アナグマを見つけたらどうする?穴塞ぎと捕獲の意外なリスクについて

害獣・害虫別

庭先や通学路で、脚が短くずんぐりした茶色の動物が地面を掘っていたら、その場で取る行動は4つだけです。

近づかない・餌を与えない・安全な距離から記録する・被害や反復出没があれば市区町村の鳥獣担当窓口に相談する、この4つで初動は完了します。

野生のアナグマに咬まれたと考えられる国内の学術報告は2例で、むやみに怖がる動物ではありません。

一方、見つけた直後に庭や床下の穴を塞ぐ、自分で捕まえるという行動には、閉じ込めや法律違反という別の危険が隠れています。

一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会の編集部が、見つけた人の判断に必要な範囲に絞って整理しました。

1. アナグマを見つけたらどうする?直後に取るべき4つの行動

アナグマ 見つけたら直後に取るべき4つの行動をまとめた図解で、右上にアナグマの写真を配置し、距離を取り触らない、安全な距離から写真や動画で記録、市区町村の鳥獣担当窓口へ相談、穴をすぐ塞がず無許可で捕獲しないという注意点を番号付きアイコンで示している

アナグマを見つけたら、次の4点を順番に行えば十分です。

  • 距離を取り、触らない・追いかけない・餌を与えない
  • 安全な距離から写真や動画で記録する
  • 建物への侵入、ふん尿・掘り返しなどの被害、反復出没、負傷や異常行動、子どもやペットへの接近がある場合は市区町村の鳥獣担当窓口に相談する
  • 穴をすぐ塞がない・無許可で捕獲しない

自力での追い払いや捕獲は初動に含めません。

法律上の線引きは5章、穴を塞いではいけない理由は6章で扱います。

1−1. 距離を取り、触らない・追いかけない・餌を与えない

最初にすることは、自分と同行者の安全確保です。

子どもや犬を先に離し、アナグマの進路をふさがない位置に下がります。

塀のあいだや物置の裏など行き止まりに追い込むと、逃げ場を失った個体が向き直って防御行動に出るため、退路を空けたまま見守るのが安全です。

餌を差し出す行為は、その場の危険だけでなく、人の生活圏への定着を後押しします。

1−2. 安全な距離から写真・動画で記録する(毛色・体高・尾・場所・時刻)

記録は、後で種の判定や自治体への相談に使う材料になります。

近づかず、望遠機能で撮影し、次の5点を控えておきます。

  • 毛色と顔の模様
  • 体高(成人の膝より低いか)
  • 尾の長さと縞模様の有無
  • 場所と移動していった方向
  • 日時

体高と尾を控えるのは、クマとの誤認を避けるためです。

アナグマは成人の膝より低く、四つ足で地面に沿って進むため、体高を意識するだけで判断材料が増えます。

地域の掲示板などへ投稿する場合は、自宅が特定される位置情報を外しておきます。

1−3. 相談先は市区町村の鳥獣担当窓口が基本(対応は自治体で異なる)

相談先は、住んでいる市区町村の農林・環境・鳥獣被害対策の担当部署が基本です。

環境省の「捕獲許可制度の概要」によると、捕獲許可の権限者は都道府県知事ですが、多くの都道府県で権限の一部が市町村長に移譲されています。

ただし、対応内容は自治体ごとに大きく違います。

千葉県船橋市の捕獲用わな貸し出し制度(2026年8月更新)では、無料貸し出しの対象は外来種のアライグマとハクビシンで、在来種のタヌキやアナグマが入った場合は放す運用です。

「市役所に連絡すればアナグマを捕まえてくれる」と全国一律に考えるのは正確ではなく、地元の運用を窓口で確認する必要があります。

参考:捕獲許可制度の概要(環境省)

参考:船橋市の捕獲用ワナ貸し出し制度

1−4. やってはいけない2つの初動|穴をすぐ塞ぐ・無許可で捕獲する

見つけた直後にやってはいけない行動は2つです。

  • 中に個体がいるか確認しないまま穴を塞ぐ(理由は6−3)
  • 許可や登録なしに箱わなを置く・捕まえる(法律上の境界と罰則は5章)

