可愛い動物?危険な外来種?あまり知られてないアライグマの生態を徹底解説!

アライグマ

まえがき

この記事をご覧の皆さんは「アライグマ」について、どれくらいの知識がありますか?
往年のアニメを見て育った世代の方であれば、「可愛らしい」とか「賢い動物」といったイメージを、比較的若い世代の方であれば「厄介な外来種」といったイメージをお持ちかもしれません。
いずれにせよ、アライグマがそれなりに知名度の高い動物なのは間違いありませんが、具体的な生態まで詳しく知っている方は少数派かと思います。
アライグマ=海外の生き物という先入観を持たれがちかもしれませんが、実は私たちのすぐそばにいる身近な生き物になりつつあります。
誰もがアライグマと関わる可能性を持っていると言える今、アライグマについて少しでも知識を身に着けておいて損することはないでしょう。

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子供のころ「あらいぐまラスカル」を見てて、私も飼ってみたい!って親にせがんだものね…。
ゴシゴシ手を洗うところなんか、すごく可愛いじゃない?

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たしかにレッサーパンダによく似ていて魅力的な動物ですね!
しかし残念ながら、現在では外来生物法によって飼育が禁止されています。
それに、アライグマは「可愛い」だけでは済まされない厄介な一面も持っているのです。

アライグマの基本情報

アライグマは、食肉目アライグマ科アライグマ属に所属する哺乳類で、同属の中で最も広範囲に分布している種です。その原産地はメキシコアメリカ合衆国カナダで、これらの地域では重要な狩猟対象となっております。
自然分布はアメリカ合衆国、エルサルバドル、カナダ、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、パナマ北部、ベリーズ、ホンジュラス、メキシコに及びます。
18世紀の時点では分布の北限はアメリカ合衆国南部でしたが、農地の拡大などに伴い、現在ではカナダ南部まで生息域を広げています。
1930年代には毛皮用としてヨーロッパに移入され、ドイツやフランスなどのヨーロッパ各国旧ソ連のベラルーシやアゼルバイジャン西インド諸島などでも外来種として定着しております。
日本での繁殖は、1962年に岐阜県で確認された野生化がきっかけとされ、その後1970年代に多くが輸入・飼育されるようになると、それに伴い逃亡や放獣などによる野生化が各地で見られるようになりました。

詳しい特徴と生態

外見・形態

アライグマの体長は41.5から60センチメートル、尾長は20から40.5センチメートルで、体重は2から22キログラムに及びます。
飼育下では、体重が20キログラムに達する個体も存在します。
その体毛は灰褐色で、目の周囲から頬にかけて黒い斑紋が特徴的です。
タヌキと間違えられることがありますが、長くふさふさした尾に黒い横縞があること、足が白っぽいこと、耳に白い縁取りがあることなどがタヌキとの違いです。
また、クマなどと同じく蹠行性(しょこうせい)の歩き方をするため、足跡は人の子供の手のような長い5本の指がはっきりと残ります。
これらの特徴はアライグマを他の哺乳類から識別するための重要なポイントとなります。
乳頭の数は胸部、腹部、鼠蹊部にそれぞれ1対ずつ合計6つで、稀に8つの乳頭を持つ個体も確認されています。

詳しい生態

アライグマは、森林や湿地、農耕地、都市部など、様々な環境に生息しています。
夜行性で、自分で巣を掘ることはありません。
他の動物が掘った巣穴や木の洞、時には農家の納屋や物置などを休息場所として利用します。
水掻きがないにも関わらず泳ぐことができ、後ろ足で立つことも可能です。また、木登りも得意で、立体的な行動を見せます。
行動圏は基本的に直径1-3キロメートルの範囲ですが、都市近郊では狭くなり、個体数密度が低い場所では逆に広がります。
オスの行動圏は広く、その中に複数のメスの行動圏が共有されています。
寒冷地に生息する個体は、気温がマイナス4度以下になると冬ごもり(半冬眠)を行います。
これは真の冬眠とは異なりますが、活動は大幅に減退します。
食性は雑食で、両生類爬虫類魚類鳥類(卵を含む)、哺乳類(死骸も含む)、昆虫類甲殻類その他の無脊椎動物植物(果実など)と非常に幅広い食物を摂取します。
特にザリガニ類が大好物であるとされています。

