シロアリは、大切な住まいの土台や柱などの木材を食べる害虫であり、建物の強度や寿命を著しく低下させます。
基本的にシロアリ駆除はプロの業者に依頼したほうが安心といえますが、高額な費用が発生するため、自身でできる限り対処したいと考える方もいるかもしれません。
この記事では、シロアリの駆除を自身でおこなう方法についてご紹介します。
駆除に必要な道具や注意点、さらに予防方法についても解説しておりますので、シロアリの被害を危惧される方は本記事を参考に対処を講じてみてください。
目次
シロアリ駆除をおこなう前にやるべきこと
この章では、シロアリ駆除をおこなう前にやるべきことをご紹介します。
万全の準備を整えてから駆除を実施することで、効率よくかつ安全に対処できる可能性が高まるでしょう。
まずはシロアリの侵入を確認しよう
まずは、シロアリがどこに侵入しているのか?どのくらい繁殖しているのか?などを確認することから始めましょう。
点検の流れは、主に以下の通りです。
【室内・室外を確認する】
- 床がへこんでいたり、たわむ箇所はないか?
- 壁を叩いたときに空洞音はしないか?
- 家の周辺でスカスカになっている(シロアリに食われている)木材はないか? など
- 家の中や周囲に大量の羽アリ発生、もしくは大量の翅が落ちていないか?(特に4~6月ごろ) など
【床下を確認する】※かならず準備をしてから点検すること!
- 蟻道(土でできたような道)やシロアリに食われた柱などはないか?
- 床下が水漏れしていないか?(カビ臭い、床下の木材が濡れているなど)
シロアリの多くは床下に潜んでいるため、床下の点検は不可欠です。
ただし、床下の点検は手間だけでなく危険も伴うため「床下に潜りたくない」という場合は、自身での対処をあきらめてプロの業者へ依頼することをおすすめします。
業者に現地調査を依頼し、点検の際に写真や動画を撮ってきてもらえば、それを通して自身でも床下の状態が確認できます。
床下に入り込むために防護手段を整えよう
点検・駆除作業ともに床下に入り込む機会が多いため、自身で対処する場合は事前に防護手段を準備しておきましょう。
床下に潜るときに必要な道具(服装)は以下の通りです。
- 頭を保護するもの(帽子・タオル・ヘルメットなど)
- ヘッドライト(懐中電灯でも可)
- 防塵マスク
- つなぎ(上衣と下衣が一体になっている外衣)
- ゴム手袋
- 長靴 など
通常の戸建住宅の床下は、高さが数十cmくらいしかないため、匍匐前進での移動が基本となるでしょう。
また、床下は人の手入れが入らない不衛生な場所であり、土や砂だけでなく、ホコリやカビの胞子も待っています。
建物によっては、シロアリだけでなく別の害虫や害獣が潜んでいる可能性もあり、徹底した防護手段を用意して潜らなければいけません。
駆除に必要な薬剤の選び方
シロアリを駆除するには、駆除剤を準備しなければいけません。
この駆除剤には主に4つの種類があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
エアゾール | 粒剤 | 液剤・乳剤 | ベイト剤 | |
特徴 | 薬剤を霧状に散布するスプレータイプの駆除剤で、シロアリや木材に直接吹きかける。 | 粒や粉の形をした駆除剤であり、地面に撒く。 | 水で希釈して使用する駆除剤(すでに希釈済みのものもある)。 木材の内部へ注入・表面へ吹きかけたり、地面に撒く。 | 殺虫成分を含んだ餌を巣に持ち帰らせて一掃する。 シロアリがいそうな場所を見極め、ベイト剤が入ったケースを設置する。 |
メリット | 軽いので持ち運びが楽。 | 撒くだけでよいため作業が簡単。 | 木材に薬剤の成分が浸透しやすい。 | 設置作業自体は簡単。 |
デメリット | 木材の内部まで殺虫成分を行き渡らせるのが難しい。 | 木材の内部まで殺虫成分を行き渡らせるのが難しい。 | 希釈や注入・散布などに、別途機材を必要とする。 | 適切な設置場所が判別しづらい。 |
それぞれに使い方やメリット・デメリットが異なるため、自身に合ったものを購入し使用しましょう。
なお、エアゾールと粒剤は、木材の内部まで殺虫成分を行き渡らせることが難しく、すでに侵入しているシロアリの駆除には向いていません(駆除ではなく予防に向いている)。
また、製品に「予防用」「羽アリ向け」「ガーデニング用品向け」などと記載がある場合も、駆除には不向きなため、購入時はご注意ください。
自分でシロアリを駆除する際にかかる費用は?
