群馬県にはどんな野生鳥獣が生息している?危険な害獣の特徴や被害内容・効果的な駆除方法を解説!

都道府県

日本には数多くの野生鳥獣が生息しており、地域によって生息する鳥獣や被害内容に違いが見られます。

農作物への食害が深刻なことはもちろんのこと、近年では市街地に出没し人身被害をもたらす生き物や家屋に棲みついて害獣被害を発生させる類も存在しています。

自然豊かな地域が広がる群馬県にもさまざまな野生鳥獣が生息していますが、どのような野生鳥獣が出没しやすく、どういった被害をもたらしているのでしょうか?

本記事では、群馬県において出没しやすい野生鳥獣の種類や被害内容についてご紹介します。

害獣の具体的な防除法についても解説しておりますので、害獣の被害にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

群馬県の地域の特徴について

群馬県は日本の関東地方に位置する県であり、県庁所在地は前橋市です。

米麦栽培・養蚕・繊維工業といった伝統産業や畜産・野菜栽培が盛んな地域で、海を持たない内陸県でもあります。

本章では、自然豊かな群馬県の土地環境や気候・特産物・生息する野生鳥獣について詳しくご紹介していきます。

群馬県の気候や土地環境

群馬県は日本列島の内陸東部に位置しており、関東地方の北西部を占める北関東の県です。

利根川の上流域であり県南東部に関東平野、県西部・北部に山地を有し、この山嶺によって日本海側の会津・信越地方と分けられています。

本州のほぼ中央に位置し、南東部を嘴にし、両翼を広げて飛翔する形状をしていることが特徴に挙げられます(上毛カルタには「鶴舞う形の群馬県」と詠まれている)。

また、群馬県は日本有数の温泉王国としても知られており、草津温泉・伊香保温泉・水上温泉・四万温泉の四大温泉をはじめ、たくさんの温泉地があることでも有名です。

しかし、県内は山と谷と平野部が混在すること・北部では標高2,000mを越える山々があることから、関東平野に連なる平野部では標高10mと高低の変化が激しく、山岳気候と平地気候が混在しています。

その標高による違いから、厳冬期の北部では氷点下10℃以下まで下降する一方、盛夏期の南東部の平野部ではおよそ40℃まで気温が上昇するなど気象の変化が激しい地域ともいえるでしょう。

年の平均気温を見てもその違いがはっきりとわかり、南東部の平野部では14℃以上あるのに対し、北部の山地では11℃以下となっており、地形に大きく影響され複雑に分布していることがわかるでしょう。

年間の降水量は南部の平野部では1,200mm程で、冬期の降雪が多い山地では1,700㎜以上となっています。

また、南海上からの暖湿流の影響を受けやすい榛名山では2,000㎜と多いのに対して、 沼田や片品の降水量は南部の平野部と同程度と山地の中では比較的少なくなっており、降水量に関しても複雑に分布していることがわかります。

群馬県の産業・特産物

群馬県は、恵まれた自然環境や日照時間の長さ、大消費地に近く・輸送コストを抑えて出荷しやすいといった有利な立地条件などを活かして、野菜や畜産など多彩な農業が営まれています。

