アパートなどの賃貸住宅において、ネズミなどの害獣被害に悩まされることがあります。
もし、害獣被害に遭った場合は、どのように対処をおこなえばよいのでしょうか。
また、害獣駆除をおこなった際、その駆除費用は入居者と物件の持ち主のどちらが負担することとなるのでしょうか。
本記事では、アパートなど賃貸物件に害獣が発生した際に入居者がすべき対策についてご紹介します。
賃貸物件ならではご近所トラブルなどについても解説しておりますので、害獣の被害を危惧される方は本記事を参考に対処を進めてみましょう。
目次
アパートの害獣駆除費用は誰が負担するのか?
アパートなどの賃貸住宅には、部屋を貸している「貸主」と部屋を借りている「借主」が存在します。
借主が住んでいる部屋や共用部分に害獣が出た場合など、状況に応じて費用を負担する者が変化するため、その違いを事前に把握しておくことが大切です。
本章にて、害獣被害発生時の責任の所在についてご紹介します。
大家や管理会社など「貸主」が費用を負担するケース
害獣駆除費用を、大家や管理会社が負担するケースとして多いのは「物件側に原因があって害獣が発生した場合」です。
たとえば、経年劣化によって壁に穴が空いているなど物件の状態に不備があり、そこから害獣が侵入した場合は、貸主側が駆除費用を負担するのが基本となります。
また、共用部分もしくは共用部分にあるものが原因で害獣が出現・被害が発生した場合も、物件の敷地内のものが原因となり貸主側が費用を負担することとなります。
こういった物件側に問題があって害獣が発生した場合は、業者の手配など一連の段取りも貸主側を中心としておこなわれます。
入居者となる「借主」が費用を負担するケース
入居者側が費用を負担するケースは「害獣の発生原因が、入居者側にあると認められた場合」です。
特に原因として多いのは、入居者がゴミを放置していたなど生活環境が原因で害獣が発生する場合でしょう。
他にも、以下のような原因も考えられます。
- 故意に破損してしまった壁穴を封鎖することなくそのままにしていた(そこから害獣が侵入してきた)
- 害獣が侵入していることを知っていたにも関わらず、貸主への報告などなんの対処もしなかった
- 害獣に餌付けをした結果、害獣が棲みついてしまった など
お住いの方の生活環境が原因と考えられる場合は、一度大家や管理会社としっかりと話し合いをし、駆除費用を負担してもらえないか相談してみるのもよいでしょう。
入居者側に原因があると判断された場合、貸主側が駆除費用の全額を負担してくれる可能性は低いものの、一部負担してもらえるケースもあります。
害獣発生の責任の所在は判別が難しい
害獣発生の原因は、責任の所在がどこにあるかの判別が難しいといえます。
- 同じ建物内の上下左右に複数の住人が住んでいる
- 共用部分(物件の敷地内)にあるものが原因で害獣が発生する可能性もあり得る
- 経年劣化による建物の破損かどうかが判別しづらい など
特に、ネズミなどの害獣やゴキブリなどの害虫は人の生活圏で発生・繁殖する可能性が非常に高いため、原因のすべてが入居者だけの落ち度とは言い切れない(判別ができない)可能性が高いでしょう。
仮に借主側にも少なからず原因があったとしても、場合によっては駆除費用の一部を貸主側が負担してくれるケースもあります。
いずれにせよ、害獣・害虫被害に遭っている借主側は、被害を放置せず・被害が拡大する前に大家や管理会社などに状況を報告することをおすすめします。
害獣・害虫駆除は、被害が悪化するほど駆除・修繕にかかる費用が高額となるため、早め早めに対処することが重要です。
費用負担や責任の所在は特約事項も確認しておこう
害獣・害虫の発生原因を特定することは難しく、かつ野生の生き物が相手となるため、貸主・借主の双方に落ち度がなくても被害が起きる可能性は十分に考えられます。
そのため、費用負担を巡って借主・貸主の間でトラブルに発展するケースも多く、専門家に助言を求めたり・最悪の場合は裁判に発展することもあり得ます。
こういったトラブルを避けるために、賃貸物件では「(状況に応じて)責任の所在はどちらとなるのか」「費用負担はどちらがおこなうのか」などを、特約事項として契約書に詳細が明記されています。
借主側は、部屋を借りる際または害獣被害が発生した際に賃貸借契約書を確認し、不明点があれば事前に確認を取っておきましょう。
貸主側は、入居者が果たすべき「善管注意義務」の内容を明記し、責任や費用負担の範囲をハッキリとさせておきましょう。
害獣・痕跡を発見したら速やかに貸主に報告すること!
お住いのアパートで害獣または害獣の痕跡(糞・足跡・鳴き声など)を発見した場合は、速やかに大家や管理会社などの貸主に報告をしましょう。
上述でご紹介した通り、貸主・借主のどちらが駆除費用を負担するかは状況によって異なります。
被害の原因となるのが(上下左右の部屋や共用部分が原因であり)自身が住む部屋だけとも限らず、業者への依頼・費用負担などを貸主側がおこなってくれる(手間を削減できる)可能性も十分にあるでしょう。
また、害獣駆除をおこなうために壁や天井に穴を開けたり、侵入経路を塞ぐために壁を修繕したりといった作業をおこなうこともありますが、こういった処置を貸主側に連絡せず無断で実施してしまうとトラブルの原因にもなり得ます。
貸主側に費用を負担してもらえるケースであっても、事後報告となった場合は費用負担を後から請求しても受け付けてもらえない可能性もある(※)ため、自身で対処しようとせずに、まずは大家や管理会社に相談することを推奨します。
(※管理会社が契約・指定した業者があるにも関わらず、借主の判断でそれ以外の業者に対応してもらった場合、費用負担を拒否されたり、一部しか負担してもらえないケースもある)
害獣の多くは無許可で駆除できない点に注意!
