人の住まいに侵入してくる害獣として、ハクビシン・テンが挙げられます。
名前は聞いたことがあっても、実際に見たことがないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、害獣のなかでも見た目が似ているハクビシンとテン、そして同じ害獣の一種かつ似た特徴を持つイタチの見分け方をご紹介します。
「建物が何かしらの害獣の被害を受けている」「屋根裏に何かが潜んでいるような気がする」という場合は、ぜひ本記事を参考に対処を講じてみましょう。
目次
ハクビシン・テン・イタチの特徴とは?
本章では、ハクビシンとテン、そしてこの2種と似た特徴を持つイタチの生態をご紹介します。
いずれも生物上の分類は異なるため、その生態を理解しておけば被害に遭った際にも役立てることができるでしょう。
ハクビシンの特徴
ハクビシンはジャコウネコ科であり、本来は中国大陸南部を中心として生息していた外来種です。
日本に生息する唯一のジャコウネコ科の哺乳類であり、現在は日本全域に広く分布しています。
ハクビシンの主な特徴は、以下の通りです。
- 体長:50~75cm程度
- 体重:3.5~6kg程度
- 性格:臆病でおとなしい
- 体色:明褐色や暗褐色が基本で、額から鼻にかけて白い線が入っている
- 足跡:長さ5cm、幅4cm程度で爪痕がつくことが多い
- 好物:雑食性で、特に果物や野菜などを好む
- フン:長さ5~15cmくらいの棒状で、色は黒から茶色をしている。溜め糞をする習性がある
ハクビシンは、夜行性かつ非常に運動神経が高い動物であり、特に人が寝静まる夜間に家の屋根裏や床下などを走り回ることが多いでしょう。
また、雑食性ながら特に果物や野菜を好物としており、フンには果物の種や野菜が確認できることがあります。
テンの特徴
テンは、哺乳綱ネコ目・イヌ亜目・イタチ科テン属に分類される食肉類です。
日本に生息するテンは、ホンドテン(本州・四国・九州などに生息)・エゾクロテン(主に北海道に生息しており、絶滅危惧種に指定されている)・ツシマテン(対馬に分布する固有亜種で、国の天然記念物に指定されている)の3種類に分かれており、ホンドテンが被害をもたらす主な害獣と考えてよいでしょう。
テンの主な特徴は、以下の通りです。
- 体長:45~55cm程度(メスのほうが一回りほど小さい)
- 体重:1~1.5kg程度
- 性格:攻撃的で獰猛
- 体色:夏は少し黒ずんだ黄褐色で顔は黒、冬は明るい黄褐色で顔は白に変化する
- 足跡:3~4cmのサイズでイタチよりも大きい。指先と肉球の跡が離れている
- 好物:雑食性で、ネズミ・鳥・昆虫などなんでも食べる。植物のなかでは特に果実を好む傾向にある
- フン:長さ1cm程度で太く、水分が多く含まれている。黒もしくは茶色をしており、臭いが強い。動物の毛や果物の種が混じっていることがある。溜め糞をする習性がある
テンも夜行性であり、主に夜間に活動することが多い動物です。
縄張り意識が強く、子育ての時期以外は単独で活動することがほとんどのため、テン同士の縄張りの主張などは、独特の鳴き声や糞尿による匂いでおこなうとされています。
なお、ハクビシンとテンは見た目にも見分けがつきやすいのですが、テンとイタチは外見・足跡・フンなど特徴が似ています。
体毛の違い・フンの大きさや形・足跡の大きさなど、見比べてみれば違いをある程度判別できますが、素人目には判別がしづらいといえるでしょう。
イタチの特徴
日本にいるイタチのなかで害獣となりやすいのは、外来種であるシベリアイタチ(旧チョウセンイタチ)です。
本州には他にもニホンイタチがおり、こちらも害獣被害が発生する可能性はありますが、チョウセンイタチに住処を追われ絶滅危惧種に指定されていることから、あまり目にすることはないといえるでしょう。
チョウセンイタチの主な特徴は、以下の通りです。
- 体長:30~40cm程度(メスのほうが少し小さい)
- 体重:650~820g程度(メスのほうが軽い)
- 性格:攻撃的で獰猛
- 体色:やや褐色がかった山吹色(鼻・口・喉が白い)
- 足跡:2~3cmのサイズでテンよりも小さい。指先と肉球の跡が離れている
- 好物:肉食寄りの雑食性
- フン:長さ6mm~1cm程度で細長く、水分が多く含まれている。黒っぽい色をしており臭いが強烈。動物の毛や果物の種が混じっていることがある。溜め糞をする習性がある
チョウセンイタチは西日本に多く分布していましたが、近年では東日本での目撃・被害例も増加しています。
また、イタチは冬眠をせず1年中活動し、夜行性であることから夜間に活動することが多いとされています(昼間に行動することもある)。
非常に気性が荒く、自身より体の大きな獲物(人間に対しても)にも襲い掛かるため、不用意に近づかないようご注意ください。
ハクビシン・テン・イタチを見分ける方法とは?