エリアは「利根沼田地域」「吾妻地域」「東部地域」「西部地域」「中部地域」の5つに大別され、以下のようにそれぞれで育てている作物や特徴に違いが見られます。

地域名市町村主な作物特徴
利根沼田地域沼田市・みなかみ町・片品村・昭和村・川場村りんご、こんにゃくいも、切り花アジサイ、キャベツ、トマト、ほうれんそう、レタス、いちご など・山間部と牧草地や畑の広がる高原地帯を生かした、観光業や農業が盛んなエリア
・夏場の昼夜の温度差を利用した夏野菜の生産、準高冷地帯の気候を生かした施設野菜・蒟蒻栽培が盛ん
・また、雄大な自然の中でスキーなどアウトドアが楽しめるのも魅力の一つといえる
吾妻地域長野原町・東吾妻町・中之条町・草津町・高山村・嬬恋村スイートコーン、鶏卵、スプレーぎく、はくさい、キャベツ、レタス、山野草・高冷地の冷涼な気候や、豊かな土壌と水を生かした農業が盛んなエリア
・標高280~1,200mの標高差を活かして、葉物野菜・六合の花弁・夏野菜といった多様な農産物や畜産物が生産されている
・また草津温泉など各地の名湯が人気のほか、北軽井沢など別荘が多い場所としても知られている
東部地域みどり市・桐生市・桐生市・太田市・館林市・大泉町・邑楽町・千代田町・板倉町・明和町ほうれんそう、きゅうり、トマト、なす、ねぎ、やまのいも、米、いちご、鉢カーネーション、シクラメン・中東部の平野が続く郊外エリア
・平野を活かした米麦二毛作の生産が盛んなほか、東部地区でのきゅうりの生産量は全国トップクラス
・県内有数のものづくり地帯で、さまざまな産業が盛ん(埼玉県や栃木県と隣接しており、県をまたいだ生活圏で活動する人もいる)
西部地域高崎市・安中市・富岡市・藤岡市・下仁田町・甘楽町・神流町・南牧村・上野村スイートコーン、鶏卵、スプレーぎく、はくさい、キャベツ、なす、ねぎ、いちご、山野草・北部は交通アクセスの良い都市部、西部は風光明媚な自然が味わえる山村が広がるエリア
・全国的にも有名な下仁田ねぎの生産もおこなわれている
中部地域渋川市・前橋市・伊勢崎市・吉岡町・玉村町・榛東村豚、小麦、ほうれんそう、キャベツ、ねぎ、きゅうり、トマト、なす、いちご、牛乳、肉用牛、鶏卵、ばら・東西南北にまたがるなだらかな傾斜地を生かして、多種多品目の農産物や畜産物が生産されているエリア
・利便性と豊かな自然を兼ね備えた暮らしやすさが魅力といえる

なかでも特産物のこんにゃくいもは全国収穫量の90%以上を占めており、製粉・加工・流通といった関連産業も含めて、地域経済に大きな影響を与えています。

また、東部・利根沼田地域では「ほうれんそう」、吾妻地域では「夏秋キャベツ」、西部・東部地域では「夏秋なす」の出荷量が全国第1位、中部・東部地域の「きゅうり」は全国第2位の出荷量です。

畜産分野では、乳用牛・肉用牛・豚・採卵鶏のいずれも飼養頭羽数が全国10位以内と、群馬県は全国有数の農畜産物の産地として知られています。

群馬県に生息する野生動物の種類

広大な自然が広がる群馬県には、さまざまな野生動物が生息しています。

  • 国の特別天然記念物に指定されているカモシカや、おとなしい性格をしているシカなどの草食動物
  • 古くより日本人に馴染みのあるサル
  • 日本周辺にしか生息しておらず、海外のバードウォッチャーにも人気のヒヨドリ
  • 人身被害など命の危険もあるクマやイノシシなどの危険な動物 など

いずれも自然界に生息する鳥獣たちですが、近年はその生息数が増大・生息域が拡大しており、市街地に出没するケースも増加していることが問題視されています。

エサや住処を求めて…など、野生鳥獣にとっては自身の生活のためとはいえるものの、かといって人間側がその被害を黙って静観しているわけにもいきません。

そのため、後述でご紹介するように、野生鳥獣によるさまざまな対策が打ち出されているのが現状です。

群馬県の野生鳥獣による害獣被害について

自然の中で暮らす野生動物は、時に人々の生活圏に入り込み、さまざまな悪影響をもたらします。

農作物への食害はもちろん、近年は家屋に棲みついて害獣被害をもたらす動物も増加しており、群馬県でも被害を軽減できるようさまざまな対策が講じられています。

本章では、群馬県の令和5年度の農作物への被害状況や、群馬県が実施している農作物の鳥獣被害防止対策事業についてご紹介します。

令和5年度の農作物への被害状況

群馬県のホームページにある「野生鳥獣による農作物被害の状況」にて、令和5年度の被害状況を確認することができます。

特に、嬬恋村でのシカやクマによる高原野菜への被害が県内の55%を占め、依然として高水準となっているようです。

以下表は鳥獣種別被害金額の推移​であり、令和元年~令和5年で特に被害が多かった野生鳥獣と被害額を確認できます。

【獣類】(単位:千円)

