記事の概要
皆さんはダニについて、どれだけの事を知っていますか?
頻繁に耳にする名前で、実際に私たちの身近に存在する生き物ですが、いかんせん小さな存在なので実感を持って認識しづらいですよね。
しかし、ダニは古今東西で様々な感染症・アレルギーなどの原因になってきた生き物なので、たかが小さな虫と侮ってはいけません。
そこで、このコラムを通して皆さんにダニについての知識を持っていただき、ダニ被害の予防・対策を行うための危機意識を身に付けて頂きたいと思います!
この前、何だかお腹が痒いな…って思ってた見たら、赤い斑点?みたいな跡ができていたのよ。
夏だったから蚊だとせいだと思って、蚊取り線香とか焚いてみても、また刺されるの!
もしかしてダニなんじゃないか…って考えてるんだけど?
ダニと蚊の症状はとても似ているため、判別は一筋縄ではいきませんが、一般的に蚊は顔や手足を刺すことが多く、ダニは脇や下腹部、股の辺りを噛むことが多いとされています。
蚊対策をした上で、お腹で発疹の症状が見られるのなら、ダニの可能性が高いかもしれません。
基礎情報
形態
ダニ類は、鋏角(ハサミ型の口)と触肢(触覚のような器官)、歩脚(足)などを持つ前体と、付属肢(足や感覚器官)を持たない後体という2つの合体節からなる節足動物です。
前体は頭胸部と腹部に分かれており、腹部には歩脚が4対づつあり、後体は脚体部、前胴体部、中胴体部、後胴体部の4つの部分からなります。
ダニ類の形態は非常に多様であり、小型から大型までさまざまな種類が存在します。また、歩脚や鋏角などの付属肢も種類や種類によって大きく異なります。
例えば、マダニ類は吸血時にに鋏角が針状に肥大化し、イトダニ類は鋏角が4節に分かれています。
生態
ダニは世界中に約4万5千種存在すると言われており、高山から低地・乾乾燥地から湿地・土壌中・水中・家屋内や貯貯蔵食品内等の人工的な環境、さらには植物や動物の体組織中といった様々な環境に適応して生息しています。
一般的に体が小さいことから、様々な微環境に応じてそれぞれ異なる種が棲み分けており、局所的にのみ生息している種も多くいます。
また、ダニ類の生活史も種類や環境によって異なります。
単純な寄生性を持つものから高度な社会性を持つものまで存在し、例えばハダニ類は人間や動物を吸血することで栄養を得ますが、一方でミミズダニ類は他のダニと共生することで互いに利益を得る生存戦略を取ります。
種類
トリサシダニ
トリサシダニは、その名の通り鳥(ハトや屋外飼育のニワトリなど)の皮膚や羽毛に住み着く吸血寄生虫です。
トリサシダニは寄生した鳥の体で一生を過ごします。
ニワトリなどが寄生された場合は、ニワトリ自身が体を自主的に清潔にできる環境を整えるとともに、増えたトリサシダニを見付けたら飼い主が駆除してあげるなどしましょう。
ツメダニ
ツメダニは、体長約0.3~1mmで、ヒョウダニやコナダニといった他のダニをエサにして生息するダニです。
吸血する習性は持っていませんが、間違って人を刺して体液を吸うことが稀にあります。
刺されると、直後には自覚症状がないものの、刺された翌日かそれ以降に痒みや赤い腫れが出て、その後しつこいかゆみが1週間ほど続くのが特徴です。
イエダニ
イエダニは6~9月頃に多く見られ、主にネズミ(特にクマネズミ)や人に寄生・吸血するダニです。
寄生しているネズミが死ぬと、新たな寄生先を求めて人を吸血する習性があり、これが原因で皮膚炎を発症する可能性があります。
刺さ腹部や太ももから吸血される事が多く、刺されると、赤く腫れて水ぶくれのようになり、かなりの痒みを引き起こします。痒みは1週間~1か月ほど続く場合があります。
ツツガムシ
ツツガムシは体長0.2~0.3mmで、赤色やオレンジ色をしています。
ツツガムシの幼虫は野ネズミの耳などに寄生し、孵化したあと一生に一度だけ哺乳類などの皮膚に吸着して組織液や皮膚組織のの崩壊物などを吸収します。
成虫になってからは血を吸わず、もっぱら昆虫の卵などを食べます。