天敵

あらゆる場所で生息域を広げているアライグマですが、そんな彼らにも天敵が存在します。

  • オオカミ
  • クズリ
  • コヨーテ
  • クマ
  • ワシミミズク
  • ピューマ
  • ワニ
  • 人間

実はこの中で、アライグマにとって最も厄介な天敵は人間であるとされています。
アメリカのアイオワ州における調査では、死因が確認されているアライグマの中で、実に78%が狩猟や駆除により、10%が交通事故により命を落としていたという結果が出ています。
ただし日本においてはそれほど狩猟が活発ではなく、かつ天敵となる動物の数も限られているので、アライグマにとっては天国のような土地なのかもしれません。

アライグマ科の動物たち

カコミスル属

カコミスル属はアライグマ科に属する一つの分類群で、その中にはカコミスルとクロアシカコミスルの2つの種が含まれています。
顔つきはタヌキに似ていますが、特徴的な尻尾の縞模様にはアライグマとの近縁性が表れています。

オリンゴ属

オリンゴ属は中米から南米にかけての熱帯地域に生息するアライグマ科の分類群の一つです。
この属の動物たちは木の上で生活し、夜行性であるといった特徴を持っています。
代表的な種のフサオオリンゴは、アライグマというよりサルに似た外見をしており、尻尾を木の枝に巻き付ける点もサルに似ています。

ハナグマ属

ハナグマ属はアライグマ科に属する分類群の一つです。
雑食性であり、細い尾を持ち、木登りが得意であることの他にも、比較的大きな目と短い耳が特徴的です。
ハナグマという名前にある通り、細長く尖った鼻が、鋭い嗅覚を獲得するために発達しています。

人間とアライグマの関係

狩猟対象として

北米大陸では、アライグマは経済的に非常に重要な狩猟の対象となっており、その毛皮はヨーロッパにも輸出されてきました。
アメリカでは、1950年代にアライグマの毛皮を使用した製品のブームが起こり、多くのアライグマが狩猟され、一時的にその数が減少しました。
日本でも、「ラクーン」と表示されたアライグマの毛皮製品が広く流通しました。
また、現在ではアライグマの肉をジビエとして提供する飲食店も数多く存在しています。

ペットとして

アライグマはその愛らしい外見からペットとしての人気が高かったです。
アメリカでは自宅の庭に現れる野生の個体に対して餌付けを行い、ペットのように扱う方もいるようです。
ただし、野生生物への餌付けは個体数の増加や感染症、物理的な傷害のリスクがあるため推奨されておりません。
アライグマは幼少期こそ人懐っこい個体もいるものの(一部、幼少期から攻撃的な個体も存在します)、成獣(特に発情期)になると気性が荒くなり、一般的にペットとして飼育するのは困難です。
また、アライグマは手先が器用で、簡易的な飼育設備であれば、脱走してしまう可能性があります。
日本では2005年に、気候に適応し農作物への被害や生態系への影響が懸念されるため、外来生物法により特定外来生物に指定されました。
そのため、日本では学術研究等の例外を除き、アライグマの飼育・譲渡・輸入は原則禁止されております。

アライグマの拡大

現在では世界各地に生息域を広げているアライグマですが、もともとは北米・中米にのみ生息していた生き物でした。
そんなアライグマが勢力を拡大するに至った経緯を詳しく見ていきましょう。

海外

ヨーロッパでは、1930年代にドイツで毛皮のために導入されたのが始まりで、1934年にはドイツのハンブルクで野生化が確認されています。
しかし本格的な定着が始まったのは1970年代からでした。
1990年代初頭にポーランドで野生個体群が確認されると、その後西部地域にまで生息域を広げ、現在ではドイツを中心に周辺国(フランス、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、チェコなど)でも定着が広がっています。

日本

アライグマは北米が原産地で、日本には元々生息していない動物です。
しかし、1960年代にはヨーロッパ同様に日本でもアライグマの野外繁殖が確認されることになります。
1961年に愛知県犬山市の日本モンキーセンターが飼育を始めたアライグマのうち、12頭が翌年に脱走し、そのうち2頭が回収されなかった事がそのきっかけとされています。
その後、1977年に岐阜県可児市で地元民がアライグマを捕獲し、野生化が正式に確認されました。
このアライグマを発見した地元民は、アライグマを飼育しはじめ、1982年には30-40頭にまで増やした個体群を野外へ放しています。
このような経緯から、アライグマの野生化が進んだと考えられます。
1970年代には、テレビアニメ『あらいぐまラスカル』の影響で、アメリカから年間1500頭ものアライグマがペットとして輸入され、日本で広く飼育されていました。
しかし、手を使うことに長けているアライグマは飼育環境から逃げ出すことが多く、また、「動物は自然の中で暮らすのが一番良い」という考えから、アライグマを自然に放つ飼い主もいたようです。
当時は学者を含む一般人が外来種問題に対する危機意識を持っていなかったため、飼い切れなくなった成獣が遺棄されたり、飼い主から逃亡して野生化した個体が各地に分散しました。
その結果、2001年には36都道府県で、2008年には全47都道府県でアライグマが確認されるようになりました。
現在のアライグマの個体数は不明ですが、東北地方を除く各地でまとまった個体群が存在しています。
日本にはアライグマの天敵や競争種が存在せず、繁殖力も高いため、アライグマは容易に定着することができました。

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今ではこんなに問題になってるアライグマも、些細なきっかけで日本中に広まったのね…。
アライグマを繁殖されて放つなんて無責任極まりないわ!

