野生動物は日本全国のどこにでも生息しており、なかには人の生活圏に侵入しさまざまな被害をもたらす害獣も存在します。
近年は、エサや棲み処をなくした野生動物が人里へ下りてくるケースも増加しており、その害獣被害は深刻です。
本記事では、青森に生息する害獣についてご紹介します。
害獣の種類や特徴・効果的な対処法まで解説しておりますので、害獣の被害を危惧される方や被害にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
青森とはどんな地域?
本章では、青森の気候や土地環境、生息する主な動物についてご紹介します。
自然あふれる青森県の特徴を理解することから初めてみましょう。
青森の気候や土地環境
青森県は、本州の最北端に位置しており、秋田県・岩手県と隣り合った地域です。
東に太平洋・西は日本海・北が津軽海峡と3方が海に面しており、同じ青森でも東と西とでは気候が大きく異なることが特徴に挙げられます。
たとえば、冬は湿った空気が山脈にぶつかり、日本海側に雪を降らせますが、夏は「ヤマセ」と呼ばれる冷たい北東風が吹き、太平洋側では低温の日が続くことがあるようです。
自然豊かな土地であることと季節の移り変わり目がはっきりしていることから、四季折々の風景を楽しめることも特徴といえるでしょう。
なお、青森県の面積は9,645.59平方メートルで全国第8位の広さ(東京・千葉・神奈川を合わせた広さとほぼ同じ)となっており、県の面積の約65%が森林です。
全国有数の農業産出県であり、農作物を育てている農家にとって害獣の被害は軽視できない問題といえるでしょう。
青森にいる動物の生態系
自然豊かな青森には、さまざまな野生動物が生息しています。
たとえば、青森県と秋田県にまたがる山岳地帯である「白神山地」は、総面積が約13万ヘクタールにおよび、その一帯に東アジア最大のブナの原生的な森が広がっています。
この白神山地には、特別天然記念物に指定されているニホンカモシカやツキノワグマといった中・大型の哺乳類、国の天然記念物に指定されている希少なクマゲラ・イヌワシといったさまざまな動物が生息し豊かな生態系を作っているのです。
それ以外の場所でもさまざまな動物が生息しており、なかにはイノシシ・ニホンザル・アライグマ・ハクビシン・アナグマといった動物がエサや棲み処を求めて人里へ下り、人々の生活に悪影響をおよぼすケースもあります。
これらの野生動物による害獣被害の相談件数が増加していることも事実であり、その問題を解決するための施策が青森県でも打ち出されています。
青森で注意すべき害獣の種類と特徴
青森県青森市では「青森市鳥獣被害防止計画」を計画・実施しています。
参考:青森市鳥獣被害防止計画
農作物への被害や人身被害などが多発している問題を解決するために打ち出されたものであり、計画期間を令和6年度~令和8年度に、対象地域を青森市に設定し被害防止の注意喚起や対策を講じていくようです。
本章では、この青森市鳥獣被害防止計画の対象となっている鳥獣の特徴をご紹介します。
ニホンザル
ニホンザルは、日本人の暮らしに古くより深い関りをもつ動物です。
さまざまな物語に登場したり、守り神のように信仰されたり…。
しかし、ニホンザルによる被害も拡大しているのが現状であり、その対策が各地で実施されています。
ニホンザルの特徴
ニホンザルは、哺乳綱霊長目オナガザル科マカク属に分類される霊長類であり、日本(本州・四国・九州)の常緑広葉樹林や落葉広葉樹林に生息しています。
東北地方や中部地方の山岳部にいるニホンザルは体毛が長く蜜に覆われており、西日本のニホンザルよりも大きくなる傾向にあるようです。
体長はオスが0.5〜0.6m・メスは0.4〜0.5mほどであり、主に果実を好み、植物の葉・花・種子・キノコ・卵・昆虫なども食べる雑食性です。
ニホンザルは他の動物に比べて人間に近い感情をもっていると考えられており、頭がよく・表情も非常に豊かです。
ただし、自分の感情に従って行動することが多いため、個体によっては攻撃的なことも…。
野生のニホンザルに襲われると、怪我だけでなく傷口から菌が入り込み感染症を引き起こす恐れもあるため、見つけてもむやみに近寄らないほうが賢明といえるでしょう。
ニホンザルの主な被害
ニホンザルが引き起こす被害は、主に「農作物への食害」です。
