日本には多くの野生鳥獣が生息しており、そのなかには人の生活に悪影響をおよぼす「害獣」の類も存在します。
害獣の被害は、日本全国のどこに住んでいても遭遇する可能性がありますが、気候や環境が地域によって異なるため、地域ごとに被害内容は異なります。
宮城県であれば、どのような野生鳥獣が出没しやすく、どのような被害をもたらすのでしょうか?
本記事では、宮城県において出没しやすい野生鳥獣の種類や被害内容についてご紹介します。
害獣の具体的な防除法についても解説しておりますので、害獣の被害にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
宮城県とはどのような地域なのか?
宮城県は日本の東北地方に位置する県で、県庁所在地は仙台市です。
一年を通して比較的穏やかな気候の風土かつ自然も豊富な土地として知られており、人はもちろんさまざまな野生鳥獣が生息しています。
本章にてその気候や土地環境・生息する野生動物について詳しくご紹介していきましょう。
宮城県の気候や土地環境
宮城県は東北地方の南東部に位置しており、県内には仙台平野が広がり、北上川・阿武隈川といった大河が貫流して流域に沖積平野が発達しています。
東側は太平洋に面し、県中部にある「松島」は多島海の景勝地で日本三景の一つに数えられていること。西側は奥羽山脈に接し、栗駒山・蔵王連峰などの秀峰が聳え立っていることが特徴に挙げられるでしょう。
また、県庁所在地である仙台市は、東北地方で唯一の政令指定都市であり、東北地方最大の仙台都市圏を形成しています。
仙台市は東北地方の首位都市で、仙台都市圏には宮城県民の67.9%に当たる154万人が居住しています。
県内の気候は太平洋側気候に分類され、地域全般に夏期は酷暑が少なく、冬期も降雪量は東北地方のなかでは少なめであるため比較的過ごしやすい地域です。
ただし、東側は海洋性気候・西側は内陸性気候の特徴を示しており、さらに西部山間部は冬期に豪雪となり日本海側気候の特徴を有しています。
特に、大崎市の旧鳴子町地区は特別豪雪地帯として知られています。
気象庁による気象予報では宮城県を「宮城県西部」と「宮城県東部」に二分しており、さらに西部・東部を以下のように細分され、それぞれで気候に大きな違いが見られます。
※気象庁の地震に関する速報や情報で用いられる区域では「宮城県北部」「宮城県中部」「宮城県南部」に三分される
【西部】
- 西部栗原、西部大崎: 内陸性気候で、冬季は寒さが厳しい(豪雪地帯に属している)とされており、特に大崎市の旧鳴子町は特別豪雪地帯に指定されている。内陸地域にあるものの夏季は比較的冷涼であり猛暑にはならない
- 西部仙台、西部仙南:福島県中通りや北関東の気候の延長線上にあり、内陸性気候となるものの緯度が低いため、夏季は冷涼・冬季は(緯度の割には)温暖といえる。都市圏の仙台市青葉区旧宮城町と太白区旧秋保町・白石市・川崎町は、内陸のためより寒冷で、積雪も多く豪雪地帯に指定されている
【東部】
- 気仙沼、石巻:三陸海岸に面しており、夏季はやませの影響を受けやすく冷涼で真夏日になることは少ない。冬季は雪も少なく比較的温暖といえる
- 登米・東部栗原、東部大崎:平野部地域は太平洋側気候雪は少ないものの、岩手県の北上盆地の気候の延長線上にあり、内陸盆地の特徴を示している(時に強風の影響で地吹雪となることもある)。また、冬季の日照時間が多いため放射冷却が起こりやすく最低気温は零下10~15℃くらいまで下がることもある
- 東部仙台、東部仙南:福島県浜通りの気候の延長線上にあり、海洋性気候で年較差・日較差ともに小さめ。都市圏の仙台市周辺はヒートアイランド現象の影響が見られ、南にある北関東の各都市よりも冬季の冷え込みは緩く積雪も少ない