本章では、ハクビシン・テン・イタチを見分ける方法についてご紹介します。
それぞれで特徴は異なるものの、特にテンとイタチは素人目には見分けがつきづらいため注意が必要です。
ポイント①:外見と大きさ
まず、体の大きさは「ハクビシン→テン→イタチ」の順に小さくなります。
ハクビシンは他2種よりも一回り大きく、かつ体色や鼻から額にかけて白いラインが入っているという特徴があるため、判別はつけやすいといえるでしょう。
対して、テンとイタチは外見上の判別が若干つけづらい印象があります。
テンのほうが少し大きいとはいえますが、個体差があるためそれだけでは判断しづらいでしょう。
テンは夏と冬で体の色が異なり・イタチは口周辺が白い点など、体色が見分けがつけやすいポイントいえるかもしれません。
尾の長さもテンのほうが長いという特徴もあります(テン:約15~20cm、イタチ:約7~15cm)。
なお、違いを判別しようとこれら害獣に不用意に近づくことは絶対にしないでください。
特にイタチは非常に獰猛で人にも襲い掛かってくるため、怪我や感染症の原因となってしまいます。
ポイント②:習性
習性に関しては、3種とも共通している点が多いといえます。
- 食性 :雑食性
- 活動時間:夜間(夜行性)
- 運動能力:運動能力が高く、木登りが得意 など
ハクビシンとテン・イタチの違いは、繁殖時期や性格が挙げられます。
ハクビシンの繁殖時期は一年中ですが、テンやイタチは3~5月ごろです。
性格は、ハクビシンが臆病でおとなしい性格であり、テンやイタチは攻撃的かつ警戒心が強いといえます。
食べ物など他にも若干の違いは見られるものの、習性だけで判別するのは難しいでしょう。
ポイント③:足跡
どれも5本指の形状をしており「ハクビシン→テン→イタチ」の順に足跡が小さくなります。
ハクビシンは爪痕がつくこともあり、テンやイタチは指先と肉球の跡が離れている点も特徴に挙げられるでしょう。
ただし、どれも数cmほどの違いしかなく、メジャーなどで図らない限りどの害獣かを特定するのは難しいといえます。
特に、テンとイタチは形がほとんど似ているため、足跡だけでは判別は困難です。
ポイント④:フンの大きさや形状
フンの大きさ・形状・臭いは、各害獣を見分ける際のポイントとなり得るでしょう。
特に、ハクビシンは他2種よりも大きく、果物や野菜を好む食性から臭いも少なめです。
テンとイタチはフンの特徴も似ており、よく観察しないとその判別は難しいかもしれません。
ただし、害獣を特定するためとはいえ、フンをよく観察することに抵抗を感じる方も多いでしょうから、不慣れな方はむやみに近づかないほうが賢明です。
「フンがある=害獣が侵入・棲みついている」ことの証明になるため、被害が拡大する前に早めにプロの業者に対処を依頼すべきといえるでしょう。
ポイント⑤:鳴き声
鳴き声も、各害獣を見分けるポイントとなるでしょう。
それぞれの鳴き声は、主に以下の通りです。
- ハクビシン:通常時→「キーキー」「キューキュー」、威嚇時「ガァー!」
- テン :通常時→「ギュー」、威嚇時「チャー」
- イタチ :通常時→「キーキー」「クククク」、威嚇時「キッキッキーッ」
いずれも夜行性のため夜のほうが鳴き声が聞き取りやすいといえますが、不意に鳴き声が聞こえても、その一瞬でどの害獣かを判断するのは難しいかもしれません。
フン同様に「鳴き声が聞こえる=害獣が侵入・棲みついている」ことの証明となるため、早急にプロの業者に対処を依頼すべきでしょう。
共通する害獣被害とは?
