お住いの家や利用している納屋・農地などに害獣が出没すると、健康・経済被害の発生や感染症のリスクが生じる恐れがあります。
そのため、害獣の存在や痕跡を発見した場合は、速やかに防除をおこなうべきといえるでしょう。
自治体によっては、害獣を駆除した際に報奨金が出る可能性があります。
この記事では、害獣駆除の報奨金交付制度や支給の条件、駆除するまでに必要な手続きの流れをご紹介します。
害獣を駆除するには一定の条件を必要とするため、誰にでもできることではありません。
条件を正しく理解し、適切な手順を踏んで対処を実施しましょう。
目次
害獣を駆除すると報奨金がもらえるのは本当?
自治体によっては、害獣を駆除した際に報奨金が出ることがあります。
しかし、これは「有害鳥獣を駆除した場合」に限り、害獣を駆除する際には「狩猟免許」を必要とします。
また、免許を持っているからといって誰でも駆除した際に報奨金がもらえるわけでもありません。
この章では、害獣駆除時に出る報奨金の特徴についてご紹介します。
「有害鳥獣」とは?
報奨金が出るのは、人や家屋に害をおよぼす可能性がある「有害鳥獣」を駆除した場合に限られます。
この有害鳥獣に明確な定義はなく、基本的には人や家屋に被害をおよぼすもの、家畜・農作物・水産物といった事業に関連するもの、樹林などに被害を与えるものといった「野生化した鳥獣」が該当します。
【有害鳥獣の一例】
- イノシシ
- ニホンジカ
- ニホンザル
- ハクビシン
- アライグマ
- 鳥類(カワウ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・カルガモ・ドバト・キジバト・スズメ・ヒヨドリ など)
また、有害鳥獣に指定されている生き物であっても、許可なく駆除することはできず、駆除したからといってかならず報奨金が発生するわけでもありません。
報奨金は専門家や農家のために存在する
報奨金交付制度は、専門家や農家のために制定されたものです。
そのため、自宅に出た害獣を自身で駆除したからといって、報奨金がもらえるわけではありません。
また、害獣にもさまざまな種類が存在し、駆除するには害獣に関する知識や技術を必要とします。
ケガや感染症などの恐れといったリスクも伴うため、素人はむやみに害獣に手を出すべきではありません。
もし害獣の被害を危惧している方がいらっしゃれば、できるだけ早めに害獣駆除の専門業者に相談することをおすすめします。
報奨金の有無・金額は自治体によって異なる
報奨金の有無やその金額は、自治体によって異なります。
また、報奨金交付制度を実施している自治体であっても、交付条件が異なるため注意が必要です。
基本的には、捕獲したことを証明するために害獣の特定部位(耳や尻尾など)や写真・一定の書類などの提出が求められます。
詳細は自治体によって異なるため、仮に害獣駆除を実施かつ報奨金を得たいという方は、事前に各自治体に確認を取っておきましょう。
害獣駆除に必要な「狩猟免許」とは?
