日本には数多くの野生鳥獣が生息しており、地域によって生息する鳥獣や被害内容に違いが見られます。
農作物への食害が深刻なことはもちろんのこと、近年では市街地に出没し人身被害をもたらす生き物や家屋に棲みついて害獣被害を発生させる類も存在しています。
自然豊かな地域が広がる石川県にもさまざまな野生鳥獣が生息していますが、どのような野生鳥獣が出没しやすく、どういった被害をもたらしているのでしょうか?
本記事では、石川県において出没しやすい野生鳥獣の種類や被害内容についてご紹介します。
害獣の具体的な防除法についても解説しておりますので、害獣の被害にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
石川県の地域の特徴について
石川県は、日本の中部地方に位置する県であり、県庁所在地は金沢市です。
北陸新幹線が開通し、利便性が向上したことから大きく注目されるようになり、地方移住が話題となっている昨今では移住先として人気が上昇しています。
本章では、石川県の土地環境や気候・農作物について詳しくご紹介していきます。
石川県の気候や土地環境
石川県は、北陸地方の中部・日本海に面した位置にあります。
東は宝達丘陵により富山県に、南は白山・大日山の両白山地が岐阜県および福井県と接しており、北部は能登半島が日本海側に大きく突き出し、低標高の小起伏山地と丘陵地とで形成されています。
地形は南西から北東に向かって細長く、東西100.9km、南北198.4km、海岸線は約580.9kmを有し、面積は4,186.21㎢です。
石川県は大きく「能登」「金沢」「加賀」とエリア分けができ、それぞれで特色が異なります。
【能登】
- 石川県の上部、日本海に突き出た半島が能登エリア
- 自然が豊かで、緑や海の見えるのどかな風景が楽しめる
- 海に面して小さな棚田が広がる「千枚田」、能登のおいしい魚や野菜が並ぶ「輪島の朝市」といった観光スポットだけでなく、夏は「能登キリコ祭り」をはじめとする迫力あるお祭りが各地で繰り広げられるのも、見どころの一つといえる
【金沢】
- 金沢は石川県の県庁所在地であり、石川県のほぼ中央に位置している
- 北陸屈指の繁華街や「兼六園」「21世紀美術館」といった有名な観光スポットが複数ある
- 古くは加賀百万石の城下町だったこともあり、金箔や加賀友禅といった伝統文化、武家屋敷や茶屋街といった歴史を感じる街並みも今に息づいている
【加賀】
- 石川県の下方にあたるのが加賀エリアであり、山中温泉・山代温泉・片山津温泉といった温泉地が有名
- 加賀の伝統工芸「九谷焼」も人気で、独特の色彩と自由なデザイン性で若いファンや作家も多い
- 富士山・立山と並ぶ日本三名山の一つ「白山」も加賀エリアにあり、毎年たくさんの登山客で賑わいを見せている
石川県は、日照率の低い日本海側の気候であり、冬季は北西からの季節風により気温が低く雪の降る日が多くなります。
また、全国的にも多降水の地域であり、年間雷日数は日本でもっとも多く特に冬の雷が多く観測されます。
その一方、日本海を発達した低気圧が通過するときに見られるフェ-ン現象など、寒暖の季節風の影響を受けやすく・季節の移り変わりが比較的はっきりした地域といえるでしょう。
年平均気温は13度~14度、年間平均降水量は2,000mm~3,000mm、最高積雪量は40cm~300cmで特に白山周辺の積雪量は300cm~400cmにもなります。
なお、能登地方は日本海に大きく突き出しているため寒暖の季節風の影響を受けやすいものの、北陸地方の他の都市に比べ、夏はやや涼しく・冬は雪も少なめです。
加賀地方の平野部は比較的温和で、冬の日照時間が極端に少ないことが特徴に挙げられます。
ただし、加賀地方の山間部(標高500m以上)は最深積雪の平均が220cmと平野部の4倍以上になる豪雪地帯として有名です。
石川県の農業事情
石川県は稲作を中心に農業がおこなわれており、米の品種別ではコシヒカリの作付面積が約5割となっています。
野菜ではスイカがもっとも多く、次いでトマト・だいこんの順に販売額が多い。果樹では梨がもっとも多く、ブドウが次に多いとされています。
乳牛・肉牛・豚・採卵鶏も飼育していますが、その飼育頭数は減少傾向にあるようです。
石川県内の各地域における農林水産物は、主に以下の通りです。
県全域 | 能登地域 | 加賀地域 | |
