栃木県にはどのような野生鳥獣が生息している?危険な害獣の特徴や被害内容・効果的な駆除方法を解説!

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日本には数多くの野生鳥獣が生息しており、地域によって生息する鳥獣や被害内容に違いが見られます。

もっとも深刻な被害は農作物への食害ですが、近年では市街地に出没し人身被害をもたらす動物や家屋に棲みついて害獣被害を発生させる類も存在しています。

栃木県も自然豊かな地域でさまざまな野生鳥獣が生息していますが、どのような野生鳥獣が出没しやすく、どういった被害をもたらしているのでしょうか?

本記事では、栃木県において出没しやすい野生鳥獣の種類や被害内容についてご紹介します。

害獣の具体的な防除法についても解説しておりますので、害獣の被害にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

栃木県の地域の特徴について

栃木県は、日本の関東地方に位置する県であり、県庁所在地は宇都宮市です。

県北部に日光国立公園があり、観光地・保養地の日光や那須が知られています。

本章では、自然豊かな栃木県の土地環境や気候・特産物・生息する野生鳥獣について詳しくご紹介していきます。

栃木県の気候や土地環境

県内には世界に誇る「日光国立公園」のほか、豊かな地域特性を持つ8つの県立自然公園があり、首都近郊では貴重になりつつある美しい自然が残されています。

日光や那須などの観光地やリゾート地も多く、各地で温泉が楽しめるのも特徴に挙げられるでしょう。

地勢は、北部から北西部にかけて奥羽山脈・日光連山・足尾山地が連なっており。これらの山々から流れ出る鬼怒川・那珂川・渡良瀬川など諸河川が関東平野の北端を形成し、更に北に進むと那須野が原に至り、県北の町並みが広がっています。

気候は東日本型かつ内陸県であることから、平地における冬の朝は寒さが厳しいこと・1日の気温の最低と最高の差が大きいこと、夏期は雷の発生が多く、冬季は男体おろし・那須おろし・赤城おろしと呼ばれるカラっ風が吹くことが気候上の特色です。

また、栃木県は「北西部山岳部・奥日光」「北部平野部・那須高原」「県東地域・芳賀郡・那須郡南部」「県央地域」「県南地域」の5つに大別され、それぞれで特徴が異なります。

【北西部山岳部・奥日光】

  • 亜寒帯冬季少雨気候に属し、夏季は冷涼・冬季は寒さが厳しいとされる地域
  • 標高1,000mを超える地域では厳冬期には零下20度以下まで下がることもあり、特に標高1,400mを超える戦場ヶ原では零下30度前後を記録したこともある関東地方の寒極

【北部平野部・那須高原】

  • 那須高原などの北部山地部は西岸海洋性気候に属し、冬季は曇りや雪の日も多い(夏季は冷涼で避暑地となる)
  • 標高の割には比較的冷え込みが緩い日も多いものの、日較差は小さく、日中の気温は低いために真冬日になることも多いとされる
  • 一方、北部平野部では冷気がたまりやすく、冷える時は零下10度を下回る寒さとなる(夏季は平野部でも冷涼で熱帯夜になることはほとんど無く、過ごしやすい)
  • ただし、季節風の影響で曇りの日も多いため、東部のような冷え込みは長く続かないことも多い

【県東地域・芳賀郡・那須郡南部】

  • 真岡市や那須烏山市といった鬼怒川以東に属する茨城県県境に近い地域が該当する
  • 栃木県内平野部としては、特に冬の冷え込みが厳しい地域で、1月の平均最低気温は真岡で零下5℃に達する
  • 夏季も日中は気温が上がるものの朝晩は涼しく、比較的過ごしやすい

【県央地域】

  • 宇都宮市など栃木県内の中央平野部が該当し、宇都宮ではヒートアイランド現象の影響が顕著で年間を通して最低気温が急上昇している
  • 冬はもちろん、夏場(8月)の平均最低気温も22.7度と栃木県内ではもっとも高く、熱帯夜の数も多い
  • ただし、宇都宮市以外の地域では東部ほどではないものの冷え込みが厳しく、夏季も日中は暑くなるものの朝晩は涼しいことが多いとされる

【県南地域】

  • 小山市・佐野市・足利市といった群馬県や茨城県西地域に近接する地域
  • 夏季は猛暑日となることも多く、栃木県内でもっとも暑さが厳しいとされる
  • 冬季は宇都宮を除く栃木県内他地域と比較すると温暖ではあるが、零下8度前後まで下がる日もある