害獣の多くは「鳥獣保護管理法」という法律によって管理されており、無許可で捕獲・駆除することができません。
また、許可を得る(自治体に申請する)には、該当する狩猟免許を必要とします。
この章では、狩猟免許の種類や資格取得の方法について解説を進めていきましょう。
狩猟免許の種類
狩猟免許は全部で以下の4種類があり、捕獲・駆除方法に応じた免許を取得する必要があります。
【狩猟免許の種類】
- 網猟免許 :網(むそう網・はり網・つき網・なげ網)
- わな猟免許 :わな(くくりわな・はこわな・はこおとし・囲いわな)
- 第一種銃猟免許:装薬銃(ライフル銃・散弾銃)
- 第二種銃猟免許:空気銃
たとえば、害獣をわなにより捕獲する場合は「わな猟免許」が、装薬銃を使用して害獣を駆除する場合は「第一種銃猟免許」が必要となります。
そのため、仮に家のなかに害獣が棲みついてしまい自身で捕獲・駆除をしたいとなっても、上記の該当する免許を取得したうえで自治体に申請し許可を得なければ、(どれだけ被害に遭っていたとしても)捕獲・駆除することはできません。
もし無許可・無免許で鳥獣を捕獲や殺傷した場合、鳥獣保護法違反で1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されることになるため、注意しておきましょう。
狩猟免許の取得の仕方
狩猟免許を取得するには、各都道府県知事が実施している「狩猟免許試験」に合格しなければなりません。
この狩猟免許試験は毎年複数回実施されており、「知識試験」「適性試験」「技能試験」で一定の合格基準を満たす必要があります。
【合格基準】
- 知識試験・技能試験:70%以上の得点
- 適性試験 :全項目の基準を満たす
試験を受ける際は、まずお住いの都道府県の担当部署に「狩猟免許申請書」を提出しましょう。
手数料は一免許あたり5,200円であり、希望者は狩猟免許予備講習会を受講することができます。
必要な書類や試験の流れについて詳細は、お住まいの都道府県の担当部署までお問い合わせください。
なお「網猟」「わな猟」は狩猟免許の取得のみで問題ありませんが、「銃猟」をおこなう場合は、都道府県公安委員会から「銃刀法」に基づく猟銃の「銃砲所持許可」(猟銃一本ごと)も取得しておかなくてはいけません。
銃猟免許を取得予定の方は、銃猟免許と合わせて銃砲所持許可も取得しておくとよいでしょう。
免許の有効期限
狩猟免許の有効期限は約3年間であり、満了日を迎える前に免許の更新をおこなわなくてはいけません。
免許を更新する方法は、以下の通りです。
- お住まいの都道府県が実施する講習会を受講する
- 適性検査に合格する
- 一免許あたり2,900円の手数料を支払う
報奨金をもらうための手続き方法とは?
有害鳥獣を駆除し報奨金をもらうとなった場合、自治体に一定の書類を提出しなければいけません。
この章では、報奨金をもらうための手続きの方法や、有害鳥獣駆除をして報奨金をもらうためにやっておいたほうがよいことをご紹介します。
報奨金をもらうための手続き方法
まず、有害鳥獣の駆除における報奨金の有無・金額・手続きに必要な書類は、自治体によってさまざまに異なります。
たとえば、報奨金をもらうための手続きに必要な書類の一例として、以下が挙げられます。
- 有害鳥獣捕獲報償金交付申請書
- 鳥獣捕獲活動書(捕獲年月日・捕獲場所・計測値・捕獲方法などを記載する)
- 捕獲写真
- 切断した動物の耳や尾 など
詳細は自治体によって異なるため、報奨金の有無・金額・手続きに必要な書類などを事前に確認したうえで、自治体に申請しましょう。
「猟友会」への所属
個人で有害鳥獣の駆除ができないわけではありませんが、有害鳥獣駆除をして報奨金をもらう際は「猟友会」という狩猟者のための公益団体への所属を検討してみるのもよいでしょう。
猟友会に所属すれば、必要書類の準備を代行してもらえたり、狙撃研修会に参加できたりといったさまざまなメリットを享受できます。
ただし、猟友会に所属すると1~1.5万円ほどの年会費がかかるため、メリット・デメリットを理解したうえで所属するかどうかを決めてみましょう。
最初から一人で有害鳥獣駆除をおこなうのは難しいため、初年度は猟友会に所属するのがおすすめといえます。
猟友会で1年間経験を積み、2年目以降で「継続して猟友会に所属するか」or「個人で有害鳥獣駆除をおこなうか」を判断してみるのもよいでしょう。
害獣駆除・報奨金に関するよくある質問
この章では、害獣駆除・報奨金に関するよくある質問をいくつかご紹介します。
「害獣駆除」と「狩猟」の違いはなにか?