ご覧の通り、西部のほうが気候の波が荒く、東部のほうが比較的穏やかな地域が多いといえるでしょう。
宮城県の産業・特産物について
宮城県内の平野部は特に稲作が盛んで、ササニシキ・ひとめぼれの産地として知られています(なかでも県北部の大崎地方の肥沃な土地は「大崎耕土」と呼ばれている)。
他にも、イチゴ・ナシなどの果物、仙台白菜を初めとする伝統野菜も生産されており、畜産では仙台牛や宮城野豚(宮城野ポーク)といった銘柄も有名です(少量ではあるものの、日本で唯一「木綿」の栽培もおこなわれている)。
また、宮城県は漁業も盛んであり、全国有数の水揚げ高を有する漁港が複数あります。
松島湾や三陸海岸の入り江であれば、カキ・ホタテ・ホヤなどの養殖漁業も盛んで、仙台市の沖合い2km辺りでは海苔の養殖もおこなわれています。
県内の主要港は、遠洋漁業の基地としても機能しているため、海外との交流もおこなわれており、外国人船員も多く立ち寄ることが特徴です。
また、カツオを追って北上してくる高知県の船員、サンマを追って南下してくる北海道の船員も多く立ち寄ることから、仙台駅・仙台空港に並ぶ、宮城県の第3の玄関口となっています。
宮城県に生息する野生動物の種類
自然豊かな宮城県の土地では、さまざまな野生鳥獣が生息しています。
数が多いため一例を出すと、たとえば以下が挙げられます。
- ニホンジカ
- ニホンザル
- ツキノワグマ
- イノシシ
- ハクビシン
- ドバト など
野生鳥獣(特に獣類)の多くは、自然環境の激減によって棲み処やエサ場が大幅に減少しており、その結果人が住む生活圏に出没するケースが増加しています。
人が原因で自然環境が激減していること、野生鳥獣も悪意を持って人の生活圏を荒らしているというわけではない…ではありますが、だからといって野生鳥獣の被害を黙って見過ごすわけにもいきません。
野生鳥獣による被害は日本各地で発生件数が増加しており、地域ごとにさまざまな対策が実施されています。
宮城県の野生鳥獣による農作物への被害について
自然の中で暮らす野生鳥獣も、エサや棲み処を求めて人の生活圏へ侵入しさまざまな被害をもたらすことがあります。
特に農作物への被害は経済的にも大きな痛手となっており、宮城県でもその被害をできるだけ軽減できるようさまざまな対策を実施しています。
県内の農作物被害状況は、宮城県のホームページにて調査結果を確認することが可能です。
公表されている情報をもとに、令和5年度の農作物被害額の高い鳥獣をまとめると、以下のようになります。
獣類 | 被害額(単位:万円) |
イノシシ | 6,316 |
シカ | 2,202 |
ハクビシン | 857 |
サル | 653 |
クマ | 282 |
カモシカ | 214 |
タヌキ | 109 |
鳥類 | 被害額(単位:万円) |
カラス | 859 |
カモ | 805 |
サギ | 255 |
ムクドリ | 242 |
獣類に関しては、イノシシによる被害が群を抜いて高いことがわかります。
また、シカの被害額も非常に高く、シカは農業だけでなく林業や自然にも大きな被害を与えるため注意が必要です。
鳥類では、特にカラスとカモの被害が大きいことがわかります。
カラスは市街地に出没し住民にも甚大な害鳥被害をもたらすため、全国各地でさまざまな対策が講じられていますが、空からやってくる鳥の被害を完全に防ぐのは難しいといえるでしょう。
野生鳥獣による被害は農作物だけでなく、その地域に住まう住民にも被害がおよぶ深刻な問題です。
今後も、その被害をできるだけ抑えられるよう、地域全体が一丸となって対策を講じていく必要があるでしょう。
農作物への被害で特に警戒すべき鳥獣とは?
