ネズミ退治に蚊取り線香が効くという噂を聞いたことはありませんか。
煙を焚くだけで蚊を駆除できるほどの威力を持つ蚊取り線香ですが、実際はネズミ駆除としての使用はおすすめできません。
本記事では、ネズミ駆除に蚊取り線香を推奨できない理由に加え、ネズミ対策として使用する際の注意点について解説します。
ネズミの被害を悪化させないためにも、蚊取り線香でネズミ駆除ができるという噂を正しく解明していきましょう。
1. ネズミ駆除に蚊取り線香を推奨できない理由

蚊取り線香によるネズミ駆除を推奨できない理由は、以下の2点です。
- 煙の量が足りないことがある
- ピレスロイド成分はネズミに効かない
ネズミをはじめとする害獣に対しては、なるべく早めの対処が必要になります。
噂を過信して時間を無駄にしないためにも、それぞれの理由について把握しておきましょう。
1-1. 煙の量が足りないことがある
ネズミは火を嫌い、嗅覚が鋭い動物です。
蚊取り線香の煙や匂いを嫌がり、家屋から出ていく、もしくは家屋に近寄らないかもしれないと言われています。
しかし、ネズミは天井裏・壁の中・収納の奥などに巣や隠れ場所を作っています。
蚊取り線香の煙はネズミが居住する場所までは届きにくく、隠れているネズミに作用させるのは困難です。
もしネズミに煙が届いたとしても、忌避効果は煙が消えるまでの一定期間のみでしょう。
煙が消えてしまえば、再びネズミが戻って来る可能性は十分にあります。
1回の使用で継続的にネズミ対策ができるわけではないため、ネズミの被害が止むまで蚊取り線香を焚き続ける必要があり、現実的ではありません。
そもそも、蚊取り線香のメーカーは駆除対象を蚊に設定し、蚊に対する殺虫効果を謳っています。
メーカーはネズミ対策として販売・製造をしておらず、確実にネズミ対策としての効果があるとは言えません。
1-2. ピレスロイド成分はネズミに効かない
蚊取り線香の殺虫成分「ピレスロイド」は、ネズミを含む哺乳類には効果がありません。
つまり、蚊取り線香でできるネズミ対策とは、駆除ではなくあくまで煙で追い出すだけです。
言い換えれば、ネズミ対策にわざわざ蚊取り線香を使う意味がないとも言えるでしょう。
ピレスロイドは除虫菊(ジョチュウギク)という植物が持つ殺虫成分「ピレトリン」に似た化合物のことを指します。
ピレスロイドには次のような特徴があり、古くからピレスロイド系の薬剤は重宝されています。
- 即効性がある
- 忌避効果が高い
- あらゆる虫に効果が見られる
- 恒温動物への毒性は低い
- 光・熱・空気などによって分解されやすく環境に優しい
上記の特徴は殺虫の側面から見れば優れていますが、逆に言えばネズミには影響が少ないことへの裏付けになるでしょう。
ピレスロイドによる毒性が低い恒温動物には哺乳類や鳥類などが当てはまるため、ネズミがピレスロイドを吸収しても速やかに分解・排泄されてしまいます。
そのうえ、自然界での分解が早ければ、蚊取り線香の煙が消えてすぐにピレスロイドも分解されてしまいます。
煙や匂いによる追い出しの効果は期待できますが、殺虫成分でネズミを弱体化させることには至りません。
煙さえなくなればネズミは今までのように活動を始めてしまいますので、対策としては不十分でしょう。
2. 蚊取り線香をネズミ対策で使う際の注意点