自身でシロアリ駆除をおこなう場合、必要となるのは準備物にかける費用だけです。
業者に依頼した場合は作業費込みで数万円~数十万円かかる可能性がありますが、自身で対処する場合はうまくいけば大幅に費用を抑えることができるかもしれません。
ただし、シロアリ駆除をおこなったことがない人の場合、必要な道具を揃えるだけでも数万円単位のお金がかかる場合があります。
防護手段や薬剤、液剤・乳剤を利用する場合は木材の内部に注入するために木工用ドリル・噴霧器・ノズルも準備しなければいけません。
また、不慣れな人ほど駆除がうまくいかずに、返って被害を拡大させる原因にもつながるでしょう。
「自分で対処したもののうまくいかず、結局業者に依頼することになった」となれば、余計に駆除費用が高額となってしまいます。
シロアリ駆除は素人でもおこなえるもののリスクを伴う作業のため、少しでも不安がある場合はプロへ依頼することをおすすめします。
自身でシロアリを駆除する方法
本章では「自分でシロアリを駆除したい!」という方のために、具体的な作業方法をご紹介します。
作業方法には主に「ベイト工法」と「バリア工法」の2つがあり、それぞれで特徴が異なります。
- ベイト工法:安全性と手軽さを求める方におすすめ(ただし、即効性はない)
- バリア工法:即効性を求める方におすすめ(ただし、手間がかかる)
それぞれの詳細を順に解説していきましょう。
ベイト工法とは?
ベイト工法とは、シロアリを死滅させるベイト剤が入った「ステーション」と呼ばれる器具を地面に埋める工法のことです。
器具を地面に埋めるだけなので設置がしやすく、建物に穴を開ける必要もないため、建物の構造に関わらずどんな物件にも施工できます。
(コンクリート面に設置する際は、掘削機を必要とする)
また、薬剤を木材に注入したりばら撒くこともしないので、人や環境にやさしいという点もメリットに挙げられるでしょう。
ベイト工法の流れは、以下の通りです。
- ベイト剤を蟻道に設置する
- 設置後1・2ヶ月を目安に、ベイト剤の減り具合を観察する
- 半年近くシロアリが確認できない場合は、設置場所を変更する
- 生きたシロアリが確認できなくなったら駆除終了
注意点としては、上記の通り駆除に数ヶ月を要することから、バリア工法に比べて即効性はありません。
シロアリの巣も一箇所だけとは限らないため、巣の数が多いほど駆除にかかる時間は長くなるでしょう。
また、駆除が完了するまで何度も薬剤を入れ替えるため費用が割高になり、ベイト工法自体に予防効果はないことから別途散布消毒も必要となります。
バリア工法とは?
バリア工法とは、対象箇所(床下・建物基礎・木材など)に噴霧器を使って薬剤を吹き付ける散布消毒のことをいいます。
薬剤を直接散布するため、ベイト工法に比べて即効性や持続性に優れていることが特徴です。
また、蟻道などシロアリの侵入経路に散布するため、予防効果も期待できるでしょう。
バリア工法の流れは、以下の通りです。
- 蟻害箇所を中心に、直径4mm程の穴を開けて薬剤を注入する(穿孔消毒)
- 床下基礎・束柱・根太などの木部の表面に、薬剤をムラなく散布する
- 土壌に対して、散布機を使って薬剤を全面に散布する
- 蟻道などは、薬剤散布後に取り除いて破棄する
なお、穿孔消毒で穴を開けた後は、木栓やパテで塞いでください。
シロアリの被害は、水回りや玄関付近が多く、他にも水漏れ箇所や基礎コンクリートのひび割れ箇所周辺にも集まりやすいため、こういった部分を中心に薬剤処理をするとよいでしょう。
このように、シロアリ被害を見ながら正確に対処できるのも、バリア工法のメリットといえます。
ただし、以下のデメリットにも注意しておきましょう。
- 建物に穴を開ける必要がある
- 薬剤を大量に撒くため、養生を必要とする(健康被害にも注意)
- 薬剤の散布ムラがあると駆除効果が落ちる
- 床下高が低い場合は施行できない
- 蟻道や蟻害を見極める必要があり、素人には難しい など
ある程度の手間と経験を必要とするため、ベイト工法よりも慣れるのに時間はかかるかもしれません。
健康被害については、近年の薬剤は安全性が高いものが多いものの、経験のない方が散布するには取り扱いに注意が必要となるため、化学物質過敏症などの不安がある方はベイト工法での駆除をおすすめします。
床下へはどうやって入ればいいの?