この章では、宮城県において農作物への被害が多い鳥獣の特徴や被害額の詳細について解説します。
詳細は、宮城県が公表している「農作物を野生鳥獣から守るために」を参考にしております。
警戒すべき獣類
まずは獣類からのご紹介です。
ここでは計6種類の野生動物をご紹介しておりますが、他にもタヌキ・ウサギ・ネズミといったさまざまな野生動物が存在し、人々に被害をもたらしています。
なかには家屋に浸入・棲みついて害獣被害をもたらすものもいるため、その被害は農作物だけにとどまるものではないことを理解しておきましょう(家屋に棲みつく害獣については後述でご紹介します)。
イノシシ
イノシシによる被害は日本の各地で発生しており、宮城県でもその被害は甚大なものとなっています。
農作物への被害額は宮城県のなかでもっとも高く、令和1年度~令和5年度までの被害額は以下の通りです。
- 令和1年度:8,038(万円)
- 令和2年度:10,492(万円)
- 令和3年度:9,526(万円)
- 令和4年度:7,977(万円)
- 令和5年度:6,316(万円)
被害発生地域は宮城県のほぼ全域であり、雑食性であることから稲・豆類・雑穀・果樹・飼料作物・野菜・いも類の多くの農作物に被害を与えています。
特に稲の被害がもっとも大きく、被害面積は42.1ha・被害量は212.1t・被害金額4,264.6万円と公表されています。
イノシシは、畑にある作物を食害する・掘り起こすだけでなく、泥浴びが好きで田んぼで泥浴びをするなど、田畑への影響は計り知れません。
また、市街地に出没するケースも増加しており、人身被害にも注意が必要です。
イノシシは基本的に神経質かつ臆病な動物のため、繁殖期で興奮状態あるとき・人間からちょっかいを出すなどをしない限りは、なにもせずに去っていく可能性が高いでしょう。
そのため、遭遇しても決してイノシシを興奮させる行動はせず、万が一近づいてきても慌てずにゆっくりと後ずさりしてください(急に動くとイノシシも驚き思いもよらない事故につながる可能性がある)。
なお、イノシシがたてがみを逆立て「シュー」「カッカッカッ」「クチャクチャ」といった威嚇音を発している場合は特に注意しておきましょう。
イノシシの被害は地域全体の問題でもあるため、地域ごとにさまざまな対策が講じられています。
たとえば、仙台市では、拡大する農作物被害を防止するため「イノシシ管理事業実施計画」および「仙台市鳥獣被害防止計画」を策定し、被害防止対策を進めています。
また「仙台市農作物有害鳥獣対策協議会」を組織し、各種補助事業を実施しています。
詳細はお住いの自治体によって異なるため、気になる方はお住いの自治体のホームページを確認してみるとよいでしょう。
シカ
草食動物であるシカは、臆病で慎重と比較的おとなしい動物であり、人間側から下手に刺激しない限りは襲われる心配はほとんどありません。
奈良に生息するシカのように人間にとっても癒しの存在として知られていますが、農業や林業を営む方にとっては警戒すべき害獣という側面も持ち合わせています。
シカは一部の有毒なものを除き、ほとんどの植物を口にできます。
特に人間が育てる農作物は栄養価が高いためシカのターゲットにされやすく、他にもイネ科の草・木の葉・ドングリ・ササなどを好み、好物がなければ周囲にある植物のほとんどを口にします。
このことから、農作物への被害が非常に問題視されているのです。
宮城県ではイノシシについで農作物への被害が多く、令和1年度~令和5年度までの被害額は以下の通りとなります。
- 令和1年度:2,333(万円)
- 令和2年度:1,702(万円)
- 令和3年度:3,191(万円)
- 令和4年度:2,047(万円)
- 令和5年度:2,202(万円)
シカも、稲・豆類・果樹・飼料作物・野菜・いも類などさまざまな農作物に被害が出ていますが、その中でも稲・豆類・飼料作物の被害が大きいといえます。
- 稲:被害面積14.2ha・被害量73t・被害金額1,481.7万円
- 豆類:被害面積9.5ha・被害量14t・被害金額456.1万円
- 飼料作物:被害面積4.9ha・被害量103.4t・被害金額155.1万円
加えて、林業用の苗木・樹齢の高い木の樹皮・形成層が食べられる、オスが角をこする際に樹皮が剥がされるといった、自然や林業への被害も甚大です。
近年は、温暖化によって暖冬となるケースが多いこと・高齢化によるハンター人口の減少などでシカの生息数は全国的にも増加傾向にあり、今後も警戒が必要な動物の一種といえるでしょう。
ハクビシン
ハクビシンは日本の各地域に生息する野生動物であり、宮城県でもその被害は問題視されています。