令和5年度であれば7~8月にかけて四戸橋地区・新城天田内地区・西田沢地区・孫内地区・戸山地区等で野菜や果樹の食害が発生しており、令和5年度であれば422.62千円の被害数値が発表されています。
被害額は令和2年度に比べ減少しているものの、被害件数が令和2年の14件から令和5年には25件と倍近く増加しているため、油断はできません。
ツキノワグマ
ツキノワグマは、黒色の丸く比較的大きな耳を持つ中型のクマです。
胸には三日月に似たV字模様の白い毛があり、このツキノワ模様がツキノワグマの名前の由来とされています。
クマであるためその存在は非常に危険であり、クマによる人身被害を防止するには「クマと出会わない」「クマを引き寄せない」方法を心掛けることがもっとも重要です。
ツキノワグマの特徴
ツキノワグマは、ヒグマに比べるとサイズが小さめといえます。
- 頭胴長:オス平均140cm、メス平均120cm(鼻先から尻尾の根元までの長さ)
- 体高 :50~60cm
- 体重 :オス平均約60kg、メス平均約45kg
ただし、個体や季節による変化が大きいため、かならずしも上記に一致するとは限りません(体重100kg近いオス個体も確認されている)。
ツキノワグマは、雑食性の動物で主食は植物ですが、季節や生息地域の環境によって柔軟に食べ物を変えて生活する動物でもあります。
春は植物の新芽や花、夏は果実や昆虫、秋は果実などを食べ、冬眠に備えてエネルギーを蓄えます。
ツキノワグマは「狩り」をして獲物を捕らえることを不得意としていますが、シカなどの死体を見つけた際は食すこともあるようです。
ツキノワグマの主な被害
クマによる被害は農作物などの食害だけでなく、人が遭遇した際の人身被害も問題です。
農作物への被害は四ツ石地区が多く、令和2年度が0件だったのに対し令和5年度は14件と大幅に増加しています(令和5年度は7月から果樹の食害が発生している)。
市内各地でも出没が相次いでいることから、今後ツキノワグマによる被害はより警戒すべき問題といえるでしょう。
なお、クマが人と遭遇する頻度が高くなる時期、1年に2度あります。
1度目は交尾をする6~7月、2度目は冬眠前の秋であり、クマの行動範囲が広がるため人と遭遇する確率が高くなるといわれているのです。
特に冬眠前のメスは、冬眠中に着床・出産・授乳をするため、秋のうちに体にどれくらい栄養を溜め込めるかが出産や子育てに大きな影響を与えます。
加えて、秋は人とクマが好んで利用する植物が似ていることもあり、他の時期よりもさらに遭遇しやすいといえるでしょう。
青森県におけるツキノワグマに関する情報は、青森県のホームページにてご確認ください。
ニホンジカ
ニホンジカ(シカ)も、日本の各地域に生息しています。
一時期は天敵であるオオカミや狩猟などで増加が抑えられていましたが、日本ではオオカミが絶滅し狩猟人口も減ったために、現在その数は増加傾向にあります。
ニホンジカの特徴
個体や生息場所などの環境によって変化しますが、ニホンジカの体長・体重はおおむね以下の通りです。
- 体長:オス90~190cm、メス90~150cm
- 肩高:オス70~130cm、メス60~110cm
- 体重:オス50~200 kg、メス25~80kg
全身は茶色(尻の毛のみ白く縁が黒い)であり、オスのみ枝分かれした角を持ち、春先に落下し新たな角に生え換わるとされています。
食性は、植物質の強い雑食性で、クマやサルと違って木に登ることはないため地上付近のものを食べる傾向にあります。
また、雪が深いと地上のものではなく樹皮なども食べるようです。
臆病で警戒心が強い生き物とされていますが、危険がないとわかると大胆に農地へ入ってくることもあります。
シカはジャンプ力が高いことも特徴であり、成獣であれば1.5m以上の高さを飛ぶことができます。
ニホンジカの主な被害
ニホンジカの被害で特に多いのは、農業や林業への食害です。
農作物を食い荒らすだけでなく、シカは樹皮を剝ぎ取って食べることもあります。
また、草も大量に食し、特に柔らかい若い芽は真っ先に食べられてしまうため、森がどんどん減少してしまうのです。
シカによる農業被害額は59億6100万円にも上り、野生動物による食害全体の実に33.77%を占めているといわれるほど深刻な問題となっています。
シカは集団で行動することが多い点も注意すべきポイントといえるでしょう。
ニホンジカは天敵のオオカミがいなくなり、狩猟する人も減少傾向にあるため、その数がどんどん増加しています。