寒暖の差は大きいものの、台風・地震・洪水といった自然災害は県全体で極めて少なく、栃木県の住み良さの大きな要素の一つとなっています。

栃木県の産業・特産物

栃木県では、豊かな自然を活用した農業が盛んにおこなわれており、県北から流出する河川の豊かな水を利用した産業地帯で、米作が盛んなほか飲料工業も発達しています。

那須塩原市・大田原市・宇都宮市は国内有数の米産地であり、那須塩原市では酪農も盛ん、国内生乳生産量は北海道に次いで高いとされています。

また、真岡市・鹿沼市などを中心にイチゴの栽培が盛んで、壬生町・鹿沼市のかんぴょうとともに県の特産品となっています。

栃木県の主要農産物としては、イチゴ・ニラ・ニンジン・水稲・生乳・かんぴょう・二条大麦・ブドウ・もやし・ウド・麻が挙げられ、麻布用大麻・かんぴょう・イチゴ・二条大麦・もやし・ウドの生産量は日本一です。

栃木県では「成長産業として発展するとちぎの農業」の実現に向けて、本県の強み・発展の可能性を最大限に活かしながら、県内外から意欲ある人材の確保、知恵と技術力による生産性の向上と農産物の高付加価値化の推進によって産業活力を高め、本県農業の新たな魅力と価値の創造の実現が積極的におこなわれています。

加えて、活力ある林業・木材産業の振興も活発であり、栃木県では「木を植え、育て、きって利用し、また植える」という森林資源の循環利用の促進・優れた林業担い手の育成・林業事業体の体質強化・生産基盤整備等によるコストの縮減および県産材の安定供給と利用の拡大を進めるとともに、森林・林業を支える山村地域の主要産業である特用林産の振興に取り組むなど、活力ある林業・木材産業の振興が進められています。

栃木県に生息する野生動物の種類

自然豊かな栃木県には、さまざまな野生鳥獣が生息しています。

野生鳥獣にもさまざまな種類がおり、なかにはイノシシやクマのように農作物だけでなく人身被害の恐れがある動物、シカのように農作物・林業など自然に甚大な肥大をおよぼす動物、ハクビシン・アライグマのように家屋に棲みつき住人や建物に甚大な害獣被害をもたらすものなど、多種多様に存在します。

特に、近年では自然環境の減少により、エサや住処を求めて人里まで下りてくる野生動物も増えており、農作物だけでなく地域に住まう住民にもその被害が拡大傾向にあるといえるでしょう。

野生鳥獣は、あくまで自身の生存のためにおこなっている行為…ではあるものの、だからといって住民に被害が発生してよい理由にはなりません。

地球上に生息する野生鳥獣にも食物連鎖など生命のサイクルがあるため、ただ人間にとって迷惑となる鳥獣を駆除すればよいというわけでもありません。

このことから、人間と野生鳥獣の共生が、今後の大きな課題の一つとなってくるでしょう。

栃木県の野生鳥獣による害獣被害について

自然の中で暮らす野生鳥獣は、時に人の生活圏に浸入し、さまざまな悪影響をもたらします。

農作物への影響だけでなく、近年は家屋に棲みついて害獣被害をもたらす動物も増加しており、栃木県でも被害を軽減できるようさまざまな対策を講じています。

本章では、栃木県の令和5年度の農作物への被害状況や、栃木県が実施している農作物の鳥獣被害防止対策事業についてご紹介します。

令和5年度の農作物への被害状況

栃木県のホームページにある「野生鳥獣による農作物への被害関連」にて、被害の詳細を確認することができます。

それによると、令和5年度の野生鳥獣による農作物被害金額は1億8千万円であり、対前年度比90%と公表されています。

区分令和4年度令和5年度対前年度比増減金額
鳥類53(百万円)39(百万円)74%▲14
獣類146(百万円)141(百万円)97%▲ 5
総計199(百万円)180(百万円)90%▲19