ハクビシンによる令和1年度~令和5年度までの農作物被害額は以下の通りです。
- 令和1年度:1,294万円
- 令和2年度:1,906万円
- 令和3年度:676万円
- 令和4年度:868万円
- 令和5年度:857万円
ハクビシンは雑食性でなんでも口にしますが、そのなかでも甘い果実を好む傾向にあります。
ただ、宮城県の場合は野菜への被害が特に多く、被害面積2.3ha・被害量21.9t・被害金額752.5万円となっています(果樹の被害は67.5万円と2番目に多い)。
また、ハクビシンと似た動物としてタヌキが挙げられますが、宮城県ではタヌキによる被害も発生しています。
どちらも中・小型の野生動物で、家屋に浸入し屋根裏や床下などに棲みつくケースもあるため「家に棲みつく害獣」として警戒もされています。
家の中に棲みついた場合、お住いの住人や建物に甚大な被害をもたらす恐れがあるため、発見次第、然るべき対処を講じるべき動物といえるでしょう。
サル
野生のサルはもともと山奥で生息する動物でしたが、近年はエサを求めて人里へ下りてくるケースも増えており、今では市街地に出没し畑や街を荒らすといった人間への被害が増加傾向にあります。
実際、獣類のなかではイノシシ・シカに次いで3番目に農作物への被害が発生しており、令和1年度~令和5年度までの農作物被害額は以下の通りです。
- 令和1年度:711万円
- 令和2年度:712万円
- 令和3年度:477万円
- 令和4年度:811万円
- 令和5年度:653万円
令和3年に一度大きく被害額が減少したものの、翌年は大きく被害が拡大し年度によって被害額にバラつきがあるのが特徴といえるでしょう。
サルは雑食でなんでも口にしますが、宮城県の場合は稲・豆類・果樹・野菜・いも類に大きな被害をもたらしています。
被害面積 | 被害量 | 被害金額 | |
稲 | 0.5ha | 2.3t | 46.9万円 |
豆類 | 0.3ha | 0.4t | 14.3万円 |
果樹 | 1.0ha | 6.2t | 135.9万円 |
野菜 | 1.4ha | 18.2t | 428.6万円 |
いも類 | 0.2ha | 3.1t | 27.7万円 |
被害額で見ると、特に野菜への被害が大きいといえるでしょう。
また、サルは市街地にも出没し、お住いの地域に多大な被害をおよぼす可能性があります。
サルは非常に頭がよく、下手にエサなどを与えてしまうと人慣れが進んでしまい、その結果家屋への侵入・人間に対する威嚇といった生活・人身被害の発生も懸念されているのが現状です。
サルを近づかせないためには、エサを与えるなど人慣れを防ぐことや、サルのエサとなるものを残さないことが重要です。
また、万が一サルと遭遇した場合はむやみに近づかず、静かに・慌てず・大きな声を出さずに、そっとその場を離れましょう(危険を感じた場合は、目を合わせないようにしゆっくりと立ち去ること)。
エサを与える・食べ物を見せる・刺激するといった行為は大変危険なため、絶対にしないでください。
クマ
まず、クマによる令和1年度~令和5年度までの農作物被害額は以下の通りです。
- 令和1年度:591万円
- 令和2年度:553万円
- 令和3年度:180万円
- 令和4年度:245万円
- 令和5年度:282万円
農作物への被害額だけで判断すれば、イノシシやシカなど他の鳥獣に比べて被害は少なめといえるでしょう。
しかし、クマが出没した場合は人身被害など地域住民に命の危険がおよぶ恐れがあるため、決して油断できません。
宮城県では「令和6年度クマ目撃等情報」として、クマについての情報を公開しています。
令和6年12月から令和7年3月にかけてのクマの出没は「平年並みの見込み」といわれていますが、以後冬を越して春先になるとクマが冬ごもりから目覚め、食べ物を求めて行動範囲を広げ、人里や農地周辺・住宅地近郊での出没が増加すると予想されます。
冬場は冬眠するため被害は少ないといえますが、いずれにせよ引き続きクマの行動が活発になる朝夕の時間帯や単独行動を避け、クマ鈴やラジオをつけるなど十分な対策をとって注意して行動することが重要といえるでしょう。
クマは市街地などにも出没するケースが増えており、今や一般の方でも他人事とはいえない問題となっています。
地域の情報を適切に収集し、被害に遭遇しない(遭遇しても適切に対処できる)よう注意しておきましょう。
カモシカ
カモシカは、かつては「幻の動物」とも呼ばれていた山の住人です。
カモシカは一時期生息数が激減し、今では国の特別天然記念物に登録されている動物ではありますが、近年では宮城県など一部の地域では多くの目撃情報が寄せられています。