市内での目撃情報もあることから、今後その害獣被害をどう防ぐかが課題となるでしょう。
イノシシ
イノシシも、全国さまざまな場所に生息する動物です。
クマと同じく農作物への被害や人身被害などを引き起こし、その被害件数も増加していることから、害獣として認識されています。
イノシシの特徴
イノシシの体長や体重は、おおむね以下の通りです。
- 体長:雄110〜170cm、雌100〜150cm
- 肩高:60〜90cm
- 尾長:30〜40cm
- 体重:80〜190kg
岐阜市では約220kgものオス個体が捕獲されたこともあるとされています。
雑食性で果実・植物・昆虫類など何でも口にする傾向があり、また人間が口にする食べ物もほとんど食べることができるようです。
シカと同じく木に登ることはできないため、地上や地下部のものを食べる傾向にあります。
運動能力や学習能力(記憶力)が高く、成獣では助走なしに120cmジャンプすることができ、50kgのものを鼻で持ち上げることも可能です。
なお、イノシシは警戒心が非常に強く、ちょっとした変化にも警戒心を抱くため、本来は人前に姿を現す動物ではありません。
そのため、本来昼行性であるものの、人の生活圏などに浸入するイノシシは夜行性で夜間に行動することが多いとされています。
ただし、環境に慣れて警戒心が緩むと、昼間でも市街地へ出没するケースもあるようです。
イノシシの主な被害
イノシシはエサを求めて行動するため、鼻を使って土を掘ったり石を持ち上げるなどして手当たり次第にエサを探す傾向があります。
その結果、以下のような被害をもたらす恐れがあるでしょう。
- 栽培している農作物を食べる
- 花壇を掘り起こしたり、植木鉢や庭の縁石をひっくり返す
- 裏山や崖などを掘り、大穴をあけたり土や石を落とす など
特に農業被害は非常に問題視されており、令和4年度の日本の農業被害額165億円のうち、イノシシが36億円と2位に位置しています(1位はシカの65億円)。
青森市であれば、令和5年7月に浪岡吉内地区で野菜(ばれいしょ)の食害が、同年8月に矢田地区でも枝豆の被害情報が報告されています。
イノシシは記憶力が高く、学習したことは半年以上記憶しているといわれているため、一度エサ場と記憶した田畑には何度でも侵入してくる可能性が高いでしょう。
また、イノシシによる人身被害にも注意が必要です。
イノシシは本来臆病でおとなしい性格のため、人に出会ってもイノシシの方が逃げてしまいます。
しかし、下手に刺激して興奮状態にしてしまったり、発情期や分娩後で攻撃的になっているときは襲われる可能性もあるかもしれません。
もしもイノシシに遭遇することがあったら、静かにその場を離れることが大切です。
急に走り出す・後ろを向いて逃げ出すなどせず、なるべく背中を見せずにゆっくりと後退しましょう。
アライグマ
アライグマは、もともと日本には生息していない外来種です。
今では日本全国に生息し、今も生息域を拡大し続けている、危険な害獣として認識されています。
アライグマの特徴
アライグマは1980~1990年代にアメリカより大量に輸入され、ペットや動物園で飼われていました。
しかし、見た目に反して非常に獰猛かつ気性が荒く・飼育には向かない動物であり、飼い主や動物園から逃亡、もしくは捨てられるようになり野生化したとされています。
繁殖が高いこと、日本には天敵と呼べる生き物がいなかったことが、野生化したアライグマが増殖した原因といわれています。
アライグマの外見の特徴は、以下の通りです。
- 体長:60~100cm
- 尻尾:20~40cm程度、4~7本の黒いリング模様がある
- 体重:2~10kg程度
- 毛色:灰色~明るい赤褐色で、目の周辺に黒いマスク模様がある
- 手足:前足・後足ともに5本指で、前足の指が長く物をつかむことができる(木登りも得意) など
基本的に夜行性ではあるものの、昼間に活動することもあります。
また、食性は雑食性で、特に甘い果実などを好む傾向にあるようです。
アライグマの主な被害
アライグマによる被害としては、主に以下が挙げられます。
- 鳴き声や足音による騒音被害
- 糞尿による健康被害、建物の腐食被害
- 農作物や食材などの食い荒らし
- 感染症の発病 など
アライグマは人間の生活圏内にも平気で足を踏み入れ、家屋のさまざまな隙間から侵入し、屋根裏や床下などに棲みつきます。
