため数が少ないと気づきにくいものの、大量発生してから気づくと対応が遅れ、作物に甚大な被害をおよぼす可能性があるため注意が必要です。
ヒラズハナアザミウマ
ヒラズハナアザミウマは、体長1.2〜1.8mmほどの小さく細い昆虫であり、オスは黄色・メスは茶色をしています(幼虫時はどちらも黄色)。
日に10個以上の卵を産み・総産卵数は500個ほどと、非常に繁殖力の高い害虫です。
ヒラズハナアザミウマは花に寄生し、さまざまな病気の原因を作ります(花の子房に産卵し、その産卵痕が原因で白ぶくれ症を引き起こす)。
トマト黄化えそウイルスを媒介・黄化えそ病を発生させることもあり、果実には着色不良も起こります。
発生時期は主に4〜11月ごろ(特に多いのは梅雨時期を除いた6〜7月ごろ)で、レンゲやシロツメクサなどの花に集まるため、近くに咲いていると被害に遭いやすいといえるでしょう。
トマトなど作物への食害を防ぐ方法 ~害獣編~
作物の食害を防ぐ方法は、害獣・害虫によって異なります。
本章では、害獣によるトマトなど作物の食害を防ぐ方法をご紹介します。
柵を設置する
害獣による作物への食害をなくす方法の一つとして、農地の周辺を囲うように柵を設置するのが効果的です。
設置の手間こそかかりますが、害獣の侵入・被害を減らすうえで重要な役割を果たしてくれるでしょう。
ただし、害獣にもジャンプが得意なもの、穴を掘って侵入するものなど特徴が個々で異なるため、被害状況に応じて適切な対処をする必要はあります。
たとえば、柵を飛び越えられないよう柵を高めに設置する、地中から侵入されないよう地中深くまで設置する…などです。
被害状況によっては、より害獣に警戒心を与えやすい電気柵を設置してみるのもよいでしょう。
電気柵の設置は、(通常の柵に比べて)費用が高い・効果を高めるために適度に除草作業をする必要がある・点検整備などを適度におこなう必要があるといった手間も発生するものの、その分より高い防護効果を得られるでしょう。
動物が侵入しにくい環境を作る
害獣は、生い茂っている草木を隠れ蓑として目的地に浸入してきます。
そのため、農地や庭の周辺にある草を刈ったり・視界を遮る木を伐採することで、動物が隠れにくい(警戒しやすい)環境を作ることができます。
また、害獣が苦手とする匂い・音・光などを用いて、侵入しづらい環境を作るのも効果的といえるでしょう。
忌避剤・超音波発生装置・ライトなど、害獣対策グッズは入手がしやすいため、それらを活用して対策してみましょう。
ただし、いずれの方法も同じ罠を設置し続けていると害獣が慣れる恐れがあるため、適度に罠の種類を変えてみることをおすすめします。
エサ場を作らない
どのような環境にしても、「害獣・害虫にとってエサ場となる場所を作らない」ことが重要です。
- 廃棄予定の作物はすぐに処理する
- 目につきやすい場所に置かれている食材をしまう
- 適度に掃除し、食べカスや野菜クズなどを放置しない
- 生ごみはフタつきのもので密閉し、早めに捨てる など
「エサをあげている」という感覚がなくても、意図せず餌付けしている可能性もあるため、ご注意ください。
人間を敵と思わせる
野生動物の多くは警戒心が強いことから、「人間が怖い」と認識させることで侵入しづらい環境を作り出すことができます。
害獣の多くは人家に棲みつく傾向がありますが、いずれも人がめったに足を踏み入れない場所(屋根裏・壁の間・床下など)を寝床・移動経路にします。
気配や匂いに敏感な害獣が多いため、そういった場所付近で人間の気配や匂いがすれば、警戒して近寄りづらくなるでしょう。
害獣の住処や侵入経路となりそうな場所を適度にチェックする、忌避剤を利用するなどがおすすめです。
畑に関しても似たことがいえ、気配や匂いだけでなく、音や光などを用い警戒心を与えることで人間を敵と思わせることができます。
また、シカなどが出没する場合は、追い払うよりも農地で食べることを学習した個体を捕獲することが有効となるため、近くの猟師と協力し合いながら捕獲のための罠を設置するのもよいでしょう。
トマトなど作物への食害を防ぐ方法 ~害虫編~
本章では、害虫による作物への被害を防ぐ方法をご紹介します。