カモシカは植物食の胴部であり、低木・草の葉・芽・小枝・花・実などを食し、季節によって食べるものが異なります。
良質な食物を選り好みして採食する傾向があるため、人が育てた作物を口にする傾向があり、農作物への被害は無視できないものとなっています。
宮城県の令和1年度~令和5年度までの被害額は以下の通りです。
- 令和1年度:375(千円)
- 令和2年度:220(千円)
- 令和3年度:226(千円)
- 令和4年度:213(千円)
- 令和5年度:214(千円)
カモシカはおとなしい性格の動物であり、人間側から刺激しない限りは人に危害を加えることはほぼありません。
また、カモシカは国の特別天然記念物に指定され保護の対象となっている動物です。
傷つけたり死なせてしまった場合は法律により罰せられることがあるため、仮に遭遇しても下手にちょっかいを出したりせず、静かにその場を離れてください(カモシカには帰巣本能があり、自分で山に帰っていく可能性が高い動物である)。
その後、お住いの自治体などへカモシカを目撃した旨を伝えておきましょう。
警戒すべき鳥類
鳥類は、(カラスを除いて)一般の方から害鳥という印象を受けないものも多いといえます。
確かに、市街地で人に害を成す鳥こそ少ないものの「農作物を食い荒らす」ことから農家にとっては忌むべきものとして警戒されています。
この章でご紹介する鳥以外にも、スズム・ヒヨドリ・ハト・キジなどによる鳥も(被害額こそ少ないものの)農作物へ被害を出しており、徹底した対策が求められるでしょう。
カラス
カラスによる農作物への食害も、農家の方にとって頭を悩ませる問題です。
被害額も鳥類のなかではもっとも多く、令和1年度~令和5年度までの被害額は以下の通りとなっています。
- 令和1年度:826(千円)
- 令和2年度:1,327(千円)
- 令和3年度:879(千円)
- 令和4年度:764(千円)
- 令和5年度:859(千円)
作物の被害はさまざまであり、令和5年度であればその被害内容は以下の通りです。
農作物名 | 被害面積(ha) | 被害量(t) | 被害金額(万円) |
稲 | 4.4 | 22.7 | 454.7 |
麦類 | 0.2 | 0.6 | 9.6 |
豆類 | 0.9 | 1.3 | 38.8 |
果樹 | 0.5 | 7.5 | 213.2 |
飼料作物 | 0.0 | 0.9 | 0.9 |
野菜 | 0.3 | 4.4 | 139.3 |
いも類 | 0.0 | 0.3 | 2.4 |
カラスの被害は農作物だけにとどまらず、市街地にも出没してゴミ袋をくちばしで破って中の生ごみを食い荒らす・フンを落とす・鳴き声による騒音などの被害を発生させています。
結果、カラスの被害は日本各地で問題視されており、地域ごとにさまざまな対策が実施され少しずつその効果が現れてはいます。
それでも空からやってくるカラスの被害を完全に防ぐことができず、今も甚大な被害を発生させている生き物であり、今後も徹底した対策が求められます。
カモ類
カモ類は日本全国の河川や湖などで見られ、日本では主にカルガモやオシドリなどが通年生息しています。
テレビなどで、カルガモの親子がひょこひょこと道を渡る風景が映し出されるなど、カモは人間にとってなじみのある水鳥ではありますが、農家にとっては農作物を荒らす天敵たる存在です。
事実、宮城県ではカラスに匹敵するレベルでの被害額が発生しており、令和1年度~令和5年度までの被害額は以下のようになっています。
- 令和1年度:569(千円)
- 令和2年度:1,103(千円)
- 令和3年度:790(千円)
- 令和4年度:840(千円)
- 令和5年度:805(千円)
宮城県においては、特に稲への被害が甚大といえ、被害面積2.8ha・被害量14.4t・被害金額290.1万円となっています。
水田や畑などの農作物に被害を引き起こすのはカルガモ・ヒドリガモ・マガモの3種類が主であり、植物食を好むことからさまざまな植物の種子や葉がターゲットにされます。
また、種類によって季節ごとに被害状況が変わることも重要なポイントです。
春や秋はカルガモが出没し、春は水田の種もみや苗を食べ・歩き回ることで出芽を阻害する被害が見られ、秋の場合は稲穂を根こそぎ食べられるという被害が発生します。
カルガモ以外のカモは冬に飛来し、農作物への被害が多様化します。
1年をかけて被害に遭う可能性が高いため、農業が盛んにおこなわれている宮城県でも決して軽視できない存在といえるでしょう。
サギ
サギは、水田や水路・池・沼といった水辺に生息し、魚・カエル・ザリガニなどをエサとしています。
