「夜中に屋根裏で何かが走り回る音がする…」と悩んでいませんか?
いま日本ではアライグマによる家屋への侵入被害が多発しています。
天井から聞こえる大きな物音はアライグマが原因かもしれません。
この記事ではアライグマが屋根裏に侵入する理由や侵入経路、発生する被害や退治方法などを解説します。
目次
アライグマはどんな動物?
アライグマは北アメリカ原産の中型哺乳類です。
「グマ」とついていますがクマの仲間ではなく、生物学上はイタチに近い動物とされています。
尻尾を含めた体長は約1メートル、体重は4キロ〜10キロほど。
体色は黒がかった灰色で、肉付きのよいぽっちゃり体型です。
タヌキと見間違えられることが多いですが、アライグマには「鼻からおでこへ伸びる黒い筋」「尻尾のしま模様」などの特徴があります。
もともとペット用に輸入されたため、かわいい見た目をしていますが、農作物や養殖魚を食い荒らしたり、民家の屋根裏に住みついたりする「害獣」です。
気性が荒く、人やペット、家畜が襲われて怪我をした事例もあります。
非常に高い繁殖力で生息数が急増しており「特定外来生物(※1)」として駆除の対象となっています。
(※1)特定外来生物:海外から日本に持ち込まれた生物のうち、生態系や人への有害性がとくに高い生物のこと。指定されると飼育や譲渡、売買などが禁止される。
アライグマが屋根裏にいる理由と侵入経路
自然の中で生きるアライグマが、なぜ屋根裏にいるのでしょうか。
アライグマが家屋へ侵入する理由と侵入経路を解説します。
すみかとエサを手に入れるため
屋根裏は外部と隔絶されていて雨風や寒さ、外敵から身を守るのに理想的な環境です。
そのためアライグマは屋根裏に入り込み、すみか(巣)として利用します。
アライグマは本来、森林地帯の樹洞(木にあいた穴)や岩場、他の動物が掘った穴などで生活します。
しかし樹洞も岩場も自然の産物のため数が限られます。
また地域によっては森林などの自然が少ない場合もあり、すみかを見つけられないアライグマも多数いるのです。
そのためアライグマは、住む場所を探して積極的に人里へ進出しました。
もともと好奇心旺盛で人を恐れない性格にくわえ、人間の近くにいた方がエサ(農作物や生ゴミなど)を手に入れやすいことも相まって、民家や寺社、廃屋、下水道などに住みつくようになったのです。
とくに1月〜3月はアライグマの繁殖期。
安全に出産・子育てをするため、屋根裏や床下へ住みつくケースが増えます。
侵入口は数センチのすき間
アライグマは床下や屋根周りのすき間から、屋根裏へ侵入します。
アライグマの体は猫のように柔らかく、大きさ「6センチ」のすき間があれば、体をペシャンコにつぶして通り抜けてしまいます。
とくに築40年以上の日本家屋は、構造や経年劣化の関係ですき間が多くなるため注意が必要です(※下写真を参照)。
上写真の引用元「ハウスプロテクト」は、このサイトを運営する「(一社)日本有害鳥獣駆除・防除管理協会」に所属の害獣駆除会社です。
屋根裏のアライグマが引き起こす3つの被害
アライグマが屋根裏に住みつくと、人の生活に悪影響をあたえます。
ここではアライグマがもたらす被害を3つ紹介します。
アライグマ被害1.「騒音で眠れない」
アライグマは夜行性で、深夜から早朝にかけて活発に活動します。
アライグマは家屋へ侵入する動物の中でも大型のため、走り回ると「人がいるのではないか?」と思うほど音が大きく、眠れなくなる人が多い傾向にあります。
また子どもが産まれると、子どもの鳴き声も響き渡るようになり、さらに騒音被害は大きくなります。
アライグマ被害2.「糞尿の悪臭」
アライグマには同じ場所で排泄する習性があり、屋根裏の1ヶ所にどんどん糞尿がたまります。