害獣駆除と狩猟は、どちらも「獣を狩る」という意味合いを持ち、現状は両者に明確な線引きは存在しません。
「害獣駆除=狩猟の一部」と捉えることもできるでしょう。
あえて違いを表現するとなれば、狩猟は「レジャー・ジビエ料理の食材にするといった目的も含まれる」のに対し、害獣駆除は「自治体の要請を受けて害獣の個体数を減らすためにおこなうもの」といった見方ができるでしょうか。
そのため、狩猟には報奨金が出ることはなく、害獣駆除の場合は(自治体によって)報奨金が出る可能性があるといえます。
報償金は課税対象となるのか?
結論からいうと「有害鳥獣駆除に対する報奨金は、課税の対象になる」ため、報奨金が発生した際は適切な申告をおこなわなくてはいけません。
このときの問題として挙げられるのが、「事業所得」なのか「雑所得」なのかという点です。
雑所得として申告する場合は、以下のようなデメリットが挙げられます。
- 特別控除などが使える青色申告を利用できない
- 事業所得で可能な損益通算(赤字を他の所得と相殺すること)が認められない など
そのため、基本的には事業所得として申告したいという方のほうが多いでしょう。
もし、狩猟を生業としている方であれば「有害鳥獣駆除で受け取った報奨金=本業に付随して得た収入」となり、事業所得として処理できるはずです。
しかし「個人事業主で本業が狩猟とは関係ない場合」や「サラリーマンが副業として報償金を得た場合」などは、雑所得として扱われる可能性が高いため、この違いを事前に把握しておいたほうがよいといえるでしょう。
害獣駆除は「経費」にできる?
所得税が課税される「所得」は、収入(この場合は報償金)から、必要経費(報奨金を得るために必要となった出費)などを差し引いた金額のことをいいます。
経費を確実に計上すれば、納税額を抑えることができるでしょう。
害獣駆除(狩猟業)特有の経費としては、たとえば以下が挙げられます。
- 狩猟用品(ベスト・作業着・長靴・手袋・わな など)の購入費
- 備品工具(ナイフ・ロープ・スコップ など)の購入費
- 銃(銃本体・弾丸・火薬・雷管 など)の購入費
- 射撃のトレーニング費用 など
なお、猟銃など10万円以上の機材は「減価償却資産」となり、購入費用を使用可能期間に渡り、分割して費用計上できます。
申告は適切に実施しよう
事業であれ個人であれ(一定の)収入が発生すれば、国に申告する義務が発生します。
しかし、なかには「報奨金が課税対象とは知らなかった」というケースもあり、今後は有害鳥獣の駆除(報奨金が発生する場合)には十分な注意が必要といえるでしょう。
もともと、害獣駆除は狩猟免許を持つ猟友会のメンバーなどが、ボランティアに近い形でおこなっていたという歴史があります。
しかし、近年は害獣による被害が拡大し、それに合わせて報奨金制度が導入されたため「課税に対する意識が希薄だった」という側面も否めないのです。
報償金を含め国の支出が増えていることもあり、国税当局はさらに厳格な姿勢で調査を進める可能性があります。
申告漏れが見つかれば、仮に悪意がなかったとしても「加算税」や「延滞税」などのペナルティが課せられることになる(知らなかったでは済まされない)ため、今後はより注意が必要といえるでしょう。
まとめ
近年は、住処やエサを奪われた動物が人々の生活圏に侵入するなど、害獣被害が増加傾向にあります。
このことから、自治体で害獣駆除に関する報奨金を設けるケースも増えているといえるでしょう。
ただし、対象となる鳥獣の種類・報奨金の金額・手続きの進め方などは自治体によって異なるため、詳細は各自治体に確認を取ってみてください。
また、報奨金も所得税の課税対象となるため、申告することをお忘れなく。
「事業所得なのか雑所得なのかの確認」「害獣駆除にかかった費用を経費する」といった点も意識しながら、できる限りかつ適切に減税を実施していきましょう。
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