【害虫】ノミってどんな生き物…?人や動物の血を吸う、身近な寄生虫の正体を解説!

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前書き

みなさんは、ノミについてどれだけの事を知っていますか?
「イヌやネコに寄生する小さな虫」といった程度のイメージをお持ちかと思いますが、実は鳥類や哺乳類などのあらゆる桓温動物や、もとい人間にも寄生することがある害虫なのです。
そこで今回は、不潔の証であり、愛するペットを苦しませる厄介な存在であるノミをテーマに、その生態や被害について解説いたします。
よろしければ、最後まで目を通していって下さい。

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最近、ウチで飼ってる犬が頻繁に脚で体を掻いたり、体を地面に擦り付けるようになったのよ。
それで気になって毛を掻き分けてみたら、小さな虫が何匹かついてたの!
これってノミ…って言うのよね?

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目視できるサイズでしたら、ノミである可能性が高いです。
ノミは人間にも移る可能性があり、感染症の原因にもなります。
ノミに関する知識をお持ちでないと見受けられましたので、是非この記事で

ノミの基礎知識

ノミ(蚤)とは、節足動物門昆虫綱ノミ目(隠翅目)に分類される昆虫のことを指します。世界に16科約200属約1,800種存在し、宿主の体の外部に寄生する外部寄生昆虫の典型的な例にあたります。

形態

体長・外見

ノミは体長1mm以下~9mm程度の小さな昆虫で、体色は褐色または黒褐色です。
体を左右に扁平な流線型にすることで、宿主の体毛の中を動きやすくしています。

口器・眼・爪

口器は細長い形の口吻で、血を吸うことに特化した針のような形をしています。
ノミは複眼のトンボやハチと違って単眼しか持っておらず、いくつかの種は視覚器官自体を持っていません。
また、爪は鉤爪(かぎづめ)状になっており、宿主の体毛や皮膚にしがみ付くのに役立っています。

跳躍力

動物の体表に寄生するノミは、体毛内での移動の邪魔になる翅を退化させており、飛行能力を持っていません。
その代わりに、発達した後脚と高い脚力を持ち、体長の200倍の高さ、100倍の距離の跳躍をすることができます。
巷では、「人間に例えると300m以上のジャンプに相当する」などと囁かれていますが、この跳躍力は重力の影響の少ないミクロな世界だからこそ実現できるものです。

生態

生活環

ノミは完全変態の昆虫であり、卵、幼虫、さなぎ、成虫の4つの段階で成長します。
以下に、完全変態のステップを簡単にご紹介します。

メスのノミが生涯に産む卵の総数(繁殖力)は、種類によって大きな差がありますが、だいたい100個から数千個の間だとされています。
卵は楕円形で粘着性がなく、産卵すると床や地面に落下します。
落下の衝撃自体は問題ではありませんが、湿度が低いと孵化できずに死んでしまう事があります。

幼虫

幼虫は細長い蛆状で、成虫のフンや動物の体表から脱落した有機物(フケ・垢など)を食べ、特に乾燥した血液を好みます。
幼虫期間は1~2週間程度で、3齢を経て蛹になります。

蛹は3齢幼虫が糸を吐いて繭(まゆ)を作り、その中で成虫へと変態します。
ヒトや動物が近くに来るのを待ち構え、気配を察知するとすばやく羽化し成虫となり、飛び移って吸血を始めます。

成虫

成虫は寄主に寄生してから、8時間以内に吸血を行なった後、24時間以内に交尾して48時間以内に産卵を始めます。
交尾した雌成虫は1日平均20~50個の卵を産卵します。成虫である期間は2~4週間ほどです。

習性

行動パターン

ノミは蚊やアブなどの双翅目と同様に二酸化炭素を感知して寄主を探し、寄主が死ぬと新たな寄主を探して移動します。
ノミは飢餓耐性を持っていますが、新たな寄主に寄生できないと数日で死んでしまいます。

行動範囲

ノミは系統の離れた寄主に容易に移行することが多いため、宿主範囲は広範です。
通常、1種の寄主に数種のノミが寄生するため、ペストをはじめとする人畜共通の伝染病の媒介者としての悪名を持っています。

走性

ノミは光に向かって移動する”光走性“を持ちます。
そのため、ノミ対策の方法として、LEDライトで誘き出したノミを粘着シートで捕獲するという方法があります。

繁殖と種類

繁殖環境

気温

ノミは18℃から27℃の温度帯を好みます。
この温度帯では、ノミの卵や幼虫の発育が早くなり、繁殖力が高まります。
そのため、日本では梅雨から夏にかけての時期がノミの活動が活発になる時期になるのです。

