アライグマは、もともと日本には生息していない外来種です。
人間の手によって日本に持ち込まれたあと、日本で野生化・繁殖してしまい、今や人や自然などにさまざまな被害をもたらす「害獣」と化しています。
本記事では、日本におけるアライグマの生息地や、日本で増えて野生化してしまった理由についてご紹介します。
被害の対処法についても解説しておりますので、アライグマの被害に悩まされている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
アライグマが日本にやってきた理由とは?
本章では、アライグマが日本にやってきた理由、日本国内で野生化するに至った経緯と現在の分布状況についてご紹介します。
アライグマの輸入と飼育ブーム
アライグマはもともと日本には生息しておらず、アメリカ合衆国・エルサルバドル・カナダ・グアテマラ・コスタリカ・ニカラグア・パナマ北部・メキシコなどの自然に生息している「外来種」です。
その見た目の可愛らしさから人気の高い動物であり、古くはメディアやアニメなどで取り上げられ注目を集めていました。
その結果「ペットとして飼いたい」「動物園で展示したい」という理由で、日本に大量輸入されます(毛皮用として輸入されるケースもあった)。
しかし、アライグマは気性が激しく攻撃的な性格をしているため、ペットには向かない動物です。
手に負えなくなった飼い主が飼育を断念し放棄する・アライグマ自身が動物園など飼育場所から逃げ出すといったことが理由で、野に放たれ・野生化したと考えられています。
現在は「外来生物法」によって管理されている
野生化したアライグマの被害が増加したことから、2005年6月に「外来生物法」(正式名称を「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」という)が施行されました。
これは、日本もしくは特定の地域に生息していない動物によって、もとからいる在来種の生存を脅かしたり・国内で繁殖しないようにするための法律です。
また、外来生物のなかでも、日本に持ち込まれて定着することで在来種が絶滅に追いやられる・人に被害をおよぼす・農林水産業に悪影響をおよぼすといった恐れのある生き物は「特定外来生物」に指定されます。
アライグマも「特定外来生物」に指定されており、もしも飼養・保管・運搬・譲渡・輸入などをした場合(法律に違反した場合)は、懲役刑や罰金が科せられます。
- 日本に「入れない」
- 飼っている外来生物を「捨てない」
- すでに野外に定着した外来生物を他の地域へ「拡げない」
この三原則のもと、外来生物法によって厳重な取り締まりがおこなわれています。
アライグマの生息域について
上述の大量輸入・飼育放棄・脱走などが原因で、日本でも野生化したアライグマが増加しています。
アライグマは、雑食性かつ水辺や森林などさまざまな環境に適応できるため、北海道から沖縄まで全国に分布しています。
農地や住宅地などでも生活が可能で、現在はエサを求めて都市部など人間の生活圏に浸入するケースが後を絶ちません。
人間の生活圏は「エサに困らない」「屋根裏など安全地帯がある」など、アライグマが棲みやすい環境が整っているため、一度棲みつかれると追い出すことは困難とされています。
アライグマが日本で増殖した4つの理由
野生化したアライグマが、日本で増殖・加速度的に分布域を拡大できたことには理由があります。
本章では、その理由を4つご紹介しましょう。
天敵がいない
アライグマの天敵として、オオカミなどの猛禽類・肉食哺乳類が挙げられます。
しかし「日本には野生の猛禽類・肉食哺乳類がほとんどいない=天敵がいない」ため、捕食されて減ることがほぼありません。
天敵がいなければ子どもを出産しても狙われることがないため、その数はどんどん増えていくでしょう。
繁殖力が高い
アライグマは1~2歳で成熟する生き物であり、2歳以上であれば妊娠率はほぼ100%といわれています。
繁殖期は地域によって多少異なりますが、おおむね春先です。
(1~3月に交尾、4~6月に出産、7月ごろから子どもが巣を出て活動しはじめる)
また、一度の出産で5頭ほどの子どもを産むこと・野生のアライグマの寿命は約5年ほどであること・天敵が少ないこともあって、放置するほどその数はどんどん増加していきます。
雑食性でなんでも食べる
雑食性であるアライグマは、なんでも食べます(食べないものを挙げる方が難しいほど)。
とくに甘いものを好んで食べる習性があり、田畑に植えてある野菜や果物も捕食します。
また、生ごみですら食べるため、ごみの管理方法が不十分であれば市街地であってもエサに困ることはありません。
生息できる場所が多岐に渡る
アライグマは環境への適応力が非常に高く、平地・山間部・温暖地域・寒冷地域などどこでも生息できます。
日本は平地が少ないため、隠れる場所が多いというのも生存しやすい理由の一つといえるでしょう。
また、建物の屋根裏や軒下など市街地であっても隠れる場所が多く、加えてエサも豊富にあるため、生き延びやすく繁殖しやすいといわれています。
なお、活動範囲はエサの量で決まり、エサが豊富にあるほど活動範囲は狭くなります。
野生化したアライグマによる被害とは?