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その通りですね。
しかし、当時はアライグマに限らず全ての外来生物に対する危機感が薄かった時代です。
その結果として、現在では外来種による害獣被害に苦しむ人々が大勢います。

行政の取り組み

北海道では、アライグマによる生態系への影響を考慮し、2003年から野生アライグマの根絶を目指す管理プログラムが開始されました。
これは日本で初めて科学的データに基づいたアライグマ駆除プログラム策定の試みでした。
試験的な捕獲による生息数の推定と捕獲個体の繁殖特性の調査を通じて、10年後の根絶に向けた目標捕獲数が算出されました。
しかし、残念ながら年間1,000頭の捕獲では個体数は減少せず、10年後に根絶を目指すためには当面年間2,000頭の捕獲が必要であるという結論が得られました。
ただ、予算不足により現在も目標頭数に達する捕獲頭数をあげられず、管理対象地域では今後さらに個体数が増加することが予想されています。

繁殖後推定頭数捕獲目標頭数捕獲に伴う
死亡幼獣頭数
捕獲後推定頭数
20013,9608,401203,000
20024,8801,0001403,740
20035,8902,0005603,330
20045,1202,0005502,570
20053,8201,8004701,550
20062,1801,200300680
200788040090390
200850025050200
20092401503060
20106040020
2011202000

害獣被害

被害の例

では、アライグマによる害獣被害とは具体的にどのようなものなのか、確認していきましょう。

生態系への被害

アライグマは雑食性で、日本固有の生物種を食べてしまうことで生態系を破壊する可能性があります。
北海道では固有在来種のニホンザリガニやエゾサンショウウオの捕食が報告されており、釧路湿原などでもシマフクロウやタンチョウの生息地周辺にアライグマが出現するなど、影響が心配されています。

建物への被害

アライグマは手先が器用で、住宅の屋根裏や物置、牛舎などに侵入し、住み着くことがあります。
一度屋根裏など家の中を住処だと認識されると、所かまわずフンをされ、強烈な臭いの原因になります。
快適な住環境はたちまち破壊されるでしょう。

農林水産業への被害

アライグマは農作物を食い荒らすことがあり、農家の収穫量を大幅に減少させる原因になり得ます。
特に狙われやすいのが、ミカン、ブドウ、イチゴなどの果物や、スイートコーン、スイカ、ミニトマトなどの甘い野菜であると言われています。

公共の場への被害

公園やゴルフ場などの公共施設で、アライグマによる被害が報告されています。
自然豊かなゴルフ場は、アライグマが姿を現しやすい場所であり、芝生を掘り返されるといった被害が多く報告されています。

人間への直接的な被害

アライグマは「レプトスピラ症」「アライグマ回虫症」「狂犬病」など人間に感染する感染症を保有している危険性があります。

レプトスピラ症

特性: レプトスピラ菌によって引き起こされ、感染した動物の尿やそれによって汚染された土壌や水を介して感染します。
症状: 発熱、全身の倦怠感、蛋白尿、食欲不振、頭痛などがあります。潜伏期間の5日間〜14日間後に初期の兆候である発熱、頭痛、悪寒、結膜充血、筋肉痛などが現れます。

狂犬病

特性: 狂犬病ウイルスを保有する動物に噛まれることで感染します。発病すれば、ほぼ確実に死亡する非常に恐ろしい疾患です。
症状: 傷口のかゆみや痛み、頭痛、嘔吐、呼吸困難、錯乱、恐水症などが主な症状です。

アライグマ回虫症

特性: アライグマが排泄する糞に含まれる虫卵を介して感染します。これらの虫卵は、数年間にわたって生存することが可能です。
症状: 感染から発症までには約1週間〜4週間かかります。初期の兆候としては、吐き気、倦怠感、歩行時のふらつきなどがあり、重篤な場合、死に至ることもあります。


アライグマは人間に対しても攻撃的な動物であり、噛みつかれるなどして、ウイルスに感染するリスクに晒されます。
また、アライグマのフンには寄生虫がいるため、自宅を住処にされると非常に危険です。

