日本には数多くの野生鳥獣が生息しており、地域によって生息する鳥獣や被害内容に違いが見られます。
農作物への食害が深刻なことはもちろんのこと、近年では市街地に出没し人身被害をもたらす生き物や家屋に棲みついて害獣被害を発生させる類も存在しています。
自然豊かな地域が広がる福井県にもさまざまな野生鳥獣が生息していますが、どのような野生鳥獣が出没しやすく、どういった被害をもたらしているのでしょうか?
本記事では、福井県において出没しやすい野生鳥獣の種類や被害内容についてご紹介します。
害獣の具体的な防除法についても解説しておりますので、害獣の被害にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
福井県の地域の特徴について
福井県は、日本の中部地方に位置する県であり、県庁所在地は福井市です。
北陸地方の最西端に位置しており、同地方でもっとも人口が少ない県としても知られています。
本章では、福井県の土地環境や気候・農作物について詳しくご紹介していきます。
福井県の気候や土地環境
日本の中部地方に位置している福井県は、県中央部にある山中峠・木ノ芽峠・栃ノ木峠を通る稜線を境にして、北側の「嶺北」と南側の「嶺南」より構成される地域です。
本州のほぼ中央に位置しており、西は日本海に面し、海岸線の長さは北東から南西にかけて328kmに達しています。
また、北は石川県、東から南にかけては岐阜県・滋賀県・京都府に接し、総面積は4,191㎢(全国第34位)です。
嶺北地方は、九頭竜川・日野川・足羽川からの堆積平野として発達した福井平野(三方を山で囲まれる盆地状で湿田が多い)と、大野・勝山盆地、および九頭竜川中流河谷や丹生山地、越前中央山地、岐阜県境に広く連なる越美山地、並びに石川県に連なる両白山地、加越台地等から成る地域です。
このうち両白山地がもっとも高峻で、1,600mと2,000m の火山岳が並び、谷も深いとされています。
嶺南地方は、変化に富むリアス式海岸が続き、沈水から免れた山地と沈水してしまった入り江・湾が交互に並ぶ形状を示し、各湾や入り江の奥には沈水地を埋積した狭い堆積地が、敦賀・美方・小浜の小平野を形づくっています。
山地も700~800m の定高性を形成しており、海岸線は長いものの嶺南地方の地域面積は嶺北地方の約3分の1と少ないという点が特徴的です。
気候についてですが、福井県は日本海岸気候区に属しており、冬季に日照が少なく・降水量が多いという特徴があります。
県内全域が豪雪地帯(一部特別豪雪地帯)に指定されており、特別豪雪地帯の大野市・勝山市・池田町・南越前町の旧今庄町は全国屈指の積雪量で、大野市では年間降雪量500cm、最深積雪100cmを超えるとされています。
一方、日本海沿岸部では対馬暖流の影響により、冬でも比較的暖かく・雪よりも雨の日が多いようです。
逆に、夏は気温が高く、日照時間も長いことが特徴に挙げられます。
福井県は、海や山に囲まれていること、季節の変化がはっきりしていることから、四季折々の風景を存分に楽しむことができます。
福井県の有名な観光スポットといえば、春の日本さくら名所100選に選ばれた「足羽川の桜並木」、国の天然記念物で世界3大柱状節理に認定されている日本海に面した絶景パワースポット「東尋坊」、足羽川渓谷にかかる吊り橋「かずら橋」、福井県で唯一日本の滝100選に選ばれている「龍双ヶ滝」などがあります。
福井県の農業事情
福井県の主な農林水産物は、主に以下の通りです。
- 六条大麦 :全国でも有数の産地。ご飯に混ぜて食べる押し麦などに利用される(収穫量全国1位)
- 蕎麦 :良食味の在来種にこだわり、古来より受け継がれた「種」を守りながら栽培されている(収穫量全国9位)
- トマト :県が育成した品種「越のルビー」は、大玉トマトとミニトマトの中間のちょうど良い大きさであり、糖度が高く・ビタミンCも豊富
- メロン :丘陵地や砂丘地を主体にもっとも多く作付けされている「アールスメロン」は、贈答用として重宝される
- 梅 :果肉が厚く高品質の福井梅。代表品種は、梅干し用の「紅映」と梅酒に使う「剣先」(収穫量全国5位)
- らっきょう:小粒で身が締まり繊維が細かく歯切れの良いのが特徴。2度冬を越す「三年子」は福井ならではの栽培方法(収穫量全国6位)