悪臭だけでなく、天井に雨漏りのようなシミができ、尿が水滴になって落ちてくることもあります。
屋根裏の「断熱材(※2)」も糞尿で汚れるため、交換が必要です。
(※2)断熱材:室内を暖かく保つため、屋根裏に設置する材料。綿(コットン)のような手触り。
またアライグマの糞尿には「アライグマ回虫」「レプトスピラ菌」という寄生虫と病原菌が含まれているため、糞尿や糞尿で汚染された天井には絶対に触れないようにしましょう。
アライグマ被害3.「ダニ・ノミの発生」
アライグマの体には、多数のダニやノミが付着しています。
数は個体によって異なりますが、300匹以上のダニやノミが寄生している場合もあります。
参考:埼玉県西部地域で捕獲された中型哺乳類の外部寄生虫調査
ダニやノミは繁殖力が高いため、ノミが家中に大発生したり、家族の虫刺されがひどくなったりするなどの被害が出ます。
上記3つ以外にも、北海道ではアライグマが壁を壊して部屋に入ってきた、神奈川県ではアライグマが天井を突き破って落ちてきたため住人が通報、警察が出動したなどの事例もあります。
アライグマの唾液には「狂犬病ウィルス」が含まれることもあり、噛まれるのは非常に危険です。
直に遭遇したり健康を害したりしないよう、侵入したアライグマは早めに退治しましょう。
屋根裏のアライグマを退治するには
アライグマ被害を起こさないためには、1日も早い対応が理想です。
しかしアライグマの捕獲や殺傷は法律で制限されており、意外にハードルが高いのが現実です。
ここではアライグマに関する法律と退治方法を3つ紹介します。
勝手に退治してはいけないアライグマ
アライグマなど「特定外来生物」に指定された動物は本来、誰でも自由に駆除(殺処分)が可能です。
しかしアライグマは特定外来生物でありながら「鳥獣保護管理法」という、野生鳥獣を保護する法律で守られており、被害を受けても勝手に駆除したり捕獲したりできません。
もちろん違反時には罰金などの罰則もあるため、個人の判断で捕まえたりするのはやめましょう。
アライグマを駆除・捕獲するには「狩猟免許(※3)」という免許を取得し、さらに地域の自治体から許可を得る必要があります。
(※3)狩猟免許:野生鳥獣(アライグマ、シカ、イノシシなど)を狩るのに必要な資格のこと。
屋根裏のアライグマを退治する3つの方法
法律で保護されたアライグマを退治するには、次の3つの方法があります。
- 駆除業者へ依頼する
- 嫌いなにおいで追い出す
- 市役所に相談する
次章から1つずつ解説します。
屋根裏のアライグマ対策1:駆除業者へ依頼する
アライグマ対策で最も確実なのは駆除業者へ依頼することです。
業者は「狩猟免許」を持ち、行政から許可を得て駆除するため、法律面の心配もありません。
ここではアライグマ駆除業者の作業内容や費用相場を解説します。
アライグマ駆除業者は何をしてくれる?
アライグマ駆除業者は次のような作業を行います。
- アライグマ捕獲、追い出し
- 侵入経路の封鎖
- 糞尿の清掃、消毒、消臭
- ノミ、ダニ駆除
- 糞尿で汚れた天井修理、断熱材交換
駆除にかかる時間は普通1〜3日。
長くても1週間ほどで完了しますが、アライグマの数や家の広さなどで変わります。
また多くの駆除業者がアライグマの再侵入防止に力を入れており、床下から屋根の上まで、出入口になる穴やすき間を念入りに塞ぎます。
侵入経路はプロでないと見つけられないことも多いため、業者に依頼するメリットの1つと言えるでしょう。
万一に備えた「再発保証」もつき、保証期間内(通常1~3年。家の状況により異なる)にアライグマ被害が再発した場合は無料で駆除を依頼できます。
アライグマ駆除費用の相場は?