参考:栃木県 令和5(2023)年度野生鳥獣の捕獲状況及び農林業被害状況について

被害が深刻や獣類と被害額は以下の通りです。

獣種令和4年度令和5年度対前年度比構成比
イノシシ70(百万円)91(百万円)130%65%
シカ21(百万円)22(百万円)105%16%
ハクビシン28(百万円)19(百万円)68%13%
サル12(百万円)5(百万円)42%3%
タヌキ4(百万円)1(百万円)25%1%
クマ3(百万円)1(百万円)33%1%
その他8(百万円)2(百万円)25%1%
合計146(百万円)141(百万円)97%100%

参考:栃木県 令和5(2023)年度野生鳥獣の捕獲状況及び農林業被害状況について

令和4年度に比べて500万円ほど被害額へ減少していますが、以前億単位の被害が発生しています。

特にイノシシによる被害が65%と非常に大きく、次いでシカ・ハクビシン・サルの順に推移しています。

なお、作物別の被害金額は、以下の通りです。

  • 稲   :107(百万円)(59%)
  • 野菜  : 23(百万円)(13%)
  • 果樹  : 14(百万円)(8%)
  • いも類 : 13(百万円)(7%)
  • 飼料作物: 6(百万円)(3%)
  • その他 : 17(百万円)(10%)

稲の被害がもっとも多く、次いで野菜・果樹の順に被害が発生しやすいようです。

栃木県の農作物の鳥獣被害防止対策事業について

野生鳥獣による農作物への被害を防止するには、個体群管理・侵入防止対策・生息環境管理などを、地域ぐるみで徹底することが重要です。

そのため、栃木県では「鳥獣被害防止総合対策交付金」を活用した「農業被害防止対策サポーター事業」を実施しています。

事業の内容は、以下の通りです。

  • 加害鳥獣種の調査
  • 現場点検
  • 対策の検討
  • 防護・環境整備指導
  • 捕獲指導
  • 研修の講師対応

ただし、利用できるのは農家単位や集落単位であり、家庭菜園や趣味の農業は対象外となります。

野生鳥獣による農作物への被害は大きく、野生鳥獣が人里に出没する可能性が高まるほど地域住民への人身被害なども深刻化してしまいます。

鳥獣管理士や普及指導員による専門家の助言を受けながら、地域単位で効果的に鳥獣害防止対策を進めましょう。

害獣・害鳥被害のなかでも特に注意すべき鳥獣とは?

ここでは、栃木県において農作物への被害が多い野生動物の特徴や被害額の詳細について解説します。

被害額などの詳細は、栃木県が公表している「野生鳥獣による農作物への被害関連」を参考にご紹介しております。

特に顕著なのは獣類による被害です。

ここでは計5種類の野生動物をご紹介しており、なかにはハクビシンやタヌキなどの中・小型の動物による家屋に棲みつき・さまざまな被害をもたらす厄介な害獣として認識されている動物も存在します。

野生動物の被害は農作物だけにとどまらず、人々の生活に甚大な悪影響をおよぼす恐れがあることを理解しておきましょう。

イノシシ

イノシシは稲・イモ類・野菜などの農作物を好むことから、生息地では農業被害が発生しており、栃木県では鳥獣による被害額のなかでもっとも多くなっています。

イノシシによる農作物への被害を年度別に見てみると、2018年~2023年では以下のように公表されています。

  • 2018年:1.3億円
  • 2019年:1.2億円
  • 2020年:1.3億円
  • 2021年:0.6億円
  • 2022年:0.7億円
  • 2023年:0.9億円

畑にある作物の食害だけでなく、農作物を掘り起こす・田んぼで泥浴びをするなど田畑の土地そのものを荒らすことに加え、もしも市街地にまで出没してしまうと人身被害をもたらす恐れがあり非常に危険です。

イノシシの特徴としては、以下が挙げられます。

  • 臆病な性格をしており・非常に警戒心が強く、人と遭遇しても自分からその場を去ることが多い
  • 興奮状態・発情期(秋から冬にかけて)・分娩後は攻撃的になっており、注意が必要
  • 毛を逆立てる・威嚇音(シュー・カッカッカッ・クチャクチャクチャという音)発していた場合は要注意
  • イノシシの子ども(うり坊)がいても不用意に近づかない(母イノシシが近くにいる可能性が高いため)
  • 食べ物を与えることも厳禁(人への警戒心を低下させ、人が「食べ物の供給源」と学習させることにつながる) など