どちらも「被害を早く止めたい」という気持ちから起こりやすい行動ですが、状況を悪化させる側に働きます。

2. 本当にアナグマ?画像でタヌキ・ハクビシン・アライグマと見分ける方法

アナグマ 見つけたら確認したい見分け方の比較表で、アナグマ・タヌキ・ハクビシン・アライグマの4種を写真付きで並べ、顔の模様、尾の縞と長さ、胴が低い体型と歩き方、足の指の本数を項目ごとに整理した図解

広島県呉市の有害鳥獣対策のページでは、「アライグマを見た」という相談を受けて現地確認したところ、最近の相談例はすべてアナグマだったと説明されています。

一般の目撃では誤認が現実に起きているため、手元のアナグマの画像は次の順番で見比べます。

  1. 尾:黒い輪の縞があるか、体と同じほど長いか、短いか
  2. 顔:目の周りの黒が縦に入るか、横に広がるか、額から鼻先に白い線が通るか
  3. 体の低さ:腹が地面に近く、脚が見えにくいほど低いか

参考:保存版 有害鳥獣を正しく知って効果的な対策を(呉市)

2−1. アナグマ・タヌキ・ハクビシン・アライグマの見分け早見表

種顔の模様尾体型・歩き方足の指
ニホンアナグマ目の周りに縦方向の黒い帯、鼻筋は白っぽい短く、縞なし脚が短く胴が太い。地面に張り付くように低く歩く前後とも5本、爪が長い
タヌキ目の周りの黒が横に広がる短めで先が黒い。縞なし脚がやや長く、冬は毛でふくらむ4本
ハクビシン額から鼻先に白い1本線体と同じくらい長い。縞なし細身で胴が長く、尾を水平に伸ばして歩く5本
アライグマ目の周りが黒く、眉間に黒い筋黒い輪状の縞がある丸みがあり尾が太い5本。指が長く手形に近い

識別の要点は尾の縞と長さです。

縞があればアライグマ、縞がなく体と同じほど長ければハクビシン、縞がなく尾が短く体高が低ければアナグマの可能性が高くなります。

農林水産省の加害獣識別研修資料でも、顔の模様・尾・足跡の組み合わせで判定する手順が示されています。

参考:農林水産省の加害獣識別研修資料

関連記事:ハクビシンとは?生態・害獣被害・今すぐできる対策を専門協会が解説

関連記事:アライグマの生息地について|日本で野生化し増えた理由とは

2−2. 足跡と掘り跡で判定する|5本指・長い爪跡・柵下の掘削

姿が見えなくても、足跡が残っていれば種の絞り込みができます。

農林水産省の中型獣識別マニュアル(2018年3月30日)によると、アナグマの足跡は5本指で、目安は前足が長さ約7.5cm・幅約4cm、後足が長さ約9cm・幅約4cm、指の先に長い爪跡が付きます。

タヌキは4本指で、前後とも長さ約4cm・幅約3cmとされ、大きさと指の数の両方で差が出ます。

掘り跡では、柵や基礎の下を掘って通る「掘削」がアナグマらしい痕跡です。

同省の野生鳥獣被害防止マニュアル中型獣類編(令和6年3月版)では、直径5cm程度の小さな穴が点々とある場合、アナグマが餌を探した痕跡である可能性があるとされています。

ただし、掘り返しだけで種を決めてはいけません。

山梨県上野原市で2014年6月から12月に行われたカメラ調査では、アナグマとタヌキが同じ巣穴を時期や時間帯をずらして使う様子が示されており、穴の主が1種だけとは限らないためです。

参考:農林水産省の中型獣識別マニュアル

参考:野生鳥獣被害防止マニュアル中型獣類編 アナグマ(農林水産省)

2−3. スマホ写真1枚では確定しにくい理由と補完手段

写真1枚で種を確定できないのは、見え方を変える要因が多いからです。

  • 夜間の防犯用カメラ映像は白黒になり、毛色の情報が失われる
  • 幼獣は体型が丸く、タヌキとの区別がつきにくい
  • 換毛期は体が細く見え、冬毛はふくらんで見える
  • 疥癬(ヒゼンダニによる皮膚病)で脱毛した個体は別種に見える