農畜産物 | 水稲(代表品種コシヒカリ・ゆめみづほ・ひゃくまん穀・能登ひかり・百万石乃白)、 大豆、六条大麦、そば、すいか、かぼちゃ、メロン、かんしょ、だいこん、エアリーフローラ(フリージア)、ぶどう、ルビーロマン(ぶどう)、能登牛、能登豚、生乳 | ねぎ、とうがん、ころ柿(干し柿)、いちご、小豆、くり、ブルーベリー、能登野菜、ギンナン | トマト、丸いも、ブロッコリー、いちご、きゅうり、キウイフルーツ、小松菜、キャベツ、まこも、加賀野菜(くわい)、イチジク、日本なし、柚子、桃、りんご、加賀しずく(日本なし) |
林産物 | 杉、あて(ヒノキアスナロ)、しいたけ、木炭、薪 | のとてまり(原木しいたけ)、乾しいたけ、松茸 | たけのこ、なめこ、わさび、生うるし |
水産物 | さわら、はたはた、にぎす類、ます類、ズワイガニ、ベニズワイガニ、イカ | フグ、ブリ、ふくらぎ(ぶりの幼魚)、まだら、牡蠣類、ばい貝、サザエ、とり貝、アワビ、ワカメ類 | カレイ、鯛、あまだい、甘えび |
加賀地域の平坦部は稲作地帯で、農業法人や大規模経営農家が多いとされています。
その一方、能登地域は中山間地域が多いことから、小規模農家の比率が高いようです。
また、加賀野菜・能登野菜などの伝統野菜、豊富な魚介類だけでなく、九谷焼・輪島塗に代表される伝統工芸、無形文化遺産に登録された「奥能登のあえのこと」などの有形無形の資源が融合した食文化が県民の暮らしに浸透しています。
石川県の野生鳥獣による害獣被害について
自然の中で暮らす野生動物は、時に人々の生活圏に入り込み、さまざまな悪影響をもたらします。
農作物への食害はもちろん、近年は家屋に棲みついて害獣被害をもたらす動物も増加しており、石川県でも被害を軽減できるようさまざまな対策が講じられています。
本章では、石川県の令和5年度の農作物への被害状況や群馬県が実施している農作物の鳥獣被害防止対策事業、特に警戒が必要な野生鳥獣についてご紹介します。
令和5年度の農作物への被害状況
石川県のホームページでは「鳥獣による農作物被害額」にて、平成26年度~令和5年度の鳥獣による農作物被害額の推移が公表されています。
令和元年から令和5年度の鳥獣別の被害額は、以下の通りです。
令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
鳥類計 | 14,344 | 12,104 | 11,171 | 12,988 | 15,556 |
獣類計 | 82,550 | 53,862 | 30,103 | 23,606 | 23,488 |
合計 | 96,894 | 65,966 | 41,274 | 36,594 | 39,044 |
令和元年は獣類による農作物への被害額が鳥類を大きく上回っていますが、対策の甲斐もあってかその被害額は年々減少しています。
その点、鳥類のほうが上がり下がりがあり、令和だけで見ると令和5年がもっとも被害額が大きくなっているといえるでしょう。
なお、獣類だけで被害額を見てみると、イノシシによる被害がもっとも大きいことがわかります。
令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
イノシシ | 80,670 | 39,835 | 27,789 | 20,746 | 21,802 |
クマ | 0 | 6,757 | 0 | 0 | 0 |
サル | 1,643 | 6,016 | 1,361 | 2,017 | 814 |
ニホンジカ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
その他 | 237 | 1,254 | 953 | 843 | 872 |
獣類計 | 82,550 | 53,862 | 30,103 | 23,606 | 23,488 |
石川県では、鳥獣による農作物被害額の5割から6割がイノシシによるものです。
平成11年から加賀市(旧山中町)でイノシシによる水稲の被害が発生し、その後、年々被害地域が拡大、平成22年には珠洲市にまで被害地域が拡大しています。
対策の甲斐もあってか被害額は年々減少しているものの、依然として被害が発生しているため、今後も徹底した対策を講じる必要があるといえるでしょう。
石川県の鳥獣被害対策に関する補助事業について
石川県では、地域単位で鳥獣被害防止対策事業補助金といったサポートが実施されています。