- すいか :関西を中心に出荷。シャリシャリした爽やかな食感など高い評価を受けている
- さといも :「奥越の里芋」は知名度が高く、小ぶりで身が締まり固くて煮崩れしないのが特徴。なかでも、上庄地区で栽培されるものは「上庄さといも」としてGI登録されている
- ずわいがに:GI産品である「越前がに」が有名。漁獲後水揚げまでの間冷温で保管されるため、鮮度が良く、身質がよい。福井県により100年以上にわたり皇室に献上されている(漁獲量全国4位)
福井県では、福井県発祥のコシヒカリを中心とした水稲のほか、作付面積・収穫量ともに全国1位の六条大麦の栽培が有名です。
他にも大豆やそばが本格的に生産されていたり、メロン・すいか・らっきょう・梅などさまざまな農作物が作付けられています。
(平成28年には「吉川ナス」「山内かぶら」、平成29年には「上庄さといも」「若狭小浜小鯛ささ漬」、平成30年には「越前がに」がGIに登録されている)
さらに、福井県では「県特別栽培農産物認証制度」により、環境に負荷をかけない化学肥料と化学合成農薬を慣行栽培の半分以下に削減した栽培の計画を認証し、環境に優しい農業の持続的な発展を支援しています。
また、福井県は食育の先駆けの地とされ、なかでも小浜市では「御食国若狭」として、食のまちづくり条例を制定し、市全体で食育を推進していることも特徴に挙げられるでしょう。
福井県の野生鳥獣による害獣被害について
自然の中で暮らす野生動物は、時に人々の生活圏に入り込み、さまざまな悪影響をもたらします。
農作物への食害はもちろん、近年は家屋に棲みついて害獣被害をもたらす動物も増加しており、福井県でも被害を軽減できるようさまざまな対策が講じられています。
本章では、福井県の令和5年度の農作物への被害状況や群馬県が実施している農作物の鳥獣被害防止対策事業、特に警戒が必要な野生鳥獣についてご紹介します。
令和5年度の農作物への被害状況
福井県のホームページにある「福井県鳥獣害対策ホームページ」では、鳥獣害のない里づくりに向けてさまざまな取り組みが実施されています。
そして、同ページ内にて平成28年から令和5年度に発生した野生鳥獣による農作物への被害額も公表されています。
それによると、令和5年度の被害額は1億3,023万円であり、令和4年度の9,668万円を上回る結果となっています。
【平成28年度~令和5年度の野生鳥獣による被害額の合計】
- 平成28年度:87,520(千円)
- 平成29年度:104,034(千円)
- 平成30年度:89,721(千円)
- 令和1年度:86,235(千円)
- 令和2年度:73,191(千円)
- 令和3年度:65,237(千円)
- 令和4年度:96,675(千円)
- 令和5年度:130,228(千円)
以下は令和5年度の有害鳥獣による農作物被害状況を表にまとめたものです。
被害面積(ha) | 被害額(千円) | |
イノシシ | ・82.7 ・全体に占める割合:52.2% ・対前年比:142.6% | ・59,081 ・全体に占める割合:45.4% ・対前年比:121.7% |
シカ | ・68.1 ・全体に占める割合:43.0% ・対前年比:121.7% | ・61,287 ・全体に占める割合:47.1% ・対前年比:164.9% |
サル | ・5.0 ・全体に占める割合:3.2% ・対前年比:211.8% | ・5,524 ・全体に占める割合:4.2% ・対前年比:90.7% |
カラス | ・1.8 ・全体に占める割合:1.1% ・対前年比:176.5% | ・2,753 ・全体に占める割合:2.1% ・対前年比:94.5% |
その他 | ・0.7 ・全体に占める割合:0.4% ・対前年比:57.4% | ・1,583 ・全体に占める割合:1.2% ・対前年比:80.6% |
合計 | ・158.3 ・対前年比:133.5% | ・130,228 ・対前年比:134.7% |
特に、イノシシとシカによる被害が大きく、全体を占める割合はイノシシが45.4%、シカが47.1%となっており、次いでサル・カラスによる被害が発生しています。
なお、その他に分類されるのは、獣類がクマ・アライグマ・ハクビシン・タヌキなどで、鳥類はスズメ・ゴイサギ・アオサギ・ムクドリなどが挙げられます。
なぜ野生動物による被害が増えたのか?