イノシシは学習能力が高い動物のため、エサを与えてしまうことで人間の食べ物の味を覚え、人を恐れずに街中に出てくるようになってしまう恐れがあります。

さらに、そこで人から危害を加えられないと学習すると、どんどん大胆な行動になり、人を襲って食べ物を奪い取るようにもなるでしょう。

もしもイノシシと遭遇してしまった場合は、慌てず・騒がずにイノシシを刺激しないようゆっくりとその場を離れましょう。

急に走り出す・大声をあげる・刺激するといった行為は、イノシシを興奮させる原因となるため非常に危険です。

また、イノシシが興奮している場合は後ろを向くと襲ってくること恐れもあるため、なるべく背中を魅せずに、ゆっくりと後退してください。

栃木県では平成18年11月より栃木県イノシシ保護管理計画、同二期計画(平成22年~)に基づき、捕獲の促進や被害対策の推進を図っています。

また、法改正及び計画期間の満了に伴い、栃木県イノシシ管理計画の三期計画(平成27年5月29日~)や四期計画(平成30年~,令和3年3月変更)を策定し、各種対策を実施し続けています。

しかし、依然としてイノシシの分布が拡大しているとともに農業被害が1億円以上の高いレベルにあることから、令和6年3月に五期計画を策定し、捕獲をはじめとする各種対策が実施されています。

イノシシによる被害は地域全体の問題となるため、今後も地域住民全員で取り組むべき問題といえるでしょう。

シカ

シカは、草食動物かつ比較的おとなしい性格をしているため、自身から人を襲うようなことはほとんどないといえます。

しかし、ほとんどの植物を食べられること、林業用の苗木・樹齢の高い木の樹皮や形成層も食べること、オスが角をこする際に樹皮を剥がすこといった点から、農業や林業そして自然環境に甚大な被害を発生させているのです。

特に、人間が育てる農作物は栄養価が高いことからターゲットにされることが多く、栃木県でもイノシシに次いでその被害が大きいとされています。

【2018年~2023年度のシカによる農作物への被害額】

  • 2018年:1.1億円
  • 2019年:0.7億円
  • 2020年:0.9億円
  • 2021年:1.1億円
  • 2022年:1.2億円
  • 2023年:1.5億円

近年は、地球温暖化による積雪の減少・天敵の減少(オオカミの絶滅や狩猟者の減少)が相まって、シカの生息数は全国的にも増加傾向にあり、日本各地でその被害が拡大しています。

栃木県でも、増えすぎたシカによって日光の自然植生が大きく変わり、白根山の高山植物であるシラネアオイや小田代原のアザミが激減し、樹齢200年のウラジロモミが樹皮剥ぎにより次々と枯死しています。

栃木県では、こうした農林業や生態系の被害を軽減させるため、平成6年より「栃木県シカ保護管理計画」を策定し、対策が実施されています。

しかし、農林業被害は以前として多く発生しており・自然植生の回復が見られないことから、これまでの取り組みの結果を踏まえた上で、引き続き農林業被害の軽減と自然生態系のバランスの回復を図るため、令和6年3月に七期計画を策定し、各種対策がおこなわれているのが現状です。

ハクビシン

元々は外来種であったハクビシンですが、今や日本の各地に生息しており、栃木県でも地域住民に深刻な被害を与えています。

まず、ハクビシンによる2018年~2023年度の農作物への被害額は以下のように公表されています。

  • 2018年:0.5億円
  • 2019年:0.4億円
  • 2020年:0.3億円
  • 2021年:0.2億円
  • 2022年:0.3億円
  • 2023年:0.2億円

ハクビシンは雑食性ですが、特に甘いものを好むため、果実や野菜などが被害に逢うことが多いようです。

加えて、栃木県では県内全市町でアライグマの目撃情報も増えています。

ハクビシン・アライグマともに本来日本に生息していない動物でしたが、近県では相当数が捕獲されており、いったん個体数や分布が拡大すると、農作物のみならず生態系や生活環境への被害が甚大となることが知られています。

特に昨今では、家屋に浸入し屋根裏や床下などに棲みつき、害獣被害をもたらすケースが増加しており、一般の方にも注意が必要です。

家屋に棲みつかれると、食べ物が食い荒らされることはもちろん、鳴き声や足音による騒音(夜行性のため特に夜間にひどくなる)・糞尿による悪臭や建物への腐食被害・感染症の発病など、建物に住まう人やペット、建物そのもの寿命にも大きな影響を与えてしまいます。