獣類令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度令和5年度前年比
シカ93,496128,318130,56698,733128,908131%
クマ33,56940,64656,65838,10350,225132%
イノシシ78,61155,46843,40743,12544,639104%
カモシカ59,93436,97141,26924,85825,949104%
サル14,56814,84216,24518,83822,186118%
ハクビシン9,84114,22615,67813,69413,958102%
アライグマ1,1892,9823,4464,1284,744115%
その他5,3473,1243,7015,7875,59397%
総計296,555296,577310,970247,266296,202120%

参考:群馬県 野生鳥獣による農作物被害の状況

獣類による農作物への被害でもっとも甚大なのが、シカによる被害です。

次いでクマ・イノシシと被害が多く、クマやイノシシの場合は人身被害にも十分な注意が必要です。

また、サル・ハクビシン・アライグマは市街地に出没する頻度が増加しており、サルは街や人家を荒らしたり、ハクビシンやアライグマは家屋の屋根裏や床下などに棲みつき害獣被害をもたらす恐れもあります。

いずれの動物も、農作物への被害だけでは収まらないため一般の方も注意しておく必要があるでしょう。

【鳥類】

鳥類令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度令和5年度前年比
カラス9,3479,39810,43610,3899,28889%
スズメ8,56710,3798,2018,2428,13699%
ヒヨドリ19,8856,91911,96010,0546,2976,297
その他3,3924,6133,5831,9532,628135%
総計41,19131,30934,18030,63826,34986%

参考:群馬県 野生鳥獣による農作物被害の状況

鳥類で被害が大きいのはカラスであり、次いでスズメ・ヒヨドリによる農作物への被害が大きいとされています。

また、獣類に比べれば危険度は低めではあるものの、市街地に出没し食害・フンを落とす・鳴き声による騒音といった被害も発生しています。

特にカラスの市街地での被害は全国的に問題視されており、どの自治体も地域単位でさまざまな対策が実施されています。

令和5年度の森林への被害状況

野生動物のなかには森林に甚大な被害をもたらす動物も存在し、その詳細(被害状況)は群馬県のホームページにある「野生鳥獣による森林被害の状況」にて確認することができます。

令和5年度の野生鳥獣による民有林の森林被害は、実損面積88ヘクタール・前年比107.1%・被害額222,952千円で、前年比100.4%と実損面積・被害額ともに増加しています。

被害を発生させている動物は、ニホンジカ・カモシカ・ツキノワグマの3種が主であり、被害額を表にしてまとめると以下のようになります。

【森林被害額の推移】(単位:千円)

令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度令和5年度
シカ121,862136,424127,365121,272128,636
カモシカ46,39546,38949,30551,55341,927
クマ53,32650,76651,12949,22352,163

参考:群馬県 野生鳥獣による森林被害の状況

被害の詳細は、後述の警戒すべき獣類の各害獣紹介の項目にてご紹介します。

また、他の発生原因としてイノシシやノウサギもいますが、イノシシは令和4・5年と被害額が0であり、ノウサギは令和元年~4年までの被害額が0で令和5年のみ226千円の被害が発生しています。

群馬県の鳥獣被害対策に関する補助事業について

鳥獣被害を防止するには「知る」「守る」「捕る」の3つの対策を組み合わせて、総合的に取り組むことが重要です。

そのため群馬県では、鳥獣害対策地域支援事業・鳥獣被害防止総合対策交付金の2つの事業により、地域の主体的な被害対策の取り組みを支援しています。

詳細は、群馬県ホームページにある「鳥獣被害対策に関する補助事業について」を参照ください。

農作物への被害で特に注意すべき鳥獣とは?