この補助金の内容は、対象は主にイノシシである・農作物の被害防止を図る目的で適用される・一定の条件を満たした者のみ交付できるといったように、さまざまな条件をクリアしなければいけません。
たとえば、石川県津幡町では「津幡町鳥獣被害防止対策事業補助金」が利用できる可能性があり、対象者と交付要件は以下の通りです。
【対象者】
- 津幡町に住所を有し、現に居住する者で、原則として電気柵等の鳥獣被害防止対策を2戸以上で実施する者
【交付要件】
- 津幡町に農地を所有又は耕作していること(宅地内の家庭菜園は含まない)
- 電気柵等を実施する一団の農地が、おおむね5アール以上であること
- 電気柵等を実施する範囲が経済的かつ効率的であること
- 鳥獣による農作物への被害が発生するおそれがあること
- 電気柵等の実施は、新たに設置するものであること
- 将来にわたり耕作を継続することが見込まれること
【補助対象経費】
- 補助対象経費:電気柵及び防護柵の購入費(ただし、他の補助事業により補助金を受けるものは、対象外とする)
- 補助金の額:補助対象経費の1/2以内
- 補助限度額:5万円
上記は一例であり、お住いの自治体によってその詳細は異なります。
また、家屋に棲みついた野生動物(害獣)を駆除したいといった場合、基本的に自治体が駆除に動いてくれる・活用できる補助金がある…といった可能性は限りなく低いといえます。
ただし、自治体や対象となる害獣によっては、被害相談や害獣駆除業者の斡旋、捕獲機の貸し出し(捕獲許可を得る必要がある)といったサポートを実施しているケースもあります。
詳細は自治体によって異なるため、気になる方は事前にお住いの自治体のホームページなどで確認をしてみましょう。
農作物への被害で特に注意すべき鳥獣とは?
ここでは、石川県において特に警戒すべき野生鳥獣についてご紹介します。
野生動物の中には、農作物や田畑への被害だけでなく、市街地に出没し地域住民に甚大な被害を与えるものもいるため、その生態や注意点を正しく理解しておくことが重要です。
イノシシ
イノシシは、その生息域が日本各地に拡大かつ生息数も増大しており、生息地域では共通して農作物への甚大な被害が確認されています。
イノシシは雑食性で、水稲・いも類・野菜・果樹などさまざまな作物を食害します。
畑や田んぼを踏み荒らしたり、田んぼで泥浴びをしたりと田畑への影響がすさまじく、石川県でももっとも農作物への被害額が大きい動物として名があがっています。
また、イノシシはエサを求めて人の生活圏にやってきますが、その際に人身被害をもたらす恐れもあるため注意が必要です。
イノシシの被害を軽減する方法は、いくつか存在します。
農作物への被害を減らす・集落周辺で人的被害を出さないようにするには、まず「守りたい対象を電気柵などの防護柵で確実に覆う」ことが重要です。
イノシシはエサを食べるために集落に来るため、エサがない(食べられない)環境であれば寄ってくる可能性は低くなるでしょう。
電気柵などの防護柵の効果を持続するにはこまめな点検と補修が必要であり、設置後の維持管理が大事といえます。
上述の通り、イノシシへの農作物被害を軽減するための電気柵の設置であれば、補助金を利用できるケースも多いため、うまく活用してみるとよいでしょう。
耕作放棄地や竹林などの藪を刈り払い、見通しをよくする(=隠れ場所をなくす)といった対策も効果があります。
なお、万が一イノシシと遭遇してしまった場合は、イノシシを刺激しないようにゆっくりとその場を後ずさることが重要です。
イノシシは本来臆病で警戒心が強いため、”興奮状態でない限りは”人と遭遇してもイノシシ側からその場を去ることが多いとされています(晩秋~冬にかけての発情期や、分娩後などは攻撃的になっているケースが多く注意が必要)。
しかし、もし人間側が大声で叫んだり、背を向けて急に走り出したり、物を投げてイノシシを刺激したりすると、イノシシも驚いて襲い掛かってくる可能性が高まるでしょう。
エサを与えることも、人への警戒心の低下を招く原因となるため絶対にしないでください。
また、イノシシの子ども(うり坊)がいる場合は、母イノシシが近くいるケースが多く危険なため、可愛いと思ってもむやみに近づかないようご注意ください。
今後もイノシシによる被害の拡大と深刻化が懸念されており、地域住民一人ひとりが意識を高め、地域ぐるみで被害対策に取り組むことが重要といえるでしょう。