床下は、普段の生活のなかで滅多に立ち入ることのない場所です。
もし、シロアリの駆除などで床下に入りたい場合は、どのように侵入すればよいのでしょうか。
この章では、床下への侵入方法について解説します。
入り方①:点検口や収納庫から入る
住宅によっては「床下点検口」(点検口と表記されることもある)もしくは「収納庫」から床下に入ることができます。
点検口はキッチンや洗面所に設置していることが多く、もっとも基本的な床下への入り方となるでしょう。
収納庫がある場合は、ボックスを外すことで入ることができます。
ただし、収納庫に物がたくさん入った状態でボックスを外そうとすると破損する恐れがあるため、中のものを取り出してから外すようにしましょう。
一部の住宅では、点検口がクローゼットや階段下に設置されていることもあります。
お住いの家によって詳細は異なるため、事前に点検口・収納庫の設置場所を確認しておくとよいでしょう。
入り方②:屋外の通風口(通気口)から入る
建物によっては、屋外にある通風口から床下に入れる可能性があります。
通常の通風口は狭いため人が通ることができませんが、一箇所だけ人が通れる程度の大きさに作られていることがあります。
ただし通風口を通して侵入した場合、作業後に入り口を封鎖しておかないと、害獣に浸入される恐れがあるため注意しておきましょう。
入り方③:和室の畳下から入る
もし、1階に和室(畳部屋)があった場合は、畳下の板を切って床下に入ることも可能です。
和室の畳を上げると「下地材」と呼ばれる木の板があり、この下地材には一定間隔で黒い点のようなものが確認できます。
これは、下地材とその下にある根太という部材を止めるための釘であり、この釘の真下に根太が入っています。
この根太の釘に沿うように切断すれば、床下に通じる穴を開けることができるでしょう。
作業後は、切断した下地材を再度はめ込めば元に戻すことができます。
ただし、切断作業は市販の工具を用いて自力でおこなえるものの、点検口を綺麗に切断できない・後から修復が必要となる可能性があるなど、素人にはあまりおすすめできない方法といえます。
入り方④:点検口を新規に設置する
もし、上記の侵入手段が一切ない場合は、最後の手段として点検口を新規に設置することもできます。
点検口を新規に設置する場合、お住いの建物の好きな場所に作ることができますが、床下の点検は定期的におこなう必要があるため点検口の真上に物を置かないで済む場所に設置することが重要です。
ただし、新規に点検口を作るのは素人には至難の業であり、業者に依頼しても3~5万円ほどの費用が発生します。
ここまでくると自力でシロアリを駆除することは難しいため、点検口の設置も含め、プロの業者へ相談したほうがよいといえるでしょう。
シロアリ駆除を自身でおこなう際の注意点
シロアリ駆除を自身でおこなう際は、以下の点に注意しておきましょう。
床下への侵入はかならず2人以上でおこなうこと
床下での作業は危険を伴うため、かならず2人以上での作業を推奨します。
一人が床下に侵入し、一人が床上で待機することで、万が一問題が発生した際にもすぐに床下へ潜り込んだ人を助けることができます。
念のため、床下に入り込む人はスマホを携帯し、なにかあってもすぐに連絡が取れるようにしておきましょう。
思わぬ怪我に要注意
シロアリが巣食っているいる箇所の多くは、普段人が立ち入ることがない床下や屋根裏が多いでしょう。
シロアリ以外の害虫や害獣がいる可能性があることに加え、狭い場所で匍匐など普段はしない体勢で作業をすることが多くなるため、体への負担が大きく・慣れていないと思わぬ怪我をする可能性があります。
また、害虫が自身めがけて飛んでくる・害獣が襲い掛かってくるなど、精神的にもストレスを感じる可能性があるため、無理はしないほうがよいといえます。
自身でシロアリ駆除をおこなう場合は「なんとかなるだろう」と安易に考えず、防護手段を事前に準備し、万全の状態で臨むようにしましょう。
お子さんやペットに要注意