対策の方法

生ゴミを管理する

最初の対策は、アライグマを引き寄せてしまうような、エサを彼らに見せないことです。
アライグマは雑食性であり、畑の野菜や果物、生ゴミなども食べるので、こうしたものが放置されているとアライグマを引き寄せてしまいます。
具体的な対策としては以下のようなことが有効です。

  • 生ゴミは放置しない
  • 畑の周囲には高い柵を設置する
  • アライグマが登れる木の枝を伐採する(登って畑を覗けないようにする)

これらの対策は、アライグマにとっての餌源を減らし、その結果、アライグマが人々の生活圏に近づくことを防ぐことができます。

侵入経路を塞ぐ

3つ目の対策は、アライグマの侵入経路を封鎖することです。これは、忌避剤で追い出したアライグマが再び侵入するのを防ぐためです。

アライグマが侵入する経路としてよくあるのは、屋根の隙間床下の通気口です。
屋根の隙間から侵入すると聞いて驚かれるかもしれませんが、アライグマは木登りが得意な動物なので、庭の木を登って屋根に到達することができます。

しかし、屋根の隙間を自分で塞ごうとするのは、落下リスクを伴う大変危険な行為です。
専門家に依頼することが最善の対策となります。

忌避剤を使う

2つ目の対策は、アライグマを追い払うための忌避剤を使用することです。
忌避剤は、アライグマが嫌がる臭いや成分を含んでおり、これによりアライグマを追い払うことができます。

具体的には、アライグマに対して木酢液激辛臭のする忌避剤が効果的であるとされています。
これらをアライグマの通り道に設置しておくことで、アライグマを追い払うことが可能です。

ただし、忌避剤の臭いに対してアライグマが嫌悪感を示すのは一時的なものです。
時間が経つと慣れてしまい、忌避剤が設置されていてもアライグマが近づいてしまう可能性があります。
そのため、忌避剤は一時的な対策として考えるべきでしょう。

専門業者に依頼する

ここまでは自ら行う害獣対策について解説しました。
しかし、確実性・安全性・効率性を重視するのであれば、迷わず専門業者へ依頼することをオススメします。
専門業者に害獣対策を任せるメリットは以下になります。

優れた専門知識

害獣対策は専門的な知識と経験が必要です。専門家は害獣の生態や行動パターンを理解しており、最も効果的な対策を選択できます。

高い安全性

害獣対策は時として危険を伴うことがあります。例えば、罠を設置したり、毒餌を用いたりする場合、誤って人間やペットに危害を及ぼす可能性があります。また、高所での作業や、害獣と直接対面する可能性もあります。これらのリスクを避けるためにも、専門家に任せることが推奨されます。

法律の遵守

害獣対策は法律により規制されています。例えば、特定の動物の捕獲や駆除は許可が必要な場合があります。専門家はこれらの法律を理解し、適切に対策を行うことができます。

時間と労力の節約

自分で害獣対策を行うと、時間と労力がかかります。また、自分で行った対策が効果的でない場合、さらに時間と労力が無駄になる可能性があります。専門家に任せることで、これらを節約することができます。

以上のような観点からも、専門業者に任せるのが無難ではないでしょうか。
確かに費用はそれなりに掛かりますが、知識の無い方が自分で対策・駆除を行おうとすると思ったような効果が上がらず、何度も何度も色々な対処法を試すうちに、結局業者に依頼するよりも費用が嵩んでしまった……なんて事になりかねません。
安物買いの銭失いにならない為にも、思い切って専門業者に相談しましょう!

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お金をかけないで手っ取り早く自分で駆除しちゃいたいんだけど、やっぱり素人には難しいわよね。
たしか、前に家の壁紙を業者に頼まず自分で張り替えたことがあったけど、手間もかかったし酷い仕上がりになったわ…。
自分でやろうとして失敗するのは、あるあるよね。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
可愛い見た目とは裏腹に、凶暴で厄介な一面を持つアライグマのことを理解して頂けましたか?
害獣被害に遭われている方は是非この記事を参考に、そうでない方は、もしもの時のための知識として覚えておいてくださいね!。

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おかげで、アライグマの恐ろしさが分かったわ。
うちは結構田舎の家だから、害獣被害に遭わないためにも前もって対策しておこうかしら?

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素晴らしいお心がけだと思います!
侵入経路を塞ぐだけでも動物に棲みつかれる可能性は減らせますし、万が一棲みつかれても、本サイトの害獣駆除に関する豊富な情報をご活用いただければ被害を最小限に抑えられますよ。

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