サル
ニホンザルは日本の固有種であり、日本人にも馴染み深い動物として知られています。
しかし、野生のサルによって、近年農作物に対する食害などが増加していることから被害対策の必要性が高まり,各種の対策が実施されるようになりました。
石川県でもイノシシの次に農作物への被害が大きく、かつ地域住民に対しても迷惑な害獣被害が発生しており、今では警戒が必要な動物として認知されています。
石川県での、令和元年~令和5年度の農作物への被害額は以下の通りです。
- 令和元年:1,643(千円)
- 令和2年:6,016(千円)
- 令和3年:1,361(千円)
- 令和4年:2,017(千円)
- 令和5年:814(千円)
令和2年度で爆発的に被害が増加したものの、令和5年度では被害を大幅に減少することに成功しています。
とはいえ、野生のサルがいなくなったわけではないため、今後も徹底した警戒と対策が必要といえるでしょう。
また、野生のサルが市街地に出没するケースも増えており、特に「人慣れ」「群れで行動する」「非常に頭がよい」といった点には注意が必要です。
人からすると馴染み深い動物のため、見かけた際に「エサをあげてみようか…?懐くかな?」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、人間がエサをあげて「人慣れ」してしまうと、警戒心を緩め集団で市街地に出没する可能性が高まり、家屋への侵入や人間に対する威嚇といった生活被害や人身被害が発生しやすくなるのです。
どれだけ地域単位で対策を講じても、エサを与える人がいてはサルの被害を無くすことはできないため、人慣れを防ぐこと・サルのエサとなるものを残さないことが重要といえるでしょう。
シカ
ニホンジカは、北海道から九州にかけて広く分布しており、全国的によく知られている動物です。
古くから馴染みが深く「神の使い」として保護されてきた地域もあるとされています。
しかし、近年は地球温暖化によって暖冬となるケースが多いこと・高齢化によるハンター人口の減少などを理由として、農作物や森林の被害が全国的に拡大している傾向にあります。
石川県においては、イノシシ・ニホンザル・ツキノワグマなどに比べて知名度は低く、被害もほぼ確認されてはいません。
ただ、年々その姿を見かけることが多くなっており、石川県でも急速に生息数が増えているようです。
シカが一部の有害なものを除き、ほとんどの植物を口にできます。
特に人間が作った農作物は栄養価が高いためターゲットにされやすく、もし食べるものがなくれば周囲にある草・花・果樹などもどんどん口にしていきます。
また、林業(森林)への影響も大きく、苗木・樹齢の高い木の樹皮や形成層を食べる・オスが角をこする際に樹皮を剥がすといった行為が主な被害の原因です。
石川県では、令和5年時点でも大きな被害は確認されていませんが、生息域が拡大し目撃情報も増えていることから、今後警戒が必要な動物であるといえるでしょう。
ツキノワグマ
ツキノワグマは、日本の本州に生息するクマであり、その生息域が少しずつ拡大し目撃情報も増加傾向にあるといわれています。
石川県では、平成26年度~令和5年度の間で、唯一令和2年のみ6,757(千円)の農作物への被害が確認されています。
こう見ると「石川県ではクマの被害を心配する必要はないのでは…?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
石川県ではホームページにてツキノワグマ目撃痕跡情報を公開していますが、令和6年ツキノワグマ目撃痕跡情報(12月11日時点)では県全体で以下の目撃情報が報告されています。
- 1月:1件
- 2月:2件
- 3月:1件
- 4月:5件
- 5月:40件
- 6月:90件
- 7月:75件
- 8月:21件
- 9月:28件
- 10月:114件
- 11月:35件
- 12月:5件
5月から11月にかけては数十件単位で目撃情報があるため、決して警戒を緩めることはできません。
クマは農作物や森林への被害だけでなく、遭遇時は命の危険すらあるため十分な警戒と対策が必要です。
特に秋頃~初冬にかけては冬眠を前にクマがエサを求めて活動範囲を広げる傾向にあり、同時に人間も秋の行楽やキノコ採りなどを楽しむために山に入るケースが多く、他の時期に比べて遭遇する可能性が高いといえるでしょう。