近年、日本各地で野生動物(特に獣類)の生息数が増え・生息域が拡大しており、多くの地域でイノシシ・シカ・クマ・サルによる被害が深刻化しています。
また、ネズミ・イタチ・タヌキ・ハクビシン・アライグマのような中・小型の動物は人家の屋根裏や床下などに棲みつき、害獣被害をもたらすケースも増加しているといわれています。
野生動物の被害が増加した背景には、以下のような複数の原因が重なり合って被害が増加していると考えられています。
- 地球温暖化による暖冬の影響で積雪量が減少し、野生動物が生息しやすくなった
- エネルギー源が石油に置き換わり、薪炭を求め里山へ入り込む人が減少し、里地周辺で生息が可能となった
- 耕作放棄地が増加している
- 食生活が豊かになり収穫しない農作物や食べ残しが屋外に放置され、栄養価の高いエサが人里周辺で食べられるようになり頭数増加をもたらしている
- ハンター人口の減少と高齢化により狩猟頭数が減少した など
今は地域単位では被害が少ない野生動物であっても、このまま生息域が拡大していけば、いずれ新たな被害が発生する可能性もあるでしょう。
人と動物の共存は、今後の大きな課題となってくるでしょう。
福井県の鳥獣被害対策に関する補助事業について
日本各地、各自治体で野生鳥獣による支援が実施されており、福井県でも補助金などのサポート体制が用意されています。
サポート体制は県内でも自治体によって詳細が異なり、たとえば福井県にある永平寺町では「有害鳥獣対策地区協力補助金」という支援を受けることができます。
【永平寺町有害鳥獣対策地区協力補助金】
『目的』
永平寺町内の地域における鳥獣被害対策の促進及び育成・強化を図り、鳥獣被害を最小限に食い止めるため、地域の鳥獣被害対策にかかる費用の支援をおこなう
『補助対象者』
永平寺町内の地域で、鳥獣被害対策地区リーダー(永平寺町鳥獣被害対策実施隊員)を選出し、鳥獣被害対策地区リーダーを中心に、鳥獣被害対策組織を設置した地区
『補助対象経費』
鳥獣被害対策活動にかかる費用のうち、下記に記した費用について補助するものとする。ただし、他の補助事業がある場合は対象外とする。
- 鳥獣被害対策に係る研修および啓発にかかる費用
- 鳥獣の追払いに係る費用
- 鳥獣を寄付けないための対策に係る費用
- その他、町長が認めるもの
『補助率(補助額)』
- 1、2に関しては、補助対象経費の100%
- 3、4に関しては、補助対象経費の50%以内
※ただし、1~4の補助額の合計は10万円以内(千円未満切り捨て)
『事業期間』
令和5年度から令和7年度まで
なお、自治体(市役所や保健所など)が対策に動いてくれるのは、田畑への被害など経済的な損失が発生する場合や地域単位で危険度の高い鳥獣が出没した場合などが多いとされています。
そのため、家屋に棲みついた害獣を駆除したいという場合は、プロの害獣駆除業者へ相談するのもおすすめです。
詳細は自治体によって異なるため、気になる方はお住いの自治体のホームページなどを確認してみましょう。
野生鳥獣による被害で警戒すべき鳥獣とは?