刺されると患部に黒い点が残り、発熱や頭痛、リンパ節の腫れなどの症状を出すほか、ツツガムシ病に感染する危険があります。
マダニ
マダニは草の上などの野外に生息し、近くを通った動物に取り付き血を吸います。
無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残ってしまい、炎症を起こすことがあります。
マダニに噛まれると、重症熱性血小板減少症候群という感染症にかかる可能性があり、これは発熱や意識障害、嘔吐や下痢、皮下出血などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至る怖い病気です。
チリダニ
チリダニは、屋内に生息する屋内塵性ダニ類の一種で、別名ヒョウヒダニとも呼ばれます。
ほぼ年間を通して見られるダニで、人などの表皮を好みます。
チリダニは汗やフケ・アカが1gあれば、およそ300匹生息できるとされ、人を刺したり吸血することはありませんが、大発生するとチリダニを捕食するツメダニが増殖し、そのツメダニによる刺咬被害が出ることがあります。
発生条件
多くのダニは高温多湿な環境を好み、人やペットのフケやアカなどをエサとしています。
こうした条件を満たし、家庭内でダニが発生しやすい場所は以下のような所になります。
場所
衣服
常に肌に密着した状態の衣服はダニのエサとなるフケやアカが付着しやすい場所です。
毎日洗濯していれば問題にはなりませんが、洗濯を怠ったり長期間収納しておくと、その間にダニが繁殖する可能性が高くなります。
また、山や森、薮や草むらなどにはマダニが多く生息しており、知らず知らずのうちにダニを衣服に付着させたまま、帰宅してしまう事も考えられます。
布団
人は寝ている間にコップ一杯分の汗をかくとされており、寝ている間は体温も上がりやすい事などから、布団はダニが発生しやすい高温多湿な場所になります。
また、一日に7時間程度も肌に密着している布団は、ダニのエサとなる人間の皮脂やアカが継続的に多く供給されるので、ダニにとっては快適な環境と言えるでしょう。
絨毯
絨毯はほこりや食べカスなどのダニのエサがたまりやすく、湿気もこもりやすいため、ダニが発生しやすい場所です。
毛の長い絨毯の奥に入り込んだアカ、皮脂、食べカスはこまめに掃除をしていても除去することが難しく、また、ダニ自身にとっても、絨毯の繊維にしがみ付くことで掃除機の吸引力から身を守りやすい場所になっています。
ソファ
ソファは人が座ったり寝たりすることで、ダニのエサとなるフケやアカが付着しやすく、湿気もこもりやすい場所です。
ソファの上でお菓子などを食べるケースもあり、衣服や布団と違って洗濯が出来ないので、意外にもダニの巣窟になりがちです。
革製のものよりもフケやホコリ、食べカスなどが付着しやすい布地のソファには特に注意が必要です。
車
車は人が乗ったり荷物を積んだりすることで、ダニのエサとなるフケやアカが付着しやすく、また、ソファ同様に食事を摂る機会も多い場所です。
定期的に掃除していても、座席の隙間に入り込んだダニを除去するのは非常に困難です。
まとめ
ダニが発生しやすい時期は、6月から9月の暑くて湿っぽい季節です。
特に梅雨の時期は換気がしづらく、ダニの大量発生に注意が必要ですが、冬場でも暖房を使って室内が温かくなると、ダニが発生する可能性があります。
人間の肌が触れるところには大体いるのね…。
私が噛まれたのはベッドの上で寝てた時かもしれないわ。
洗濯したり、天日干ししたりして、綺麗にしてたつもりだったんだけど…。
人間との関わり
農業
寄生した植物の細胞を食べるダニの一種のハダニ類は、農作物に大きな被害を与えることがあります。
ハダニ類は植物の上に網を張って住み、植物の葉に傷をつけて変色させたり、株ごと枯らしたりする厄介な存在ですが、一方で農薬に対して耐性を持っていることから駆除するのが難しいという面もあります。
そこで、ハダニ類をエサとする天敵のカブリダニ類などのダニを農地にばら撒き、自然の農薬として使用することがあります。