なお、クマによる被害に遭わないためには「クマに出会わないこと」が重要ではあるものの、クマとの遭遇は突発的に起こることが多く、予測は困難です。
基本的な対策としては、主に以下が挙げられます。
- 早朝・夕方・夜間の外出は控える :クマは朝夕や夜間・雨天・霧の日に活発に行動する
- 柿や栗などの果実は早めに摘み取る:クマを引き寄せる原因となる
- クマが隠れられる草むらの刈り払い:クマは草むらに隠れて移動する
- ペットフードや生ごみを放置しない:クマを引き寄せる原因となる
- 山に入る時は音を出す :山に入る際は2人以上で行動し、鈴やラジオなどで人の存在を知らせること
また、石川県のホームページにあるクマ出没分析マップなども活用して、目撃情報がないか情報収集しておくことも大切です。
鳥類による被害にも注意が必要!
農作物への被害額は獣類に比べて少なめではあるものの、鳥類への被害も軽視することはできません。
獣類の被害は年々その被害額が減少傾向にはあるものの、鳥類による被害は平成26年度~令和5年度まで大きな変化はなく、令和5年がもっとも被害額が高くなっています。
鳥類の被害として多いのは、カラス・スズメ・ヒヨドリ・ムクドリなどが挙げられます。
カラス以外の鳥類は、一般の方からすると害鳥という印象を受けないかもしれませんが、農家の方からすれば「農作物を食い荒らす」ため警戒すべき存在です。
カラスのように市街地に集まって地域住民に被害をもたらす害鳥もいるため、総じて今後も徹底した対策が必要といえるでしょう。
家屋に棲みつく害獣にも要注意!
中・小型の野生動物のなかには、人家に入り込んで棲みつくものもいます。
害獣に棲みつかれると、そこに住まう住人や建物に甚大な被害が発生するため、注意が必要です。
本章にて、家屋に棲みつく害獣や発生する被害、対処法についてご紹介します。
家屋に棲みつく主な害獣や発生する被害について
家屋に棲みつく主な害獣としては、ネズミ・イタチ・アライグマ・ハクビシン・タヌキ・アナグマ・テン・コウモリなどが挙げられます。
いずれも中・小型の哺乳類であり、建物や屋根の隙間などから侵入し、屋根裏や床下などに巣を作って棲みつく恐れがあります。
種類によって被害内容に多少の差異はあるものの、被害内容は以下のようにある程度共通しています。
- 家の中の食材・家庭菜園や畑など農作物への食害
- 鳴き声・足音・羽音などによる騒音被害
- 糞尿による悪臭、建物の腐食被害
- ケーブルや断熱材などをかじることによる建物の損傷(最悪火事の危険すらある)
- 野生動物による噛みつきや引っ搔きなどの人身被害
- 感染症の発病 など
害獣が棲みつくことにより、家に住む人やペットの健康被害が発生するだけでなく、建物の寿命も大きく縮める恐れが高まります。
また、害獣の被害は放置するほどに拡大し、被害が大きくなってから業者に依頼すれば、防除や修繕にかかる費用が甚大なものとなってしまいます(最悪の場合、数十万円以上かかる恐れもある)。
家屋に棲みつかれると迷惑極まりないため、徹底した対策が求められるでしょう。
一般の方でもできる害獣被害の対処法
まず、ネズミを除く害獣は「鳥獣保護管理法」によって保護・管理されているため、どれだけ害獣被害に逢っていたとしても無許可で捕獲・殺傷ができません(違反した場合は刑罰に処される恐れがある)。
許可を得るには狩猟免許を有している状態で、お住いの自治体で許可申請をする必要があり、一般の方が許可を得ることは至難の業といえるでしょう。
ただし、侵入予防や追い出しなどは無許可でもできるため、市販の害獣対策グッズを用いてある程度対処することは可能です。
また、日頃から以下の点にも注意しておきましょう。
- エサとなるものを出しっぱなしにしない(常温保存できる食材など)
- 廃棄予定の生ごみは蓋つきのもので保管し、貯めこまずに回収日が来たらすぐに出す
- 適度に掃除をし、衛生管理を徹底する(食べかすなどを処理する)
- 収穫可能な作物は早めに収穫し、廃棄予定の作物も早めに処理する
- 隠れ場となり得る草むらなどは適宜処理し、家への侵入経路となり得る木の枝などは適宜剪定する など
また、害獣の侵入経路となる場所を封鎖することも重要です。
手間は非常にかかるものの、市販の対策グッズを活用し・日々の管理を徹底すれば、害獣の被害をいくらかは軽減することができるでしょう。
家屋に棲みつく害獣対策はプロの業者へ依頼しよう!