姿の写真だけでは判定しにくいため、足跡・ふん・出入口の写真と、複数日にわたる出没の有無をあわせて確認すると判断しやすくなります。

動画があれば、体を低くして地面に沿って進む歩き方も判断材料になります。

3. ニホンアナグマとは?生息地・好物・フン・性格を判断に必要な範囲で整理

森の地面に立つニホンアナグマの正面写真を中心に、本州四国九州の分布地図、ミミズや昆虫などの雑食性の餌、ためフンの様子を配置し、生息地や好物、フンの特徴、性格の注意点をまとめたアナグマ 見つけたら確認したい判断ポイントの解説図

ニホンアナグマとは、日本に生息するイタチ科の中型獣で、名前どおり地面に穴を掘って暮らす動物です。

ここでは、識別と「定着しているか」の判断に関係する要点だけを扱います。

関連記事:アナグマはどんな鳴き声を発する?害獣ごとの鳴き声の特徴や対処法を解説

3−1. 日本での生息地と活動時期|冬は見なくなる?市街地にも出る?

ニホンアナグマは主に本州・四国・九州に分布し、北海道にはいません。

農林水産省の「中型獣の生態と特徴」では、都市化した地域の小規模緑地や、人家・道路に近い林縁にも繁殖用の巣穴を作る場合があるとされています。

冬は冬ごもりをするため目撃が減りますが、期間や巣の外での活動頻度には地域差があります。

船越・松元の研究(哺乳類科学58巻2号、2018年)では、鹿児島市で2016年12月から2017年3月に自動撮影カメラで調査した結果、巣の外での活動停止が始まったのは12月22日でした。

暖地では年末近くまで巣の外を動く個体がいるため、冬に見かけたからといって異常とは言えず、逆に冬に見なくなったからといって巣を離れたとも判断できません。

参考:農林水産省「中型獣の生態と特徴」

参考:船越・松元「九州南部に生息するニホンアナグマの冬季における活動について」(哺乳類科学58巻2号、2018年)

3−2. 好物・餌|ミミズ・果実から人工餌まで。餌付けが招く問題

アナグマは雑食で、ミミズや昆虫の幼虫、落ちた果実、農作物まで幅広く食べます。

都市部のニホンアナグマの食性研究では、人の生活に由来する餌資源も利用していることが示されており、生ごみや置き餌が誘引物になります。

金子・丸山の研究(哺乳類科学45巻2号、2005年)では、餌づけに毎日依存するメスは、依存しない個体と比べて初春から初冬まで体重が重く、自然条件で見られる季節的な体の増減が見られなくなっていました。

人の餌に体の状態まで左右される個体が生まれるという結果は、餌を与える行為が「一度の親切」で終わらないことを示しています。

1−1で「餌を与えない」とした根拠はここにあります。

参考:金子・丸山「東京都市近郊におけるニホンアナグマの体重及び栄養状態への地域住民の餌づけの影響」(哺乳類科学45巻2号、2005年)

参考:都市部のニホンアナグマの食性研究

3−3. フンの特徴|ためフン場・形状・見分けのポイント

アナグマには、決まった場所に繰り返し排泄する「ためフン」の習性が知られています。

群馬県立自然史博物館の調査報告(神津牧場)の糞分析では、季節によってミミズや昆虫、幼虫、果実などが確認されており、フンの中身と色は食べたもので変わります。

ただし、ためフンはタヌキにも見られる習性であるため、フンだけで種を確定することはできません。

定着の判断で見るべき点は、ふんが「同じ場所に、日を置いて増えているか」であり、6−2の確認項目につながります。

参考:牧場に生息するニホンアナグマの食性と土地利用(群馬県立自然史博物館)