他にも、土の中に住むダニ類は、土の質を良くしたり、有機物を分解したりするなど、ダニは人間にとって直接的に役に立つことは少ないですが、間接的に自然のバランスを保つのに重要な役割を果たしているのです。
感染症
ダニは多くの感染症の媒介者となることが知られており、歴史上にはダニによって世界的な感染症の流行が起こった例もあります。
以下に9つの実例を挙げて、それぞれの特徴や影響について説明します。
回帰熱
回帰熱は、ボレリア属のスピロヘータ菌によって引き起こされる感染症で、ダニやシラミによって媒介されます。
感染すると発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐などの症状が3~5日間続き、回復したように見える期間を挟んで同様の発熱を繰り返すのが特徴です。
回帰熱は中世から近代にかけてヨーロッパやアフリカで大流行し、数百万人の死者を出しました。
現在でもアフリカやアジアの一部地域で発生しています。
Q熱
Q熱は、コクシエラ属の細菌が原因となる人獣共通感染症です。
主な症状は、高熱や頭痛、悪心、倦怠感、筋肉痛などのインフルエンザのようなもので、多くの場合は7~10日程度で自然に治癒しますが、一部の人では重篤化したり、場合によっては死に至ることもあります。
また、一度でも重症化すると、完治しても何らかの後遺症が残ることがあります。
日本においても年間30例程度のヒトの症例報告があるので、身近な脅威と言えるでしょう。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSは、SFTSウイルスによって引き起こされる感染症で、マダニによって媒介されます。
感染すると発熱、嘔吐、下痢、出血などの症状が現れ、重症化すると多臓器不全や死に至ることがあります。
SFTSは2009年に中国で初めて報告され、その後日本や韓国でも発生した比較的新しい感染症であり、有効なワクチンや治療法はありません。
ダニ媒介脳炎
ダニ媒介脳炎は、ダニによって媒介されるダニ媒介脳炎ウイルスによって引き起こされる感染症です。
感染すると発熱、頭痛、嘔吐などの症状が現れ、一部の患者では髄膜炎や脳炎を起こします。
ダニ媒介脳炎はヨーロッパやアジアの一部地域で流行しており、重症化すると死亡率が高くなりますが、ワクチンの普及がまだ進んでいません。
ライム病
ライム病は、ボレリア・ブルグドルフェリと呼ばれる細菌によって引き起こされる感染症で、ダニによって媒介されます。
感染すると発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状が現れ、刺咬部位に特徴的な円形の発疹が出ることがあります。
ライム病は早期に治療すれば完治することが多いですが、放置すると神経系や心臓、関節などに合併症を引き起こすことがあります。
1970年代以降、北アメリカやヨーロッパの一部地域で流行しています。
日本紅斑熱
日本紅斑熱は、リケッチア・ジャポニカによって引き起こされる感染症で、ダニによって媒介されます。
感染すると発熱、頭痛、筋肉痛、発疹などの症状を引き起こします。
日本紅斑熱は日本や中国の一部地域で流行しており、国内では年間200件以上の感染報告があります。
有効なワクチンはありませんが、代わりに抗生物質で治療することができます。
オズウイルスによる心筋炎
オズウイルスによる心筋炎は、オズウイルスによって引き起こされる感染症で、ダニによって媒介されます。
発熱や倦怠感などの症状が現れ、酷い場合は心筋炎を起こすことがあります。
オズウイルスによる心筋炎は2023年に日本で初めて報告された新しい感染症であり、有効なワクチンや治療法はありません。
ダニって恐ろしい病気をいっぱい持ってるのね…。
確かに、ニュースでもダニに噛まれた人が亡くなったって報道されてたわ。
それに、ダニって意外と目に見えるくらいの大きさなのよね。
そう考えると、体に付いてるだけでも気持ち悪いわ!