この章では、福井県において農作物への被害が多い鳥獣の特徴や被害額の詳細について解説します。
被害額などの詳細は、福井県が公表している「福井県鳥獣害対策ホームページ」を参考にしております。
警戒すべき獣類
まずは獣類からのご紹介です。
獣類による被害は福井県でも甚大であり、なかにはイノシシ・クマのように遭遇すれば命の危険すらある危うい動物も生息しています。
また、ハクビシン・アライグマ・タヌキのような中・小型の動物は、家屋に棲みつきさまざまな被害をもたらす厄介な害獣としても知られています。
野生動物の被害は農作物だけにとどまらず、人々の生活に甚大な悪影響をおよぼす恐れがあることを理解しておきましょう。
イノシシ
イノシシは多雪に弱く、元来北陸では生息域が限られていました。
しかし、福井県中山間農業・畜産課によると、近年の少雪傾向から生息域を拡大し、今では県内のほぼ全域で見られるようになったといわれています。
イノシシによる農作物への被害は甚大であり、平成28年から令和5年にかけての被害面積と被害額は以下の通りです。
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
被害面積(ha) | 164.0 | 130.0 | 118.0 | 101.0 | 52.4 | 43.7 | 58.0 | 82.7 |
被害額(千円) | 77,443 | 92,506 | 70,249 | 66,838 | 32,215 | 31,961 | 48,546 | 59,081 |
令和2・3年で被害が大きく減少しましたが、令和4・5年と立て続けに被害が増加しており、令和5年ではシカに次いで2位の被害額を発生させています。
イノシシの田畑に与える影響としては、主に以下が挙げられます。
- 雑食性であり、水稲・いも類・野菜・果樹などさまざまな作物を食害する
- 畑を荒らす(踏み荒らす、農作物を引っこ抜く など)
- 寄生虫やダニを落とすための「ぬた場」として水田を使う(泥浴びをする) など
イノシシは本来は昼行性ですが、人を警戒して夜間に田畑に浸入することもあるほど、警戒心が強く臆病な動物です。
しかし、環境に慣れてしまう(安全であると認識してしまう)と、昼間でも出没する恐れがあるため非常に危険です。
近年は市街地での目撃情報も増加しており、人身被害にも警戒しなければいけません。
イノシシの性格上、人と遭遇してもイノシシ側から去っていくことは多いとされています。
ただ、人間がイノシシを刺激して興奮状態にしたり、発情期(晩秋~冬)や分娩後で攻撃的になっているときに遭遇すると襲い掛かってくることもあります。
万が一イノシシと遭遇してしまった場合は、大声を出さない・急に走り出さない・物を投げない・背を向けない・エサを与えないといった点に注意しながら、ゆっくりとその場を後ずさりましょう。
目に見えない場所や高いところに避難することが重要です。
また、イノシシの子ども(うり坊)と遭遇した場合であっても、可愛いと思ってむやみに近づいたり・エサを与えてはいけません。
近くに母イノシシがいる可能性が高いため、近づけば襲われる危険性が高まります。
シカ
シカも、イノシシと同じく多雪に弱く、北陸地域では生息域が限られていました。
しかし、近年は生息数・生息域が拡大しており、福井県でも1・2位を争うほどの甚大な被害を発生させています。
以下は、平成28年から令和5年にかけてのシカによる農作物への被害面積と被害額です。
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
被害面積(ha) | 27.0 | 10.0 | 20.0 | 28.0 | 51.4 | 52.0 | 55.9 | 68.1 |
被害額(千円) | 5,145 | 4,904 | 11,379 | 8,042 | 14,260 | 21,006 | 37,164 | 61,287 |
その被害額は令和元年から年々増加しており、令和5年では6,129万円もの甚大な被害を発生させています。
シカの注意すべきポイントは、農作物と森林への被害です。
- 農作物:ほとんどの植物を口にでき、特に栄養価の高い農作物は恰好のエサとなる(食べ物がなくなると周囲の草・花・果樹なども食べていく)
- 森林 :苗木・樹齢の高い木の樹皮や形成層を食べる、オスが角をこする際に樹皮を剥がす など
また、シカは臆病で警戒心の強い動物であり、何か驚いて森から突如出没し車とぶつかる…といった事故が発生している地域もあります。
生息数が増加していることは、上記の被害額を見れば一目瞭然でしょう。
一見すると人にとって害のないおとなしい動物のように感じるかもしれませんが、農業・林業はもちろん、一般の方にも警戒が必要な動物といえます。
サル
野生のサルによる被害も深刻です。
雑食性で、玉ねぎやトウモロコシなどの野菜・果実・昆虫を摂食し、少しかじっては捨てるといった行動をとります。
以下は、平成28年から令和5年にかけてのサルによる農作物への被害面積と被害額です。
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
被害面積(ha) | 3.0 | 2.0 | 2.0 | 6.0 | 14.0 | 3.0 | 2.4 | 5.0 |
被害額(千円) | 2,831 | 2,049 | 2,201 | 3,680 | 10,175 | 3,635 | 6,088 | 5,524 |
被害は波が荒く、令和3年で大幅に下がったかと思えば、令和4年では倍ほどに被害が増大…。令和5年で約550万円の被害を出しています。
サルの特性としては、以下が挙げられます。
- 野生のサルはメスザルを中心とした10~100頭ほどの群れで生活する
- オスは成長すると群れから離れ「ハグレザル」となり、単独で生活する
- 視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚は人間とほぼ同じ
- 学習能力が高く、特に記憶力がよい
- 新しいものや状況・場所に警戒するが、一旦慣れると大胆不敵になる
もっとも厄介なのは「人慣れ」と「集団行動」の2点です。
サルは人にとって馴染み深い動物であり、遭遇した際にエサをあげようとする人もいます。
しかし、人からエサをもらうことで警戒心を緩め、集団で市街地に出没。結果、家屋への侵入や人間に対する威嚇といった生活被害や人身被害が発生しやすくなります。
野生のサルの市街地への出没頻度は増加しており、直近で2024年11月7日に足羽山公園遊園地の一部を閉鎖したというニュースも報道されていました。
野生のサルを見かけても、何もせず無視してその場を去ることが重要です。
どれだけ地域単位で対策を講じても、エサを与える人がいてはサルの被害を無くすことはできないため、サルの特性を正しく理解しておきましょう。
ツキノワグマによる被害にも要注意!