湿度

ノミは75%から85%の湿度を好みます。
この湿度帯では、ノミの卵や幼虫の乾燥を防ぎ、生存率が高まります。
気温と同様に、日本では梅雨から夏にかけての時期がノミの発生に適した湿度になります。

宿主

ノミは恒温動物の血液を吸って生きていますが、ノミの種類によっては、犬や猫、人間などのペットや人に寄生することがあります。
ペットや人が外からノミを持ち込んだり、ネズミやハクビシンなどの野生動物がノミを運んできたりすることが、家庭内でのノミの発生原因となるケースが多いです。

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ウチのワンちゃんには、散歩させた時に付いたのかしら…?
一応お風呂には入れたけど、まだ小さい子供もいるから不安よ。

種類

日本には約50種のノミが分布していますが、その中でもヒトノミ、ネコノミ、イヌノミ、ケオプスネズミノミ、ヨーロッパネズミノミ、ヤマトネズミノミ、メクラネズミノミの7種がよく知られています。
それぞれの特徴を以下にまとめました。

ヒトノミ

体長は約2mmで、体色は黒褐色です。
人間の血を吸うことが多いですが、他の動物の血も吸うことがあります。
日本では衛生状態の向上により、ほとんど見られなくなりました

ネコノミ

体長は約1.5mmで、体色は赤褐色です。ネコを主な宿主としますが、イヌやヒトにも寄生することがあります。
吸血されると強いかゆみを感じます。
ネコの病気であるネコスポット病の媒介者としても知られています。

イヌノミ

体長は約2.5mmで、体色は黒褐色です。
イヌを主な宿主としますが、ネコやヒトにも寄生することがあり、吸血されると強いかゆみを感じます。
イヌの病気であるイヌスポット病やイヌ回虫の媒介者としても知られています。

ケオプスネズミノミ

体長は約1.5〜2.0mmで、体色は黒褐色です。
ネズミを主な宿主とするものの、ヒトにも寄生することがあり、ケオプスネズミノミはいずれの種類も感染症をもたらすリスクを持っています。
ただ、この種はチフスの媒介者として特に有名な存在で、黒死病パンデミックの原因になった種であるとされています。
日本では、北海道や東北地方に などの寒い地域に分布しています。

ヨーロッパネズミノミ

体長は約1.5mmで、体色は黒褐色です。
ネズミを主な宿主としますが、ヒトにも寄生することがあります。
ペストや発疹チフスなどの感染症の媒介者として知られており、日本では、本州や四国に分布しています。

ヤマトネズミノミ

体長は約1.5mmで、体色は黒褐色です。
イエネズミを主な宿主としますが、ヒトにも寄生することがあります。
ウリザネジョウチュウの中間宿主となり、日本では、九州で多く見られます。

メクラネズミノミ

体長は約1.5mmで、体色は黒褐色です。
ミゾノミ科に属し、体長は約1.5ミリメートル、体色は黒褐色です。
成虫は雌雄ともに吸血しますが、宿主嗜好性はあまり厳密ではなく、人にも吸血することがあります。
日本では、温暖な気候の沖縄などに分布しています。

人間との関わり

黒死病

概要

黒死病とは、14世紀から19世紀にかけてヨーロッパやアジアで大流行したペストのパンデミックの通称です。
ペストとは、ペスト菌という細菌によって引き起こされる感染症で、ノミやシラミなどの吸血昆虫を媒介にして動物や人間に伝染します。
この黒死病という名前は、罹患した際に感染者の皮膚に出血斑ができて黒く見えることに由来します。
黒死病は非常に致死率が高く、ヨーロッパの人口の3分の1以上が死亡したと推定されています。

過程

黒死病は、14世紀から19世紀にかけて、ユーラシアや北アフリカで何度も大流行しました。
最初のパンデミックは、1346年から1353年にかけて起こり、中央アジアまたは東アジアが発祥地であるとする説が有力視されています。
クリミア半島から、ジェノヴァ共和国の奴隷船に乗って移動したクマネズミに寄生するケオプスネズミノミによってヨーロッパに運ばれたとされています。

病理

ノミは、主にネズミなどの動物の血液を介してペスト菌を体内に保持するようになり、宿主をネズミから人間に移す感染を広げました。
ノミによって伝染するペストは、リンパ節に感染することで腫れや痛みを引き起こす”腺ペスト“とも呼ばれ、また、肺から肺へ空気感染するものは”肺ペスト“と呼びます。

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こんな悲惨な歴史があったのね…。
私たちも新型コロナウイルスを経験したから、とてと身近に感じるわ。