この章では、群馬県において農作物への被害が多い鳥獣の特徴や被害額の詳細について解説します。

被害額などの詳細は、群馬県が公表している「野生鳥獣による農作物被害の状況」を参考にしております。

警戒すべき獣類

まずは獣類からのご紹介です。

ここでは計7種類の野生動物をご紹介しており、ハクビシンやアライグマなどの中・小型の動物は、家屋に棲みつきさまざまな被害をもたらす厄介な害獣としても知られています。

野生動物の被害は農作物だけにとどまらず、人々の生活に甚大な悪影響をおよぼす恐れがあることを理解しておきましょう。

シカ

シカは草食動物かつおとなしい生き物のため、人間側から刺激するような行動をしない限りは襲い掛かってくる可能性は低いといえるでしょう。

たとえば、シカによる令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下の通りです。

  • 令和元年度:93,496(千円)
  • 令和2年度:128,318(千円)
  • 令和3年度:130,566(千円)
  • 令和4年度:98,733(千円)
  • 令和5年度:128,908(千円)

農作物が被害を受ける理由は、シカが一部の有害なものを除き、ほとんどの植物を口できることにあります。

特に人間が作った農作物は栄養価が高いためターゲットにされやすく、もし食べるものがなくれば周囲にある草・花・果樹などもどんどん口にしていきます。

森林に関しては、苗木・樹齢の高い木の樹皮や形成層を食べる、オスが角をこする際に樹皮を剥がすといった行為が主な被害の原因です。

シカは、日本各地で生息数が増加傾向にあり、その理由は地球温暖化によって暖冬となるケースが多いこと・高齢化によるハンター人口の減少などが挙げられます。

栃木県でも依然としてシカの推定生息頭数は高い水準ではあるものの、造林地を中心に獣害対策などを継続的取り組んでいることから、被害は横ばいに推移しています。

クマ

日本の本州に生息するクマは「ツキノワグマ」であり、各地で生息数が増加しています。

栃木県でもその被害は大きく、令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下の通りです。

  • 令和元年度:33,569(千円)
  • 令和2年度:40,646(千円)
  • 令和3年度:56,658(千円)
  • 令和4年度:38,103(千円)
  • 令和5年度:50,225(千円)

森林への被害もシカに続いて多く、利用時期をむかえた壮齢林での剥皮被害(樹皮の皮剥ぎ)が問題となっています。

剥皮被害(樹皮の皮剥ぎ)を受けた樹木は、材が変色するなどして商品価値が著しく低下するとともに、大きく皮剥ぎをされた場合には樹木が枯死し材木として利用できなくなったり、倒木などによって災害が発生する恐れもあるでしょう。

野生動物による森林被害については、被害を受けたことによる経済的損失に加え、森林所有者の経営意欲の低下により、森林管理の放棄にもつながりかねず、森林の持つ公益的機能への影響が懸念されます。

加えて、近年はクマが人里へ下りてくるケースも増加しており、人身被害にも注意しなければいけません。

群馬県では「群馬県クマ出没マップ」が作成されており、群馬県にお住まいの方や旅行などで訪れる方は群馬県クマ出没マップを入手しておいたほうがよいでしょう。

クマによる被害に遭わないためには「クマに出会わないこと」が重要ではあるものの、クマとの遭遇は突発的に起こることが多く、予測は困難です。

万が一遭遇した際にも慌てることがないよう、群馬県が公開している「ツキノワグマ情報について」も合わせてチェックしておくことをおすすめします。

イノシシ

群馬県ではイノシシの平地部への分布拡大が著しく,現在はほぼ県内全域で棲息が確認されています。

イノシシは雑食性であり、水稲・いも類・野菜・果樹などさまざまな作物を食害します。

そのためシカ・クマに次いで3番目に農作物への被害が多い獣類であり、令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下の通りです。

  • 令和元年度:78,611(千円)
  • 令和2年度:55,468(千円)
  • 令和3年度:43,407(千円)
  • 令和4年度:43,125(千円)
  • 令和5年度:44,639(千円)