当記事においては、蚊取り線香をネズミ対策で使うことはおすすめしていません。
ですが、蚊取り線香の忌避効果を試してみたい方もいらっしゃるでしょう。
本章では、蚊取り線香によるネズミ対策を行う場合の注意点について紹介します。
以下の4つのポイントに注意しながら、対策をしてみましょう。
- 通り道やラットサインのある場所に設置するのが基本
- ペットや小さな子どもには配慮する
- 就寝中・無人時の使用を避ける
- 効果が弱まるが換気は必要
2-1. 通り道やラットサインのある場所に設置するのが基本
蚊取り線香が効果を発揮するためには、ネズミに煙や匂いを届かせる必要があります。
蚊取り線香の設置場所として最適なのは、ネズミがよく利用する通路やよく居座る場所です。
ネズミの行動範囲を知るには、ラットサインを目印にしましょう。
なお、ラットサインとはネズミが残す痕跡のことです。
黒っぽい汚れや糞尿、かじり痕などがラットサインにあたります。
ラットサインやネズミが好む場所については以下の記事でもご紹介しています。
2-2. ペットや小さな子どもには配慮する
前述したように、蚊取り線香のピレスロイド成分による哺乳類への影響はほとんどありません。
とはいえ、殺虫成分は極力吸い込まない方が望ましいです。
小さなお子様やペットが多量に煙を吸い込んでしまうような場所に置くのは控えましょう。
また、蚊取り線香は燃焼して煙を排出しているため、燃焼部は非常に熱くなっています。
蚊取り線香に触れられることのないよう、お子様やペットの手の届かない場所に設置しましょう。
2-3. 就寝中・無人時の使用を避ける
蚊取り線香を焚く際は、火を使います。
燃焼している間こそ炎が上がることは少ないですが、燃焼部は約700〜800℃もの高温になっています。
また、火種から落ちてすぐの灰でさえも約300℃です。
高温の物質に可燃性のものが接触すれば、火災や事故を招く恐れがあります。
いかなるきっかけでも火が燃え移る可能性は大いにあるため、火気に気づきにくい就寝中や無人時の使用は避けましょう。
2-4. 効果が弱まるが換気は必須
蚊取り線香は人体に安全な成分で作られているとはいえ、製品には使用上の注意として換気が必要であると明記されています。
閉めきった空間での長時間使用は目・鼻・のどなどに刺激を感じる場合がありますので、必ず換気しましょう。
換気を行えば殺虫成分は拡散されるものの、煙や匂いが薄まってネズミ対策の効果は下がる恐れがあります。
しかし、ネズミ対策のために人間やペットの身に何かしらの害があっては、元も子もありません。
蚊取り線香はネズミ用ではないことを念頭に、使用上の注意には従ってください。
なお、ネズミが生息しやすい場所の1つに天井裏があります。
ですが、天井裏は換気がしづらく人の目につかないところです。
天井裏での蚊取り線香の使用は火災・事故のリスクが高まりますので、天井裏での使用はおすすめできません。
3. 獣避け線香もあるが屋外用がほとんど

害獣対策用グッズには、獣除け線香があります。
蚊取り線香の成分が効きづらい哺乳類に対しても、効果が期待できる製品です。
獣除け線香には害獣が苦手な成分(唐辛子のカプサイシンやハーブなど)が含まれており、嗅覚が鋭い害獣の追い出しに効果を発揮します。
しかし、獣除けの多くはイノシシなどに向けた屋外用であり、室内で使用されることを想定されたものではありません。
製品からは大量の煙が出て、匂いも非常に強いです。
ペットへの悪影響や近隣からのクレームを考慮し、室内での獣除け線香は使用を控えましょう。
また、獣除け線香は人間にも刺激の強い製品であり、煙を吸ったり素手で触ったりしてはいけません。
屋外でネズミ対策として使用する場合にも、使用上の注意をよく読んでから使用しましょう。
ネズミが苦手な唐辛子によるネズミ対策は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
4. 完全な駆除には侵入経路の封鎖が不可欠

仮にネズミを蚊取り線香で追い出せても、追放・侵入防止の効果は一時的です。
煙がなくなってネズミが戻ってこないようにするためには、ネズミの入口を完全に封鎖する必要があります。
ネズミの侵入口となり得るのは、以下の箇所です。
- 壁の穴や隙間
- 戸袋
- 配管の隙間
- 屋根の隙間
- 換気扇 など
上記はあくまで、一例に過ぎません。
地上だけでなく2階以上の高さがある箇所も入口になりますし、ネズミは2.5cmほどの小さな隙間さえあれば屋内に侵入できてしまいます。
ご自身で考えられる全ての入口を塞ぐとなると、相当な時間と手間が生じるでしょう。
全侵入口を特定・対策するのであれば、専門家への相談がおすすめです。
なお、ネズミの侵入口になりそうな場所については、以下の記事でもご紹介していますのでご参考にしてください。
5. ネズミ被害でお困りなら協会の無料相談をご活用ください

ネズミは頭のよい動物で、自分たちにとって絶好の餌場や住処を見つけるのが上手です。
たとえ一時的に駆除・追い出しができても、被害は繰り返される可能性は高いでしょう。
加えて、「効果が期待できる」程度の対策では、対策をものともしない個体も存在します。
ネズミの被害を食い止めるためには、迅速かつ確実な対策が必要です。
しかし、いざご自身で対策や駆除業者探しをするという場面になると、見つけた方法や業者が信頼できるかどうかはわかりにくいでしょう。
日本有害鳥獣駆除・防除管理協会では、無料相談を行っています。
どんな些細なお悩みでも相談していただけるため、害獣がいるかもしれないという段階のご相談でも真摯にお答えし、適切な対応をご案内できます。
個人での対策方法や駆除業者探しといったお悩みを解決するためにも、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
ネズミ駆除の方法として、蚊取り線香はおすすめできません。
煙や匂いによる忌避効果はある程度見込める可能性がありますが、蚊取り線香の煙ではネズミにアプローチしきれず、蚊取り線香の成分もネズミにとって毒性が低いためです。
ネズミが苦手な匂いの元である煙も、消失してしまえばネズミが行動しやすい環境に戻ってしまいます。
効果が保証されたネズミ対策は、やはりプロの手によるものです。
家屋やご家族への悪影響が広がってしまう前に、専門家へのご相談をおすすめします。
コメント