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現代では”ペスト”という言葉をあまり聞かなくなりましたが、一部の国では未だに毎年のように感染者が出ています。
吸血性の虫が動物から人間に移るという事は、一つの注射器を未洗浄のまま動物と共用するようなものなので、当然と言えば当然です。

文化

サーカス

ノミのサーカスとは、ノミにさまざまな芸をさせて興行収入を得る見せ物の一種です。
ノミは体重の数百倍の重さの物を引っ張ったり、ボールを蹴ったり、輪を潜ったりするなどもでき、ノミを紐でくくりつける事で、こうした芸を連続して行わせます。
また、これはノミが団員の吐息に含まれる二酸化炭素に反応して跳ねるという性質を利用することで可能になっています。
ノミのサーカスは17世紀頃のフランスが発祥地とされ、日本にも1930年代に来日した記録があります。
現在では、ドイツなどで公演されているところもあります。

慣用句

蚤の心臓

これは、気が小さくて臆病なことを表す言葉です。
文字通り、蚤の心臓はとても小さいということからきています。
しかし、実際には蚤には人間と同じような心臓はありません。蚤は血管も持たず、体液を管のような心臓で前後に送るだけの単純な循環系です。

蚤取りまなこ

これは、どんな小さなものも見逃さないように、入念に探すときの目つきを表す言葉です。また、あちこちに気を配る鋭い目つきを表すこともあります。
蚤を探して捕るときの目つきの意からきています。

蚤の皮をはぐ

これは、取るに足りない、どうでもいいことにかかわるさまを表す言葉です。
つまらないことに取り組んで忙しくしているさまを表すこともあります。
小さくて価値のない蚤の皮を剥ぐのと、同じくらい無駄な労働だという比喩です。

蚤にも食わさぬ

これは、とてもおとなしい性格のことを表す言葉です。
蚤にも噛まれないほど温和であるということからきています。

蚤の小便、蚊の涙

これは、極めてわずかなことのたとえです。
蚤が小便をしたとしたら、また蚊が涙を流したとしたら非常に微量になるであろうことからきています。
類義語には「雀の涙」や「爪の垢ほど」などがありますが、さらに小ささ・少なさの程度が甚だしい、といったニュアンスの慣用句です。

被害の例

人間への被害

かゆみ

ノミに刺されると、赤い斑点が残り、強いかゆみが数ヶ月続くことがあります。
かゆみを抑えようとしてかき続けると、細菌感染やアレルギー性皮膚炎を引き起こすこともあります。

感染症

ノミはバルトネラ菌やサナダムシなどの病原体を媒介することがあり、感染症のリスクがあります。
バルトネラ菌に感染すると、噛まれた部分に膿疱や丘疹ができることがあります。
また、サナダムシに感染すると、下痢や腹痛などの症状が出ることがあります。

ペットへの被害

皮膚病・脱毛

ノミはペットの皮膚に噛みついて吸血し、皮膚炎や脱毛などの症状を引き起こすことがあります。
ペットがかゆみを感じて掻いたり噛んだりすると、傷口から細菌が入り込んで化膿することもあります。

感染症

ノミは猫ひっかき病瓜実条虫症などの感染症の媒介者になることがあります。
猫ひっかき病はノミが感染した猫から他の猫や人に移ることがあり、リンパ節の腫れや発熱などの症状が出ます。
瓜実条虫症はノミが感染した犬や猫から人に移ることがあり、腹痛や下痢などの症状が出ます。

貧血

大量のノミに吸血されると、ペットが貧血を引き起こす可能性が考えられます。
とりわけ子犬や子猫などの小さなペットは、貧血によって衰弱したり死亡したりすることもあります。

経済的被害

ノミは経済に対して甚大な影響を及ぼします
アメリカでのデータになりますが、ノミ関連の獣医療として年間約 28 億ドル(4060億円)が費やされ、さらにペットトリマーによるノミ治療として年間 16 億ドル(2320億円)が費やされています。
さらに、ノミの処方薬には毎年 40 億ドル(5800億円)が費やされ、ノミの害虫駆除には 3 億 4,800 万ドル(504.6億円)が費やされています。
※1ドル145円計算

後書き

以上が、ノミに関する基本的な情報になります。
知ってるようで知らない、ノミという生き物への理解は深まりましたか?
自宅の衛生環境や愛するペットを守るためにも、今回ご紹介させて頂いた情報をどうぞご活用下さい。

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とても参考になったわ。ありがとう!
お風呂に入れたり、トリミングに行くだけじゃダメそうだし、あらためて対策を考えなきゃ駄目ね!

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