また、畑を散らかす、田んぼで泥浴びをするといった迷惑な行為から、田畑に甚大な被害が発生してしまいます。

さらに、イノシシが市街地に出没するケースも増加しており、人身被害にも注意しなければいけません。

イノシシは警戒心が強く臆病な性格をしているため、人と遭遇しても人間側からちょっかいを出さない限りは自分からその場を去っていくことも多いようです。

ただし、人間側がイノシシを刺激して興奮状態にさせたり、発情期(晩秋~冬)や分娩後で攻撃的になっている場合に出逢うと襲われる恐れもあるでしょう。

もしもイノシシと遭遇してしまった際は、イノシシを刺激しないようにゆっくりとその場を離れる(高いところに避難する)ことが重要です。
(興奮状態のイノシシに背を向けると襲い掛かってくる可能性があるため、背を魅せずに後退すること)

急に走り出す・大声をあげる・イノシシを刺激するといった行為は、大変危険なため絶対にやめましょう。

  • イノシシの子ども(うり坊)の近くには母イノシシがいる可能性が高いため、可愛いと思っても絶対に近づかない
  • エサを与えない(人への警戒心の低下をまねき、人が「食べ物の供給源」だと学習させることにつながる)

イノシシは学習能力が高く、警戒心が低下すれば昼間でも街中に出没するなど大胆な行動に出る可能性が高まります。

人身被害が拡大する原因となるため、上記のような点にも注意しておきましょう。

カモシカ

カモシカ(ニホンカモシカ)は、北海道と中国地方を除いた本州・四国・九州の山地丘陵地帯に生息する日本の固有種であり、国の特別天然記念物に指定されている希少な動物です。

希少種ではあるものの、保護政策がとられてきたことによって、近年は個体数が回復し分布域が拡がっています。

その結果、農業への被害が増加傾向にあるのです。

たとえば、カモシカによる令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下の通りです。

  • 令和元年度:59,934(千円)
  • 令和2年度:36,971(千円)
  • 令和3年度:41,269(千円)
  • 令和4年度:24,858(千円)
  • 令和5年度:25,949(千円)

食性はシカと似ており、スギ・ヒノキの植林して間もない幼齢林での食害・角研ぎや、植栽後数十年経過した壮齢林での剥皮被害など、森林(林業)に対しても甚大な被害が発生しています。

なお、カモシカは比較的おとなしく、人に危害を加える動物ではありません。

帰巣本能があり、しばらくすると山に帰っていくため、もし見かけたとしても手を触れずに様子を見守ってください。

必要以上に近づく・騒ぎ立てるなどして、興奮させないようにしましょう。

また、すでに死亡している・衰弱し動けなくなっているカモシカを見かけた場合は、発見した場所の自治体の担当課に連絡しましょう。

この際、カモシカには絶対に触れないようご注意ください。

サル

サル(ニホンザル)は日本の固有種であり,分布の北限にある霊長類として古くから貴重な個体群として扱われ,群馬県においても古くから生息していることが知られています。

しかし,近年農作物に対する食害などが増加していることから被害対策の必要性が高まり,各種の対策が実施されるようになりました。

以下は、サルによる令和元年~令和5年の農作物への被害額です。

  • 令和元年度:14,568(千円)
  • 令和2年度:14,842(千円)
  • 令和3年度:16,245(千円)
  • 令和4年度:18,838(千円)
  • 令和5年度:22,186(千円)

また、野生のサルが市街地に出没するケースも増加しており、地域住民に被害も発生しています。

野生のサルの注意すべき点は「人慣れ」「群れで行動する」「非常に頭がよい」が挙げられます。

人間からすると馴染み深い動物のため、もし見かけた際に「エサをあげてみようか…」となるかもしれません。

しかし、人間がエサをあげることで「人慣れ」してしまうと、警戒心を緩め集団で市街地に出没しやすくなり、家屋への侵入や人間に対する威嚇といった生活被害や人身被害が発生しやすくなるのです。