3−4. 性格は個体差あり|人懐っこく見える理由と近づいてはいけない理由

アナグマの性格を「温厚」「臆病」と一言で決めることはできません。

人を見てもすぐ逃げない個体がいるため人慣れしているように見えますが、逃げない理由を外見だけで判断することはできません。

大きな音や急な動きには驚いて退避し、逃げ道をふさがれれば咬みつく防御行動を取る可能性があります。

「逃げないから安全」ではなく「逃げないからこそ距離を保つ」が、野生動物に対する判断の基本です。

4. アナグマは人を襲う?噛む危険性と感染症リスクの証拠に基づく見方

巣穴から顔を出すアナグマの写真を右に配し、アナグマ 見つけたら人を襲うか噛む危険性と感染症リスクを解説する図解で、噛まれると深い傷になり国内報告は2例、疥癬やSFTSなど感染症に注意、基本は近づかないの3項目を並べた構成

当協会が確認できた国内資料の範囲では、アナグマが人を積極的に襲うと判断できる統計や多数例の報告はありません。

ただし、確認できた範囲では、全国でどの程度の咬傷や感染が起きているかを示す統計も見つからず、「報告が少ない」と「起きない」は同じ意味ではありません。

4−1. 噛まれた国内事例(報告2例)と、咬まれたときの対処

古賀ほか「アナグマ咬創と考えられた例」(日本形成外科学会会誌43巻、734〜738ページ、2023年)では、野生のアナグマに咬まれたと考えられる2例が示されています。

1例は保育園で女児が前腕に皮下脂肪層まで達する咬創を負い、もう1例は山中で23歳男性が指を咬まれ末節骨(指先の骨)の骨折を伴いました。

著者らは国内初の報告であり、海外でも数例しかないまれな症例と評価しています。

件数は少なくても、いざ咬まれると手指の深い外傷になり得る点が、この報告から読み取れる示唆です。

咬まれた場合は、流水で十分に洗浄し、傷が小さく見えても早めに受診し、野生動物に咬まれたことを医師に伝えてください。

参考:古賀ほか「アナグマ咬創と考えられた例」(日本形成外科学会会誌43巻12号、2023年)

4−2. 疥癬・マダニ媒介感染症・レプトスピラ症|確認済みの事実と未確認事項の線引き

感染症については、確認されている事実と未確認の事項を分けて考えます。

項目確認されていること示されていないこと
疥癬(ヒゼンダニによる皮膚病)Makouloutouほかの研究(Journal of Wildlife Diseases 51巻1号、2015年)で、脱毛や痂皮(かさぶた)のあるニホンアナグマ6個体からヒゼンダニが遺伝子解析で確認野生アナグマ全体の有病率、人への感染率
SFTS(マダニが媒介するウイルス感染症)宮崎県の中型野生哺乳類調査で、ニホンアナグマ63個体中43個体から抗体を確認。国立感染症研究所の2016年3月の報告では別地域のアナグマ74頭中6頭が陽性アナグマから人への直接感染、目撃だけでの感染
レプトスピラ症(感染動物の尿などを介して人にも感染する細菌感染症)感染経路は感染動物の尿で汚染された水や土との接触(国立健康危機管理研究機構)アナグマ由来の国内感染例(今回確認した公的資料・文献検索の範囲では見つからず)

抗体の確認は、その個体が過去にウイルスに触れた可能性を示すもので、人への危険を直接示す数字ではありません。

陽性率が調査によって大きく違う点からも、1つの数字を全国のアナグマに当てはめることはできません。

一方で、国立健康危機管理研究機構の「獣医療関係者のSFTS発症動物対策マニュアル」(公式ページは2026年7月21日更新。確認できたPDFは2025年バージョン2)には、野生のアナグマでSFTSによる感染死が見つかっていると記載されており、弱った個体や死骸に素手で触れない理由がここにあります。

対応は状況で分けます。

  • 見かけただけの場合:素手で触らない、ふん尿を素手で処理しない、マダニが付く草地に不用意に入らない、で十分です
  • 咬まれた・体液に触れた・マダニが付いた場合:洗浄のうえ医療機関を受診し、経緯を伝えてください

