アライグマは夜行性の害獣で人間の生活圏にも生息します。
「朝起きたら、大切に育てていた作物や魚を食べられていた」
このような状況に心当たりがあれば、アライグマの仕業かもしれません。
近年、全国でアライグマ被害が多発しており、都会の住宅地でも目撃されるようになりました。
それにともない、家庭菜園や飼育魚への被害も相次いでいます。
この記事ではアライグマの生態や被害の特徴、自力でできる捕獲方法などを解説します。
目次
アライグマは夜行性?活動時間や外見を紹介
かわいい見た目に反し、アライグマはさまざまな問題を引き起こします。
ここではアライグマの活動時間や外見の特徴などを解説します。
活動時間と生態
アライグマは夜行性のため、昼間はねぐらで休み、日没から翌朝の4時ごろにかけて活動します。
とくに人が寝静まった深夜以降に、外飼いのニワトリや魚が襲われた、農作物を食べられたという事例が多いようです。
アライグマは北米(アメリカ・カナダ)原産ですが、現在ではヨーロッパやアジアにも生息しています。
日本では1970年代にペット用として輸入され、逃亡や放獣で野生化が進みました。
外見の特徴
アライグマの体長は60センチ~1メートルで、体重は4キロ~10キロほど。
運動能力が高く、木登りや泳ぎが得意です。
アメリカでは20階建ての高層ビルを登るアライグマが目撃されたこともあります。
外見はタヌキなどと似ていますが、次のような特徴で見分けられます。
- アライグマは尻尾に5~6本のしま模様がある
- 鼻から眉間にかけて黒い筋がある
- 目の周りが黒い
問題点
アライグマは凶暴な性格で何でも食べてしまうため、日本のみに生息する貴重な動物の捕食や農作物の食害が問題となっています。
また人間に感染する狂犬病ウィルスを保有していたり、民家の屋根裏に住みついたりするなど、有害な点が多いことから「特定外来生物」に指定され、駆除対象の「害獣」とされています。
アライグマ被害の特徴
被害を受けた農作物や水槽にはアライグマ特有の痕跡が残ります。
ここではアライグマ被害の特徴を解説します。
農作物被害の特徴
アライグマは前足を手のように使い、器用にものを食べます。
たとえばトウモロコシやミカンは皮をむいて食べ、メロンやスイカは皮に丸い穴をあけて中身だけを食べます。
飼育魚被害の特徴
アライグマに狙われるのは「金魚、コイ、メダカ、フナ、マス」などの淡水魚です。
趣味で飼っている金魚の水槽を荒らされた、販売用のメダカやコイを食べられたなどの被害が相次いでいます。
アライグマは水槽の縁に乗り、2本の前足で挟むように魚を捕まえたり、ときには水槽の中に入って直に魚を漁ったりもします。
被害を受けた水槽には、フタにしていた金網やネットを壊される、フタの重石をどかされるなど、一見人間の犯行とも思える痕跡が残ります。
足跡の特徴
畑や水槽の周囲にアライグマの足跡が残ることがあります。
アライグマは5本指で各指がはっきり分かれているため、足跡が人の手形のように見えます。
足跡は縦に長く、前足の長さは5センチ、後足は7センチほど。
いずれもタヌキやハクビシンなどの動物には見られない特徴です。
被害を受けても勝手に駆除できないアライグマ
アライグマのように「特定外来生物」に指定された動物は、本来、誰でも自由に駆除できます。
もちろん事前の許可や殺処分後の報告なども一切不要です。
しかしアライグマは特定外来生物でありながら「鳥獣保護管理法」という、野生動物を保護する法律によって守られています。
そのため他の特定外来生物と異なり、自由に駆除したり捕獲したりできません。
アライグマを駆除するには、次の条件を満たす必要があります。
- アライグマによる農作物や生活環境への被害が実際に起こっている
- 駆除する人が「狩猟免許(※1)」を持ち、かつ自治体から許可を得ている
(※1)狩猟免許とは、野生動物(アライグマ、シカ、イノシシなど)を狩るのに必要な資格のこと。
たとえアライグマに家庭菜園を荒らされたなどの被害があっても、狩猟免許や自治体の許可がなければ駆除はできず、追い払うことしかできません。
被害者側から見ると理不尽に思えますが、違反時には罰則もあります。
アライグマ被害にあったら、まず地域の市役所に相談しましょう。
アライグマ対策1.「自治体に相談する」
アライグマ被害に悩んだら、最寄りの市役所へ相談しましょう。
近年、全国でアライグマ被害が多発しているため、多くの自治体が「狩猟免許なし」でも捕獲許可を出してくれます。
ここでは許可申請や捕獲方法について解説します。
捕獲許可の申請
まず市役所へアライグマ被害について相談し、捕獲許可を申請します。
許可が降りるまで1週間ほどかかるので注意してください。
捕獲許可が出ると捕獲用の箱罠(※下画像)も無料で貸出してもらえます。
箱罠がすべて貸出中の場合は自分で購入して使うこともできますが、費用は自己負担となります。
また許可をもらうにあたり、アライグマの生態や罠の使い方を学ぶ研修への参加が必要な場合もあるなど、対応は自治体によって異なるため、事前に問い合わせておきましょう。
箱罠の設置
箱罠はアライグマ被害があった場所に水平に置きましょう。