どれだけ地域単位で対策を講じても、エサを与える人がいてはサルの被害を無くすことはできないため、人慣れを防ぐこと・サルのエサとなるものを残さないことが重要といえるでしょう。

ハクビシン・アライグマ

ハクビシン・アライグマはもともと日本に生息していなかった外来種ですが、日本に輸入された際に自然界に脱走し、その生息数・生息域が拡大し今に至ります。

どちらも雑食性かつ甘いものを好むことから、果実や野菜などが被害に逢うことが多いとされています。

両者による令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下の通りです。

  • 令和元年度:ハクビシン9,841(千円)、アライグマ1,189(千円)
  • 令和2年度:ハクビシン14,226(千円)、アライグマ2,982(千円)
  • 令和3年度:ハクビシン15,678(千円)、アライグマ3,446(千円)
  • 令和4年度:ハクビシン13,694(千円)、アライグマ4,128(千円)
  • 令和5年度:ハクビシン13,958(千円)、アライグマ4,744(千円)

被害額としてはハクビシンのほうが多いものの、アライグマによる被害も決して無視できるものではありません。

また、ハクビシン・アライグマともに中・小型の哺乳類であり、家屋の床下や屋根裏などに棲みつきさまざまな害獣被害を発生させるケースも増加しています。

野生動物が家屋に棲みつくと、食害・騒音被害・健康被害・建物の劣化といった、その家に住まう人やペット、建物に甚大な被害が発生してしまいます。

家屋に棲みつく害獣の類は、他にもいくつか種類がありますが、ネズミを除くほとんどの動物が「鳥獣保護管理法」や「外来生物法」によって保護・管理されているため、どれだけ被害に逢っていても無許可で捕獲や駆除ができません。

素人でもできる対策(侵入防止や追い出しなど)はあるものの、多大な手間とリスクが発生するため、もし被害に逢っている場合はプロの害獣駆除業者へ相談することをおすすめします。

警戒すべき鳥類

群馬県において農作物への被害が大きい鳥類は、カラス・スズメ・ヒヨドリの3種です。

以下、群馬県で警戒すべき3種の鳥類の特徴をご紹介します。

カラス

カラスによる被害は、農作物だけでなく地域住民にとっても無視できない問題です。

まず農作物への被害ですが、令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下の通りです。

  • 令和元年度:9,347(千円)
  • 令和2年度:9,398(千円)
  • 令和3年度:10,436(千円)
  • 令和4年度:10,389(千円)
  • 令和5年度:9,288(千円)

群馬県は鳥類より獣類による被害が深刻とはいえますが、カラスは鳥類のなかではもっとも被害額が多く、当然その被害を軽視することはできません。

市街地でのごみ袋を漁る問題や鳴き声による騒音、巣を作る行為など地域住民にとっても迷惑な害鳥として認識されています。

群馬県では、カラスの繁殖期にあたる春先から初夏にかけて電柱での巣作りが増えており、カラスの営巣を原因とした停電被害が相次いでいます。

また、2023年には群馬県前橋市公田町の畑や民家で、カラスの死骸が相次いで見つかったことがニュースでも話題になっていました。

カラスの被害は全国的に問題視されており、各地域単位でさまざまな対策が講じられています。

とはいえ、空からやってくる鳥の被害を完全に防ぐことはできず、今もなおその被害は深刻なものであり、今後も徹底した対策を講じる必要があるといえるでしょう。

スズメ

スズメは「舌切り雀」「雀の学校」など数多くの民話や童謡に登場し、昔から日本人にとって馴染み深い鳥です。

日本で生息しているスズメは「スズメ」と「ニュウナイスズメ」の2種が主であり、街中や公園でよく見かけるのは「スズメ」です(ニュウナイスズメは林や森の中などに生息しており、出会う機会は少ないとされる)。

スズメが人の側を好む理由は、人間が管理する田んぼの畦の植物やその周りにいる昆虫や食べるためであり、人の近くにいる方が便利かつ天敵である猛禽類などから身を守るためだといわれています。