害獣とは違った方法で対処をおこなう必要があるため、本章を参考に適切な対処を講じていきましょう。
防虫・殺虫剤を活用する
トマトのように家庭菜園やガーデニングでも人気の高い作物には、専用の防虫・殺虫剤が複数販売されています。
専用の薬剤を活用することで、作物に被害を与えやすい害虫を効果的に駆除することができるでしょう。
防虫・殺虫剤はホームセンターの園芸コーナーやネット通販などでも簡単に購入できるため、防除方法がわからない初心者にもおすすめです。
また、無農薬で育てたいという方は、防虫剤を手作りすることもできます。
たとえば、トマトの防虫には酢が効果的であり、市販の酢を水に薄めて霧吹きで吹きかけるだけでもある程度の効果が見込めます。
あまり濃くし過ぎるとトマトにダメージを与える恐れがあるため、希釈倍率は100~500倍ほどにするのがおすすめです。
また、唐辛子とニンニクを漬けた酢を使うとより効果がアップします。
防虫ネットや寒冷紗で物理的にブロックする
薬剤を使いたくないという方は、寒冷紗や防虫ネットで物理的にブロックするのがおすすめです(寒冷紗とは、ポリエチレン・ポリエステルなどで作られた布のこと)。
たとえばトマトの場合は、トマトの株を覆うようにかけることで防虫効果が期待できます。
農業では昔から使用されている方法であり、家庭菜園・ガーデンニング・ベランダでの鉢植え栽培・室内の観葉植物など、場所を選ばず簡単に利用できるのもポイントです。
コンパニオンプランツを植える
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることで害虫をつきにくくしたり・生育を促進させたりする植物のことです。
たとえば、トマトと相性のよいコンパニオンプランツとして「バジル」が挙げられます。
バジルは窒素を多く必要とするため、土壌の窒素過多を防いで害虫を減少させることができます。
また匂いには虫除け効果もあり、トマトに付く害虫を遠ざけることも可能です。
他にも、長ネギ・玉ねぎ・ニンニクといったネギ類やアスパラガスも効果的で、虫除け効果や病気を抑える効果が期待できるでしょう。
苗や雑草からの寄生を避ける
購入した時点で苗に害虫が潜んでいたというケースもあるため、購入前に苗をよく観察し、害虫がいるものは避けましょう。
また、害虫が発生しやすい植物を近づけないことも重要です。
特に雑草には多くの害虫が寄生するため、生えていたらすぐに取り除きましょう。
株が弱くならないよう連作を避ける
同じ場所で同じ科の野菜を育てると、土の栄養バランスが崩れて連作障害が起きてしまいます。
また、直前の株についていた害虫や病気が残留し、次の株に悪影響をおよぼす恐れもあるでしょう。
地植えで栽培する場合は、連作を避け・収穫後は数年畑を休ませましょう。
プランター栽培の場合は、新たな株を植える前に新鮮な土に入れ替えてください。
肥料を与えすぎない
肥料を与えすぎると農作物の育ちすぎにつながるため、適量与えることを意識しましょう。
たとえばトマトが育ちすぎると、葉が巨大化したり通常よりも生い茂り、日当たりや風通しが悪くなってしまいます。
その結果、じめじめとした害虫の好む環境になり、虫が多く発生する可能性が高まるでしょう。
また、肥料の与えすぎによる窒素過多は、アミノ酸を増やす原因となります。
アミノ酸は多くの害虫(特にアブラムシ)が好んでエサにするため、肥料を与えるほど害虫を引き寄せやすくなります。
もし肥料を与えすぎてしまった場合は、水やりを控えて土を乾燥させ、吸収しにくくしましょう。
日当たりと風通しを改善する
日当たりと風通しは、農作物の生育環境のよさに直結します。
日当たりが悪い環境ではうまく光合成できず、風通しが悪いと植物の抵抗力が弱くなり、害虫が発生しやすくなります。
日当たりと風通しをよくするには、仮支柱を立てるのが効果的です。
また、「芽かき」(栽培方法に適していない不要な芽を取り除くこと)も適度におこないましょう。
適度に作物の状態や栽培環境をしっかり観察して、害虫が好む環境になっていないかをチェックするとよいでしょう。
害獣・害虫被害に遭った場合の対処法とは?