害獣の家屋への浸入を予防またはすでに棲みついている害獣を追い出すことは、確かに市販の対策グッズを用いれば一般の方でも可能ではあります。
しかし、害獣の追い出し・侵入経路の封鎖・建物の清掃や消毒など、やるべきことは非常に多く甚大な手間がかかります。
また、万が一害獣と遭遇して怪我を負ってしまえば、傷口から菌が体内に入り込み感染症を引き起こす可能性もあるでしょう。
かといって、法律の観点から無許可で捕獲や殺傷することもできず、一般の方ができることには限界があるといえます。
そのため「害獣の被害が心配…」「害獣を追い出し、害獣被害に悩まされない環境を作りたい」という方は、プロの害獣駆除業者へ相談することをおすすめします。
プロの業者へ依頼すれば、徹底した防除・清掃や消毒・侵入経路の封鎖だけでなく、万が一被害が再発した際にも迅速かつ格安で対処してもらえます。
自身で対処するに比べて防除費用は高くなるケースが多いものの、中・長期的に害獣被害に悩まされない環境を作ることができるでしょう。
ただし、業者によってサービス内容や防除費用は異なるため、複数社に現地調査・見積もりを依頼し比較したうえで、より自身が安心・納得できる業者を選ぶようにしましょう。
もし「(利用したことがないため)いきなり業者へ連絡するのは不安…」という方は、お住いの自治体へ相談してみるのもよいでしょう。
自治体が直接駆除してくれるケースは極稀ではあるものの、被害相談や業者の斡旋、自治体によっては補助金を活用できるケースもあるかもしれません。
ただし、自治体によってサービスの有無や範囲は異なるため、事前にホームページや電話問い合わせなどで確認を取ってから相談にいくことが重要です。
もし傷ついた野生鳥獣を見かけたらどうしたらよい?
もし道端で傷ついた野生鳥獣を見かけた場合…、こんなときでも冷静に対処することが重要です。
最適解は「関与せずにそっと見守ること」といえるでしょう。
その理由には、以下のように複数挙げられます。
- 下手に保護すると野生に帰れなくなる
- 野生鳥獣には自然治癒能力が備わっている
- 人間が近づくと、警戒して(最後の力を振り絞って)攻撃する恐れがある
- 怪我を負うと感染症などを発病する恐れがある など
また、幼鳥・幼獣の場合、近くに親がいる可能性があります。
もし人間が子どもの近くにいれば親が近寄れない可能性がありますし、下手をすれば親が襲い掛かってくる恐れもあるでしょう。
野生鳥獣は自然の中で自分の力で生きていくものであり、人が必要以上に関与することは、自然界のルールに反します。
そのため、ケガをした野鳥を発見した際は、原則、そのまま見守ることが重要です。
まとめ
野生鳥獣による被害は全国各地でさまざまに発生しており、地域ごとに然るべき対策が講じられています。
石川県でもさまざまな策が実施されているものの、野生鳥獣による被害をゼロにすることはできず、人間と野生鳥獣がどのように共生していくかが今後の課題となるでしょう。
また、農作物への被害だけでなく、家屋に棲みつく害獣にも注意が必要です。
一般の方が害獣対策をすることには限界があり、かつ多大な手間をリスクを伴うため、もし実際に被害に遭っている・害獣や痕跡を目撃した場合は、被害が大きくなる前にプロの業者へ対処を依頼することをおすすめします。
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