そして、家庭から出たゴミや残飯、売り物にならず廃棄された農作物などをエサとするのです。
アライグマにとって、人が住まう家は「餌場に困らず、雨風もしのげる快適な環境」といえるでしょう。
青森市でも、令和4年度に浪岡吉野田地区でスイカの食害が発生しており、令和5年度も市内全域で足跡により出没を確認しているため、今後被害の発生が懸念されています。
ハクビシン
ハクビシンは、日本に生息する唯一のジャコウネコ科の哺乳類であり、外来種ではあるものの移入時期が明確になっていない動物です。
アライグマやイタチと同じく、家屋など人の生活圏に侵入してさまざまな被害をもたらす害獣として警戒されています。
ハクビシンの特徴
ハクビシン特徴は、以下の通りです。
- 体長 :51~76cm
- 頭胴長:約60cm
- 尾長 :約40cm
- 体重 :体重2~3kg程度
猫のような体つきで鼻すじが長く、足指の数は前後ともに5本あります。
最大の特徴は「白鼻芯」という名前の通り、額から鼻まで白い筋模様があることで、外見上はイタチ・アナグマ・アライグマ・タヌキなど家屋に棲みつきやすい害獣との見分けが付けやすいといえるでしょう。
目の下と耳元に白い斑点があり、尾の長さが体長の4割以上あることも特徴的です。
性格は臆病でおとなしく、夜行性のため人前に出てくることは滅多にありません。
また、雑食性でなんでも口にするため、棲みつかれると食害がどんどん広がっていく恐れがあります。
ハクビシンの主な被害
ハクビシンもアライグマと同じく人家の屋根裏や床下などに入り込み、以下のような害獣被害をもたらします。
- 鳴き声や足音による騒音被害
- 糞尿による健康被害、建物の腐食被害
- 農作物や食材などの食い荒らし
- 感染症の発病 など
ハクビシンは同じ箇所に糞をする習性(溜め糞)があるため、被害を放置するほど糞が溜まり、悪臭や建物の腐食が進んでいきます。
最悪の場合、建物の倒壊につながる恐れもあり、建物の寿命も大きく削ってしまう点に注意が必要です。
青森でも目撃情報があり、予察捕獲されていることから、今後その被害の拡大が懸念されています。
アナグマ
アナグマも、アライグマやハクビシンのように畑や庭などに侵入し、人々の生活に害をなす恐れがあります。
「穴を掘ることが得意」という、他の害獣とは少し違った特徴も有しているため注意が必要といえるでしょう。
アナグマの特徴
アナグマはイタチ科アナグマ属に属しており、日本で見かけるのはニホンアナグマです。
北海道を除く、日本の本州・四国・小豆島・九州などさまざまな場所に生息しています。
アナグマの外見的な特徴は、以下の通りです。
- 体長:40~60cm程度
- 尾長:11.6~14.1cm
- 体重:12、3kg
- 顔 :頭部から目の下にかけて黒い模様があり、鼻筋が白い
- 指 :前後ともに5本あり、親指は他の指から離れており、爪は鋭い
胴長で小さな頭・短い尾が特徴的で、その名の通り穴を掘ることが得意な動物です。
食性は雑食性で、前足と大きな鼻を使って土中の昆虫などを食べる他、鳥類・小型哺乳類・キノコなどを食します。
また、甘みのある果実を好むことから、年々農作物への被害が深刻化しています。
アナグマの主な被害
アナグマの被害でもっとも厄介なのは、穴を掘ることにあります。
穴を掘られることで景観が損なわれることはもちろん、畑や家庭菜園をしている庭などにも侵入して穴を掘り、作物などを食い荒らし甚大な被害をもたらします。
また、穴を掘ることは地盤の緩みにもつながるため、もし家の床下に侵入し穴を掘られた場合、地盤が緩んで建物が倒壊する恐れもあるでしょう。
地震大国である日本において、地盤の緩んだ地面は危険極まりないといえます。
青森市であれば、令和5年10月に矢田地区でブドウの食害が発生しており、今後も被害の発生が懸念されています。
他にも、家の床下に棲みついた場合は、騒音・健康被害や感染症の発病といった害獣被害にも注意しなければいけません。
タヌキ
古くから日本人にとって身近な動物であるタヌキですが、近年は住宅街にも出没し、多数の害獣被害をもたらすケースが増加しています。
非常に可愛らしい容姿をしているものの、注意すべき動物の一種です。
タヌキの特徴
タヌキの外見上の特徴は、主に以下の通りです。
- 頭胴長(体長):50~68cm程度
- 尾長 :12.5~25cm
- 体重 :4~6kg