そのため、スズメによる農作物への被害はなかなかに大きく、群馬県の場合は令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下のように公表されています。

  • 令和元年度:8,567(千円)
  • 令和2年度:10,379(千円)
  • 令和3年度:8,201(千円)
  • 令和4年度:8,242(千円)
  • 令和5年度:8,136(千円)

スズメは、稲を食べることから農家にとっては嫌われ者とされてきましたが、その反面、稲作の天敵である害虫を食べてくれることから益鳥と見られる面もありました。

しかし、上記の通り農作物への被害が深刻化しているため、放置しておくわけにもいきません。

スズメなどの鳥類に限らず、自然界における生態系の変化の中での「人との共存」の難しさを改めて考えさせられる問題といえるでしょう。

ヒヨドリ

ヒヨドリは、都心部などでも姿を見ることができる身近な鳥であり、バードウォッチャーの観察対象となるなど人々に人気のある鳥といえます。

カラスやハトに比べれば一般住宅やマンションなどに巣を作ることはそう多くはなく、むしろ「ヒヨドリが自宅に巣を作ると縁起がよい」といわれることもあるほどです。

ヒヨドリは雑食ですが、主に果実や野菜を食べ、花や蜜など甘いものを好む傾向にあります(昆虫・樹木の新芽・木の実なども食べる)。

他の鳥があまり食べない木の実もよく食べるため、植物の種子を遠くに運ぶのに貢献している…ものの、その食性から農作物(特に柑橘類などの果樹)が被害に逢いやすいといえるでしょう。

実際、群馬県でも農作物への被害は多く、令和元年~令和5年の農作物への被害額は以下のように公表されています。

  • 令和元年度:19,885(千円)
  • 令和2年度:6,919(千円)
  • 令和3年度:11,960(千円)
  • 令和4年度:10,054(千円)
  • 令和5年度:6,297(千円)

ヒヨドリは食物繊維を自力で分解してエネルギー変換できる力を有しているため、冬場など食すべき食べものがなくなってくると、野菜に手を出し始めます。

時期を問わず被害が発生する可能性があるため、農家にとっては警戒すべき存在といえるでしょう。

家屋に棲みつく害獣の被害はプロの害獣駆除業者へ相談しよう!

野生鳥獣への対策は県や自治体などが地域単位で実施しています。

ただし、県や自治体が対策に動いてくれるのは、経済・地域単位で甚大な被害が発生するケースが多く、一般家庭の家屋に棲みつく害獣(ネズミ・ハクビシン・アライグマ・イタチなど)に対して駆除をしてくれるケースは少ない(ほぼない)といえます。

プロの業者へ依頼すれば、棲みついている害獣の駆除はもちろん、侵入経路の封鎖や清掃・消毒、万が一被害が再発した際にも迅速かつ格安で対応してもらえるでしょう。

ただし、業者によって防除にかかる費用やサービス内容には大きな違いがあるため、複数社に現地調査や見積もりを依頼したうえで、より自身が安心・納得できる業者を選ぶことが重要です。

また、自治体によってサポート内容は異なるものの、なかには害獣被害の悩み相談や害獣駆除業者の斡旋などをおこなっているところもあるため、いきなり業者へ相談することに不安を感じる方は(事前にお住いの自治体のホームページなどを確認したうえで)相談してみるのもよいでしょう。

まとめ

野生鳥獣による被害は全国各地でさまざまに発生しており、地域ごとに然るべき対策が講じられています。

群馬県でもさまざまな策が実施されているものの、野生鳥獣による被害をゼロにすることはできず、人間と野生鳥獣がどのように共生していくかが今後の課題となるでしょう。

また、農作物への被害だけでなく、家屋に棲みつく害獣にも注意が必要です。

一般の方が害獣対策をすることには限界があり、かつ多大な手間をリスクを伴うため、もし実際に被害に遭っている・害獣や痕跡を目撃した場合は、被害が大きくなる前にプロの業者へ対処を依頼することをおすすめします。

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