ハクビシンとアライグマはどちらも外来種で生息環境なども似ていることから、各種被害の抑制と生態系の保全に資するため、令和3(2021)年3月に「アライグマ・ハクビシン防除実施計画」を策定し、市町・関係機関・地域住民と連携して防除および被害対策が実施されています。

サル

日本人に馴染み深いサルですが、近年サルの生息域・目撃情報が増加しており、今後の被害が懸念されています。

栃木県では農作物への被害も多く、2018年~2023年度のサルによる農作物への被害額は以下の通りです。

  • 2018年:0.2億円
  • 2019年:0.2億円
  • 2020年:0.2億円
  • 2021年:0.2億円
  • 2022年:0.1億円
  • 2023年:0.1億円

サルの分布域の拡大は里地方向へ急激に進んでおり、これに伴い農林業や市街地での被害が拡大しています。

野生のサルの危険な点は、農作物への食害だけでなく「人慣れ」にあります。

サルは群れで行動することが多く、かつ非常に頭のよい動物です。

もしも人間がサルにエサを与えて、サルが人に慣れてしまうと、集団で市街地に出没し家屋への侵入や人間に対する威嚇といった生活・人身被害が発生しやすくなってしまいます。

事実、栃木県では古くに日光市のいろは坂・中宮祠地区において、餌付けによって人慣れしたサルが育成され、物産店・車への侵入・観光客の土産物袋の強奪などが発生していました。

このような状況に対処するため、日光・今市地域におけるニホンザル保護管理計画を策定し、この計画を基に旧日光市による全国初の「餌付け禁止条例」が施行され、年間を通して観光客への普及啓発・餌付けされた群れの追払いを目的とするパトロールが実施され、一定の成果が上がっていたとされています。

しかし、なおも被害地域が県西部を中心に拡大してきたため対象地域を県内全域に広げ、ゾーニングによる人とサルのすみ分けを目標とした「栃木県ニホンザル保護管理計画」を平成15(2003)年3月に策定し、今現在も徹底した対策が実施されています。

なお、一般の方がサルの被害なくす(近づかせない)ためにできることは、人慣れを防ぐこと・サルのエサとなり得るもの(庭先の果実・ペットフード・生ごみなどさまざま)を残さないことが重要です。

万が一野生のサルと遭遇した場合は、サルが興奮するような行動(大声を出す・走る・騒ぐ・サルを追いかけるなど)をせず、慌てず落ち着いて行動しましょう。

クマ

クマの生息数も日本各地で増加しており、栃木県でも農業・林業、そして遭遇時の人身被害など、警戒すべき獣として認識されています。

まず、2018年~2023年度のクマによる農作物への被害額は以下の通りです。

2018年:0.4億円
2019年:0.9億円
2020年:0.6億円
2021年:0.9億円
2022年:0.8億円
2023年:1.0億円

林業の場合は、壮齢木の剥皮被害が顕著であり、2022年は被害面積21ha・被害金額79百万円、2023年被害面積30ha・被害金額104百万円という甚大な被害を出しています。

農業・林業ともに2022年(令和4年)より2023年(令和5年)のほうが被害額が増加しており、今後も警戒が必要な獣といえるでしょう。

また、クマの出没情報も以下の通り年々増加しています。

年度4月5月6月7月8月9月10月11月
令和6年43084534916102
令和5年71231202618146
令和4年1393924640
令和3年1911126520

参考:栃木県 令和6年度のクマ出没(目撃)状況

12月~3月はクマの冬眠の時期となるため、出没頻度は上記時期よりも少なくなる傾向にあります。

クマによる被害は、農作物への食害だけでなく、地域住民への人身被害にも注意しなければいけません。

特に秋頃~初冬にかけては冬眠を前にクマがエサを求めて活動範囲を広げる傾向にあり、同時に人間も秋の行楽やキノコ採りなどを楽しむために山に入るケースが多く、他の時期に比べて遭遇する可能性が高いといえるでしょう。

クマは、農業・林業ともに甚大な被害を引き起こす可能性が高く、ときに人身に被害をおよぼす恐れのある危険な獣です。

本州に生息する陸上哺乳類の中で唯一「人命に関わる深刻な人身被害がある」こと、「ニホンジカなどに比べて生息密度・繁殖率が低い」ことから、捕獲圧を強くし過ぎて個体数が減少すると回復に時間がかかること…といった二面性を有しており、科学的・計画的な保護および管理をおこなう必要性が高い種として認識されています。