福井県の山林にはどこにでもツキノワグマが生息しています。
事実、福井県内の今年4~8月のツキノワグマ出没件数が554件に上り、統計を取り始めた2004年以降の同期でもっとも多かったことが2024年9月5日の県のまとめで判明しています。
4~8月の出没件数を地域別にみると、丹南が165件でもっとも多く、福井・坂井が160件・嶺南144件・奥越85件。月別では繁殖・親離れ期に当たる6月が267件と半数近くを占めており、その後は7月94件・8月50件と比較的落ち着いています。
幸い人身被害はなかったようですが、6月に福井市中心部の住宅街でクマが民家内に居座るなど、クマの活動域が人里に広がる傾向が強まっているといわれています。
また、秋から冬にかけては、冬眠を備えたクマが餌を求めて活発に活動し、特に山林付近にお住いの方や山登りをする予定の方は要注意です。
クマによる被害にあわないためには、日頃からクマを引き寄せない対策や突然の遭遇を防ぐ対策をおこなうことが重要です。
福井県のホームページにある「福井クマ情報」や「ツキノワグマによる人身被害防止のために」を確認し、事前対策といざというときの対処法を身につけておきましょう。
その他獣類
その他の野生動物として警戒すべきなのは、農作物への被害も発生しているアライグマ・ハクビシン・タヌキなどが挙げられます。
厄介なのは、上記3種は家屋の屋根裏や床下などに入り込み・棲みつく可能性があることでしょう。
家屋に棲みつかれると、以下のような害獣被害が発生する恐れがあります。
- 足音や鳴き声による騒音(夜行性のため夜間にひどくなる)
- 糞尿による悪臭、建物の腐食
- 家のなかの食べ物や付近の家庭菜園・畑などの農作物の食害
- 断熱材などの破損(建物の劣化)
- 噛みつきや引っ掻きによる怪我
- 感染症の発病 など
建物にお住いの住人やペット、建物の寿命を大きく縮める恐れがあるなど、放置するほど被害は拡大していくため、害獣や痕跡などを発見した際は、早急に害獣駆除業者へ対処を依頼することが重要です。
警戒すべき鳥類
以下では、福井県で警戒すべき鳥類の特徴をご紹介します。
鳥類のなかでもっとも被害が大きいのはカラスですが、それ以外にも農作物へ深刻な被害を発生させる鳥がいるため、注意が必要です。
カラス
福井県内には、一年を通して「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」の二種類が生息しています。
ハシブトガラスは樹木の種子や肉類を、ハシボソガラスは農作物や昆虫を好物としており、どちらも農作物への被害が問題視されています。
以下は、平成28年から令和5年にかけてのサルによる農作物への被害面積と被害額です。
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
被害面積(ha) | 3.0 | 5.0 | 5.0 | 2.0 | 2.4 | 1.8 | 1.0 | 1.8 |
被害額(千円) | 1,230 | 3,972 | 4,297 | 5,576 | 12,887 | 33,526 | 2,914 | 2,753 |
カラスの生態としては、以下が挙げられます。
- 日の出前にねぐらを出て、エサを探し、夕方ねぐらに帰る
- 1日の行動範囲はねぐらを中心とする半径10km程度
- 巣立ちを終えたカラス及び非繁殖個体は、集団ねぐらを形成する
- ねぐら入りする前に、付近でねぐら前集合し、集団でねぐらに帰る
- 貯食する習性がある
カラスは市街地に出没して人々に悪影響もおよぼすため、多くの人が厄介が害鳥として認識しているかと思います。
ただしカラスは自然界において、虫や木の実を食べる捕食者としての役割と、死がいを食い・片付ける掃除屋(スカベンジャー)としての役割があります。