- 体色 :全体は灰褐色や茶褐色で、目の周り・足先・耳の縁が黒く、部分的に白い毛の交じる個体が多い など
イヌ科に属しているため、顔つきや足跡はイヌに似ているともいわれています。
また、タヌキも雑食性で、昆虫や野菜・果物、都市部ではゴミ捨て場に置いてあるゴミを漁ることもあります。
性格は非常に臆病で、些細な音が聞こえただけでも気絶してしまうほど。そのため、夜行性で夜遅くなるにつれて活動が活発化していくようです。
タヌキの主な被害
タヌキも、ハクビシンやアライグマと同じように家屋に浸入し、その家に住む住人や建物にさまざまな被害をおよぼします。
- 鳴き声や足音による騒音被害
- 糞尿による健康被害、建物の腐食被害
- 農作物や食材などの食い荒らし
- 感染症の発病 など
臆病な性格かつ薄暗い場所を好む傾向があるため、家の天井裏や屋根裏を寝床にすることが多いようです。
夜中の寝静まったあとに鳴き声や足音が聞こえてきたり、溜め糞によって悪臭などが発生したりと、家に棲みつかれると健康に害をなす可能性が高まってしまうでしょう。
青森市であれば、令和5年5月に幸畑地区でイチゴの食害が発生しています。
エサや棲み処を求めて人里へ下りてくるケースも増加しているため、今後も警戒が必要な動物といえるでしょう。
カラス
真っ黒い姿が特徴のカラスは、日本全国どこにでも存在し、人々へさまざまな被害をもたらしています。
近年はカラス対策を地域単位でおこなうことも多くなり、これまでに比べると被害は減少しているといえます。
それでも油断しているとカラスによる被害が発生してしまうため、その特徴を理解しておくことが重要といえるでしょう。
カラスの特徴
カラスの最大の特徴は「適応性と生存能力が高い」ことが挙げられます。
雑食で何でも食べることができ、都会でも森でもどこでも生息することが可能。また、巣づくりの際に調達するハンガーなど道具を使う能力にも優れています。
非常に学習能力に優れた鳥で、高い状況判断能力や長期記憶力を持っていることも、他の鳥類とは異なる点といえるでしょう。
なお、カラスは普段はむやみに人を襲うことはそうはありませんが、繁殖期である春から初夏にかけての時期は、人間を外敵とみなし威嚇や攻撃を仕掛けてくることがあります。
巣にいる卵やヒナを守るための行動であり、この時期は特に不用意に巣へ近づかないようにしましょう。
カラスの主な被害
カラスによる被害としては「ゴミを荒らされる」「鳴き声による騒音」「ゴミ置き場・電線・看板・建物や建築物などに巣を作る」などが特に問題視されるでしょう。
道を歩いていたらゴミが散らかっていて、その中心にはゴミを食べ漁るカラスがいた…という場面を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
人やペットに対し、威嚇や攻撃をしてくるケースも稀にあるため、この点にも注意が必要です。
また、農作物への食害も発生しており、青森市の場合は令和5年7月に戸山地区でスイカが、同年9月に田茂木野地区・幸畑地区でリンゴの食害が発生しています。
カラスの被害は地域単位でおこなわれることが多いため、もしカラスの被害に遭われた場合は、お住いの自治体に相談してみるのがよいでしょう。
カモ類
カモとは、カモ目カモ科の鳥類のうち雁に比べて体が小さく首があまり長くないものの総称です。
日本では主にカルガモやオシドリなどが通年生息し、日本全国の河川や湖などで見られます。
「人に危害を加えることってあるの?」と疑問を浮かべる方もいるかもしれませんが、農家にとっては農作物を荒らす天敵たる存在です。
カモの特徴
カルガモの親子がひょこひょこと道を渡る風景がテレビで話題になるなど、カモは人間にとってなじみのある水鳥です。
そして、日本には30種類ほどのカモが生息していますが、水田や畑などの農作物に被害を引き起こすのは、主にカルガモ・ヒドリガモ・マガモの3種類が挙げられます。
マガモ | カルガモ | ヒドリガモ | |
全長 | 60cm前後 | 60cm前後 | 50cm前後 |
体色 | ・オスは頭が暗緑色、首に白い輪があり、体は灰白色 ・メスは全体が褐色模様 | ・オス、メスともに全体が茶色模様 | ・オスは頭が赤褐色、額がクリーム色、体は灰色 ・メスは全体に褐色模様 |
嘴の色 | オスは黄色、メスは橙色に黒色斑 | 黒色で先端が黄色 | 青灰色で先端が黒色 |