人間の勝手な都合で日本に持ち込まれたため、アライグマに一切の罪はありません。
しかし、その被害は人間から自然まで多岐に渡り、放置するほど深刻な問題へ発展するため、被害を放置するわけにもいきません。
本章では、その被害の一例をご紹介します。
生態系のバランスが崩れる
アライグマは外来種であり、上述でご紹介した通り日本には天敵と呼べる動物がほとんど存在しません。
そして、雑食性のためなんでも口にし、在来種の生態系に大きな影響を与えかねません。
実際、天然記念物・絶滅危惧種に指定されているシマフクロウへの影響や、固有在来種であるエゾサンショウウオの捕食などが問題となっています。
日本における生態系のバランスが崩れてしまうため、その存在が危惧されています。
農作物や家畜に被害がおよぶ
雑食性のため、野菜や果物などの農産物・養殖魚などの水産物・鶏やウサギなどの家畜への被害は後を絶ちません。
農家や養鶏場などを生業としている人にとって、その被害は深刻な問題となっています。
また、家庭菜園で育てた野菜や果物などもエサとなるため、趣味で農作物を育てている人にとっても決して他人事とはいえないでしょう。
感染症・病気の原因となる
野生の動物の身体には、多くの寄生虫や病原菌が付着しています。
アライグマを媒介とする病気には、たとえば以下が挙げられます。
- 狂犬病
- アライグマ回虫症
- レプトスピラ症
- エキノコックス症
- ダニ・ノミの寄生
- 疥癬(かいせん)
- サルモネラ菌・カンピロバクターなどの食中毒 など
人間だけでなくペットなど他の動物にも感染する恐れがあり、なかには重篤な症状に発展するものも存在します。
人間への健康被害が発生する
アライグマは夜行性であり、夜中に行動することが多い動物です。
屋根裏などに棲みついている場合、夜中の寝静まったころに動き出し、(鳴き声を含め)騒音問題に発展することもあるでしょう。
また、糞尿は強烈な悪臭を放つこと、「溜め糞」をする習性があることから、糞尿(悪臭)による健康被害も発生する恐れがあります。
接触時に攻撃され怪我を負うと、上記の感染症を発病する恐れもあるため非常に危険です。
建物の腐敗や倒壊の恐れがある
天井裏や屋根裏などに巣を作り、棲みつくケースも増加しています。
この際、以下のように建物へ深刻な被害をもたらす可能性があります。
- 巣作りのために断熱材や電線などを引きちぎる
- 天井や壁を穴だらけにする
- 糞尿により、建物が腐敗する など
放置するほど建物へのダメージは蓄積されていき、下手をすれば倒壊の危険性すらあるため注意が必要です。
アライグマから身を守るにはどうしたらいい?