これらの役割により、特定の生物の大量発生を抑え・植物の種子を遠くに運び・死がいが自然に帰るのを助けています。
カラスは、見た目や被害を理由に嫌う方も多いかとは思いますが、カラスもいなければ生態系のバランスが崩れ、そのひずみは人間社会にも帰ってきます。
人間の都合だけで野生鳥獣を勝手に駆逐することはできず、今後は人間が野生鳥獣と共存する道を模索していくことが重要といえるでしょう。
その他鳥類
福井県において、農作物へ被害を発生させているその他の鳥類としては、スズメ・ゴイサギ・アオサギ・ムクドリなどが挙げられ、それぞれの特徴な以下の通りです。
【スズメ】
- スズメは昼行性で、日中に活動し夜は巣で休む
- 人家やその周辺の樹林・農耕地・草地・河原などに生息している
- 食性は雑食で、イネ科植物の種子や虫を好んで食べる(繁殖期には虫を捕食する)
【ゴイサギ】
- 夜行性で、昼は草むらや林の中に隠れている
- 夕方から動き出し、魚や両生類、甲殻類などを水辺でとらえて食べる
- 河川や湖、湿原などに生息して、小規模な群れをつくる
【アオサギ】
- 日本で繁殖する最大のサギ
- 水辺に生息し、浅瀬で夕方まで採食している
- 魚類や両生類、爬虫類を食べる
【ムクドリ】
- 夕方になると大群になって集まり、集団ねぐらへと移動する(都市部の街路樹がねぐらとして利用されることもある)
- 数羽で地面を歩きながら植物の種子や昆虫類を食べる
- 平地の農耕地から市街地まで広く分布する
ここでご紹介したカラス以外の鳥類は、一般の方からすると害鳥という印象を受けないかもしれませんが、農家の方からすれば「農作物を食い荒らす」といった点などから警戒すべき存在です。
ただ、カラスと同じく各鳥類も地球上に生息する生き物で、それぞれの役割を持って生活しています。
「害鳥だから」という理由だけで一方的に駆除することはできないため、この点には注意が必要と言えるでしょう。
野生鳥獣による被害はお住いの自治体やプロの業者に相談しよう!
野生鳥獣の被害は一般の方だけで対処できる問題ではありませんし、そもそも法律によって管理されている野生鳥獣を無許可で捕獲・殺傷することもできません。
下手に関わると怪我を負うなどのリスクも伴うため、もし野生鳥獣の被害に逢っている場合は、まずお住いの自治体へ相談してみましょう(自治体によってサポートの有無や範囲は異なるため、事前に確認しておくこと)。
また、家屋に棲みつく害獣も(どれだけ被害に逢っていても)無許可で捕獲や殺傷はできず、素人が下手に対処すると多大な手間とリスクが発生するため、被害が発生・広がる前にプロの害獣駆除業者へ相談することが重要です。
プロの業者へ依頼すれば、棲みついている害獣の駆除はもちろん、侵入経路の封鎖や清掃・消毒、万が一被害が再発した際にも迅速かつ格安で対応してもらえるでしょう。
ただし、業者によって防除にかかる費用やサービス内容には大きな違いがあるため、複数社に現地調査や見積もりを依頼したうえで、より自身が安心・納得できる業者を選ぶことが重要です。
まとめ
野生鳥獣による被害は全国各地でさまざまに発生しており、地域ごとに然るべき対策が講じられています。
福井県でもさまざまな策が実施されているものの、野生鳥獣による被害をゼロにすることはできず、人間と野生鳥獣がどのように共生していくかが今後の課題となるでしょう。
また、農作物への被害だけでなく、家屋に棲みつく害獣にも注意が必要です。
一般の方が害獣対策をすることには限界があり、かつ多大な手間をリスクを伴うため、もし実際に被害に遭っている・害獣や痕跡を目撃した場合は、被害が大きくなる前にプロの業者へ対処を依頼することをおすすめします。
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