足の色 | 赤橙色 | 赤橙色 | 黒色 |
カモは主に植物食で、さまざまな植物の種子や葉を好物としています。
また、カモは非常に学習能力が高く、光や音による威嚇はすぐに慣れて効果がなくなるケースが多いとされています。
カモの主な被害
カモは、農作物への被害が問題視されており、また種類によって季節ごとに被害状況が変わることも重要なポイントです。
春や秋はカルガモが出没し、春は水田の種もみや苗を食べ・歩き回ることで出芽を阻害する被害が見られ、秋の場合は稲穂を根こそぎ食べられるという被害が発生します。
カルガモ以外のカモは冬に飛来し、農作物への被害が多様化します。
青森市であれば令和5年8月に合子沢地区で米の食害が発生したと報告されており、全国有数の農業産出県である青森の場合、農家にとってカモの被害は軽視できない問題といえるでしょう。
ヒヨドリ
ヒヨドリは、ヒヨドリ科ヒヨドリ属に分類される鳥の一種であり、里山や公園など樹木のある環境に生息し、都市部でも目にすることがあります。
カモと同じく「人に害をおよぼすの?」と疑問を感じる方もいるかもしれませんが、ヒヨドリも農家にとって無視できない生き物の一つなのです。
ヒヨドリの特徴
ヒヨドリの全長は27~29cmほど(翼開長時は約40cmほど)で、ムクドリやツグミに比べて体型がほっそりしています。
オス・メスともに同じ色をしており、その特徴は以下の通りです。
- 頭部から胴体は灰色の羽毛に覆われている
- 頬に褐色の部分がある
- 頭頂部の羽毛は周囲よりやや長く、冠羽となっている
- 翼や尾羽は灰褐色をしている
日本では里山や公園などでよく見られる身近な野鳥の一種であり、分布がほぼ日本国内に限られていることから、日本を訪れる海外のバードウォッチャーにとっては観察したい野鳥の一種となっています。
このように、一般の方にはさしたる害のないヒヨドリではありますが、農家にとっては農作物を食い荒らす天敵として認識されています。
ヒヨドリの主な被害
ヒヨドリは、鳥類による農作物への被害金額がカラスに次いで多い(鳥類のなかでは第2位に位置する)鳥です。
ヒヨドリは甘いものを好物とするため、高価な果物が食べられてしまうケースも多く、先が尖ったくちばしでちぎったり・つついたり・差し込んだりして中身を食べます。
また、果実だけでなくキャベツなどの露地野菜も口にし、外葉を食べた後に、結球部をえぐり取るという被害状況も報告されています。
青森市でも令和5年9月に田茂木野地区でプルーンや和梨などの家事が食害に遭っており、今後も警戒すべき生き物の一種といえるでしょう。
害獣の被害は自治体やプロの業者へ相談しよう!
何らかの害獣による被害を受けている、または被害を危惧している方は、お住いの自治体やプロの害獣駆除業者へ相談することをおすすめします。
害獣の多くは鳥獣保護管理法という法律によって保護・管理されているため、狩猟免許を持たない人が害獣を捕獲・駆除することはそもそもできません(ネズミを除く)。
また、野生動物の多くはその身に多くの寄生虫や菌を有していること、クマやイノシシのように接触すれば命に関わる害獣も存在することから、一般の方は下手に対応に動くべきではないといえます。
プロの業者へ対処を依頼すれば、手間もリスクも軽減して安全に害獣を駆除してもらえるでしょう。
お住いの自治体によっては、駆除に動いているケースや、害獣駆除の相談・業者の斡旋・捕獲機の貸し出しなどをおこなっている可能性もあります。
害獣の種類によっては地域単位で対処する可能性もあるため、お住いの自治体のホームページなどで「どの害獣に対して、どのようなサポートが受けられるのか?」を確認してから、相談にいくとよいでしょう。
まとめ
自然あふれる青森にも、さまざまな野生動物が生息しており、なかには人々に害をなす害獣の類も存在します。
野生動物に悪意はないものの、エサや棲み処を求めて(生存のために)人里に下りて被害をもたらすケースは増加しているため、自身の生活が脅かされることのないよう、適切な対処を実施していかなくてはいけません。
害獣は、この記事でご紹介した動物以外にもさまざまに存在するため、もし家屋や農作物などに何かしらの害獣被害を受けている方は、お住いの自治体やプロの業者へ相談することをおすすめします。
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