害獣が家屋に棲みつくと、さまざまな被害をもたらします。
放置するほどに被害は甚大となるため、被害の特徴を理解し、早急に対処を講じましょう。
本章では、ハクビシン・テン・イタチに共通する害獣被害をご紹介します。
人体への被害
野生動物は総じて不衛生であり、その体にはさまざまな寄生虫や病原菌が付着しています。
- 寄生しているダニやノミが原因でかゆみや皮膚に炎症を起こす
- 糞尿が原因でアレルギーを引き起こす
- 引っ掻かれたり、噛まれたりすると病気に感染する
上記のようなさまざまな問題を引き起こす可能性が高まるため、少なくとも自分から害獣に近づくことはしないでください。
また、足音や鳴き声による騒音問題、糞尿による悪臭など、他にもさまざまな健康被害をもたらす恐れがあるため注意しておきましょう。
建物への被害
ハクビシン・テン・イタチともに天井裏に棲みつくことが多く、かつ溜め糞をする習性があります。
糞尿が溜まるほど悪臭の原因となるだけでなく、天井にシミができたり・木材が腐敗する原因となるでしょう。
この被害を放置し続けていると、下手をすれば建物が倒壊する恐れもあるため注意が必要です。
また、天井裏にある断熱材や配線を噛んで破損させることもあります。
配線をかじられると、故障・漏電・火災などの原因につながる可能性もあるため、こちらも警戒すべき問題です。
農作物への被害
ハクビシン・テン・イタチのいずれも雑食であり、畑や家庭菜園などで育てた果物や野菜が被害に遭うケースもあります。
また、イタチは肉食寄りの雑食性かつ自身より大きな生き物に対しても襲い掛かる習性があるため、一緒にお住いのペットや家畜などが襲われる恐れもあるため注意が必要です。
勝手に駆除できない!?プロの業者に依頼する理由
残念ながら、どれだけ被害を受けていようと、ネズミ以外の害獣を許可なく駆除することはできません。
その理由は、害獣のほとんどが「鳥獣保護法」によって管理・保護されている生き物だからです。
自身で捕獲・駆除をおこなう場合は、特定の狩猟免許を取得したうえで、お住いの自治体に申請し許可を得る必要があります。
許可を得るだけでも手間と時間がかかり、仮に許可を得ることができたとしても、害獣の特定・駆除・後処理をすべて自身で対応するには多大な手間とリスクが発生するでしょう。
そのため、もし害獣の被害をなんとかしたいと考える方は、できるだけ早期に害獣駆除の専門業者に相談すべきといえます。
害獣に精通したプロに依頼すれば、安心・安全に長く害獣被害に悩まされない環境を作ることができるはずです。
ただし、費用・サービス内容・保証などは業者によって大きく異なるため、相見積もりを取って比較し、より納得できるところに依頼するようにしましょう。
自分でできる害獣の対策法とは?
許可なく捕獲・駆除をすることはできませんが、害獣を「侵入させない」「追い出す」といった対処をすることは可能です。
本章では、自分でできる害獣の対策法についてご紹介します。
対策グッズを活用する
ホームセンターやネット通販などでは、害獣対策用のグッズがさまざまに販売されており、これを使っていくらか対策できます。
代表的な対策手段としては忌避剤・超音波発生装置・ライトなどが挙げられ、それらを害獣の侵入経路となり得る場所に設置することです。
害獣によって、以下のように苦手とする匂いは異なるため、特定できていれば害獣にあった罠を設置するとより効果が上がるでしょう。
- ハクビシン:唐辛子・ニンニク・ハッカ など
- テン :オオカミの尿 など
- イタチ :木酢液・クレゾール石鹸液 など
罠を設置する際のポイントは、害獣が頻繁に出入りする場所・侵入を試みる可能性のある入り口近くに配置することです。
ただし、いずれは害獣も慣れてしまうため、同じものを使い続けていると警戒心を緩めて侵入してくる可能性があります。
基本的には一過性のものと考えておき、より厳重な対処はプロの業者に相談したほうがよいといえるでしょう。
侵入経路を封鎖する
害獣の侵入経路を遮断することで、害獣の侵入を防ぐことができます。
ハクビシン・テン・イタチのいずれも小さな隙間や穴から侵入してくるため、家や建物の周囲を点検し、ひび割れ・穴・隙間ないかを確認してみましょう。
特に屋根裏や床下など、人の目につきにくい場所のチェックは念入りに行うべきです。
もし侵入経路となり得そうな場所を発見したら、金網やパテなどで塞ぎましょう。
ただし、侵入経路は多岐に渡るため、すべての侵入経路を特定し封鎖することはプロでも難しいといわれています。
すでに害獣が侵入している場合は閉じ込めてしまう原因にもなるため、不安な方はプロの業者に任せたほうが賢明といえるでしょう。
エサとなるものを置かず適度に掃除する
ハクビシン・テン・イタチはいずれも雑食性で、生ごみや食べカスなども口にします。
また、エサとなり得る…特に米・シリアル・果物・野菜といった常温保存できる食材は、出しっぱなしにしておくと害獣にとって格好のエサとなります。
エサとなるものを出しっぱなしにしないこと、適度に掃除し清潔にすること。これだけでも害獣の被害を幾分か軽減することができるでしょう。
注意点を守って対策しよう!
対策を講じる際は、以下の点にご注意ください。
- 害獣に遭遇しても近づかない
- 糞尿や巣を発見しても絶対に素手で触らない(マスクや手袋で防除する)
- 許可なく捕獲・駆除できない
危険が伴うことに加え、法律に触れる可能性もあります。
基本的に自身ができることは予防のみと考えておき、万が一害獣や痕跡を発見した場合は、速やかにプロの業者に相談することをおすすめします。
まとめ
ハクビシン・テン・イタチは、それぞれ分類が異なるため、ある程度見分けをつけることも可能です。
害獣の被害は、放置すればするほど被害が拡大するため、早め早めに対処を講じていくことが重要といえるでしょう。
ただし、自身で対処することは手間がかかるだけでなく危険も伴うため、被害が広がる前に害獣駆除専門業者に依頼すべきではあります。
予防もしくは被害が軽微であるほど費用は安くなるため、早めに相談することが大切です。
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