アライグマに罪はないものの、その被害は深刻であり、放置するほどその被害は甚大なものとなります。
そのため「侵入させない」「追い出す」「むやみに接触しない」という点を意識し、適切に対処していく必要があるといえるでしょう。
本章では、アライグマから身を守る術・被害を防ぐ対処法をご紹介します。
「侵入させない」
野生動物を建物に棲みつかせない方法は「侵入経路を徹底的に塞ぐ」ことです。
木登りが得意かつ小さな穴からでも侵入できるため、侵入経路となり得る箇所は徹底的に塞ぐ必要があるでしょう。
また、居心地の環境を作るために「徹底した衛生管理をする」ことも重要です。
アライグマは手先が器用なため、ゴミ箱のふたを開けてごみを漁ることもあります。
こういった点を踏まえ、以下のような方法を試してみましょう。
- 屋根裏や天井裏などの侵入経路を金網・板などで塞ぐ
- 窓やドアには鍵や施錠装置をつけ、開けられないようにする
- ごみ箱のふたはしっかりと閉め、ロックや重しをかける
- ごみ箱を金属製やプラスチック製のものに変える
- ごみ箱を倉庫などに置く など
また、屋外からの侵入を防ぐために「電気柵」「防護ネット」「忌避剤」「超音波発生装置」などを設置するのもよいでしょう。
「追い出す」
もし家屋に浸入・棲みついていた場合は、市販の「忌避剤」や「超音波発生装置」などを利用して追い出しましょう。
また「追い出したあとに侵入経路を塞がなければ、建物内に閉じ込めてしまう」ため、かならず追い出しが完了したあとに侵入経路を塞いでください。
追い出した後は、アライグマが居た場所の清掃や除菌もしておくべきといえます。
ただし「許可なく捕獲・駆除できない」「下手に触れると感染症を発病する恐れがある」ため、素人がむやみに手を出さほうがよいともいえます。
不安を感じる方は、早急にプロの業者に相談すべきといえるでしょう。
「むやみに接触しない」
「身体に多数の病原菌や寄生虫が付着している」「近づけば威嚇・攻撃される恐れがある」ことから、仮にアライグマを発見しても接触は避けるべきです。
死骸はもちろん、血液・排泄物などにも絶対に触れてはいけません。
もし周囲で目撃例があった場合は、気づかぬうちに手などにウィルスや細菌が付着している恐れもあるため、手洗いは徹底しておこないましょう。
万が一、噛みつき・引っ掻きなどの被害に遭った場合は、応急処置(傷口をきれいな水で丁寧に洗い流し、アルコールなどで殺菌する)をしたうえで、すぐに医師の診断を受けましょう。
傷口からウィルスが侵入し感染症などを発病する恐れがあるため、どんなに軽傷であってもかならず病院に受診してください。
アライグマの対処はプロに任せよう!
以下の理由から、アライグマは素人が対処することは困難といえます。
- 無許可で捕獲・駆除ができない
- 下手に対処すると、感染症などを発病する恐れがある
- 追い出し、侵入経路の封鎖、清掃・滅菌などをすべて対応するには非常に手間がかかる など
アライグマによる被害を危惧されている方は、できるだけ早めにプロの業者に相談することをおすすめします。
被害が軽微であるほど費用は安くなり、逆に被害が深刻化するほど駆除・修繕にかかる費用が高額になるでしょう。
すべての作業を一貫しておこなってくれる+再発した場合も無料(格安)で対処してくれることから、総合的なコストパフォーマンスは業者に依頼したほうがよいといえます。
費用やサービス内容は依頼先によって異なるため、相見積もりを取りながらより納得できる業者を探してみましょう。
まとめ
外来種であるアライグマは、今は日本での生息域を急速に拡大し、全国に分布しています。
それに加え、人や自然などに大きな悪影響をもたらす「害獣」であるため、被害を未然に防ぐためにも徹底した対処が必要です。
素人ができることには限界があるため、不安を感じる人は早めにプロの業者に相談してみるとよいでしょう。
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