特に、対象箇所に薬剤を注入するバリア工法をおこなう場合、小さなお子さんやペットがいるご家庭は注意しておきましょう。
薬剤を使うのは床下であっても、処理をしてからしばらくは建物内(特に1階)で臭いが残ることもあるため、健康被害などに注意が必要です。
また、殺虫成分が床下点検口から室内に入ったり、庭の池や井戸水に流れこんだりする可能性もあります。
駆除剤そのものを誤飲する危険性もあるため、処理だけでなく保管にも注意が必要といえるでしょう。
薬剤は既定の量を使用すること
薬剤を使用する際は、説明や注意書きをよく読み、用法・用量を守って正しく使用しましょう。
薬剤の量が少ないと予防・駆除の効果が十分に得られない可能性がありますし、逆に多すぎても健康被害や環境への負荷に繋がってしまいます。
1度作業して終了…ではない
シロアリの駆除は、一度実施して終了…ではありません。
薬剤の効果は徐々に薄まっていくため、使用する薬剤に応じて適度に散布し続ける必要があります。
また「駆除」だけでなく「予防」も同時におこなわなくてはいずれ被害は再発してしまうため、防蟻処理(換気対策・調湿対策・木材保存など)も重要です。
再発を防止するためにやるべきこと
シロアリを駆除しただけではいずれ再発する恐れがあるため、常日頃からシロアリに浸入されない環境を作ることが重要です。
本章にて、シロアリ被害を防ぐためにやるべきことをご紹介します。
家の周りに廃材や古紙を置かない
家の周りには、廃材や古紙などを置かないよう注意しておきましょう。
廃材やダンボールなどの古紙が雨などで濡れて湿ると、シロアリがエサを求めて寄ってくる恐れがあります。
シロアリに狙われないためにも、エサとなり得るものを置かないことが重要です。
家に水を入れない
シロアリは、湿った木材を好物とするため、家に水を入れないよう適度にメンテナンスすることが重要です。
外壁・屋根をコーティングしている塗装が紫外線などで劣化すると、防水効果が無くなり、雨が降った時に雨水を吸収してしまいます。
そのため、外壁や屋根の劣化状況に応じて、再塗装をおこなわなくてはいけません。
もし塗装しないまま放っておけば、外壁の裏側の防水紙や木材にまで水が回って雨漏りし、シロアリ発生の原因となるでしょう。
定期的に床下の点検をする
シロアリの駆除・予防を実施した後も、定期的に床下を点検しましょう。
シロアリが発生したことがあれば1年ごと、予防もしくはプロに駆除してもらった後だと5年ほどを目安に点検しておくと安心です。
床下は、シロアリ以外の害虫や害獣が侵入する可能性があり、それ以外でも配管や基礎の状態なども点検時に確認できるため、家の耐久性を把握するうえでも定期点検が重要といえます。
シロアリ駆除はプロへの依頼がおすすめ!
シロアリの防除は、確かに市販の対策グッズを使えば誰にでもおこなうことができます。
しかし、中途半端な対策では被害が拡大する恐れがあるため「すでにシロアリの被害に遭っている」という方は、被害が甚大となる前にプロの業者へ相談することをおすすめします。
プロへ依頼すれば、建物の周辺に潜むシロアリを徹底的に駆除してくれるだけでなく、被害の再発も防いでくれるでしょう。
万が一被害が再発しても、保証があれば迅速に対処してもらえます。
ただし、業者によって防除にかかる費用やサービス内容は異なるため、複数社に見積もりを取って、より自身が安心・納得できる業者を選ぶことが重要です。
「予防」は自分で、「駆除」は業者に…など、置かれている状況に応じて使い分けていくのがよいでしょう。
まとめ
シロアリの駆除は、確かに市販の対策グッズを使えば素人でもおこなえます。
しかし、不慣れな人ほど手間とリスクが発生し、せっかく対処したのに何の効果も得られず、むしろ被害が拡大してしまう恐れもあるため注意が必要です。
自身で対処する場合も「どこまで自身で対処するか?」というラインをある程度決めておき、そのラインを越えたら即座にプロの業者へ駆除を依頼するのが得策といえるでしょう。
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