罠には「キャラメルコーン、メロンパン、鶏の唐揚げ」など、糖分や塩分の多い食べ物を仕掛けてアライグマをおびき寄せます。
入口から奥にかけて段々とエサの量が増えるようにし、罠の周囲にもエサを置くとさらに効果的です。
とくにキャラメルコーンは駆除業者も使うほど誘引効果が高いため、ぜひ試してみてください。
逆にペットフードは犬や猫の誤捕獲につながるのでおすすめできません。
箱罠以外の場所に食べ物があると、そちらを食べようとするため罠にかかりにくくなります。
ペットの食べ残し、未収穫の農作物、生ゴミは事前に片付けておきましょう。
罠は最低でも1日1回は見回り、捕獲できているかの確認が必須です。
もし猫や野鳥が罠にかかった場合はすぐに逃がしてください。
アライグマ以外の動物を捕獲したままにすると鳥獣保護管理法違反となってしまいます。
捕獲後の引取り
アライグマ捕獲後は速やかに市へ連絡しましょう。
市から委託を受けた駆除業者が引取りに来てくれます。
捕獲したアライグマを車に積んで他の場所へ逃がすのは「外来生物法(※2)」で禁止されているため、必ず自治体に引き渡してください。
(※2)アライグマなど特定外来生物の取り扱いを定めた法律。許可なしの運搬や飼育などを禁止している。
また捕獲から回収まで日数があくと、アライグマが箱罠の中で暴れて脱出するケースもあります。
引取りは平日だけなので、箱罠を仕掛けるのは月~木のみとし、土日・祝日に重ならないようにするとスムーズです。
なお自分で購入した箱罠で捕獲した場合は、一旦罠ごと回収業者が引取り、殺処分後に返却されます。
アライグマ対策2.「自衛で農作物や魚を守る」
アライグマは一度エサが手に入った場所には何度も訪れます。
生息数も年々増え続けており、捕まえても別の個体がやってくる可能性が高いため、捕獲を進めると同時に食べられないようにする保護対策が必要です。
ここでは農作物や魚を食害から守る方法を紹介します。
農作物対策
アライグマから農作物を守る基本は、畑の周りに支柱を立てて防獣ネットで囲うことです。
アライグマは穴掘りが苦手とされていますが、畑を囲う柵の下に穴を掘って侵入する事例も多いため、ネットと地面の接地部分は長めに確保してください。
ネットの端はU字ピン(杭)で固定し、さらに重石でおさえるなど2重3重で対策しましょう。
動物の嫌がるトウガラシスプレーや木酢液(※3)を散布するのも効果的です。
(※3)木炭を作るときに出る煙を冷やして液体にしたもの。独特の強いにおいがあり、動物よけなどに使われる。
ブドウ、モモ、カキなどを保護する場合は、アライグマが果樹に登れないようにすると効果的です。
木登りが得意なアライグマですが、平トタン(表面が波状でなく平らのトタン)を傘状にして吊るしておくと登れなくなり、食害を防げることが実験でわかっています。
(参考)農研機構-登はん能力からみたアライグマとタヌキのブドウ果実食害防止対策
平トタンはインターネット通販やホームセンターで購入できるので、柵の設置と併用してみてください。
水槽対策
水槽はフタをして、アライグマが魚に触れられないようにしましょう。
木やプラスチックパイプで枠を作り、金網を張ったものがおすすめです。
金網は線径1ミリ程度で目の細かいものを選び、2重3重に張ってください。
フタの上に重石を置くだけではどかされてしまうため、針金や結束バンド、荷締ベルトなどで固定すると安心です。
アライグマ対策3.「駆除業者へ相談する」
アライグマの出産ピークである4月~5月は、民家への侵入被害が増加します。
アライグマに侵入されると次のような被害が起こるため、早めに駆除業者へ相談しましょう。
- 騒音で眠れなくなる
- フン尿で悪臭や天井のシミが発生
- 天井に穴をあけられる
業者への依頼は費用がかかりますが、確実な捕獲と侵入口の封鎖、フンの清掃まで行ってもらえます。
とくに子連れのアライグマは凶暴で、噛みついたり引っかかれたりする恐れがあるため、安全面からも業者の利用がおすすめです。
業者を選ぶときは実績や保証内容などを重視しましょう。詳しくは次の記事を参考にしてください。
【野生のアライグマ】自身でできる駆除・対処法や業者選びのポイントを解説-業者選びのポイント
まとめ
アライグマは夜行性で人が寝静まった深夜から明け方に活動します。
そのため食害の瞬間を目撃されることは少なく、朝になって被害に気づく事例が多いのです。
アライグマ被害を受けたら、まずエサを徹底的に片付けてください。
食べ物が手に入らないとわかれば次第に寄り付かなくなります。
捕獲する場合は自治体へ相談して許可を取りましょう。
ただし狂犬病など感染症リスクがあるため、慎重に取り組む必要があります。
もし屋根裏や床下へ侵入された場合は専門業者への依頼がおすすめです。
当サイトを運営する「日本有害鳥獣駆除・防除管理協会」でもアライグマ被害の相談を受け付けています。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
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