参考:Makouloutou et al. “Involvement of two genetic lineages of Sarcoptes scabiei mites in a local mange epizootic of wild mammals in Japan”(Journal of Wildlife Diseases 51巻1号、2015年)

参考:宮崎県の中型野生哺乳類におけるSFTSウイルス抗体調査

参考:動物におけるSFTSウイルス感染状況(国立感染症研究所 IASR、2016年3月)

参考:獣医療関係者のSFTS発症動物対策について(2026年)(国立健康危機管理研究機構)

参考:獣医療関係者のSFTS発症動物対策について(2025年バージョン2)(国立健康危機管理研究機構)

参考:レプトスピラ症の感染経路(国立健康危機管理研究機構)

5. 捕獲は違法?鳥獣保護管理法で許される行為と許可が必要な行為の境界

巣穴前のアナグマの写真と捕獲禁止マークを配し、アナグマを見つけたら捕獲は違法かを解説する図解で、鳥獣保護管理法の原則禁止、狩猟免許と登録や期間区域猟法の遵守、許可の必要性、罰則を三つのアイコンで示している

アナグマは狩猟鳥獣ですが、誰でも自由に捕まえてよい動物ではありません。

環境省の「狩猟制度の概要」では、狩猟鳥獣46種のうち獣類20種にアナグマが含まれています。

一方で狩猟には、猟法に対応した狩猟免許、都道府県への狩猟者登録、狩猟期間・区域・法定猟法の遵守が必要です。

東京都環境局の「野生鳥獣の捕獲について」(2026年8月更新)でも、野生鳥獣の捕獲は原則禁止で、例外は狩猟制度に基づく捕獲か法による許可を受けた場合に限られると整理されています。

参考:狩猟制度の概要(環境省)

参考:野生鳥獣の捕獲について(東京都環境局)

5−1. 自分でやってよい範囲|安全確保・記録と、捕獲・殺傷の境界

一般の目撃者が自分でやってよいのは、安全確保・状況記録・誘引物の管理・相談までです。

自分でできること原則として自分の判断で行わないこと
距離を取る、子どもや犬を離す箱わなや網を使って意図的に捕まえる(許可捕獲か適法な狩猟が必要)
写真・動画・日時・場所の記録捕まえた個体を運ぶ、処分する(許可や登録の条件に従う)
生ごみ・落果・置き餌の片付け別の目的のわなに誤って入った個体(錯誤捕獲)を自分で扱う
市区町村の窓口への相談出入口を封鎖して中の個体を閉じ込める

意図的な捕獲や殺傷は、鳥獣保護管理法第9条の許可を受けるか、狩猟免許と狩猟者登録を備えて期間・区域・猟法を守る適法な狩猟でなければ行えません。

ハクビシン用の貸し出しわななどにアナグマが入ってしまった錯誤捕獲の場合は、船橋市の例のように放す運用の自治体もありますが、扱いは貸し出し元の条件のほか、捕獲許可の内容や自治体の指示、鳥獣保護管理法上の取り扱いに従う必要があるため、触れずに自治体または許可権者へ連絡します。

捕獲を伴わない追い出しの考え方は、次の記事で扱っています。

関連記事:屋根裏の動物を自分で駆除したい!駆除と追い出し方法、関係法令などを解説

5−2. 無許可捕獲の罰則と、狩猟鳥獣でも免許・登録が必要な理由

鳥獣保護管理法第8条は、許可捕獲や適法な狩猟などを除いて野生鳥獣の捕獲・殺傷を禁止しています。

e-Gov法令検索で確認できる現行条文では、第83条が違反に対して1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めています。

環境省の「鳥獣の違法捕獲の防止」でも、許可や狩猟者登録なしの捕獲が処罰対象になると注意喚起されています。

アナグマ単独の検挙件数は、一般公開された全国統計では確認できず、件数の多少で危険度を判断することはできません。

狩猟鳥獣でも免許と登録が求められるのは、猟具の安全な扱い、錯誤捕獲の防止、捕獲数の管理を制度の枠内で行うためです。

参考:鳥獣保護管理法の条文(e-Gov法令検索)

