かわいいイメージのアライグマですが、家屋を棲家にして傷つけたり、農作物を荒らしたりするなど、さまざまな問題を引き起こす害獣でもあります。
また、アライグマは特定外来生物に指定されており、駆除する際には法的な手続きが必要となります。
ここでは初めてアライグマの被害を受けてしまった方向けに、アライグマ駆除の初期対応について解説します。
全国各地の市区町村の制度を例にしながらわかりやすく解説しているので、ぜひ読んでみてください。
目次
アライグマを見つけたら
突然アライグマの被害に遭っても、無闇に自分で対処しないようにしましょう。
雑食のアライグマのフンには、アライグマ回虫という人体に多大な影響を及ぼす寄生虫が紛れている可能性があります。それだけではなく、野生のアライグマの中には人間も感染する可能性がある狂犬病を発症している個体もいます。狂犬病にかかっているアライグマに咬まれると、狂犬病が伝染して罹患してしまうかもしれません。狂犬病の致死率はほぼ100%で、非常に危険です。また、狂犬病により凶暴化したアライグマを駆除することも困難を極めます。
つまり知識を持たない一般の方が自分で駆除を行うことには、とてもリスクがあるのです。
駆除についても注意が必要です。アライグマは環境省によって特定外来生物に指定されています。特定外来生物の駆除を実施するには、事前に各自治体で法的な手続きを行わなければなりません。
よってアライグマを見つけたら、まずはご自身の住む市町村の自治体に連絡を入れるとよいでしょう。
市役所のどこに連絡すればいいの?
市役所や区役所への連絡についてです。
多くの自治体では、環境課に害獣駆除に関する相談窓口を設置していますす。
ですが自治体によっては、報告する内容に応じて対応する課を分けている場合があります。
例えば札幌市では、職業農家の方は地域の農協(JA)に問い合わせるようにしていますが、それ以外の一般のアライグマの駆除については、環境局環境都市推進部環境共生担当課に連絡することになっています。
兵庫県明石市では、アライグマやヌートリア、イノシシ、サルの対応は市民生活局産業振興室農水産課が行っていますが、その他の動物に関しては政策局市民相談室が対応しています。
大阪府八尾市も同様に、アライグマ・ヌートリアによる農業被害のための捕獲機の貸し出しや、イノシシのオリの設置については、農とみどりの振興課に連絡することになっています。
このように自治体によって窓口が異なるので、まずは「自分の住む市区町村の自治体名 アライグマ 市役所 駆除」と検索して連絡先を確認してみるのがよいでしょう。
自分で探すのが難しい場合には、どこの課に連絡すればよいか相談できる窓口を設置している自治体もあります。例えば新潟県長岡市では、総合窓口というところで何課か確認することができます。また、都道府県単位で害獣に関する連絡先を市区町村ごとにまとめているところもあるので、県庁や県の警察のホームページを探すという手もあります。
市役所ではどんな対応をしてくれるの?
詳しい内容は自治体によって異なりますが、市役所や区役所ではさまざまな害獣駆除に関するサービスを提供しています。大きく分けて6つあるので、以下にまとめました!
自治体の制度を利用することで、アライグマの駆除に対する負担が減らすことができます。ご自身の住んでいる自治体に同じ制度があるかどうか確認しながら、読んでみてください。
アライグマの対策についてのアドバイス
市役所では、アライグマの駆除や対策についてアドバイスをしてくれます。市役所には日々アライグマに関する情報や相談が寄せられているため、その地域や被害状況に合わせた対策方法に精通しています。また、その市区町村で利用できる駆除に関する制度についても詳しいため、どんな制度が利用できそうか相談することも可能です。
なお自治体のホームページには、アライグマの生態から被害状況、アライグマを追い出す方法、駆除する際の注意点や被害の予防策まで載っていることがあります。簡単な概要を知るだけならホームページを見るだけでもよいかもしれません。ただ、被害状況に応じた詳しいアドバイスが欲しい方は一度市役所に相談してみるとよいと思います。
害獣駆除業者の派遣
自治体によっては、地域の害獣駆除業者と連携して、害獣駆除業者の派遣を行っているところもあります。
業者を紹介してもらうには、自治体ごとに定まっている条件をクリアする必要があります。
例えば、多摩市では「捕獲機の設置場所の所有者の許可があること」や「毎日捕獲器を確認し、動物が捕獲されている場合は速やかに連絡すること」などの条件があります。
他にも町田市では、「申込をする方(依頼者)が所有している建物の内部に、アライグマが住み着いている」ことを条件としており、賃借人の場合はまず物件の所有者に連絡することになっています。
害獣駆除業者の派遣制度の利用条件は、各自治体によって異なります。
この制度を利用したい方は、ご自身の住む自治体のホームページや相談窓口で確認するとよいでしょう。
利用条件を満たしているのであれば、各自治体に駆除の依頼申請書を提出できます。申請は自分で行うことができるので、時間があるときに市役所を訪れましょう。
申請書が通れば、市町村から委託業者に捕獲機を設置するよう依頼が回ります。
捕獲用のワナの設置や捕獲されたアライグマの対処は業者が対応してくれますが、毎日の見回りやオトリのえさ交換は自分で行わなければならない自治体もあります。
駆除の対応や流れについて市役所の担当者の話をよく聞いておくと、適切なアライグマ対策を講じることができ、アライグマの捕獲に失敗するリスクを減らすことができます。
駆除の許可
特定外来生物に指定されているアライグマを駆除するときは、自治体などに駆除の申請をする必要があります。