自然界からやってくる害獣・害虫は、予防を徹底していてもどこから侵入してくるかわかりません。
また、害獣・害虫で被害に遭った場合の対処法も異なるため、本章にてそれぞれの対処法をご紹介します。
害獣被害への対処法
害獣のほとんどは「鳥獣保護管理法」によって保護されているため、どれだけ被害が発生していても、無許可で捕獲・駆除することはできません。
申請をおこなう際は該当する狩猟免許を取得している必要があり、仮に許可を得ることができても、不慣れな方ほど駆除のハードルは高まるといえます。
そのため、害獣の被害に遭っている方・付近で害獣の目撃例があったという方は、害獣駆除の専門業者に相談してみましょう。
プロの業者に依頼すれば、手間をかけずに適切な対処を講じてくれます。
また、自治体で害獣被害の相談対応をしているケースもあるため「いきなり業者に依頼するのはちょっと…」という方は、お住いの地域にある市役所に相談してみるのもよいでしょう。
ただし、対応の範囲は自治体によって変わるため、詳細は事前に確認しておくことをおすすめします。
害虫被害への対処法
作物に害虫がついてしまった際は、殺虫剤を利用して駆除しましょう。
トマト専用など専用の殺虫剤が販売されているケースもあり、専用の殺虫剤ほど高い駆除効果が得られます。
手作業で駆除することも可能ではありますが、見逃してしまう可能性が高く・大量発生した際は対処しきれないため、殺虫剤を使ったほうが効率はよいでしょう。
ただし、殺虫剤を使いすぎると害虫に耐性がついたり、生態系を破壊したりといった原因にもなります。
説明書をよく読み、使い過ぎにはご注意ください。
また、化学薬品の入った殺虫剤を使うことに抵抗がある方は、天然成分100%の殺虫スプレーを使うのもおすすめです(市販品だけでなく、自作することも可能)。
害獣・害虫の被害はプロの業者に相談しよう!
害獣・害虫の被害は放置するほど甚大となるため、少しでも不安がある方は早めにプロの業者に相談することをおすすめします。
畑や庭に出没するということは、その周辺にある人家を住処にされる、または既に住処にされている可能性も高まります。
害獣・害虫が家屋に棲みつくと、健康被害や建物への腐食などさまざまな被害をもたらすため、非常に危険です。
害獣は許可なく駆除することはできず、害虫は繁殖力が高く大量にいるほど駆除が困難となるため、不慣れな方ほど対処にかかる手間とリスクが膨大となるでしょう。
業者に依頼すれば、手間をかけずに駆除から再発防止まで徹底的におこなってくれますし、保証が充実していれば万が一被害が再発した際にも無料もしくは格安で対処してくれます。
被害が軽微であるほど防除にかかる費用は安くなるため、早め早めに相談することが重要です。
まとめ
害獣・害虫による作物への被害は甚大であり、農業を営んでいる方はもちろん、家庭菜園やガーデニングなど趣味で育てている方も他人事ではありません。
防除の方法はさまざまにあるため、残された痕跡から犯人を推定し、適切に対処していきましょう。
被害が広がる前に、プロの業者に防除を依頼するのもおすすめです。
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