参考:鳥獣の違法捕獲の防止(環境省)

6. 放置してよいケースと専門家へ相談すべきケース|被害の前兆チェックリスト

アナグマ 見つけたら様子見してよいケースと専門家へ相談すべき定着サインを左右に対比した図解で、中央に巣穴から顔を出すアナグマの写真、下部には穴をすぐ塞ぐ危険性と記録の重要性を示すチェックリスト

単発の目撃と、定着の兆候は分けて考えます。

相談を前に進める鍵は「実害の記録」であり、記録の有無で自治体や業者が動ける範囲が変わります。

6−1. 様子見してよい条件|安全距離を保て、実害・反復痕跡がない場合に限る

様子見してよいのは、次の3条件がそろう場合に限ります。

  • 通りがかりの1回の目撃で、その後に姿や痕跡がない
  • 庭・床下・物置周辺に新しい穴やふんがない
  • 人やペットに近づいてこない

「1回見ただけだから安全」と断定するのではなく、数日は痕跡を観察する期間と捉えてください。

例外として、けがをしている個体、人に異常に近づいてくる個体、昼間の徘徊が数日続く個体は、様子見ではなく相談対象です。

6−2. 相談すべき定着サイン|同じ侵入口の反復利用・床下出入り・ふん尿・悪臭・騒音

次の兆候のいずれかが複数日にわたって続く場合は、定着の可能性を考えて相談を検討してください。

  • 同じ開口部から複数日にわたって出入りしている
  • 床下や物置の下への出入りが続いている
  • 枯れ草などの巣材が穴の周りに集まっている
  • 同じ場所にためフンが増えている
  • 床下や外壁からふん尿の臭いがする
  • 夜間に床下で継続的な物音がする

この一覧は当協会が相談時に確認している項目で、定着を確定する生態学上・行政上の基準ではありません。

反対に、芝生の小穴・花壇の掘り返し・根の露出だけでは、2−2で触れた餌探しの通過とも考えられ、定着とは確定できません。

6−3. 庭や床下の穴をすぐ塞いではいけない理由|閉じ込めと掘り直しのリスク

穴を見つけてすぐ塞ぐと、中にいる成獣や幼獣を閉じ込めるおそれがあります。

東京都八王子市の「アライグマ・ハクビシンの被害について」では、建物の侵入口対策を「侵入口の確認(1か所とは限らない)」「動物の追い出し」「金網等での封鎖」の順に示しており、追い出したのちに塞ぐ順序が行政の案内でも前提になっています。

子育ての時期は親だけが外に出ている時間があり、在巣状況を確かめずに塞ぐと、床下で死んだ個体の臭いや虫が居室に及び、業者による床下作業が必要になるおそれがあります。

アナグマは前足の爪で穴を掘り、複数の出入口を持つ巣穴を作る動物であるため、入口だけを塞いでも掘り直される、あるいは別の出入口が残るおそれもあります。

さらに山梨県のカメラ調査が示すように、同じ穴をタヌキが使っていることもあり、塞ぐ前に「何が」「今いるか」を確かめる必要があります。

国内で閉じ込め事故の件数を示す統計はありませんが、安全上の順序として、出入りの確認、複数の出口の確認、不在確認、補修、再点検の順で進め、判断がつかなければ窓口へ相談してください。

関連記事:ハクビシンが穴を掘る時の対処法を解説!

参考:アライグマ・ハクビシンの被害について(八王子市)

参考:アナグマとタヌキが利用する巣穴付近における行動の違いと時間的ニッチ分化(哺乳類科学56巻2号、2016年)

6−4. 行政や業者に相談を進めやすくする「実害の記録」のとり方

記録は、日時・場所・写真・ふん尿の位置・壊された箇所の5点をそろえます。

東京都八王子市の市街地向け有害獣捕獲事業を例に見ると、対象となる動物や被害の種類が定められています。

対象となる被害には、ふん尿・臭気・騒音、建物破損や棲みつきなど、生活環境への実害が挙げられています。

多くの場合、職員の現地確認などを経て設置に進む仕組みで、目撃だけでは対象になりにくい点に注意が必要です。

他の自治体でも条件は異なりますが、被害の種類と発生日を示せる記録があれば、窓口が制度に当てはめて判断しやすくなります。

参考:八王子市の有害獣捕獲事業の条件

7. アナグマを見つけたときによくある質問

7−1. アナグマは害獣ですか?