駆除の申請は、市役所や区役所、村役場だけではなく都道府県庁や農業振興センター、保健所でも可能です。
申請については、各施設の害獣を担当する部署に「有害鳥獣駆除の申請」を提出して行います。
申請には所定の用紙3~4枚への記入が必要です。被害状況や捕獲予定の頭数、捕獲の時期、何処で、何を使い、何のために捕獲を行うのかなどを詳細に記入します。その他に、被害を受けた場所によっては被害状況の写真を添付して提出する場合もあります。書類提出してから2~4週間で許可が下り、担当部署で説明を受けて、ようやく捕獲の許可を得ることができます。
なお駆除の業者を派遣することはできても、基本的に市役所などでは駆除の対応をしていません。
市役所は行政的サービスを提供する機関であって、害獣の被害に対するサポートはできても、その害獣を駆除することは行政的サービスの範囲を越えるものだからです。
よって、害獣駆除業者の紹介制度がない自治体に住んでいる場合、アライグマを捕獲または駆除するには、自分で行うか業者に依頼する必要があります。
捕獲機の貸し出し
自治体によっては、捕獲用のワナを無料で貸し出しているところがあります。まずはご自身の住んでいる自治体はどうか、確認しましょう。
捕獲機としては、箱わなが多いです。捕獲網も存在はしますが、捕獲時に危険が及ぶ可能性があります。枚方市など明確に捕獲網の使用を許可していない自治体もあります。
また、貸し出しには条件があります。例えば枚方市では、委託業者を通した貸し出しが前提になっています。また、貸し出し期間を2週間までと定めています。捕獲用の箱ワナの設置と改修が業者が行ってくれますが、運用管理は借りた人が行うことになっています。思わぬ事故が発生しないように、管理の方法などについて市役所や駆除業者から詳しく聞きましょう。
駆除に関する補助金の支給
自治体によっては、アライグマの駆除に対する補助金を支給する制度を設けているところがあります。
支給対象者は自治体によって異なります。
栃木市では市内在住の個人や法人、自治会、里山林整備団体が対象です。
箱根町では、町内在住もしくは町内に土地を所有している個人、または鳥獣被害防止策を正しく運用管理できる人物を対象にしています。
埼玉県上尾市は、補助対象者を市農業委員会の農家台帳に記載があり、かつ従事者証を取得している人に限定しています。
また、納税義務を果たしていることや反社会的勢力との関わりがないことも、条件として定められていることがあります。詳しくは自分の住んでいる自治体に確認しましょう。
補助金制度の内容についてですが、こちらも自治体によって支給額や補助の範囲が異なります。
例えば堺市では、農業に甚大な被害を及ぼす有害鳥獣を捕獲した場合に報奨金を支給しています。支給額は捕獲したアライグマ1頭につき2000円で、箱わなの貸し出しがあります。規定があり、アライグマの場合は、捕獲したアライグマの入った箱わなを市長に提出する必要があります。また、報奨金の交付を受けるには、捕獲した年度末までに「堺市有害鳥獣捕獲報告書」(様式第2号)を市長に提出しなければなりません。
高知県日高村は、有害鳥獣対策のために設置した場合に予算の範囲内で補助金を支給しています。補助金の対象は、電気柵や網、トタン等の購入経費です。補助額についてですが、かかった費用の2分の1のうち、上限50000円で支給しています。補助金の交付の対象者は、町内での農林水産物を生産している人だけです。日高村も、補助金の交付を受けるには書類などの提出が必要です。
自分が補助金を受け取れるかは、自治体ごとに条件が異なるため、市役所などに相談するとよいでしょう。
相談件数のカウントや被害状況のまとめ
自治体ごとに被害件数や相談内容を収集し、被害状況をホームページなどで公開しています。
自分の住んでいる近くで被害件数が増えていたり、注意喚起がなされているときは、周囲への警戒が必要です。金網を張るなど事前に対策を講じることで、被害を減らすことができます。
もしアライグマの被害件数が多い地区に住んでいるのであれば、こまめにホームページなどで被害状況を確認しておくこともアライグマの被害への対策に繋がるでしょう。
警察に電話はしなくていいの?
私有地に起きたことに対して、警察は基本的に事件性がない限り対応することができません。唯一対応できるのは、人の生命に関わるような緊急性の高い場合だけです。
また、通常のアライグマによる被害では、警察は動くことができません。仮に緊急性が高くてもアライグマは特定外来生物に指定されているため、駆除を行うには所定の手続きが必要ですし、狩猟免許を持っていない警察官はアライグマを駆除することができません。
そのため、警察に相談してもあまり意味はないでしょう。
アライグマの駆除はどこに依頼すればいい?
アライグマの駆除を依頼したい場合には、害獣駆除業者への連絡がおすすめです。
害獣駆除駆除に長けているので、豊富な経験を基に迅速かつ丁寧に駆除を実施してくれるでしょう。
自治体によっては害獣駆除の業者を派遣してくれることもありますが、それが難しい場合や自分で業者を選びたい方は、近くの害獣駆除業者に連絡をしてみるとよいでしょう。
初期対応のまとめ
以上がアライグマの被害に遭った際の初期対応です。
アライグマの被害を発見したら、まずは市役所に相談しましょう。市役所の担当者からさまざまなアドバイスをもらったら、アライグマの対策を実行しましょう。様子を見て被害状況が悪化したり対策に効果を感じなかった場合には、業者に連絡を入れて相談しましょう。もしくは市役所に相談した後、アライグマ駆除の業者に連絡すれば迅速に対応してくれるので、早く解決できるかもしれません。
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