害獣に分類される野生のアライグマは、その体にさまざまな病原体を有している動物です。
アライグマの保有する病原体は、接触することで人になんらかの感染症を発症する恐れのある深刻なものばかりのため、むやみに近づかないことが重要です。
本記事では、アライグマが持つ菌について詳しくご紹介します。
特に注意すべき感染症や病原菌、アライグマによる感染症を防ぐ方法についても解説しておりますので、アライグマが近隣に生息している可能性があるという方は、この記事を参考に適切な対処を講じていきましょう。
目次
アライグマが引き起こす感染症の種類とは?
本章では、アライグマが引き起こす感染症の種類についてご紹介します。
野生のアライグマは、人間にとってさまざまな病気を引き起こす可能性があります。
ここでご紹介する病気のなかには、現時点では日本での発症が報告されていないもの・世界的にみても発症例が少ないものも含まれています。
しかし、発症例がゼロではないため、誰もが注意すべき病状といえるでしょう。
野生のアライグマが身近に潜んでいる可能性は高いため、その危険性を理解するためにも知識として身に着けておきましょう。
サルモネラ菌食中毒
その名の通り、サルモネラを原因菌とする食中毒のことであり、サルモネラ感染症とも呼ばれています。
食肉や卵といった飲食物を介しての感染が一般的ではありますが、アライグマなど動物の糞が原因となって感染することもあります。
発症すると、発熱・下痢・嘔吐などの急性胃腸炎が起こります。
致死率の高い病気ではないものの、毎年100件以上・2,500名以上の患者が報告されており、特に子どもやお年寄りなどが感染すると重症化する恐れもあるため危険です。
また、予防薬のようなものがなく、基本的には食材を十分加熱するなどで防ぐしか方法がありません。
しかし、アライグマなどの害獣によって菌がばら撒かれた場合、調理済みの食品を入れる容器が汚染され感染につながるケースもあるため注意が必要です。
カンピロバクター食中毒
こちらは、カンピロバクター属菌を原因として発症する食中毒のことです。
主な症状は、下痢・腹痛・発熱・頭痛・嘔吐・悪寒・倦怠感などが挙げられ、サルモネラ菌食中毒にかかった場合と似ています。
カンピロバクターは潜伏期間が2~5日と長めであり、消化器官にも悪影響があるといわれています。
要注意点としては、まれに「ギラン・バレー症候群」を発症する恐れがあるということです。
感染した数週間後に手足や顔面神経の麻痺・呼吸困難などを引き起こす可能性があり、さらに菌血症・肝炎・膵炎といった合併症の発症も報告されています。
アライグマ回虫症
これは、アライグマ回虫によって発症する可能性のある感染症のことです。
アライグマ回虫は普段アライグマの小腸に寄生しており、通常はアライグマの糞で汚染された土や物から発生します。
人体へ寄生する場合は目などの粘膜から侵入することがあり、これによって視力障害が引き起こされます。
また、致死的な中枢神経系感染症や内臓幼虫移行症などを引き起こすこともあるため、非常に注意すべき感染症といえるでしょう。
(アメリカでは、人体への感染にともなう死亡事例も報告されている)
日本においては、現時点では野生化個体から検出された事例はなく、アライグマ回虫症の発病も稀とはいわれています。
ただし、日本でも人の生活圏におけるアライグマの出没例は増加しているため、注意はしておくべきでしょう。
狂犬病
狂犬病は、狂犬病ウィルスを原因菌とする感染症のことであり、感染すると100%死に至る病気です。
狂犬病にかかった動物による咬み傷から感染することが一般的で、潜伏期間は3日~3ヶ月ほどです。
そして、発症後はさまざまな神経症状が出たあとで昏睡に陥り、命を落とすといわれてます。
アライグマの場合、狂犬病に感染しても他の哺乳類より長く生き続けるため、その分周囲に媒介して回る可能性が高まります。
なお、狂犬病は日本では1957年以降、一度も発生していない病気です。
ただし、海外では狂犬病を根絶できていない国もあるため、海外旅行などで他国を訪れる際は注意しておきましょう。
日本脳炎
これは、蚊を介して感染するウィルス性の病気です。
日本脳炎ウィルスを保有しているアライグマの血を蚊が吸い、その蚊に刺された場合に感染する恐れがあるため、アライグマと接触することがなくても油断できない病気といえるでしょう。
もしも感染した場合、高熱・頭痛・嘔吐などの症状が現れます。
致死率は成人で20~40%ほどと高めであり、死に至らなかったとしても神経系の後遺症が残る可能性があるといわれています。
ただし、感染した場合でも発症する割合は低めです。
大半の人は幼少期にワクチンを接種しているため、感染者も大幅に減少しています。
レプトスピラ症
アライグマなどの動物の腎臓に入り込んだレプトスピラと呼ばれる細菌が尿中に出て、この尿や尿で汚れた水によって感染する病気のことです。
風邪のような症状を発する軽症型から、黄疸・出血・腎障害を伴う重症型までさまざまな症状が見られます。
近年では衛生環境の向上などで患者数・死亡者数ともに減少していますが、現在でも各地で発生の報告がされているため注意が必要です。
エキノコックス症
エキノコックス属条虫を原因とする感染症のことです。
糞便と一緒に排出され、手や食品についた虫卵を口に入れる・虫卵で汚染された沢水を飲むなどで感染する恐れがあります。
感染した場合、虫卵から幼虫が出て腸壁へ侵入し、血流やリンパ流によって体内のいたるところで定着・増殖します。
エキノコックス症は、自覚症状が現れるまでの期間が数年~数十年と長く、上腹部の不快感・膨張感、進行すると肝機能障害が出ることが特徴です。
症状を放置すると死に至る可能性があるものの、症状が現れるまでの期間が長いため、注意が必要です。
ダニによる感染にも要注意!