法律上は狩猟鳥獣であり、「害獣」は法律上の分類ではなく一般用語です。

生活環境・農林水産業・生態系への被害が現に生じているか、そのおそれがあり防除だけでは防げない場合に、有害鳥獣捕獲の対象になり得ます。

目撃だけでは対象になるとは限らず、被害の記録が判断を分けます。

7−2. クマと見間違えることはありますか?通報は市役所と警察のどちら?

体高と尾は判断材料ですが、暗所や遠距離では確定できません。

人身被害が差し迫るなど緊急性が高い場合は、種の判断より先に110番し、同時に自治体の鳥獣担当部署へも連絡します。

緊急性がなくアナグマと判断でき、被害や反復出没がある場合は市区町村の窓口へ相談し、地域で決められた連絡ルールがあればそちらを優先してください。

7−3. 昼間に見かけましたが病気ですか?

昼間の出没だけで病気とは判断できません。

夜行性の傾向はあるものの、餌探しや子育ての時期には日中に動く個体もいます。

脱毛・ふらつき・人への異常な接近がある場合は、疥癬など健康上の問題が疑われるため、触れずに窓口へ相談してください。

7−4. 庭の穴をアナグマが掘ったか確かめる方法はありますか?

穴の形だけでは種を断定できないため、5本指の足跡・長い爪跡・柵下の掘削・複数の小穴のうち2つ以上を確認します。

足跡が残りにくい場所では、穴の入口に小麦粉を薄くまいて翌朝の足跡を見るか、自動撮影のカメラを向けると、指の数と反復利用の有無を同時に確かめられます。

尾の長さや低い歩き方が写った映像があれば、2−1の表と照らして絞り込みの精度が上がります。

集めた写真や映像は、そのまま6−4の「実害の記録」として相談時の資料に使えます。

8. アナグマの正体や対処に迷ったら専門窓口へ相談

一般社団法人日本有害鳥獣駆除・防除管理協会は、害獣に関する無料電話相談(0120-539-775、受付9:00〜18:00、平日・土日祝日対応、通話無料・匿名可)を運営しています。

アナグマについても、状況の整理や相談先の確認など初動の判断に関する相談を受け付けており、必要な場合は被害状況に応じた事業者を紹介します。

2025年度の相談件数は、当協会の相談受付記録の集計(2026年3月時点)で年間5,000件以上でしたが、害獣全般を対象とした数字であり、アナグマ限定ではありません。

対応地域は関東・近畿・中国・四国・九州の各府県と、中部地方のうち山梨県・長野県・愛知県・岐阜県・静岡県で、一部地域は対応範囲が限られます。

“害獣被害のホットライン”
一般社団法人 日本有害鳥獣駆除・防除管理協会
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9. まとめ|アナグマを見つけたら「近づかない・確認なしに塞がない・無許可で捕らない」で相談へ

見つけた後に確認・実行することを、順番に並べます。

  1. 距離を取り、子どもと犬を離し、餌を与えない
  2. 望遠で撮影し、体高・尾・毛色・場所・日時を控える
  3. 尾の縞と足跡の指の数で、アライグマ・タヌキと切り分ける
  4. 数日は穴・ふん・物音を観察し、6−2の兆候が続くか見る
  5. 穴は中の個体を確認する前に塞がない
  6. 箱わなは許可・免許・登録なしに置かない
  7. 被害や反復利用があれば、記録をそろえて市区町村の鳥獣担当窓口へ相談する

専門的な排除が済んだ後は、再侵入を防ぐために侵入口を適切に封鎖する工程まで含めて計画します。

種の判定や相談先の整理に迷う段階でも、当協会の窓口で状況を整理できます。

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