害獣として認識されている動物は、ネズミ・ハクビシン・イタチ・アライグマ・タヌキ・コウモリなど多様に存在しますが、そのほとんどが「鳥獣保護管理法」によって保護・管理されています。
ネズミのみ無許可でも駆除できますが、それ以外の害獣はほぼ法律の管理下にあり、どれだけ被害を受けていても許可なく捕獲・駆除することができません。
アパートなどの賃貸物件の場合、貸主の判断も仰ぐ必要があります。
また、害獣の多くは可愛らしい容姿をしているものの、その体には多数の病原菌や寄生虫を有しているため、不用意に接触すべきでもありません。
獰猛な性格をしている害獣も多く、接触が原因で怪我を負い、そこから菌が体内に侵入・病気を発症する恐れもあります。
仮に害獣を見かけた場合でも自身で駆除しようとせず、ひとまず距離を置き、大家や管理会社に相談してください。
害獣駆除に関するよくある質問
本章では、害獣駆除に関するよくある質問をご紹介します。
「善管注意義務」ってなに?
善管注意義務とは「善良な管理者としての注意義務」の略称であり、民法第400条の条文に由来する言葉です。
入居者側にも管理者としての注意義務があり、一定の責任を果たさなければいけません。
たとえば借主の部屋に害獣や害虫が発生した場合、その原因が入居者側の生活環境によるものであれば、善管注意義務を問われることがあります。
害獣の被害の原因が借主側にあり、かつ被害報告を貸主側にしなかった場合は、善管注意義務違反となります。
その結果は、入居者の責任となるケースが多く、害獣の駆除費用を入居者が負担する可能性が高くなるでしょう。
無用な費用負担をなくす・軽減するためにも、害獣の被害や痕跡を確認した際は、早期に大家や管理会社に相談することをおすすめします。
自身でできる害獣予防はある?
害獣の侵入を予防する方法には、以下のようにいくつかの手段があります。
- 害獣が嫌う匂い(忌避剤)・音(超音波発生装置)・光(ライト)を活用する
- 日ごろから清掃を徹底し、害獣のエサとなり得るゴミを片付ける など
ただし、自然界に生息する生き物、かつ不特定多数の方が住まうアパートで、完全に害獣の予防をすることは難しい面があります。
もし、害獣を発見、もしくは害獣の痕跡(悪臭・シミ・鳴き声)を確認した際は、速やかに大家や管理会社に相談するとよいでしょう。
隣室が原因で害獣被害に遭っている場合はどうしたらよい?
アパートに住んでいる場合、自身の部屋だけでなく周囲の部屋が原因で害獣が発生している可能性もあります。
仮に周囲の部屋が原因で害獣が発生していたとしても、自身で対処せずに、大家や管理会社に相談することをおすすめします。
隣人が顔見知りの方であれば一声かけることもできるかもしれませんが、見知らぬ方の場合は下手をすれば近隣トラブルにも発展しかねません。
まずは大家や管理会社に報告して、貸主側から隣人に声をかけてもらいましょう。
賃貸物件は害獣被害を理由に引っ越し費用を請求できる?
害獣駆除にはある程度の期間を必要とし、場合によっては大家や管理会社が対処してくれない・費用を負担してくれないというケースもあります。
そのため、害獣の発生を機に引っ越しを検討する方も一定数いるのが現状です。
この、害獣被害をキッカケに引っ越しをおこなう際は、その引っ越し費用の一部を貸主側が負担してくれることはあるのでしょうか。
結論としては、一般的に害獣の発生による引っ越し費用の請求は難しいとされています。
引っ越し費用を請求する場合は、貸主側になんらかの過失があることが条件となりますが、害獣の発生は責任の所在を明確にすることがなかなかできません。
責任の所在が明確でなければ、当然ながら費用請求は却下されてしまいます。
まして、貸主側が駆除費用を負担してくれない場合は引っ越し費用を負担してくれないケースも多いでしょう。
害獣の発生が原因でどうしても引っ越しをしたい・引っ越し費用の一部だけでも貸主側に負担してほしいと考える場合、まずは貸主側に相談したうえで、状況に応じてどう対処するかを検討してみるとよいでしょう。
まとめ
アパートなどの賃貸物件にて害獣被害が発生した際は、その責任の所在は状況に応じて貸主・借主のどちらかが負うこととなります。
害獣を無許可で捕獲・駆除できない、かつ被害が広がるほど駆除・修繕にかかる費用は高くなるため、自身で対処せず、然るべき場所に報告することが重要です。
貸主・借主のどちらが費用を負担するかもケースバイケースのため、借主側は害獣の被害・痕跡を発見した際は、負担をできる限り軽減するためにも、早め早めに大家や管理会社に相談すべきといえるでしょう。
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