ダニによる害虫被害
ダニは身の回りのあらゆる環境に生息し、吸血の際に様々な感染症を媒介する危険性を持つほか、ダニ自体がアレルギーの原因にもなり得ます。
そこで、ダニによる害虫被害を感染症とアレルギーの2つに分けて解説します。
ダニに刺されることで起こる被害
ダニに刺されることで起こる被害は、ダニの種類によって異なりますが、一般的には以下のような症状が現れます。
- 刺された部位が赤く腫れてかゆみを感じる
- 刺された部位に水ぶくれやびらん(皮膚や粘膜の表面の細胞がはがれた状態)ができる
- 刺された部位に紫斑や皮下出血ができる
- 刺された部位に炎症や感染が起こる
- 刺された部位に発疹や発熱が起こる
- 刺された部位に激しい痛みやしびれを感じる
- 刺された部位に壊死や潰瘍ができる
ダニに刺されることで起こる被害の中でも、特に注意が必要なのは、ダニが媒介する感染症です。
ダニが感染した病原体を人間に移すことで、重篤な病気にかかることがあります。
吸血中のマダニを無理に引き抜こうとすると、頭部が皮膚に残って炎症を起こすことがあります。
引き抜く際は、先の尖ったピンセットなどでマダニの口器の部分を摘んで、ゆっくり引き抜くことようにしてください。
また、マダニの体液成分が皮膚内に流入すると感染症のリスクが高まるので、腹部を指で摘ままないでください。
ダニの死骸やフンを吸い込むことで起こる被害
ダニの死骸やフンを吸い込むことで、ダニの体や排泄物に含まれるタンパク質に対するアレルギー反応が起こる危険も考えられます。
ホコリや布団、カーペットなどに混じったダニの死骸やフンは、小さな空気の流れによって浮遊し、呼吸器や皮膚に触れることで様々なアレルギー反応を引き起こします。
ダニの死骸やフンを吸い込むことで起こる被害の例としては、以下のようなものがあります。
- アレルギー性鼻炎:くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が現れる。
- アレルギー性結膜炎:目のかゆみや充血、涙などの症状が現れる。
- アトピー性皮膚炎:皮膚のかゆみや赤み、湿疹などの症状が現れる。
- 喘息:咳や呼吸困難、ぜいぜいするなどの症状が現れる。
ペットへの被害
ダニは人間だけでなく、犬や猫などのペットの体にも寄生して、様々な症状や病気を引き起こす危険も孕んでいます。
犬に寄生するダニ
- マダニ
- イヌセンコウヒゼンダニ
- イヌミミヒゼンダニ
- ニキビダニ
猫に寄生するダニ
- マダニ
- ヒゼンダニ
- ミミヒゼンダニ
- ツメダニ
特にマダニは人間にも感染する危険性が高く、感染症のリスクも高いので要注意です。
マダニは、ペットの毛や皮膚から吸血することでエネルギーを獲得し、吸血した後は卵を産み付けて自分の体内で孵化させます。
この過程でマダニはペットの体に傷をつけたり、免疫力を低下させたりし、マダニの卵や幼虫がペットの体内で増殖すると、貧血や皮膚炎などの症状を引き起こすことがあります。
マダニによってペットに引き起こされる病気には以下のようなものがあります。
- マダニ媒介性貧血:マダニが赤血球を壊して貧血を起こす病気です。小型犬や小型猫に多く見られます。
- マダニ媒介性皮膚炎:マダニが皮膚に刺激物質を分泌して皮膚炎を起こす病気です。発赤やかゆみなどの皮膚トラブルが見られます。
- マダニ媒介性神経障害:マダニが神経系に影響を与えて神経障害を起こす病気です。頭部や四肢の筋肉のけいれんや麻痺などの神経系トラブルが見られます。
- バベシア原虫感染:バベシア原虫に感染したダニが赤血球に寄生して貧血や黄疸などを引き起こす感染症です。特に小型犬や小型猫に多く見られます。
- ヘモプラズマ感染:ヘモプラズマという寄生虫がリンパ節や心臓などに寄生して出血や心不全などを引き起こす感染症です。特に小型動物(ネコ)に多く見られます。
ウチは犬と猫を両方飼ってるから、余計に心配ね…。
まとめて駆除してしまいたいけど、自分でやるとなると大変だわ。
業者に頼んだら、いくらぐらい掛かるのかしら…?
効率や効果を重視するなら専門業者に依頼するのがオススメです!
相場は一部屋あたり大体2万5千円ほどですが、時間を買うと考えれば決して高い買い物ではないでしょう。
〆の言葉
今回はこれで以上となります!
小さな体に大きな脅威を秘めたダニという存在について、少しでも理解が深まったでしょうか?
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