栃木県では、平成18年9月より栃木県ツキノワグマ保護管理計画を実施しており、今現在も各種対策がおこなわれています。

栃木県にお住まいの方は、もし目撃情報があった場合には地域のホームページやニュースを確認しておきましょう。

また、旅行などで栃木県に立ち寄る方も、念のためクマの情報を訪れる予定の地域のホームページなどで確認しておくことをおすすめします。

栃木県では、県のホームページや栃木県警のホームページなどで、クマ・野生動物に関する注意喚起情報も掲載しており、以下を確認しておくのもよいでしょう。

栃木県 クマによる人身事故に御注意ください!
栃木県警察 野生動物の注意喚起情報

鳥類による被害にも警戒が必要といえる

ここまで獣類による被害を中心にご紹介してきましたが、鳥類による農作物や地域住民への被害も無視することはできません。

令和5年度で見ると、農作物への被害額は獣類が1億4千1百万円、鳥類は3千9百万円と数字に大きな開きがあることがわかります。

ただ、鳥類だけに絞っても4千万円弱の被害が発生していることから、これを無視することは当然できないでしょう。

なお、2018年~2023年度の鳥類による農作物への被害額は以下の通りです。

  • 2018年:0.5億円
  • 2019年:0.6億円
  • 2020年:0.5億円
  • 2021年:0.4億円
  • 2022年:0.5億円
  • 2023年:0.4億円

農作物への被害が多い鳥獣としては、主にカラス・ムクドリ・ハト・スズメなどが挙げられます。

また、カラスのように市街地にも出没し地域住民に被害をもたらす害鳥たる類も存在し、鳥類による被害は一般の方にも無視できない問題といえます。

野生鳥獣による被害は自治体や害獣駆除業者へ相談しよう!

もしも野生鳥獣による何らかの被害を受けていた場合は、お住いの自治体へ相談してみましょう。

栃木県では上述でご紹介した農作物の鳥獣被害防止対策事業として、地域単位でさまざまなサポートが実施されており、何らかの助力を得ることができるはずです。

ただし、農作物の鳥獣被害防止対策事業を利用できるのは農家単位や集落単位であり、家庭菜園や趣味の農業は対象外となります。

また、ハクビシンやアライグマのように家屋に棲みついた害獣を駆除する場合、自治体が駆除対応に動いてもらえないケースもあります(自治体によっては害獣被害の悩み相談や業者の斡旋をしてくれるケースはある)。

家屋に棲みつく害獣の類はネズミ・イタチ・タヌキ・テン・アナグマ・コウモリなど他にもさまざまに存在しますが、いずれも鳥獣保護管理法によって無許可で捕獲や駆除ができません(ネズミを除く)。

プロの業者へ依頼すれば、家屋に棲みつく害獣の駆除はもちろん、侵入経路の封鎖や清掃・消毒、万が一被害が再発した際にも迅速かつ格安で対応してもらえるでしょう。

業者に対処を依頼する場合、業者ごとに費用やサービス内容が異なるため、複数社(できれば3~4社ほど)から見積もりを依頼し、各社を比較したうえで自身が納得・安心できる業者を選定することが重要です。

まとめ

豊かな自然環境に恵まれる栃木県は多様な自然環境を有しており、さまざまな野生鳥獣が生息しています。

しかし、近年では、生息環境の変化などにより、地域的に絶滅のおそれのある種が存在する一方、狩猟者の減少や中山間地域における過疎・高齢化等により、一部の鳥獣の生息数増加や生息分布の拡大が進行し、農林水産業や生態系等の被害が深刻化しているのも現状です。

野生鳥獣による被害は全国各地で発生しており、栃木県でもさまざまな対策がおこなわれていますが、野生鳥獣による被害をゼロにすることはできず、人間と野生鳥獣がどのように共生していくかが今後の大きな課題となるでしょう。

また、農作物への被害だけでなく、家屋に棲みつく害獣にも注意が必要です。

一般の方が害獣対策をすることには限界があり、かつ多大な手間をリスクを伴うため、もし実際に被害に遭っている・害獣や痕跡を目撃した場合は、被害が大きくなる前にプロの業者へ対処を依頼することをおすすめします。

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