野生のアライグマには、多数のダニが付着しています。
このダニにもいくつかの種類があり、人の皮膚に付着する・咬まれるなどで、以下のような病気に感染する恐れがあります。
- 「マダニ」を介する病気:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
- 「ヒゼンダニ」を介する病気:疥癬(かいせん)
SFTSの症状は、発熱と消化器系の症状が中心であり、人によっては倦怠感・リンパ節の腫れ・出血症状などが見られることもあります。
疥癬の代表的な症状は、皮膚のかゆみや発疹です。ヒゼンダニに寄生されると皮膚の中に卵を産んで増えていくため、症状がどんどん悪化・拡大していく恐れがあるでしょう。
また、人から人へも感染するため、知らず知らずのうちに感染が広がる可能性もあり注意が必要です。
アライグマによる感染症を防ぐ方法とは?
本章では、アライグマによる感染症を防ぐ方法についてご紹介します。
不用意に近づかない
アライグマの市街地への出没頻度は増加傾向にあり、お住いの地域によっては家の敷地内や周辺で目にすることもあるかもしれません。
もし、アライグマを見かけても、不用意に近づかないことが重要です。
アライグマはその見た目こそ可愛らしいものの、非常に気性が荒く・攻撃的で、人にはあまり懐かないといわれています。
不用意に近づいて触ろうとすると、嚙まれたり引っ掻かれたりする恐れがあり、その傷口から病原菌が入りこみ感染症を引き起こす可能性があるでしょう。
アライグマを見かけた場合、下手に刺激せずに距離をとってその場を離れ、お住いの自治体に報告したり、害獣駆除業者へ駆除を依頼するのが賢明です。
なお、もしアライグマに噛まれたり引っ掻かれたりして怪我を負った場合は、怪我の程度に関係なく早急に病院へ行きましょう。
その傷口から病原菌が入り込み、さまざまな感染症を引き起こす恐れがあるため、自身の判断で治療するのは危険です。
命に関わる危険性もあるため、医師にアライグマに襲われたことを告げ、適切な処置を受けてください。
衛生管理を徹底する
アライグマに触れることはもちろん、排泄物や死骸、血液や唾液といったアライグマに関するすべてのものに触れないことが重要です。
特に糞尿などの排泄物は目にする可能性も高いため、絶対に素手で触れないようご注意ください。
もし周辺でアライグマの目撃例があった場合、接触したものなどを介して気づかぬうちに細菌やウィルスが付着することもあります。
手洗いを徹底すること、また洗濯し外に干している衣類などにアライグマが触れた(形跡がある)場合は再度洗濯し、洗浄後に煮沸消毒するのが望ましいでしょう。
アライグマを侵入させない・追い出す
アライグマは、家の屋根裏や床下などに入り込み、棲みつく恐れがあります。
もし棲みつかれた場合は病気を媒介する可能性が高くなり、その他にも健康被害や建物への被害なども発生する恐れがあるため非常に危険です。
そのため、特に近隣でアライグマの目撃例があった場合は、家の中に浸入されないよう、侵入対策を施す必要があります。
主な方法は、侵入経路を封鎖する・家の中や庭などにエサとなるものを置かない・適度に掃除をし衛生管理を徹底するなどが挙げられるでしょう。
ただし、アライグマの侵入経路は多岐に渡り、一般の方ができる対処法だけでは侵入されてしまう可能性は大いにあります。
また、アライグマによる害獣被害を受けていたとしても、鳥獣保護管理法という法律によって保護・管理されているため、無許可で捕獲・駆除をすることができません。
もしアライグマに浸入されている、もしくは徹底的に侵入を防止したいという場合は、プロの害獣駆除業者へ相談することをおすすめします。
自身で対処するよりも安全かつ楽にアライグマの防除をおこなってくれるだけでなく、万が一被害が再発した際にも迅速・格安で対処してもらえるでしょう。
まとめ
近年、アライグマはその生態系をどんどん拡大しているため、アライグマによる感染症の発病は日本でも注意すべき問題です。
一見すると可愛らしい姿をしていますが、その体には多数の病原菌や寄生虫が付着しているため、絶対にむやみに近づかないようご注意ください。
万が一、アライグマによって怪我を負った・触れてしまったなどがあった場合、応急処置を施した後にすぐに病院へ行きましょう。
また、アライグマなどの害獣は無許可で捕獲や駆除ができず、対処に多大な手間とリスクを伴うため、もし付近で見かけた・家の中に棲みついているという場合は、早急にプロの業者へ相談しましょう。
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