エサを取るために水田に入り、若い稲を踏み荒らす被害が発生しており、以下のように農作物へも甚大な被害が発生しています。
- 令和1年度:1(千円)
- 令和2年度:7(千円)
- 令和3年度:374(千円)
- 令和4年度:388(千円)
- 令和5年度:255(千円)
ご覧の通り、令和3年度よりその被害が爆発的に増加していることがわかります。
また、近年では里山の開発・河川改修により、繁殖に適した場所が少なくなってきたことから、住宅地に近い場所に集団繁殖地を作り、糞による悪臭や鳴き声による騒音など、生活環境への被害も発生しています。
サギの営巣を防ぐための方法としては、主に以下が挙げられます。
- 雛が立ち去る秋から冬にかけて、営巣された樹木の伐採や剪定をおこない、巣を作らせないようにする
- サギが巣作りをする春先に、住宅地近くに営巣させないよう監視や音・視覚による追い払いを実施する など
令和3年度より被害が劇的に増加していることから、今後も十分な警戒が必要な野鳥の一種といえるでしょう。
ムクドリ
ムクドリは、全長は24cmほどでスズメより大きく・ハトよりは小さな見た目をしており、椋の木の実を好んで食べることからムクドリと呼ばれるようになったといわれています。
首元とお腹が白く、足とクチバシは黄色くなっていることも特徴に挙げられるでしょう。
古くは農作物に付着する虫を食べることから、害虫から農作物を保護してくれるありがたい存在(益鳥)として重宝されていることもありました。
しかし、近年は果樹を食べることが問題視されており、宮城県でも農作物への被害が拡大傾向にあります。
【令和1年度~令和5年度までの農作物への被害額】
- 令和1年度:0(千円)
- 令和2年度:113(千円)
- 令和3年度:249(千円)
- 令和4年度:340(千円)
- 令和5年度:242(千円)
令和1年度までは大きな被害はありませんでしたが、令和2年度よりその被害が爆発的に広がっていることがわかります。
また、ムクドリは電柱に大量に集まり、鳴き声による騒音・糞・巣を作るといった被害も多発しており、地域住民にとってさまざまなトラブルを引き起こす害鳥としても問題視されています。
ムクドリが害鳥として認識されるに至ったのは、エサや棲み処が少なくなってしまったことが原因として挙げられるものの、人間の生活に害を与えることも確かです。
人間と鳥獣の共生は、今後も生活していく上での重要な課題となっていくといえるでしょう。
家屋に棲みつく害獣にも要注意!
中・小型の野生動物のなかには、壁や屋根の隙間などから家の中に侵入し、屋根裏や床下に棲みつくものもいます。
上記でご紹介したハクビシンやタヌキ、他にもネズミ・イタチ・アライグマ・コウモリ・アナグマ・テンなどが該当し、棲みつかれるとお住いの住人や建物に大きな被害がもたらされます。
ただし、ネズミを除く野生動物の多くは鳥獣保護管理法や外来生物といった法律によって保護・管理されており、自治体の許可なく捕獲・殺傷ができません。
もし害獣被害を未然に防ぎたい・棲みついている害獣を追い出したいという方は、プロの業者に相談してみるとよいでしょう。
自分で対処するより費用は高額になるものの、防除から清掃・消毒、再発時の迅速な対処など中・長期的に害獣に悩まされない環境を維持できるはずです。
「自身で対処したい」という場合は、市販の害獣対策グッズを利用したり、侵入経路となる場所を封鎖するとよいでしょう。
しかし、自身で害獣を捕獲するには狩猟免許を保有した状態で自治体の許可を得る必要があるため、一般の方にできることは、害獣の侵入防止と追い出しくらいしかできないことを理解しておきましょう。
手間だけでなく怪我や感染症の発病といったリスクにも注意が必要です。
お住いの自治体によっては害獣被害の相談や業者の斡旋、捕獲機の貸し出しなどをおこなっているところもあるため、事前にお住いの自治体のサポート範囲を理解したうえで、相談しにいくのもよいといえます。
まとめ
宮城県は自然豊かな土地で、農業など第一次産業も活発におこなれている地域です。
その分、野生鳥獣によって農作物が食害される被害が多発しており、農家を営んでいる方々などは地域と連携しながらさまざまな対策を講じています。
また、近年では害獣が市街地に出没するケースや、家屋に棲みついて被害をもたらすケースも増加しています。
害獣の防除を一般の方が対処するのは至難の業のため、無理に対応しようとせずに、お住いの自治体やプロの害獣駆除業者に相談することが重要です。
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