アライグマ駆除費用は下記内容で「約30万円」が目安です。
- アライグマ捕獲、追い出し
- 侵入経路の封鎖
- 糞尿の清掃、消毒
- ノミ、ダニ駆除
- 再発保証
ただし金額は被害の程度や家の広さ、ふさぐすき間の数などで異なります。
現地調査と見積もりは無料で行う業者が多いため、依頼する前に必ず見積もりを取りましょう。
「Googleの口コミ」「施工事例の丁寧さ」などを参考に、候補を3〜4つ選んでから見積もりを取ると、業者選びに失敗しにくくなります。
屋根裏のアライグマ対策2:においや煙で追い出す
法律で保護されたアライグマですが、傷つけないように屋根裏から「追い出す」だけなら誰でも自由に行えます。
もちろん「狩猟免許」や「自治体の許可」は不要です。
アライグマは嗅覚が優れているため「強いにおい」が弱点となります。
ここでは、においでアライグマを追い出す方法を解説します。
アライグマが嫌いなにおいとは
アライグマが苦手なのは「トウガラシ、ワサビ、ハーブ、木酢液(※4)」などのにおいです。
これらは人にとってはいい香りでも、アライグマにとっては非常に不快な刺激臭となります。
(※4)木酢液(もくさくえき):木炭の製造時に出る煙を冷やして液体にしたもの。強いくん製の香りがする。
アライグマを追い出すには、トウガラシやワサビの成分が含まれた「忌避剤(※5)」を布に染み込ませたり、ペットボトルに入れたりして屋根裏に設置してください。
屋根裏への出入口はクローゼットや押し入れの天井に設けられています。
(※5)忌避剤(きひざい):動物避けに使われる薬剤。ホームセンターやネット通販で購入可能。
またアライグマなどの動物は本能的に「煙」を嫌うため「バルサン」などのくん煙剤も効果的です。
殺虫成分が気になる場合は、天然ハーブが主成分の「ネズミ用くん煙剤」を使ってみてください。
ハーブと煙のダブル効果でアライグマを撃退できます。
アライグマを追い出すときの注意点
くん煙剤は追い出しに効果的な一方、煙に驚いた母親が逃げてしまい、子どもが屋根裏に取り残される可能性もあります。
くん煙剤の使用後は屋根裏に子どもが残っていないか必ず確認しましょう。
また煙やにおいが効くかどうかは個体差があります。
とくに妊娠中や子育て中のアライグマは安全なすみかを手放したくないため、出ていかないケースも多いことを覚えておいてください。
追い出し成功後は、侵入口になるすき間を金網や金属板でふさぐ作業も必要です。
アライグマに光や超音波は効く?
「光」「超音波(※6)」によるアライグマ駆除機器も市販されていますが、動物の撃退効果は低いことが日本家畜管理学会などの実験で明らかになっています。
(※6)超音波:人間の耳には聞こえない非常に高い音のこと。
参考:ハクビシンおよびアライグマにおける純音に対する反応を指標とした可聴域の検証
参考:光照射はハクビシンに対して効果があるのか?
基本的に使用はおすすめできませんが、超音波駆除器を無料で貸し出す地域もあるため、効果を試したい場合は市役所へ問合せてみましょう。
屋根裏のアライグマ対策3:市役所に相談する
市役所では野生鳥獣(アライグマ、イタチ、ネズミなど)に関する悩みも相談可能です。
とくにアライグマは全国で被害が相次いでいるため、駆除や捕獲に協力的な市町村も増えています。
たとえば川崎市(神奈川県)では、市内居住者の自宅にアライグマが住みついた場合、専門業者を派遣して捕獲する行政サービスを実施中です。
出典:川崎市役所-よくある質問(FAQ)「家の中(屋根裏、床下、壁の隙間等)に野生動物(アライグマ、ハクビシンなど)がいます。駆除してください。」
本来は「狩猟免許」がないと捕獲や駆除ができないアライグマですが、鎌倉市(神奈川県)は屋根裏への住みつきで生活被害が出ている場合「狩猟免許なし」でも許可を出してくれます。
出典:鎌倉市役所-アライグマ・ハクビシン・タイワンリスの捕獲について
鎌倉市のような自治体はほかにもあり、許可を出す以外にも、職員による現地調査や捕獲罠の貸出し、捕獲したアライグマの引取りまですることも多く、非常に心強いといえるでしょう。
ただし糞尿の清掃や侵入口の封鎖などは個人負担となるため注意してください。
市町村ごとに対応の差が大きいのがデメリットですが、うまく利用すれば自力でアライグマ問題を解決できます。
一度地域の市役所へ相談してみてください。
まとめ|屋根裏のアライグマは放置せず素早く追い出すか駆除する
屋根裏のアライグマは騒音、悪臭、ダニやノミの発生など、日常生活や健康に被害を与えます。
アライグマが自分から出ていくことはないため、侵入に気づいたらすぐ対策しましょう。
なるべく費用をかけずに解決するなら、くん煙剤や忌避剤、行政サービスの利用がおすすめです。
うまく追い出せない、市役所に相談しても解決できない場合は駆除業者へ依頼してください。
住みついたアライグマの捕獲・追い出しだけでなく、徹底的な再発防止も行ってもらえます。
このサイト「害獣駆除ガイド」を運営する「(一社)日本有害鳥獣駆除・防除管理協会」でもアライグマ被害の相談を受け付けています。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
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